講演者:本間英智 (東北大学)
タイトル:星生成史に従ってモデル計算した矮小楕円体銀河の化学進化
アブストラクト:矮小楕円体銀河(dSph)の測光・分光観測によって、星の色等級図や元素組成、金属量分布が得られるようになってきている。色等級図の解析からはdSphの星生成史が見積もられており、元素組成や金属量分布については化学進化モデルを用いた研究が行われている。しかし化学進化モデルから導かれた星生成史は短期間であり、色等級図から導かれるものと一致しない。そこで色等級図と無矛盾な化学進化を導くために、色等級図から導かれた星生成史に従って化学進化を計算し、金属量分布と比較するモデルを作成した。色等級図と金属量分布が観測されているdSphのうちFornax, Sculptor, Leo II, Sextansの4天体について、このモデルを用いて解析を行った。その結果Sextansを除く3天体について、その星生成史に従って化学進化を計算しつつ金属量分布を再現することに成功した。得られた星生成効率は先行研究の値より低く、現在星生成している矮小不規則銀河(dIrr)と同程度の値となった。またIa型超新星が発生し始めるまでの時間(遅延時間)は、銀河サーベイ観測や理論研究から推定されている時間(約0.1Gyr)では観測された元素組成比を過小評価してしまうことが分かった。これはdSphの化学的性質だけでなく星生成史も同時に説明する場合は、より長い遅延時間が必要であることを意味している。このように測光観測による色等級図と、分光観測による化学的性質の両方を同時に扱うモデルによって、矮小楕円体銀河の化学進化をより深く議論できるようになった。
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