例.
複素射影空間 {\mathbf C}P^nへのS^1作用をS^1 \ni t\mapsto \mathrm{diag}(t^{m_0},\cdots,t^{m_n})\in\mathrm{GL}(n+1,{\mathbf C})が誘導する作用とする.
m_\alphaは互いに相異なるものとする. すると
固定点は同次座標で[1:0:\cdots:0], [0:1:0:\cdots:0], \cdots, [0:\cdots:0:1] のn+1個である. \alpha番目 (0\le\alpha\le n)の座標が1で, 他の座標が
0である点をp_\alphaとする. 接空間のEuler類 e(T_{p_\alpha}{\mathbf C}P^n) は,
\prod_{\beta:\beta\neq\alpha} m_\beta - m_\alpha
である. tautological bundle \mathcal LにS^1作用はliftし, p_\alphaにおける
ファイバーのウェイトはm_\alphaである. よって
\int_{{\mathbf C}P^n} c_1(\mathcal L)^n = (-1)^n
は, Bottの公式から
\sum_{\alpha=0}^n \frac{m_\alpha^n}{\prod_{\beta\neq\alpha} (m_\beta-m_\alpha)} = (-1)^n
と同値である. より一般に
\sum_{\alpha=0}^n \frac{m_\alpha^N}{\prod_{\beta\neq\alpha} (m_\alpha-m_\beta)} = h_{N-n}(\vec{m})
が, 成立する. ただし, h_{N-n}(\vec{m})は、\vec{m} = (m_0,\dots,m_n)に関するcomplete symmetric functionであり、N < nのときは右辺は0と約束する.
例.
Grassman多様体G(r,n)を考える. 上と同様にS^1作用を定めると, 固定点
集合はI\subset \{1,\cdots,n\} で |I| = rとなるものと一対一対応する.
Iに対応するG(r,n)の点をS_Iであらわし, {\mathbf C}^nのr次元
部分空間と思うことにする. このときT_{S_I}G(r,n)のウェイトは
m_\beta - m_\alpha, \qquad \beta\in I^c, \alpha\in I
となる.
tautological bundle \mathcal SにS^1作用はliftし, S_Iにおけるウェイトは
m_\alpha(\alpha\in I)である. quotient bundle \mathcal QのS_Iにおけるウェイトは、m_\beta (\beta\in I^c)である.
演習問題.
\int_{G(r,n)} c_r(\mathcal S)^{n-r} = (-1)^{r(n-r)}
をBottの公式を用いて証明せよ. すなわち
\sum_{I} \frac{\prod_{\alpha\in I} m_\alpha^{n-r}}{\prod_{\alpha\in I,\beta\in I^c } m_\beta - m_\alpha} = (-1)^{r(n-r)}を示せ.
例.
X = \mathrm{pt}のとき
H^*_T(\mathrm{pt}) = {\mathbb C}[x_1,\cdots,x_r], H_*^T(\mathrm{pt}) = {\mathbb C}[x_1,\cdots,x_r]\cap [\mathrm{pt}]_T (r=\dim T)となる. ただし, \deg x_i = 2 であり, [\mathrm{pt}]_Tは, \mathrm{pt}のT同変-基本類である. 下をみよ.)
これはT = S^1 のときにET_N = S^{2N+1}, BT_N = \mathbb{C}P^Nで確かめて,
これの直積を取ればよい.
カップ積により H^*_T(X) は、super可換な環であり、H^T_*(X)はその加群である. 自然な射影 X\times_T ET_N\to BT_N による引戻し写像により、 H^*_T(\mathrm{pt})\to H^*_T(X) という環準同型が与えられる。 またH_*^T(X) は, H^*_T(\mathrm{pt})-加群である.
Bottの定理の証明の際には、H^*_T(X), H^T_*(X) を H^*_T(\mathrm{pt})-加群 とみなし、さらに \mathbb C^r 上の層と考えて、その台を調べることが重要になる.
性質.
line bundle \mathcal L_i の定義
演習問題.
T同変ベクトル束Eの同変チャーン類を c_k(E\times_T ET)として定義する。
同変コホモロジーを用いて、Bottの公式を Atiyah-Bott, Berline-Vergneに従い、定式化しなおす。
定理.
Xは向きの付けられたコンパクトなT-多様体で、固定点 X^Tが有限集合であるもの
とする。\alpha\in H^*_T(X)に対して、
\int_X \alpha = \sum_{x\in X} \frac{\alpha|_x}{e(T_x X)}
が成り立つ。
命題.
Xは、上のとおりとする。(より一般的に、有限次元の表現空間 V に T同変に埋め込めればよい。)
包含写像 i: X^T\to Xが誘導する引き戻し写像 i^*: H^*_T(X)\to H^*_T(X^T) を考える。
このとき、\operatorname{Ker}i^*, \operatorname{Cok}i^* は、ともに H^*_T(\mathrm{pt})-torsionである。
より強く、x\in X\setminus X^T における stabilizer \operatorname{Stab}_T(x)のリー環 (仮定から有限通りしかない)の和集合の上で 0 になるような関数 f\in \mathbb C[\operatorname{Lie}T] = H^*_T(\mathrm{pt}) を取ってくると、f \operatorname{Ker}i^* = f\operatorname{Cok}i^* = 0 となる。
つまり、\operatorname{Ker}i^*, \operatorname{Cok}i^*の \mathbb C[\operatorname{Lie}T]-加群としての台は、\operatorname{Stab}_T(x)のリー環の和集合の中にある。
この命題は、Xが多様体でなくても成り立つ。
系.
i^* : H^*_T(X)\otimes_{H^*_T(\mathrm{pt})} \operatorname{Frac}H^*_T(\mathrm{pt})\to H^*_T(X)\otimes_{H^*_T(\mathrm{pt})} \operatorname{Frac}H^*_T(\mathrm{pt})
は同型写像である。
さて、f: X\to Y がコンパクトで向きづけられた T-多様体 X, Y の間の T-同変写像とすると、 Poincar\'e双対を用いて、押しだし写像 f_*: H^*_T(X)\to H^{*+\dim Y - \dim X}_T(Y) が定義される。
上の定理の左辺の \int_X \alpha は、p: X\to \mathrm{pt} に対する、p_*(\alpha) として定められる。 さて、以上の準備のもとで、i_x: \{x\} \to X (x\in X^T)とおくと、
お気に入りの例.
f: \widehat{\mathbb C^2}\to \mathbb C^2 を原点でのブローアップとすると、fは、genericにはdiffeoであり、f_*[\widehat{\mathbb C^2}] = [\mathbb C^2] であることから、
\int_{\widehat{\mathbb C^2}} 1 = \int_{\mathbb C^2} 1
が成り立ち、これは
\frac1{x_1 x_2} = \frac1{x_1(x_2-x_1)} + \frac1{x_2(x_1-x_2)}
と確かに成り立っている。(cf. 中島-吉岡 Instanton counting on blowup)
T^*G(k,n)\times T^* G(k-1,n) の部分集合 P_k を P_k = \{ (S_1,\xi_1,S_2,\xi_2) \mid S_1\supset S_2, \quad \xi_1 = \xi_2 \} で定義する。\xi_1 = \xi_2 は、ともに \operatorname{End}(\mathbb C^n) の元と思っての等式である。 \xi_1=\xi_2は、\operatorname{Hom}(\mathbb C^n/S_1,S_2)の元と考えることができる。 p_1, p_2 を P_k から T^*G(k,n), T^* G(k-1,n)への射影とする。
d_1 = \dim_{\mathbb C} G(k,n), d_2 = \dim_{\mathbb C} G(k-1,n)とおく。
いくつかのあとで使う性質をまとめておく。
定理(Ginzburg).
[H,E] = 2E, [H,F] = -2F, [E,F] = H が満たされる。すなわち、\bigoplus_{0\le k\le n} H^0(G(k,n))は、\mathfrak{sl}(2) の表現である。より強く、これは、\mathfrak{sl}(2)の標準的な次のn+1次元表現と同型である。
V = (x, y のn次斉次多項式全体)=\mathbb C x^n \oplus \mathbb Cx^{n-1}y\cdots\oplus \mathbb C y^n, E = x\frac{\partial}{\partial y}, F = y\frac{\partial}{\partial x}, H=x\frac{\partial}{\partial x}-y\frac{\partial}{\partial y}
証明.
[H,E] = 2E, [H,F] = -2Fのチェックは自明である。1_k\in H^0(G(k,n))を、G(k,n)の1という定数関数があらわすクラスとしたときに、p_2^* 1_kは、p_2^* \vartheta_{T^*G(k-1,n)} である。ただし、\vartheta_{T^*G(k-1,n)} は、ベクトル束 T^* G(k-1,n)\to G(k-1,n)のThom類である。これを P_kの上に制限することを考える。
ポイントは、集合論的な交叉 P_k\cap p_2^{-1} G(k-1,n) は、G(k,k-1)であって、その次元は d_1+k-1なのに対して、expected 次元は、d_1であり、k-1次元分だけずれていることであり、これは、 p_2^*\vartheta_{T^* G(k-1,n)}\cap [P_k] = \alpha\cap [G(k,k-1)] となる \alpha\in H^{2(k-1)}(G(k,k-1)) が存在することを示唆する。
実際、T^* G(k-1,n) = \mathrm{Hom}(\mathbb C^n/\mathcal S_2,\mathcal S_2), P_k = \mathrm{Hom}(\mathbb C^n/\mathcal S_1,\mathcal S_2) であったことを思い出すと、ベクトル束の完全列 0 \to \mathrm{Hom}(\mathbb C^n/\mathcal S_1,\mathcal S_2) \to \mathrm{Hom}(\mathbb C^n/\mathcal S_2,\mathcal S_2)\to\mathrm{Hom}(\mathcal S_1/\mathcal S_2,\mathcal S_2)\to 0 があり、これは、C^\inftyベクトル束の圏では、分裂することから、Thom類は \vartheta_{\mathrm{Hom}(\mathbb C^n/\mathcal S_2,\mathcal S_2)} =\vartheta_{\mathrm{Hom}(\mathbb C^n/\mathcal S_1,\mathcal S_2)}\vartheta_{\mathrm{Hom}(\mathcal S_1/\mathcal S_2,\mathcal S_2)}であり、\vartheta_{\mathrm{Hom}(\mathbb C^n/\mathcal S_1,\mathcal S_2)}\cap [P_k] = [G(k,k-1)]であることから、p_2^*\vartheta_{T^* G(k-1,n)}\cap [P_k] = e(\mathrm{Hom}(\mathcal S_1/\mathcal S_2,\mathcal S_2))\cap [G(k,k-1)]である。
次に、\mathrm{Hom}(\mathcal S_1/\mathcal S_2,\mathcal S_2)は、q_1のファイバーの接束 \mathrm{Hom}(\mathcal S_2,\mathcal S_1/\mathcal S_2)の双対であるから、ファイバーの余接束である。よって、e(\mathrm{Hom}(\mathcal S_1/\mathcal S_2,\mathcal S_2))\cap [G(k,k-1)] = e(T^*(q_1-\text{fiber}))\cap [G(k,k-1)] であり、これをp_{1*} で落とすと、(-1)^{\dim(\text{fiber})}(\text{fiberのオイラー数}) [G(k,n)] = (-1)^{k-1} k 1_kとなった。Fは符号を調整していたことから、F 1_{k-1} = k 1_kである。
同様に、E 1_k = (n-k+1) 1_{k-1} である。n-k+1 は \mathbb P^{n-k}のオイラー数に他ならない。ここで、1_k = \binom{n}{k} x^{n-k} y^kとすると、上の表現の作用と同じである。以上により証明が完了した。
補題.
*=1\sim 2(N-n)に対して、H^*(S(n,N)) = 0 である。
証明は、exerciseとする。
トーラスの同変コホモロジー群の定義を思い出すと、この性質とS(n,N)へのG=U(n)の作用が自由であることと合わせて、H^*(X\times_{U(n)} S(n,N)) によって、 H^*_G(X)を定義して、well-definedになる。
X \to X/G が G主束であると、以前と同様に H^*_G(X) \cong H^*(X/G) となる。 T = (S^1)^n\subset G=U(n) を対角行列のなす部分群とする。(極大トーラスである。) N(T) をTのG内における正規化群とする。N(T)/Tはn次対称群S_nである。
定理.
H^*_G(X)\cong H^*_T(X)^{S_n} が成り立つ。ただし、S_nの作用は、N(T)のXへの作用を通じて定まる。
特に、H^*_G(\mathrm{pt}) = H^*_T(\mathrm{pt})^{S_n} = \mathbb C[x_1,\dots,x_n]^{S_n} である。ここで、S_nの作用は、変数x_iの取り換えである。
証明.
G/N(T) = (G/T)/S_nであることに注意し、有限群による商について
H^*(G/N(T)) = H^*(G/T)^{S_n}
が成り立つことを思い出そう。(Bott-TuのExercise 6.46参照)
一方で、G/Tは旗多様体であって、 H^*(G/T) \cong \mathbb C[x_1,\dots,x_n]/\mathbb C_+[x_1,\dots,x_n]^{S_n} が成り立つ。ただし、\mathbb C_+[x_1,\dots,x_n]^{S_n}は定数でない、対称多項式の全体が生成するイデアルである。これは、(Bott-Tuの節21にある。)
実際、G/T = \{ 0 = V_0 \subset V_1\subset\cdots \subset V_{n-1} \subset V_n = \mathbb C^n\} としたとき、 x_i = c_1(V_i/V_{i-1})とすると、x_1,\dots,x_nの対称多項式は、 V_1\oplus V_2/V_1\oplus\cdots\oplus V_n/V_{n-1}のChern類であるが、 このベクトル束は、C^\inftyベクトル束の圏ではV_n = \mathbb C^nをファイバーとする自明なベクトル束であることから、0次のChern類が1である以外はすべて0となる。よって、右辺から左辺への写像があり、これが全射で、左辺と右辺の次元が同じことから同型になる。
したがって、H^*(G/T)^{S_n} は *=0でのみ\mathbb Cで、あとは0となる。 つまり、G/N(T)のコホモロジーは、一点のコホモロジーと同じである。
X\times_{N(T)} S(n,N)\to X\times_{G} S(n,N)を考えると、これはファイバー束で、ファイバーはG/N(T)であることから、Lerayのスペクトル系列を考えて、上の注意を用いると、H^*_G(X)\cong H^*(X\times_{N(T)}S(n,N))が従う。
さらに、X\times_{T} S(n,N)/S_n = X\times_{N(T)} S(n,N)であることから、主張が従う。
さて、今日の授業の最初に戻って G(k,n)へのU(n)の作用を考える。 G(k,n) = U(n)/U(k)\times U(n-k)に注意すると、 H^*_{U(n)} (G(k,n)) = H^*_{U(k)\times U(n-k)}(\mathrm{pt}) = \mathbb C[x_1,\dots,x_n]^{S_k\times S_{n-k}} である。
演習問題.
上で定義した、E, F, HはU(n)同変な写像から定められていることから、
\bigoplus H^*_{U(n)}(G(k,n))の上に定義されている。上の同型により
\bigoplus \mathbb C[x_1,\dots,x_n]^{S_k\times S_{n-k}} への作用素とみて
E, Fを具体的に記述せよ。
p_{12}^*: H_*(Z)\to H_*(p_{12}^{-1}Z)は、 p_{12}: M\times M\times M\to M\times M に関するpull-back with support である。
\cap : H_*(p_{12}^{-1}Z)\otimes H_*(p_{23}^{-1}Z)\to H_* (p_{12}^{-1}Z\cap p_{23}^{-1}Z) は、M\times M\times M内におけるキャップ積である。
p_{13*}: H_* (p_{12}^{-1}Z\cap p_{23}^{-1}Z)\to H_*(Z)は固有射 p_{12}^{-1}Z\cap p_{23}^{-1}\to Zに関する押し出し写像である。
この積は
自明な例
定理.(Ginzburg)
\mathrm{U}(\mathfrak{sl}(2))\to H_{\operatorname{mid}}(Z)は、代数の準同型であり、H_{\operatorname{mid}}(\pi^{-1}(0))=\bigoplus_{k=0}^n H_{\operatorname{mid}}(G(k,n))は、先週の定理と同じ、\mathfrak{sl}(2)の(n+1)次元表現である。
合成積代数の局所化
\pi: M\to XはT同変であるとする。このとき、ZにTが作用し、T同変 Borel-Moore ホモロジー H^T_*(Z)を考えることができる。これは、H^*_T(\mathrm{pt})上の結合代数である。 固定点集合 Z^T は、Z^T = M^T\times_{X^T} M^Tとなり、H^T_*(Z)とH^T_*(Z^T)には、共に合成積が定義される。これらの関係を結ぶのが次の命題である。
命題. N\equiv N_{M^T/M} をM^TのM内における法束とし、e(N)をそのT同変オイラー類とする。このとき \frac1{1\otimes e(N)} i^*: H_*^T(Z) \to H_*^T(Z^T)\otimes_{H^*_T(\mathrm{pt})}\operatorname{Frac}H^*_T(\mathrm{pt}) を考える。ただし、i: M^T\times M^T\to M\times Mであり、1\otimes e(N)は、e(N)の第二成分への射影 p_2: M\times M\to Mによる引き戻しである。e(N)が可逆であることから、\frac1{1\otimes e(N)}は well-definedである。
このとき、\frac1{1\otimes e(N)} i^*は、代数の準同型になる。
M^T\times M^T\subset M\times Mの法束 e(N)\otimes e(N)の逆ではなく、第二成分だけの逆 \frac1{1\otimes e(N)}と定めることで、合成積とcompatibleになるが、\frac1{e(N)\otimes e(N)}としてしまうと、第二成分の法束のオイラー類が二回出てきて、compatibleにならないことに注意しよう。
また、Q_1^{\mathrm{dbl}} = Q_1\sqcup \overline{Q_1} とする。向きを逆にする写像\overline{\ }: Q_1^{\mathrm{dbl}} \to Q_1^{\mathrm{dbl}}が定まる。また、 \varepsilon: Q_1^{\mathrm{dbl}} \to \{\pm 1\} を h\in Q_1のとき1、そうでないとき -1として定める。 G_V = \prod \mathrm{GL}(V_i) とおく。これは、\mathbf N, \mathbf M に共役により自然に作用する。
\mu:\mathbf M\to \bigoplus_{i\in Q_0} \mathrm{End}(V_i)を、そのi成分が \sum_{h\in Q_1^{\mathrm{dbl}}, i(h)=i} \varepsilon(h) B_h B_{\overline{h}} + a_i b_i で定める。
定義. (B,a,b)\in\mathbf M がstable であるとは、Q_0-graded subspace S\subset V で、B-不変かつ、\operatorname{Ker}bに含まれるものが、0しかないときをいう。stable な点の全体を\mathbf M^{\mathrm{st}}であらわす。
\mathbf M^{\mathrm{st}}は、\mathbf Mの空かもしれない、開集合である。
補題. \mathbf M^{\mathrm{st}}への、G_Vへの作用は自由
補題. \mu^{-1}(0)^{\mathrm{st}} = \mu^{-1}(0)\cap\mathbf M^{\mathrm{st}}とおく。このとき、 (B,a,b)\in\mu^{-1}(0)^{\mathrm{st}}に対して、\muの(B,a,b)における微分d\muは全射である。 特に、\mu^{-1}(0)^{\mathrm{st}}は、\mathbf M^{\mathrm{st}}の中の滑らかな部分多様体である。
次に作用を考える。 G_V\times \mathbf M^{\mathrm{st}}\to \mathbf M^{\mathrm{st}}\times\mathbf M^{\mathrm{st}};\quad (g,m) \mapsto (m, gm)
補題. この写像は、properである。 これらを合わせて、
系.
定義. \mu^{-1}(0)^{\mathrm{st}}/G_Vを箙多様体といい、\mathfrak Mで表わす。次数付きベクトル空間を明示したいときは、\mathfrak M(V,W)と表わす。また、V, Wの次元ベクトルを \mathbf v, \mathbf wとして、\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) という表わし方もする。
接空間をより具体的に表そう。次の複体を考える。 \bigoplus_{i\in Q_0}\operatorname{End}(V_i) \xrightarrow{\alpha}\bigoplus_{h\in Q_1^{\mathrm{dbl}}} \operatorname{Hom}(V_{o(h)}, V_{i(h)}) \oplus\bigoplus_{i\in Q_0} \operatorname{Hom}(W_i,V_i)\oplus\operatorname{Hom}(V_i,W_i)\xrightarrow{\beta} \bigoplus_{i\in Q_0}\operatorname{End}(V_i) \alpha(\xi) = (\xi B - B\xi) \oplus \xi a \oplus (-b\xi), \qquad \beta(\dot{B},\dot{a},\dot{b}) = \varepsilon (B \dot{B} + \dot{B} B) + \dot{a} b + a\dot{b} ここで、\alphaは、作用の微分であり、\betaは、\muの微分である。 また、添字は、省略した。\muの同変性から \beta\alpha = 0 が従うが、直接確かめても明らかである。
上の補題より、\betaは全射。また、その前の補題の証明から\alphaは単射。したがって、\operatorname{Ker}\beta/\operatorname{Ima}\alpha が、この複体のコホモロジーであり、これが[B,a,b]における \mathfrak M の接空間である。 次に、 \mathfrak M_0 = \mu^{-1}(0)/\!/ G_V = \mu^{-1}(0)/\sim, \qquad (B,a,b)\sim (B',a',b') \Leftrightarrow \overline{G_V(B,a,b)}\cap \overline{G_V(B',a',b')}\neq\emptyset と定める。すなわち、軌道の閉包が交わっているときに、同値と定めて、その同値関係で割った商空間である。閉包をとっていることから、\mathfrak M_0もハウスドルフ空間になる。
また、自然な写像\pi: \mathfrak M\to \mathfrak M_0が定まる。つまり、(B,a,b)の\mathfrak Mにおける同値類に対して、(B,a,b)それ自身の\mathfrak M_0における同値類を対応させるものである。前者は、G_V作用による商であるから、これは well-defined である。
例. A_1型箙を考える。 すなわち、頂点はひとつだけで、辺はなしである。二つのベクトル空間 V, W を取る。それぞれ次元は v, wとする。このとき\mu(a,b) = ab であり、stable であることは、bが単射であることと同値である。このとき、S = \operatorname{Im}b \subset W, \xi = ba\operatorname{End}(W) と定めると、\mu(a,b) = 0 から、\xi(S) = 0 で、定義から\operatorname{Im}\xi\subset S である。すなわち、(S,\xi)は、グラスマン多様体の余接束の点を定める。
逆に、(S,\xi) が与えられたとき、S \cong V と同型を選び、b = V \cong S \hookrightarrow W, a = W\to W/S\xrightarrow{\xi} S\cong Vと定める。bは単射で、ab = 0 であるから、\mathfrak Mの点を定める。S\cong Vの同型のとり方は、\operatorname{GL}(V)の作用で帳消しされるので、well-definedである。さらに、b a = \xi となり、これは逆写像を定める。
命題. 上で作った写像 \mathfrak M\to T^*\operatorname{Gr}(v,w) は、同相写像である。
上で考えた複体とT^*\operatorname{Gr}(v,w)の接空間の関係を考えてみよ。
次に\mathfrak M_0を調べる。上の考察から、べき零錘 \mathcal N_2と対応させるのは自然である。そこで写像 \mathfrak M_0 \ni [a,b] \mapsto \xi = ba \in \operatorname{End}(W) を考える。\xi^2 = 0が成り立つ。また、定義から\operatorname{rk}\xi\le v である。
次に、Jordan quiver を考える。すなわち、頂点は一つで、辺はその頂点から、それ自身に戻るものである。したがって、ベクトル空間 V, W を取って、対応する線形写像は、B_1,B_2\in\operatorname{End}(V), a\in\operatorname{Hom}(W,V), b\in\operatorname{Hom}(V,W) となり、moment map の式は、\mu(B_1,B_2,a,b) = [B_1,B_2]+ab である。
以下の都合上、stable の代わりに、costable、すなわち T\subset V で、 \operatorname{Im}a を含み、B_1, B_2で不変な部分空間は、V自身しかない、と仮定する。
以下、\dim W = 1と仮定する。
命題. b(\text{$B_1$, $B_2$に関する非可換単項式}) a = 0が成り立つ。
系. costable ならば b=0である。特に、[B_1,B_2] = 0が成り立つ。 したがって、 \mathfrak M(n,1) = \{ (B_1,B_2,a) \mid [B_1,B_2] = 0, \quad \sum_{k,l\ge 0} \mathbb C B_1^k B_2^l a = V \}/\mathrm{GL}(V) が成り立つ。
定理. \mathfrak M(n,1) は、次の\mathbb C^2のn点のヒルベルト概型 \operatorname{Hilb}^n(\mathbb C^2) = \{ I \subset \mathbb C[x,y] \mid \text{$I$は、イデアルで、商$\mathbb C[x,y]/I$ はベクトル空間として$n$次元である。}\} と自然に全単射を持つ。 実際、Iに対して、V = \mathbb C[x,y]/I, B_1, B_2 = x, y を掛ける写像、a = 1\pmod I とおけば、\mathfrak M(n,1)の点を定める。
逆に、B_1, B_2, a に対して、\mathbb C[x,y]\to V を f(x,y)\mapsto f(B_1,B_2)a とおくと、cotability より全射であり、I = \operatorname{Ker} が、\operatorname{Hilb}^n(\mathbb C^2)の点を定める。
例. ヒルベルト概形の点の例として
次に、\mathfrak M_0(n,1)を調べる。
定理. S^n\mathbb C^2\to \mathfrak M_0(n,1)を、(x_1,y_1,x_2,y_2,\dots,x_n,y_n)\pmod{S_n} に対して、 B_1 = \operatorname{diag}(x_1,\dots,x_n), \quad B_2 = \operatorname{diag}(y_1,\dots,y_n),\quad a = 0, \quad b = 0 と定義される写像は、同相写像である。
頂点iを固定し、\alpha_iを対応する座標ベクトル\in\mathbb Z^{Q_0}とし、箙多様体の積 \mathfrak M(\mathbf v - \alpha_i,\mathbf w)\times\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) を考える。
その中の部分集合 \mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)を、 \{ ([B^1,a^1,b^1], [B^2,a^2,b^2]) \mid \exists\xi: V^1\hookrightarrow V^2, B^2\xi = \xi B_1, a^2 = \xi a^1, b^2\xi = b^1 \} と定める。
注意.
よって、\operatorname{Ker}\tau/\operatorname{Im}\sigmaは、\mathfrak M(\mathbf v - \alpha_i,\mathbf w)\times\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)上のベクトル束で、その階数は \langle\mathbf v^2,\mathbf w\rangle + \langle\mathbf v^1,\mathbf w\rangle - \langle\mathbf v^1,C\mathbf v^2\rangle - 1 = \frac12\left(\dim\mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w) + \dim\mathfrak M(\mathbf v^2,\mathbf w) - 2 \# \{ h\in Q_1\mid o(h)=i=i(h) \}\right) となる。
そこで、\operatorname{Ker}\tau/\operatorname{Im}\sigmaの切断 s を s = (0 \oplus a^2 \oplus - b^1)\pmod{\operatorname{Im}\sigma} で定める。従って、 \operatorname{Zero}(s) = \mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)である。
実は、iをそれ自身に結ぶ辺がないときは、\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)は、\mathfrak M(\mathbf v - \alpha_i,\mathbf w)\times\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)のラグランジアン部分多様体であることが知られている。
事実. \pi: \mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)\to \mathfrak M_0(\mathbf v,\mathbf w) は、properである。
これは、幾何学的不変式論による定義を考えれば、自動的である。
Z(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w) = \mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w)\times_{\mathfrak M_0(\mathbf v^1+ \mathbf v^2,\mathbf w)}\mathfrak M(\mathbf v^2,\mathbf w) とおく。ただし、\mathfrak M_0(\mathbf v^1,\mathbf w)\to\mathfrak M_0(\mathbf v^1+ \mathbf v^2,\mathbf w) は、0で拡張する写像で、これを用いて、\mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w)\to \mathfrak M_0(\mathbf v^1+\mathbf v^2,\mathbf w)を定めた。 \mathfrak M(\mathbf v^2,\mathbf w)\to \mathfrak M_0(\mathbf v^1+ \mathbf v^2,\mathbf w) も同様である。
頂点 i を自分自身と結ぶ辺がない場合は、\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)は、Z(\mathbf v-\alpha_i,\mathbf v;\mathbf w) の部分集合になる。
\omega: \mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w)\times\mathfrak M(\mathbf v^2,\mathbf w) \to \mathfrak M(\mathbf v^2,\mathbf w)\times\mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w) を成分の入れ替え写像とする。これはZ(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w) をZ(\mathbf v^2,\mathbf v^1;\mathbf w)に移す。\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)の\omegaによる像を{}^\omega\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w) で表わす。
\mathbf wを固定し、 \prod'_{\mathbf v^1,\mathbf v^2} H_*(Z(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w)) を考える。ここで、\prod' は制限された直積で、各 \mathbf v^1を止めたときに有限個の \mathbf v^2 を除き H_*(Z(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w))成分が0になっているようなもの、そして\mathbf v^1, \mathbf v^2を置き換えたときに同じ条件が成り立っているようなものだけを許したものである。
一般には、無限個の\mathbf vについて、\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)が空集合でないので、このような技術的な取り扱いが必要であるが、本質的なものではない。しかし、この制限された直積では、合成積がwell-definedであり、また対角線の基本類の和\sum [\Delta_{\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)}]は、制限された直積の元として定まり、合成積に関して 1 を与える。
定理. 箙 Q=(Q_0,Q_1) は、頂点を自分自身に結ぶ辺(edge loop)は、まったく持たないと仮定する。 このとき、\mathbf U(\mathfrak g_Q)を C_Q をカルタン行列として定義されるKac-Moody Lie 環の普遍展開環とする。(定義は、すぐ下に述べる。)
写像 \Phi \Phi: \mathbf U(\mathfrak g_Q)\to \prod'_{\mathbf v^1,\mathbf v^2} H_*(Z(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w)) を \begin{align} \Phi(E_i) &= \sum_{\mathbf v^2} \pm [\mathfrak P_i(\mathbf v^2,\mathbf w)] \\ \Phi(F_i) &= \sum_{\mathbf v^1} \pm [{}^\omega\mathfrak P_i(\mathbf v^1,\mathbf w)] \\ \Phi(h) &= \sum_{\mathbf v} \sum_i (\dim W_i \Lambda_i - \dim V_i \alpha_i)(h) [\Delta_{\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)}]\end{align} によって定めると、代数の準同型になる。ここで \pm は、\mathbf v, \mathbf wに応じて適当に決める符号である。(技術的なので、省略する。)
なお、\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)が\mathfrak M(\mathbf v-\alpha_i,\mathbf w)\times\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)の中間次元の部分多様体であることから、\Phiの像は、中間次元の次数のところだけで閉じていることに注意しよう。
Kac-Moody Lie環の定義. c_Q = (a_{ij}) とする。Kac-Moody Lie環 \mathfrak g \equiv \mathfrak g_Q を定義するために、まず以下のものを用意する。
注. \mathfrak L(\mathbf v,\mathbf w)\subset\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) を、\piによる0の逆像として定義する。今の、edge loop がないという仮定のもとでは、\mathfrak L(\mathbf v,\mathbf w) はLagrangian 部分多様体(ただし、一般には特異点を持つ)になることが知られている。そのtop degreeのホモロジー群 \bigoplus_{\mathbf v} H_{\mathrm{top}}(\mathfrak L(\mathbf v,\mathbf w))は、上の\Phiを通じて\mathfrak gの表現になるが、可積分最高ウェイト表現で、最高ウェイトが \sum_i \dim W_i \Lambda_i になることが知られている。
以下、関係式のチェックの概要を説明する。
(0) まず [h, h'] = 0 (h,h'\in\mathfrak h)であるが、これはバカバカしく、[\Delta_{\mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w)}]\ast [\Delta_{\mathfrak M(\mathbf v^2,\mathbf w)}] = \delta_{\mathbf b^1,\mathbf v^2} [\Delta_{\mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w)}] から、直ちに分かる。
(1) 次に [h,E_i] = \alpha_i(h) E_i は、\Phi(h)の定義を見て、 \begin{align}& \Phi(h) [\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)] = \left(\sum_j \dim W_j \Lambda_j - (\dim V_j \alpha_j - \alpha_i) \right)(h) [\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)]\\ &[\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)]\Phi(h) = \left(\sum_j \dim W_j \Lambda_j - \dim V_j \alpha_j\right)(h) [\mathfrak P_i(\mathbf v,\mathbf w)] \end{align} と、hを左から掛けるときと右から掛けるときで、ベクトル空間の次元が i のところで、左から掛けるほうが1だけ少ないことを観察すればよい。[h, F_i] = - \alpha_i(h) F_i も同様である。この関係式は、むしろ \Phi(h) を定義するために、どのようにしたらよいかを考えると、ただちに出てくると思ったほうが良い。
(2) 次に、E_i, F_i が局所的にべき零であることを示す。すなわち、x を像の元としたときに E_i^N x, x E_i^N, F_i^N x, x F_i^N は、Nが十分に大きければ 0 になる。ただし、一般にはNは x に依存する。
これは、E_iもしくは F_i で次元が小さくなっていって \dim V_i < 0 となってしまう場合は、\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) が空集合になることから直ちに従う。一方、次元が増えていく方は、次の写像を考える。 \bigoplus B_h \oplus b_i : V_i \to \bigoplus_{h:o(h) = i} V_{i(h)} \oplus W_i この写像のkernelをS_i、その他の S_j を 0 とおくと、stability condition から S_i = 0 でなければならない。ところが、次元が増えていく方でも上の写像の像の方の次元は変わらないから、いつかは V_i の方の次元が像の次元を超えてしまい、単射にはならなくなる。これは、どこかから \mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) が空になることを意味する。
(3) 次に i\neq j のときに、[E_i, F_j] = 0 をチェックする。これは、[\mathfrak P_i]\ast [{}^\omega\mathfrak P_j]と、[{}^\omega\mathfrak P_j]\ast [\mathfrak P_i] の計算である。前者の合成積の計算に用いる箙多様体を\mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w)\times \mathfrak M(\mathbf v^2,\mathbf w)\times \mathfrak M(\mathbf v^3,\mathbf w) とする。[\mathfrak P_i]\ast [{}^\omega\mathfrak P_j] は、p_{13*}(p_{12}^*[\mathfrak P_i]\cap p_{23}^*[{}^\omega\mathfrak P_j])である。一方、これと比べるべき [{}^\omega\mathfrak P_j]\ast [\mathfrak P_i] は、第一成分と第三成分は同じで、第二成分だけが違うので、\mathfrak M(\mathbf v^1,\mathbf w)\times \mathfrak M(\mathbf v^4,\mathbf w)\times \mathfrak M(\mathbf v^3,\mathbf w)としよう。そうすると、p_{13*}(p_{14}^*[{}^\omega\mathfrak P_j]\cap p_{43}^*[\mathfrak P_i]) を計算することになる。
主張1. p_{12}^{-1}(\mathfrak P_i)\cap p_{23}^{-1}({}^\omega\mathfrak P_j)は横断的交叉である。 また、p_{14}^{-1}({}^\omega\mathfrak P_j)\cap p_{43}^{-1}(\mathfrak P_i)も横断的交叉である。
主張2. 同型写像 \varphi: p_{12}^{-1}(\mathfrak P_i)\cap p_{23}^{-1}({}^\omega\mathfrak P_j)\to p_{14}^{-1}({}^\omega\mathfrak P_j)\cap p_{43}^{-1}(\mathfrak P_i)であって、p_{13}\circ \varphi = p_{13} となるものが存在する。(左辺と右辺の p_{13} は違うものであることに注意。)
これらが示されれば、主張が従う。主張1の証明は略す。
主張2は、(V^1, V^3が固定されて)V^2が与えられたときに、i\neq j の仮定から、V^1, V^3は V^2の部分空間として異なることに注意して、V^4 = V^1\cap V^3 として定義すると、\dim V^4 = \dim V^1 - \alpha_j = \dim V^3 - \alpha_i になり、ほしい次元のベクトル空間になることに注意して、定義から線形写像 (B^1,a^1,b^1), (B^2,a^2,b^2), (B^3,a^3,b^3)が自然に V^4の線形写像 (B^4,a^4,b^4)を定めることを確かめればよい。逆に、V^4が与えられたときには、V^2 = V^1\oplus V^3/\Delta V^4 として、V^2と、その上の線形写像を定めることができる。これが逆写像を与え、(B^1,a^1,b^1),(B^3,a^3,b^3) は変えていないので、p_{13}\circ \varphi = p_{13}は自明である。
なお、この証明は、i=j であっても、対角線 \Delta \mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)の補集合 Z(\mathbf v,\mathbf v;\mathbf w)\setminus \Delta \mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)に制限すれば、成り立ち、特に次元を考えて、[E_i, F_i]が [\Delta \mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)] の一次結合であるところまでは分かる。原論文では、そのように議論していたが、以下ではあとの論文で用いた手法を紹介する。
(4)残った [E_i, F_i] = H_i をチェックするために、これは \mathfrak{sl}(2) の関係式と同じであるから、一般の箙多様体と A_1型の箙多様体、すなわちグラスマン多様体の余接束を関係させることを考える。グラスマン多様体の余接束の場合は、すでにGinzburgの結果により、\mathbf U(\mathfrak{sl}(2)) からの準同型写像が得られており、写像の定義の仕方は、基本的に同じであるから、そこでの関係式から、一般の箙多様体での関係式が導かれるような枠組みを作ればよい。
そのために、Z_{12}\subset M_1\times M_2 を(いつものように、)滑らかな多様体 M_1, M_2の積の中の閉集合とし、部分多様体 S_1, S_2\subset M_1, M_2を考え、Z_{12}\cap (S_1\times M_2) \subset S_1\times S_2を仮定する。つまり、Z_{12} の点の場合、第一成分が S_1に入っていれば、自動的に第二成分も S_2に入ると言う仮定である。このとき、Z_{12}^S = Z_{12}\cap (S_1\times M_2)とおく。
定義. c_{12}\in H_*(Z_{12}) と、 c^S_{12}\in H_*(Z_{12}^S) が compatible であるとは、 [\Delta_{S_1}]\ast c_{12} = c_{12}^S \ast [\Delta_{S_2}] が成り立つときをいう。ただし、\Delta_{S_1} は、S_1\times M_1の中のcorrespondenceと考え、従ってconvolutionは、S_1\times M_1, M_1\times M_2 の中の correspondence のconvolution として、 左辺が意味を持つ。一方、右辺では \Delta_{S_2} を S_2\times M_2の correspondence と考え、従って S_1\times S_2, S_2\times M_2 のcorrespondence の convolution として右辺が意味を持つ。両辺はともに、 S_1\times M_2 の中の correspondence である。ただし、その台は、作り方から Z_{12}\cap (S_1\times M_2) = Z_{12}^S であって、結果的には仮定からS_1\times S_2の中の correspondence になる。
命題. c_{12}\in H_*(Z_{12}) と、 c^S_{12}\in H_*(Z_{12}^S) が c_{23}\in H_*(Z_{23}) と、 c^S_{23}\in H_*(Z_{23}^S) それぞれ compatible であり、convolution c_{12}\ast c_{23} が定義できるように p_{13} の p_{12}^{-1}(Z_{12})\cap p_{23}^{-1}(Z_{23})への制限が proper であるとする。このとき c_{12}\ast c_{23} と c_{12}^S\ast c_{23}^S は compatible である。
証明は、convolution の推移律を何度も使って [\Delta_{S_1}]\ast (c_{12}\ast c_{23}) = ([\Delta_{S_1}]\ast c_{12})\ast c_{23} = (c_{12}^S\ast [\Delta_{S_2}])\ast c_{23} = c_{12}^S \ast ([\Delta_{S_2}]\ast c_{23}) = c_{12}^S \ast (c_{23}^S\ast [\Delta_{S_3}]) = (c_{12}^S\ast c_{23}^S)\ast [\Delta_{S_3}] と容易である。
例. M_1 = M_2, S_1 = S_2 のとき、\Delta_{M_1} と \Delta_{S_1} は、compatible である。
定義に従い、各自チェックすること。
この結果を用いるために、まず頂点 i を固定して、運動量写像 \mu: \mathbf M\to \bigoplus_j \mathrm{End}(V_j) の i 成分を \mu_i として、\mu_i^{-1}(0) と、\mu^{-1}(0) を比べることを考える。stability 条件については、まずはそれぞれ Quiver 全体で定義されるものを考えておく。すると、 \mu_i^{-1}(0)の中の閉部分多様体として \mu^{-1}(0)があることになる。
そこで、P_i を A_1型の箙多様体 \mu_i^{-1}(0) における Hecke correspondence とし、P_i^S を 箙多様体 \mu^{-1}(0) におけるHecke correspondenceとする。このとき [\mathfrak P_i] と [\mathfrak P_i^S]、また第一、第二成分を入れ替えた [{}^\omega\mathfrak P_i]と [{}^\omega\mathfrak P_i^S] も compatible である。
この結果の証明は難しくないが、例によって、ある写像の微分が全射であることを証明することに帰着されるので省略する。
せめて、\mathfrak P_i と \mathfrak P_i^S, {}^\omega \mathfrak P_i と {}^\omega \mathfrak P_i^Sについて仮定が成立していることのチェックをしておこう。すなわち ([B^1,a^1,b^1], [B^2,a^2,b^2])\in\mathfrak P_iのとき、\mu(B^1,a^1,b^1) = 0 と、\mu(B^2,a^2,b^2) = 0が同値であることを示せばよい。
仮定から、i成分については \mu_i(B^1,a^1,b^1), \mu_i(B^2,a^2,b^2) は共に0であることはよいので、他の j 成分について考察すればよいが、\xi: V^1\to V^2があって、(B^1,a^1,b^1) と (B^2,a^2,b^2) は\xiを通じて対応しているので、たとえば i\xrightarrow{h} j のとき、B^1_h B^1_{\overline{h}} = B^2_h \xi B^1_{\overline{h}}, B^2_h B^2_{\overline{h}} = B^2_h \xi B^1_{\overline{h}} に注意して、\mu_j(B^1,a^1,b^1) = 0と \mu_j(B^2,a^2,b^2) = 0 が同値であることがただちに従う。
また、証明を完結させるためには、(B^1,a^1,b^1), (B^2,a^2,b^2) が A_1 型の Hecke correspondence に入っていて、両者ともに A_1 についての stability conditon、すなわち \bigoplus_{o(h)=i} B^\alpha_h\oplus b^\alpha_i: V_i \to \bigoplus_{o(h)=i} V^\alpha_{i(h)} \oplus W_iは\alpha=1, 2の両者ともに単射であると仮定して、Qについての stability 条件が(B^1,a^1,b^1)について成り立つことと、(B^2,a^2,b^2) について成り立つことが同値であることを示す必要が出てくる。(B^2,a^2,b^2)がstableならば、その制限として (B^1,a^1,b^1)も stable であることは自明であるが、逆方向は自明ではない。stability 条件を壊すような S\subset V^2 があったとして、その \xi(V^1)との intersection S' = S\cap \xi(V^1) を取ると、(B^1,a^1,b^1) の stability 条件からS' = 0、特に S_j = 0 (j\neq i)が分かり、あとは\bigoplus_{o(h)=i} B^2_h\oplus b^2_i: V^2_i \to \bigoplus_{o(h)=i} V^2_{i(h)} \oplus W_iの単射性を用いて、S_i = 0も従う。
以上により、Qでの関係式の証明には、A_1での対応する関係式のチェックをおこなえばよいことが分かった。
次に、今までの構成をさらに精密化することを考える。まず、像の方で候補を見る。ホモロジー群 \prod' H_*(Z(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w))の次数が、中間次元のサイクルに限られていたこと、群の作用を考えていなかったことを鑑みて、\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) への群の作用を考えてみる。
すぐに思いつくのは、\mathbf Mへのスカラー倍による\mathbb C^\times-作用である。この作用は、シンプレクティック形式を、ウェイト 2 で倍することに注意しておく。
他の作用は、シンプレクティック形式を保つもので、まずはG_W = \prod_i \mathrm{GL}(W_i) である。
さらに、Jordan箙の場合の箙多様体として [B_1,B_2,a,b] に対して、[t B_1, t^{-1} B_2, a, b] (t\in T) という作用を考えれば、商空間 \mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) に自明でなく 作用する。実際、\mathbf v^1 = 1 のときに考えれば、\mathbb C^2\ni (x,y)に対して (tx, t^{-1}y)を作用させるものである。
A_1型の箙多様体について、同様の構成[a,b]\mapsto [t^{-1}a, t b] を行っても、\mathrm{GL}(V)の作用で吸収されてしまい、商空間である箙多様体への作用は自明になる。
より一般には、箙をグラフとみたときのサイクルに応じて、そのサイクルの一つの辺 h に対して B_h, B_{\overline{h}} を t, t^{-1} 倍する作用が定義される。
G_Wも含めて、これらの作用の積をG で表し、スカラー倍 \mathbb C^\times と合わせて、\mathbb G = G\times \mathbb C^\times と書く。この群に関する同変Borel-Mooreホモロジー群 \prod' H^{\mathbb G}_*(Z(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w)) は、以前よりも大きな環を与える。
一方で、生成元の方も次のように増やせる。
まず、箙多様体の構成 \mathfrak M = \mu^{-1}(0)^{\mathrm{st}}/G_V において、\mu^{-1}(0)^{\mathrm{st}} は \mathfrak M 上の G_V 主束であることに注意して、G_Vの表現 G_V\to GL(R)に応じて付随したベクトル束 \mu^{-1}(0)^{\mathrm{st}}\times_{G_V} R\to \mathfrak Mが定まることに注意する。表現として、たとえば G_V\to GL(V_i) が一番自然なもので、これは V_i が箙多様体の上で動いてベクトル束を定めていることを意味する。その同変チャーン類 c_l(V_i) は H^*_{\mathbb G}(\mathfrak M)の元を定める。またW_iは、商空間を取るときに固定されているので、自明なベクトル束と考えることができるが、G_Wの自明でない作用を持つので、同変チャーン類 c_l(W_i) は H^*_{\mathbb G}(\mathfrak M)の0でない元である。
また、Hecke対応 \mathfrak P_iの定義において、V^2/\xi(V^1)というベクトル空間は、1次元の空間であるが、これが \mathfrak P_i 上で動いていると考えると、\mathfrak P_i 上の直線束 \mathcal L_i が定まる。そこで、 c_1(\mathcal L_i)^l\cap [\mathfrak P_i]\in H_{2\dim\mathfrak P_i - 2l}^{\mathbb G}(\mathfrak P_i) が、先の \Phi(E_i), \Phi(F_i)の自然な拡張として定義される。l=0 のときが、もとのものである。
これらの元を使うと、箙 Q がedge loopを持たないという仮定のもとで、Kac-Moody Lie環 \mathfrak g_Qに付随した Yangian Y(\mathfrak g_Q) とよばれる非可換環から \prod' H^{\mathbb G}_*(Z(\mathbf v^1,\mathbf v^2;\mathbf w))への準同型写像が定義される。Yangianの定義関係式は省略するが、ウェイト2のスカラー倍の作用を忘れて G同変ホモロジー群に変えると、 \mathfrak g_Qのカレント代数 \mathfrak g_Q\otimes\mathbb C[z]となる。ここで、上のc_1(\mathcal L_i)^l\cap [\mathfrak P_i]が、E_i\otimes z^l, F_i\otimes z^l に対応する。
この結果は、中島の同変 K 群における同様の構成を踏まえてなされた、Varagnoloの結果であるが、\mathfrak{sl}(2) = A_1への帰着の部分は、すでに紹介したとおりで、あとは \mathfrak{sl}(2)の場合には、5月23日の演習問題で使った、点の同変ホモロジーへの表現の中で関係式をチェックすればよい。(この表現はfaithfulであることが知られている。)
次にJordan箙に対する箙多様体として、Hilbert概形の場合を考える。細かい計算 (最近なされた)については言及しないが、その前段階として、トーラス作用を考える。T^2 = (\mathbb C^\times)^2の\mathbb C^2への作用を (x,y)\mapsto (t_1 x, t_2 y) で定める。上で導入した作用 (x,y)\mapsto (ts x, t^{-1}sy) の変数を変換したものである。
補題. 上の作用から誘導される \mathrm{Hilb}^k(\mathbb C^2) への T^2への固定点は、単項式で生成されるイデアルであり、k個の箱からなるYoung図形と対応する。
証明は易しい。多項式の全体 \mathbb C[x,y] を T^2作用に関して固有空間分解すると、固有空間は単項式 x^m y^n で張られ、固有値は t_1^m t_2^n である。特に、(m,n)\neq (m',n') ならば固有値は異なる。従って、\mathbb C[x,y] の部分空間が T^2作用で保たれるためには、単項式の空間の直和で書けていなければならない。さらに、これがイデアルになることを考えれば、Young図形と対応することは明らかである。
特に、\mathrm{Hilb}^k(\mathbb C^2) のオイラー数は、kの分割数であることが従う。
さらに、同変ホモロジーで合成積を計算するためには、固定点における接空間の同変オイラー類の計算が必要である。これは、いろいろな計算の仕方が知られているが、次の公式が成り立つ。
補題. ヤング図形\lambdaの箱 s に対して、その leg length, arm length を l(s), a(s) で表す。このとき接空間の同変オイラー類は \prod_{s\in\lambda} (\varepsilon_1 (l(s)+1) - \varepsilon_2 a(s))(-\varepsilon_1 l(s) + \varepsilon_2(a(s)+1)) で与えられる。ただし、\varepsilon_1, \varepsilon_2 は、t_1, t_2 に対応する、同変コホモロジー環の生成元である。
アファイン・グラスマンを \mathrm{Gr}_G = G_{\mathcal K}/G_{\cO} と定義する。実は、この空間は ind-scheme の構造を持つことが知られているが、とりあえず集合として扱い、次第にトポロジーを入れていく。
T を Gの極大トーラスとする。G=GL(n) のときは、Tは対角行列の全体である。
補題. T作用に関する固定点集合\mathrm{Gr}_G^Tは、\mathrm{Gr}_Tである。
Y = \mathrm{Hom}_{\mathrm{grp}}(\mathbb C^\times,T) をコウェイト格子という。以下、すぐに見るように重要な役割を果たす。\lambda\in Y は、\mathbb C^\times から Tへの写像とみなせるので、T_{\mathcal K} の点と考え、包含写像 T_{\mathcal K}\to G_{\mathcal K} と、射影 G_{\mathcal K}\to \mathrm{Gr}_G を通じて、\mathrm{Gr}_G の点を定める。これも \lambdaで表わす。
事実.(アファイン・グラスマン多様体のSchubert胞体分割)
アファイン・グラスマン多様体のときに戻る。\mathbb C^\timesのループ・ローテーションによる作用 \mathbb C^\times\ni t; [g(z)] \mapsto [g(tz)] を考える。この作用に関する固定点集合は、based ループ空間 \Omega K = \{ f(z) | f(1) = e\} で考えれば、f(tz) = f(t)f(z) となって、\mathrm{Hom}_{\mathrm{grp}}(S^1,K) の元であることを意味する。K の共役作用によって、対角化し、dominant coweight \lambda を固定点集合の連結成分の中から取ってくると、\mathrm{Hom}_{\mathrm{grp}}(S^1,K) は、部分旗多様体 G/P_\lambda と同型になる。
G=Tのときに考えると、T_{\cO} の T_{\mathcal K}/T_{\cO} への作用は、Tが可換であることから自明である。したがって、軌道分解は T_{\mathcal K}/T_{\cO} の分解に他ならず、今の場合、\mathrm{Gr}_T = \mathrm{Hom}_{\mathrm{grp}}(\mathbb C^\times, T) となる。
また、GL(n) の閉部分群 G についても、同じ S^{\mathbb C}(n,N)を用いて定義できる。
この拡張は、自明であり、H^{GL(n)}_*(X) = H^{U(n)}_*(X) が成り立つ。たとえば、 S^{\mathbb C}(n,N)/GL(n), S(n,N)/U(n) は、ともにグラスマン多様体 G(k,n) であるから、H^*_{GL(n)}(\mathrm{pt}) = H^*_{U(n)}(\mathrm{pt}) がチェックできる。
\mathcal Tの閉部分集合として \mathcal R = \{ [g,s] = [g(z), s(z)] \in\mathcal T \mid g(z)s(z)\in\mathbb N_{\cO}\} と定義する。g(z) は、原点に極を持つので、g(z)s(z) は、s(z) が極を持たなかったとしても、極を持ちうる。その極がない、というのが、条件g(z)s(z)\in\mathbf N_{\cO}の意味である。\mathcal R を variety of triple とよぶ。(pair g, s にも関わらず、triple とよぶのは、もともとの正しい定義が triple であるからによる。) また、\mathcal R = \{ ([g],s')\in \mathrm{Gr}_G\times\mathbf N_{\cO} \mid g^{-1}s'\in\mathbf N_{\cO}\} という表示もよく用いる。s' = gs という対応で、もとの表示と一致する。
射影 \mathcal R\to\mathrm{Gr}_G を \pi で表わす。[g]\in\mathrm{Gr}_G に対して、逆像\pi^{-1}([g])は、g\mathbf N_{\cO}\cap \mathbf N_{\cO} で、ベクトル空間である。ただし、gを動かすと、その`次元’は変化してしまうので、ベクトル束ではない。ここで、g\mathbf N_{\cO}\cap \mathbf N_{\cO}は無限次元であるから、次元が変化するといっても注意が必要であるが、g\mathbf N_{\cO}/g\mathbf N_{\cO}\cap \mathbf N_{\cO}を考えると、これは \mathcal T と \mathcal R の差を比較するもので、有限次元であることから、その次元が変化していることを意味している。
定義が導入された(安直な)理由を説明する。\mathcal T\to \mathbf N_{\mathcal K} を [g,s] に対して、gsを対応させる写像とする。この写像の逆像は、\mathrm{Gr}_G の閉部分集合であって、\mathrm{Gr}_Gが旗多様体の類似であったことを思い出すと、これは固有写像であり、ファイバー積 \mathcal T\times_{\mathbf N_{\mathcal K}}\mathcal Tと、同変ホモロジー H^{G_{\mathcal K}}_*(\mathcal T\times_{\mathbf N_{\mathcal K}}\mathcal T) を考えて、convolution algebraを定義ができるのではないか、と期待ができる。しかし、この定義は、無限次元度が高く、そのまま正当化することをせず、G_{\mathcal K}\times_{G_{\cO}}\mathcal R = \mathcal T\times_{\mathbf N_{\mathcal K}}\mathcal T (ただし、対応は [g_1, [g_2,s]]\mapsto ([g_1, g_2s], [g_1g_2,s]) で与えられる)と、同変ホモロジー群のinduction H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R) = H^{G_{\mathcal K}}_*(\mathcal T\times_{\mathbf N_{\mathcal K}}\mathcal T)を用いて、前者に有限次元近似を適用することで、定義を行った。
\mathcal R は、次の二つの理由で無限次元である。
2. を扱うために、\mathcal T の truncated 版 G_{\mathcal K}\times_{G_{\cO}}\mathbf N_{\cO}/z^d \mathbf N_{\cO} を考えてみる。これは、有限階数のベクトル束である。この中で \mathcal Rのtruncated版を同様に考えることができ、各 [g] を止めて、もとのものとの比較写像 g \mathbf N_{\cO}/g\mathbf N_{\cO}\cap \mathbf N_{\cO}\to g (\mathbf N_{\cO}/z^d\mathbf N_{\cO})/g(\mathbf N_{\cO}/z^d\mathbf N_{\cO})\cap (\mathbf N_{\cO}/z^d\mathbf N_{\cO}) を考えると、これはdが十分に大きければ、同型である。(gの極の位数は有限であるから、g\mathbf N_{\cO} が \mathbf N_{\cO} に入るかどうかは、\mathbf N_{\cO} の展開の最初の方の項だけで決まってしまう条件である。)よって、\overline{\mathrm{Gr}_G^\lambda} の逆像 \mathcal R_{\le\lambda} に制限すると、dを動かしていくと、十分に大きな d からは、ベクトル束の射影による引き戻し写像がホモロジー群の同型写像を誘導し、H_*(\mathcal R_{\le\lambda})がdの取り方によらずに well-defined になることを意味する。また、\mathcal R_{\le\lambda}に G_{\cO} は有限次元の商を通じて作用し、同変ホモロジー群を考えるときには、商によらずに同型になることも分かり、H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R_{\le\lambda}) が well-defined となる。その極限としてH^{G_{\cO}}_*(\mathcal R) が定義される。
ただし、引き戻し写像を使うときに、ホモロジーの次数を動かす必要性から、次数は\mathcal Tとの比較で定めないといけない。たとえば、coweight 0 におけるファイバーは \mathcal R, \mathcal Tともに同じであるが、その基本類の次数は0であると約束されている。このように定めるので、一般に次数は、プラスにもマイナスにもなりうる。
\mathcal R_{<\lambda} を\lambdaよりも真に小さな coweightsの G_{\cO}-軌道の和の逆像とする。これは、\mathcal R_{\le\lambda} の閉部分集合で、補集合は \mathcal R_\lambda = \pi^{-1}(\mathrm{Gr}_G^\lambda)である。このとき、射影 \mathcal R_\lambda\to \mathrm{Gr}_G^\lambda がベクトル束であること、\mathrm{Gr}_G^\lambda\to G/P_\lambda がやはりベクトル束であること、H^G_*(G/P_\lambda) = H^{P_\lambda}_*(\mathrm{pt}) が奇数次のホモロジーを持たないことから、H^*_{G_{\cO}}(\mathcal R_\lambda) がやはり奇数次のホモロジーを持たない。また H^*_G(\mathrm{pt}) 上自由であることもH^G_*(G/P_\lambda)がそうであることから分かる。すると、帰納法により空間対の長完全列は 0\to H_*^{G_{\cO}}(\mathcal R_{<\lambda})\to H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R_{\le\lambda}) \to H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R_\lambda) \to 0 という短完全列に分裂し、すべて奇数次のところで消えていることも従う。
定理.
次の図式を考える。 \begin{array}{ccccccc} \mathcal T\times \mathcal R & \xleftarrow{p} & G_{\mathcal K}\times \mathcal R & \xrightarrow{q} & G_{\mathcal K}\times_{G_{\cO}}\mathcal R & \xrightarrow{m} & \mathcal T\\ \cup && \cup && \cup && \cup\\ \mathcal R\times \mathcal R & \xleftarrow{} & p^{-1}(\mathcal R\times\mathcal R) & \xrightarrow{} & qp^{-1}(\mathcal R\times\mathcal R)& \xrightarrow{} & \mathcal R\end{array} ただし、p(g_1, [g_2,s]) = ([g_1, g_2s], [g_2,s]), q(g_1,[g_2,s]) = [g_1,[g_2,s]], m([g_1,[g_2,s]]) = [g_1g_2, s] である。[\ ,\ ] は群作用による同値類を表わす。上の図式において、\mathcal R\times\mathcal Rから出発すると、g_1g_2s\in\mathbf N_{\cO} であることから、一番右で、\mathcal Rに入ることに注意されたい。
ここで、convolution productを c_1 \ast c_2 = m_*(q^*)^{-1} p^*(c_1\otimes c_2) により定義する。mはproperであるから、m_*は定義され、qは、G_{\cO} による商であるから、H^{G_{\cO}}_*(qp^{-1}(\mathcal R\times\mathcal R))\xrightarrow{q^*} H^{G_{\cO}\times G_{\cO}}(p^{-1}(\mathcal R\times\mathcal R))は同型であり、(q^*)^{-1} は定義されている。よって、上の定義で非自明なのは、p^* の定義である。まず、 p^*: H^{G_{\cO}}_*(\mathcal T)\otimes_{\mathbb C} H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)\to H^{G_{\cO}\times G_{\cO}}_*(G_{\mathcal K})\otimes_{H^*_G(\mathrm{pt})} H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R) がwell-definedであることを見よう。第二成分 H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)については、G_{\mathcal K}\times\mathcal R\to \mathcal Rが単なる射影であるから、 H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)\to H^*_{G_{\cO}\times G_{\cO}}(G_{\mathcal K})\otimes_{H^*_G(\mathrm{pt})} H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R) が定義されていることに注意しよう。テンソル積の第一成分が、ホモロジーでなくコホモロジーであることがポイントである。一方、第一成分のH^{G_{\cO}}_*(\mathcal T)については、pの第一成分がG_{\mathcal K}\times\mathcal R\to G_{\mathcal K}\times\mathbf N_{\cO}\to G_{\mathcal K}\times_{G_{\cO}}\mathbf N_{\cO} = \mathcal Tと分解されることに注意して、H^{G_{\cO}}_*(\mathcal T)\xrightarrow{\cong} H^{G_{\cO}\times G_{\cO}}_*(G_{\mathcal K}\times \mathbf N_{\cO}) \xrightarrow[PD]{\cong} H^{G_{\cO}\times G_{\cO}}_*(G_{\mathcal K})\otimes_{H^*_G(\mathrm{pt})} H^*_{G_{\cO}}(\mathbf N_{\cO})\xrightarrow{} H^{G_\cO\times G_{\cO}}_*(G_{\mathcal K})\otimes_{H^*_G(\mathrm{pt})} H^*_{G_{\cO}}(\mathcal R) となることに注意する。ここで、真ん中のPDは、\mathbf N_{\cO} が滑らかであることから、Poincare 双対を用いた。ここで、ホモロジー群からコホモロジー群に移ると、引き戻し写像が定義されることが、ミソである。
実際にconvolution積の定義に必要なものは、p^*: H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)\otimes_{\mathbb C} H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)\to H^{G_{\cO}\times G_{\cO}}_*(p^{-1}(\mathcal R\times\mathcal R)) なので、もうひと工夫が必要であるが、これはconstructible sheafの導来圏の理論(Kashiwara-Schapira参照)を用いて、dualizing complex \omega により、p^*\omega_{\mathcal T\times\mathcal R}\cong \omega_{G_{\mathcal K}\times\mathcal R} を上と同様の議論で構成し、これに関する pull-back with support を考えればよい。この部分の議論は、完全に初等的とはいえないが、雑にいうと、上で定めた p^*: H^{G_{\cO}}_*(\mathcal T)\otimes_{\mathbb C} H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)\to H^{G_{\cO}\times G_{\cO}}_*(G_{\mathcal K})\otimes_{H^*_G(\mathrm{pt})} H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)を台付きで考えたものととらえればよい。
定理1. H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R) は、単位元 [\mathcal R_0] (=\pi:\mathcal R\to\mathrm{Gr}_G の原点 0 = [z^0]\in\mathrm{Gr}_Gにおけるファイバーの基本類)をもつ、次数付き結合的代数である。
ただし、次数は、ホモロジー次数である。
この証明は、自明ではないが、convolution product の結合律の証明の、標準的な議論である。
一方で、次の定理は驚きである。
定理2.
この積は可換である。
convolution product で作られる代数は、今まで見てきたように非可換なものであり、だからこそ表現論にとって興味深い対象を与えてきた。可換環の表現論は、表現論の立場からは興味がない対象であるから、可換環が convolution でできてしまうのは、想定外のことである。
にも関わらず、すぐに見るように、非可換変形をパラレルに作ることができ、そうすると非可換なものと可換なものが同時にできるので、いろいろと調べやすくなり、見通しがよいのがこの構成法の特徴になっている。
定理2の証明は、計算によるものであり、あとで与えるが、いささか人工的であることは否めない。
定義. \mathrm{Spec} H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R) をクーロン枝といい、\mathcal M_C \equiv \mathcal M_C(G,\mathbf N) であらわす。
これは、もともと理論物理学の超対称性ゲージ理論の研究であらわれたクーロン枝を数学的に厳密に定義しようとして、発見されたものである。
あとで証明するように、H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)は有限生成であって、整なので、そのspectrumは既約なアファイン多様体(ただし一般には特異点はもつ)になる。また、これは証明することはできないが、正規であることも示されている。
以下、この\mathbb C^\timesに関する点の同変コホモロジー H^*_{\mathbb C^\times}(\mathrm{pt}) の標準的な生成元を \hbar であらわす。すなわち、H^*_{\mathbb C^\times}(\mathrm{pt}) = \mathbb C[\hbar]である。すぐに下にみるように、これは量子化の変数とみなせ、プランク定数の記号 \hbarをもちいることは自然である。
上の非可換環を用いると、H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R) には、ポアソン括弧が次のようにして定義される。 \{ f,g \} := \left.\frac{[\tilde f,\tilde g]}{\hbar}\right|_{\hbar = 0} ここで、\tilde f, \tilde g は、\hbar=0でf, gに一致するようなH^{G_{\cO}\rtimes\mathbb C^\times}_*(\mathcal R)への持ち上げで、H^{G_{\cO}\rtimes\mathbb C^\times}_*(\mathcal R)が先週と同じ議論で、H^*_{G\times\mathbb C^\times}(\mathrm{pt})上で自由なことから存在が保証される。さらに、\{f, g\}は持ち上げ\tilde f, \tilde gのとり方にはよらず、well-definedである。
おそらく示す時間はないが、\{\ ,\ \} は、\mathcal M_C のregular locus ではsymplectic structureを定めることが知られている。
命題. H^*_{G\times\CC^\times}(\mathrm{pt})\to H^*_{G\times\CC^\times}(\mathrm{pt})\cdot 1\subset H^{G_{\cO}\rtimes\CC^\times}_*(\mathcal R) は、可換な部分代数である。
系. H^*_G(\mathrm{pt})\subset H^{G_\cO}_*(\mathcal R)は、Poisson 可換な部分代数である。
従って、\varpi: \mathcal M_C\to \mathrm{Spec} H^*_G(\mathrm{pt}) を誘導する。 G=U(n)の場合に説明したが、H^*_G(\mathrm{pt}) は、\CC[\mathfrak t]^W である。ただし、\mathfrak t はGの極大トーラスTのリー環であり、Wはワイル群である。よって、\mathrm{Spec} H^*_G(\mathrm{pt}) = \mathfrak t/Wである。右辺は、ベクトル空間 \CC^\ell (\ell はGの階数)であることはよく知られている。G=GL(n)のときは、対称多項式の全体の環が、初等対称多項式の多項式環であることによる。 あとで示すように、 \begin{array}{ccc} \mathcal M_C & \dashrightarrow & (\mathfrak t\times T^\vee)/W\\ \varpi\downarrow & & \downarrow{p_1} \\ \mathfrak t/W & = & \mathfrak t/W\end{array} という図式を可換にする双有理写像 \mathcal M_C\dashrightarrow (\mathfrak t\times T^\vee)/W が構成される。ここで、T^\vee はTの双対トーラスである。特に、\mathcal M_Cの次元は、2\ell = 2\dim Tであり、\varpiの一般のファイバーはT^\veeであり、\varpiの各成分はPoisson 可換である。これは、Liouvilleの意味で\varpiが可積分系であることを意味する。
命題. \iota: \mathcal R\to\mathcal Tを包含写像、z: \mathrm{Gr}_G\to \mathcal Tを0切断の包含写像とする。このとき H^{G_{\cO}}_*(\mathcal R)\xrightarrow{z^*\iota_*}H^{G_\cO}_*(\mathrm{Gr}_G) は、代数の準同型であり、かつ単射である。
証明. 図式 \begin{array}{ccccccc} \mathcal T\times \mathrm{Gr}_G & \xleftarrow{p} & G_{\mathcal K}\times \mathrm{Gr}_G & \xrightarrow{q} & G_{\mathcal K}\times_{G_{\cO}}\mathrm{Gr}_G & \xrightarrow{m} & \mathrm{Gr}_G\end{array} を考える。convolution productを同様に定義すると\ast: H^{G_\cO}_*(\mathcal R)\otimes H^{G_\cO}_*(\mathrm{Gr}_G)\to H^{G_\cO}_*(\mathrm{Gr}_G)が定まり、 H^{G_\cO}_*(\mathrm{Gr}_G) が H^{G_\cO}_*(\mathcal R)加群であることが示される。(積の結合性の証明と同じ)このとき、H^{G_\cO}_*(\mathrm{Gr}_G)の単位元 1 を右からかけることが、z^*\iota_* と等しいことは容易に観察されるので、あとはfomral な計算で、最初の主張が示される。
第二の主張については、z^* は、Thom同型だから \iota_* について証明すればよいが、H^{G_\cO}_*(\ ) = H^{T_\cO}_*(\ )^W と、局所化定理 \begin{array}{ccc} H^{T_\cO}_*(\mathcal R^T)\otimes_{H^*_T(\mathrm{pt})}\mathrm{Frac} & \xrightarrow{\cong} & H^{T_\cO}_*(\mathcal R)\otimes_{H^*_T(\mathrm{pt})}\mathrm{Frac} \\ \downarrow & & \downarrow\iota_* \\ H^{T_\cO}_*(\mathcal T^T)\otimes_{H^*_T(\mathrm{pt})}\mathrm{Frac} & \xrightarrow{\cong} & H^{T_\cO}_*(\mathcal T)\otimes_{H^*_T(\mathrm{pt})}\mathrm{Frac}\end{array} とH^{T_\cO}_*(\mathcal R) が H^*_T(\mathrm{pt})上自由であることを合わせて、 左側の下向き矢印が同型であることをいえばよいが、これは\mathcal R^T = \mathcal T^T = \mathrm{Gr}_T\times (\mathbf N^T)_{\cO} から明らかである。
例1. \mathbf N = 0 とする。このとき、\mathcal T = \mathcal R = \mathrm{Gr}_G である。よって、 H^{G_\cO}_*(\mathcal R) = \bigoplus_\lambda H^{\CC^\times}_*(\{ \lambda\}) = \bigoplus_\lambda \CC[w] r^\lambda である。ただし、H^*_{\CC^\times}(\mathrm{pt}) の生成元をwであらわした。convolution product の図式を書いてみると、4つの空間はすべて離散的な点とホモトピックで、\mathbb Z\times\mathbb Z\to \mathbb Z (\lambda,\mu)\mapsto \lambda+\mu という写像の押し出し写像に他ならない。よって r^\lambda r^\mu = r^{\lambda+\mu} が成立する。wは、今の場合は、空間に自明に働く G の同変コホモロジーの元であるから、積は w について双線形になる。したがって H^{G_\cO}_*(\mathcal R) \cong \CC[w,x^\pm] である。ただし、x = r^1, x^{-1} = r^{-1} とおいた。したがって、\mathcal M_C = \CC\times\CC^\timesである。また、\varpiは、第一成分への射影である。
例2. G=\CC^\timesで、\mathbf N をGのウェイト1の1次元表現とする。このとき \mathcal R = \bigsqcup_\lambda z^\lambda\mathbf N_\cO\cap \mathbf N_\cO = \bigsqcup_{\lambda\ge 0} z^\lambda\cO \sqcup \bigsqcup_{\lambda < 0} \mathcal O となっている。\lambdaが正か負かで、z^\lambda\cO\cap\cO が、\cO か z^\lambda\cO に場合分けされることに注意しよう。そこで例1の場合の\lambdaにおけるファイバーの基本類を{}'r^\lambdaと表わして、今の場合のファイバーの基本類と比較すると r^\lambda = \begin{cases} {}' r^\lambda & \text{if $\lambda\ge 0$} \\ w^{-\lambda}\, {}'r^\lambda & \text{if $\lambda < 0$} \end{cases} となる。これは、Thom同型で {}'r^\lambda を\mathcal T におけるファイバーの基本類と思い直すことにより、\mathcal T/\mathcal R の(-\lambda)次元分だけ、\lambda < 0 の場合に、wでカットすることによる。 先の命題により、z^*\iota_* が代数の準同型であったから、{}'r^\lambda {}'r^\mu = '{}r^{\lambda+\mu} を用いて、計算すると H^{G_\cO}_*(\mathcal R) = \CC[r^1, r^{-1}, w]/ (r^1 r^{-1} = w) = \CC[x,y] となる。ここで、x = r^1, y=r^{-1} である。したがって、\mathcal M_C = \CC^2となる。
例2'. G=\CC^\times で、\mathbf N = \CC をウェイト N の表現とする。このとき、同じ計算で H^{G_\cO}_*(\mathcal R) = \CC[x, y, w]/ (x y = w^{|N|}) となる。これは、A_{|N|-1}型の単純特異点とよばれるもので、箙多様体としても構成することができる。
例2''. G=\CC^\timesで、\mathbf N = \CC^N で、ウェイト1の表現のN個の直和とする。同じ計算をすると、上の例2''と全く同じであることが分かる。
より一般にG=\CC^\timesのときは、出てくるのはxy = w^N (N=0,1,2,\dots)しかないことが同じやり方で分かる。N=0は最初の\CC\times\CC^\timesである。
例1'. より一般に G = T とトーラスで、表現 \mathbf N = 0 と取る。上のものの直積になるが、intrinsic な記述をすると、\mathcal M_C = \mathfrak t\times T^\vee となる。ここで、\mathfrak t は、TのLie環であり、T^\veeはTの双対トーラスである。実際、H^*_T(\mathrm{pt}) = \CC[\mathfrak t]であるから、第一成分はこれでよい。一方、第二成分は上の r^\lambda の \lambda をコウェイト \CC^\times\to T として一般化され、これは双対トーラスの定義により、T^\veeのウェイト T^\vee\to \CC^\times と思うことができる。これにより r^\lambdaはT^\vee上の関数と思うのが自然になるので、上のようにT^\veeが自然に現れる。また、\mathfrak t\times T^\veeは、\operatorname{Lie}T^\vee = \mathfrak t^* であることから、T^\veeの余接束と見ることができる。そうすると、symplectic form が自然に定まり、あとで計算する量子化ともcompatibleである。
もっとより一般に、G=Tトーラスの場合には、表現\mathbf Nが与えられると、\CC[\mathcal M_C]の線形空間としての基底が、\bigoplus \CC[\mathfrak t] r^\lambda から作られ、積の構造定数が、\mathbf Nのウェイト空間の次元の情報から、具体的に与えられることが、上と同じやり方で証明される。(ただし、このやり方で空間が分かりやすいか、というとそれはまた別の問題である。)
量子化されたCoulomb枝の場合
例1.
G=\CC^\times, \mathbf N = 0の場合
r^\lambda r^\mu = r^{\lambda+\mu} は同様に成り立つ。
補題.
r^\lambda w - w r^\lambda = \lambda \hbar r^\lambda
が成り立つ。
証明.
w は、点z^0\in\mathrm{Gr}_G上に定義されたの自明な直線束L で, G\times\CC^\times_{\mathrm{rot}} の表現として、ウェイトが(1,0)のもののc_1(L) と理解する。r^\lambda w = r^\lambda c_1(L) を計算するためには、Lがconvolution productのあとで、点z^\lambda上のどのような直線束になっているかを理解すればよい。上の図式のG_{\mathcal K}\times\mathrm{Gr}_GからG_{\mathcal K}\times_{G_\cO} \mathrm{Gr}_G 上の直線束に降下するときに、自明化を [g_1, [g_2], a] \mapsto g_1g_2 a (a\in L)と取れば分かるように、g_1=z^\lambdaへの\CC^\times_{\mathrm{rot}}の作用が、twistされ、ウェイトが(1,\lambda)になる。したがって、r^\lambda w = w r^\lambda + \lambda \hbar r^\lambdaとなる。
上の関係式から、r^\lambda は、f\in\CC[w] に働く\hbar-差分作用素 f(w) \mapsto f(w+\lambda\hbar) と理解するのが自然である。そうすると、H^{G_\cO}_*(\mathrm{Gr}_G)は、\CC[w]に働く、多項式差分作用素の環に他ならないことが従う。
例2. G=\CC^\times, \mathbf N=\CC (ウェイト1)のとき
可換なときと同様に {}'r^\lambdaとr^\lambdaを導入して、
r^\lambda = \begin{cases} {}'r^\lambda & \text{if $\lambda\ge0$} \\ (w - \hbar)(w-2\hbar)\cdots (w+\lambda\hbar) & \text{if $\lambda < 0$}\end{cases}
を観察すればよい。w^{-\lambda}が上のような積に変わったのは、z^\lambda\cO/\cOに\CC^\times_{\mathrm{rot}}がnontrivialに作用することによる。特に、[r^1, r^{-1}] = \hbar \operatorname{id} が従う。可換のときのように、x=r^1, y^1 と書き直すと、[x,y] = \hbar\operatorname{id} であり、y = -\hbar\frac{d}{dx} とxに関する微分作用素とみなせる。
これを\mathcal M_C = \mathrm{Spec }H^{G_\cO}_*(\mathcal R)に移すと、\mathbb Z\times\pi_1(G)のポントリャーギン双対 (\mathbb Z\times\pi_1(G))^\wedge = \mathrm{Hom}_{\mathrm{grp}}(\mathbb Z\times\pi_1(G),\CC^\times)が、\mathcal M_Cに働く、ということになる。これは、つまりは、座標環 \CC[\mathcal M_C] が、ポントリャーギン双対の双対\mathrm{Hom}_{\mathrm{grp}}((\mathbb Z\times\pi_1(G))^\wedge,\CC^\times) により、ウェイト空間分解するということであるが、ポントリャーギン双対の双対が、自分自身 \mathbb Z\times\pi_1(G)に等しいことから、そのような枠組みになる。
複素半単純群Gについては、\pi_1(G)は有限群になり、\pi_1(G)^\wedgeも有限群になるので、この考察はあまりありがたみがない。面白い状況を作るのは、G = \CC^\times や G = \mathrm{GL}(n)の場合で、その場合は\pi_1 = \mathbb Zで、ポントリャーギン双対は \CC^\timesとなる。
箙多様体の定義のときにあったように、Q=(Q_0,Q_1)を箙とし、V, WをQ_0-gradedベクトル空間として、 \mathbf N = \bigoplus_{h\in Q_1}\mathrm{Hom}(V_{o(h)}, V_{i(h)})\oplus\bigoplus_{i\in Q_0} \mathrm{Hom}(W_i,V_i), \qquad G_V = \prod \mathrm{GL}(V_i) を考える。\mathbf Nは、G_Vの表現であるので、クーロン枝 \mathcal M_C\equiv \mathcal M_C(G_V,\mathbf N) を考えることができる。このとき、\pi_1(G_V) = \mathbb Z^{Q_0} であり、そのポントリャーギン双対\pi_1(G_V)^\wedgeが、クーロン枝に作用する。一方、箙多様体の定義の際に、安定性条件として \chi: G_V\to \CC^\times を選んで、\mu^{-1}(0)/\!\!/_{\chi} G_Vを、\mathrm{Proj}(\bigoplus_{n\ge 0} \CC[\mu^{-1}(0)]^{G,\chi^n}) として定義することができる。このとき \pi_1(\chi): \pi_1(G_V)\to\pi_1(\CC^\times) が誘導され、ポントリャーギン双対に \pi_1(\chi)^\vee: \pi_1(\CC^\times)^\wedge = \CC^\times \to \pi_1(G_V)^\wedge が自然に定まることに注意すると、箙多様体の定義に現れる\chi: G_V\to \CC^\timesは、クーロン枝側では作用するトーラスの中の1-PS \CC^\times\to\pi_1(G_V)^\wedgeに対応することが観察できる。
箙多様体と、対応するクーロン枝は、定義もまったく異なる空間であり、一見何の関係もないが、調べていくと、不可思議な関係で結ばれていることが分かってくる。箙多様体を定義するときに使う \chi: G_V\to \CC^\times が、クーロン枝に作用するトーラスの1-PS \CC^\times\to\pi_1(G_V)^\wedgeになることは、このような不可思議な関係の例であり、より深い不可思議な関係は、あとに紹介される。
G\triangleleft\tilde G とし、\tilde G/G = T_Fはトーラスであるとする。さらに、Gの表現 \mathbf N が、\tilde Gの表現に持ち上がっていると仮定する。
このような状況のもとで、より大きな群 \tilde G に関する、Coulomb 枝 \mathcal M_C(\tilde G,\mathbf N) と、もとの群に関するCoulomb枝 \mathcal M_C(G,\mathbf N) を考えることができる。
一方、T_F^\vee = \pi_1(T_F)^\wedge \to \pi_1(\tilde G)^\wedge を通じて、\mathcal M_C(\tilde G,\mathbf N) に T_Fの双対トーラスT_F^\veeが作用することに注意する。
命題. \mathcal M_C(G,\mathbf N) は、\mathcal M_C(\tilde G,\mathbf N) のT_F^\veeの作用に関する hamiltonian 簡約化である。
Hamiltonian簡約は、運動量写像 \mu_{T_F^\vee}: \mathcal M_C(\tilde G,\mathbf N)\to \mathrm{Lie}(T_F^\vee)^* = \mathfrak t_F により、\mu_{T_F^\vee}^{-1}(0)/\!\!/T_F^\veeとして定義されるものであるが、その座標環の言葉に直すと、 \CC[\mu_{T_F^\vee}^{-1}(0)/\!\!/T_F^\vee] = \CC[\mu_{T_F^\vee}^{-1}(0)]^{T_F^\vee} = \left(\CC[\mathcal M_C(\tilde G,\mathbf N)]/ \mu_{T_F^\vee} = 0\right)^{T_F^\vee} となって、座標環のことばで定義できるものである。ここで、\mu_{T_F^\vee}=0は、余運動量写像 \mu_{T_F^\vee}^*: \mathbb C[(\mathfrak t_F^\vee)^*] = \CC[\mathfrak t_F] \to \CC[\mathcal M_C(\tilde G,\mathbf N)]の像で生成されるイデアルで割ることを意味する。
補題. 余運動量写像 \mu_{T_F^\vee}^*: \CC[\mathfrak t_F]\to \CC[\mathcal M_C(\tilde G,\mathbf N)] は、H^*_{T_F}(\mathrm{pt})\to H^*_{\tilde G}(\mathrm{pt}) \to H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{\tilde G,\mathbf N}) の合成に等しい。
実際、指標 \chi: T_F\to \CC^\times がd\chi: \mathfrak t_F\to \CC を定めるので、\mu_{T_F^\vee}^*(d\chi) が、対応する \pi_1(\chi)^\wedge: \CC^\times\to \pi_1(T_F)^\vee の作用に関する運動量写像であることをチェックすればよいが、これは、例1の量子化の場合の計算の帰結 \{ r^\lambda, w\} = \lambda r^\lambda の式の類似として、 \{ f, d \chi\} = \langle \pi_1(\chi),\gamma\rangle f を示せばよ。ただし、\gamma はfが属する連結成分\in\pi_1(\tilde G)であって、\tilde G\to T_Fを通じて、\pi_1(T_F)の元とみなし、これを\pi_1(\chi) で送ったものが、\langle\pi_1(\chi),\gamma\rangleである。
あとは H^{\tilde G}_*(\mathcal R) から H^{G}_*(\mathcal R) への変更が、\mu_{T_F^\vee} = 0 で割ることに対応すること、\mathrm{Gr}_G と\mathrm{Gr}_{\tilde G}の違いが、T_F^\veeで不変部分をとるかどうかに対応することを、観察して、命題が示された。
この構成法の応用として、toric hyperKaehler 多様体を考える。(注. toric hyperKaheler 多様体は、後藤氏の特別な場合の導入のあと、Bielawski-Dancerによって一般的に定義された。そのような歴史的な経緯があるにも関わらず、hypertoric 多様体と名前だけを変えて、先駆者の貢献を搾取しようとする者がいるので、名前については注意が必要である。)
トーラスの完全列 1\to T\to (\CC^\times)^N \to T_F\to 1 を考え、\mathbf N = \CC^Nへのウェイト1の(\CC^\times)^N の表現を通じて、Tの表現とみなす。このとき toric hyperKaehler多様体は、\CC^N\oplus (\CC^N)^* のTの作用に関する hamiltonian reduction \mu^{-1}_T(0)/\!\!/ Tとして定義される。対応するクーロン枝は、上の命題により、\mathcal M_C((\CC^\times)^N,\mathbf N) の T_F^\vee作用に関する hamiltonian reduction であるが、\mathcal M_C((\CC^\times)^N,\mathbf N)は、例2のN回の積であるから、\CC^{2N} = \CC^N\oplus (\CC^N)^* の T_F^\vee作用に関する hamiltonian reduction である。実際、上の完全列の双対 1 \to T_F^\vee \to (\CC^\times)^N \to T^\vee\to 1 を考えれば、\CC^N\oplus (\CC^N)^* のT_F^\veeに関するhamiltonian reduction が定義される。
一方で、\mathbf N を制限により T の表現とみると、variety of triple を (T,\mathbf N) に対して定義することができる。もとのものと区別するために、もとのものを\mathcal R_{G,\mathbf N}, (T,\mathbf N)に対するものを\mathcal R_{T,\mathbf N} で表わす。そうして、convolution product の定義に用いられた図式を変更してみると、 \begin{array}{ccccccc} \mathcal T_{T,\mathbf N}\times \mathcal R_{G,\mathbf N} & \xleftarrow{p} & T_{\mathcal K}\times \mathcal R_{G,\mathbf N} & \xrightarrow{q} & T_{\mathcal K}\times_{T_{\cO}}\mathcal R_{G,\mathbf N} & \xrightarrow{m} & \mathcal T_{G,\mathbf N}\\ \cup && && && \cup\\ \mathcal R_{T,\mathbf N}\times \mathcal R_{G,\mathbf N} & \xleftarrow{} & & \xrightarrow{} & & \xrightarrow{} & \mathcal R_{G,\mathbf N}\end{array} とすることができる。この図式により、convolution product H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})\otimes H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N})\to H^{T_\cO}_*(\mathcal R) が定義でき、H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) は、左H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})-加群になる。さらに、結合律の証明をそのまま使い
定理. H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) は、(H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N}), H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}))-両側加群になる。
N(T)をTのGにおける正規化群とすると。ワイル群は N(T)/T = Wとして定義されていることを思い出そう。n\in N(T) は\mathcal R_{T,\mathbf N} に [t,s]\mapsto [ntn^{-1},ns]として作用することに注意しよう。([nt,s] は、\mathcal R_{G,\mathbf N} への作用を定めるが、ntはT_{\mathcal K} に入らないことから、これを同値類の中で動かしている。)Tは連結であるので、ホモロジー群には自明に作用し、したがってH^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})はWの表現になる。積が、W同変であることも図式にすべてN(T)が作用することから従う。したがって、H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})^W は H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})の部分代数である。
\iota: \mathcal R_{T,\mathbf N}\to \mathcal R_{G,\mathbf N} を埋め込み写像とする。 このとき \varphi: H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})^W\to H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N})^W = H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) が定義される。
定理.
一方、H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) は、H^*_G(\mathrm{pt}) 上自由なので、 H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N})\otimes_{H^*_G(\mathrm{pt})} \mathrm{Frac}H^*_T(\mathrm{pt})に単射に埋め込まれており、上の定理と合わせるとH^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) の convolution product が可換であることが従う。
先週の定理の証明. (1) 両側加群において、H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) の 0\in\mathrm{Gr}_Gのファイバーの基本類 eを考える。これは、H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) であれば、単位元を与えていたクラスであり、 c\ast e (c\in H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N}))、e\ast c' (c'\in H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}))ともに、c, c'に近いものであるはずだが、実際 c\ast e = \iota_*(c), e\ast c' = \mathrm{for}(c') である。ここで、\mathrm{for}: H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N})\to H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N}) は、同変ホモロジーの群に関する制限準同型である。したがって、c\in H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})^Wとして、\varphi(c) = c'のとき、c\ast e = e\ast c' となる。そこで、c_1, c_2\in H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N})^Wとして、 \varphi(c_1) = c'_1, \varphi(c_2) = c'_2とすると、(c_1\ast c_2)\ast e = e\ast (c_1'\ast c'_2) が結合律から従う。これは、\varphiが準同型であることを意味する。
(2) 同変ホモロジーの局所化定理より、T固定点集合が一致することR_{G,\mathbf N}^T = R_{T,\mathbf N}^T を示せばよいが、これは両者ともに、\mathrm{Gr}_T\times(\mathbf N^T)_\cO であることから従う。
\varphi (本質的には\iota_*) は準同型で、局所化すると同型である。H^{T_\cO}_*(\mathcal R_{T,\mathbf N}) は線形空間としての基底を持ち、積の構造定数が具体的に与えられる可換環であるから、(\iota_*)^{-1}が計算できれば、H^{G_\cO}_*(\mathcal R_{G,\mathbf N})の積が計算できることになる。ところが、(\iota_*)^{-1} は局所化定理によって存在が保証される写像であって、\mathcal R_{T,\mathbf N}, \mathcal R_{G,\mathbf N} は滑らかではないので、一般には計算するのは難しい。
ただし、次の二つの状況で例外的に計算可能である。
(2)については、associated graded が \bigoplus H^{G_\cO}_*(\mathcal R_\lambda) であったことと、上と同様にH^{G_\cO}_*(\mathcal R_\lambda) = H^*_{P_\lambda}(\mathrm{pt}) [\mathcal R_\lambda]であることに注意する。このとき\mathrm{gr}\iota_* を associated graded に誘導される準同型 \bigoplus_\lambda H^{T_\cO}_*((\mathcal R_{T,\mathbf N})_\lambda)^W \to \bigoplus_\lambda H^{G_\cO}_*(\mathcal R_\lambda) とすると、\mathrm{gr}\iota_*^{-1}(f[\mathcal R_\lambda]) は、 \sum_{\lambda'=w\lambda\in W\lambda} \frac{wf r^{\lambda'}}{e(T_{\lambda'}\mathrm{Gr}_G^\lambda)} と計算される。ここで、\lambda' は \lambda の W軌道 W\lambda の元であり、r^{\lambda'} は、対応する \mathcal R_{T,\mathbf N} のファイバーの基本類である。この式から、 f[\mathcal R_\lambda] \ast g[\mathcal R_\mu] = a_{\lambda\mu} fg [\mathcal R_{\lambda+\mu}] \qquad f\in H^*_{P_\lambda}(\mathrm{pt}) = H^*_T(\mathrm{pt})^{W_\lambda}, g\in H^*_{P_\mu}(\mathrm{pt}) = H^*_T(\mathrm{pt})^{W_\mu} を導くことができる。ここで、a_{\lambda\mu} は r^\lambda r^\mu = a_{\lambda\mu} r^{\lambda+\mu} と、アーベリアンの場合のクーロン枝の座標環の構造定数である。
幾何学的には、associated graded は \mathcal M_C の退化を意味する。退化した先の座標環は、上で見たように基底をもち、構造定数が具体的に与えられるような可換環である。ただし、退化先は正規ではないので、このような退化にどれだけの意味があるかは、よく分からない。しかし少なくとも、H^{G_\cO}_*(\mathcal R)が有限生成であることは、退化先の座標環がそうであることから従う。
stability 条件の説明を省いて天下り的に定義を与えてしまったが、定義の背後に \chi: G_V\to\CC^\times という群の指標で、\prod_i \det (g_i) で与えられるものがあり、\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w) は \mathrm{Proj}(\bigoplus_{n\ge 0} \CC[\mu^{-1}(0)]^{G_V,\chi^n}) として定義される。ここで、\CC[\mu^{-1}(0)]^{G_V,\chi^n} はsemi-invariantsである。この意味は、理解しなくて良いが、\chi は \pi_1(\chi): \pi_1(G_V)\to \pi_1(\CC^\times) を誘導し、したがって、\pi_1(\CC^\times)^\wedge\to \pi_1(G_V)^\wedge を定めることに注意しよう。\pi_1(G_V)^\wedge はクーロン枝 \mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w) に作用するトーラスであった。したがって、\pi_1(\CC^\times)^\wedge = \CC^\times が \mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w) に作用する。その固定点集合 \mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w)^{\CC^\times}を考察する。
予想1. \mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w)^{\CC^\times} は、\emptyset か一点かのどちらかである。また、\mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w)^{\CC^\times}\neq\emptyset と \mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)\neq\emptysetとは、同値である。
表現論と箙多様体との関係により、\mathfrak M(\mathbf v,\mathbf w)\neq\emptysetは、対応する Kac-Moody Lie環 \mathfrak g_Qの可積分最高ウェイト表現のウェイト空間が0でないことと同値であることを注意しておく。
\mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w)^{\CC^\times}\neq\emptyset のときに、attracting set \mathcal A_\chi(\mathbf v,\mathbf w) を \{ x\in\mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w) \mid \exists\lim_{t\to 0}\chi(t)\cdot x \} により定義する。\chi: \CC^\times\to \pi_1(G_V)^\wedgeは、\pi_1(\chi)^\wedgeのことである。 空間に \CC^\times作用があるときにattracting setを考えることは重要であり、幾何学的表現論でもしばしば現れる。
例. A_1型箙ゲージ理論で、V=\CC, W=\CCであるときを考えよう。箙多様体は、一点である。一方、クーロン枝は、例2にほかならないので、\CC^2である。\CC^2 = \mathrm{Spec}\CC[x,y] で、x, y が、1, -1 のファイバーの基本類 r^1, r^{-1} であったことを思い出すと、\pi_1(G_V)^\wedgeの作用は、t\cdot x = tx, t\cdot y = t^{-1}y であることが従う。よって、\mathcal A_\chi(\mathbf v,\mathbf w)はy=0、すなわちx軸であり、空間としては\CCである。
予想2.
Q が有限ADE型の場合には、\mathfrak g_Qは有限次元単純リー環であるが、この場合のクーロン枝 \mathcal M_C(\mathbf v,\mathbf w) は、\mathfrak g_Q に対応するリー群 G_Qを随伴型にとり、対応するアファイン・グラスマン多様体 \mathrm{Gr}_{G_Q} と関係していることが分かっている。ただし、その場合は、\mathbf w-\mathbf C\mathbf v\ge 0という条件が必要である。このとき、上の attracting setは、Mirkovic-Vilonen cycle とよばれる、幾何学的佐武対応で重要な役割を果たす空間と同じになることが、分かっており、特にH_{\mathrm{top}}(\mathcal A_\chi(\mathbf v,\mathbf w))の次元は、対応する有限次元既約表現のウェイト空間の次元と等しいことが知られている。
QがアファインA型のときには、やはり\mathbf w-\mathbf C\mathbf v\ge 0のもとで、クーロン枝はアファインA型の箙多様体と同型であることが知られている。その attracting setは、テンソル積多様体とよんでいる空間であり、level rank 双対性を通じて、やはりH_{\mathrm{top}}(\mathcal A_\chi(\mathbf v,\mathbf w))の次元とウェイト重複度が等しいことが証明できる。