講演者:林航平
タイトル:銀河系及びアンドロメダ銀河に付随する矮小銀河の新たな化学動力学関係
アブストラクト:銀河系やアンドロメダ銀河に付随する矮小銀河は質量-光度比が10から1000に達しダークマターが支配的な系であり、したがって矮小銀河はダークマターの基本的な性質を調べる上で理想的な天体である。一方CDM理論から予言されるダークハローの構造は、中心部の密度分布がカスプ状であり、形状は球対称ではなく3軸非対称であるとされている。我々は、これまでハローや恒星系の密度分布を球対称とした簡単なモデルのみであった先行研究に対し、速度非等方性を考慮した軸対称質量分布モデルを構築し、銀河系及びアンドロメダ銀河の矮小銀河から得られる星の視線速度分布の解析からダークハローの非球対称構造に対するより詳細な解析を行った。この力学解析に基づき、我々は主に2つの重要な結果を得た。(1) 矮小銀河のダークハローは非球対称であり、オブレイトまたはプロレイトな形状をしていることがわかった。その軸比はCDM理論に基づくシミュレーションのそれと概ね一致している。またダークハロー中心の密度分布は全てがコア構造をしているわけではなく、カスプ構造をもつ矮小銀河も存在することがわかった。これは環境効果によるカスプからコアへの遷移が生じた可能性があることを示唆している。(2) 矮小銀河の半径300pc内の全質量を計算すると、その質量は球対称モデルの場合の一定とはならないことがわかった。さらにこの質量は矮小銀河ダークハローの中心密度の高さを反映しているだけではなく、矮小銀河の星質量や金属量と相関を持つことが新たに明らかになった。この新たな化学動力学関係は、矮小銀河ダークハローの形成時期とその星形成史に重要な関連性があることを示唆している。
発表スライド:(非公開)