講演者:河北敦子 (名古屋大学)
タイトル:ダストによる減光と再放射を考慮した銀河のスペクトルエネルギー分布モデルの構築
アブストラクト:銀河の構成要素である星は進化の過程で核融合反応により重元素を形成する。そして星で生成された重元素が宇宙空間に放出されることにより、銀河自体もその化学組成を変化させていく。これを銀河の化学進化と呼ぶが、これは星形成史に密接に関係しており、銀河進化について理解する上で非常に重要である。星は進化の各段階で星間空間に重元素を放出し、その多くは星間空間で固体微粒子(ダスト)として存在している。ダストは紫外線や可視光を吸収し、それを赤外線として再放射する性質がある。本研究では、星の放射に対するダストによる吸収とダスト粒子が吸収したエネルギーの再放射を考慮することにより、化学進化と整合的な銀河のスペクトルエネルギー分布(SED)モデルを作成した。ダストによる減光のモデルとしてCalzetti et al. (2000)、Cardelli et al. (1989)、Pei (1992)を、またダストによる再放射にはDale et al. (2001)、Dale & Helou (2002)の経験的モデルを採用した。作成したSEDモデルから、銀河年齢の関数として銀河内の重元素が求まり、ダストの減光、再放射も重元素量と整合的に計算できる。さらにこれを用いることで、高赤方偏移銀河の星形成率や金属量、ダスト量など、重要な物理量を推定することができる。