講演者:五十嵐朱夏 (筑波大学)
タイトル:球対称定常銀河風モデルによる遷音速解析
アブストラクト:銀河から星間ガスが流出する銀河風は、銀河進化に影響し、銀河間空間の重元素量を左右する重要な現象である。我々は、ダークマターハロー及び銀河中心ブラックホールの重力場中での球対称定常銀河風の加速過程について調べている。本研究では、銀河風で実現される可能性のある遷音速流を多様なパラメータ空間内で、その解曲線のトポロジーによって系統的に分類した。その結果、同じ重力場構造であっても、2つの異なるタイプの遷音速解が存在することが分かった。銀河中心近傍の遷音速点を通る解は銀河中心ブラックホールによる重力場の影響が支配的であり、銀河ハロー部分の遷音速点を通る解はダークマターハローが生成する重力場の影響が支配的である。今回は、遷音速銀河風の存在が銀河のX 線強度分布に与 える影響について、Sombrero 銀河を例にとって詳細に議論する。Sombrero 銀河では、銀河風の存在を示唆する広がった高温ガスが観測されている一方、ガス密度分布は静水圧平衡でよく近似できるという矛盾が報告されている(Li et al. 2011)。我々の遷音速銀河風モデルをSombrero 銀河に適用することにより、静水圧平衡的ガス密度分布と矛盾せずに遷音速銀河風が可能であることを示す。