講演者:村田勝寛 (名古屋大学)
タイトル:COSMOS天域のクランピー銀河の割合の進化
アブストラクト:80億年以上前の宇宙では、現在の宇宙では見られない巨大なクランプ(塊状の星の集団)を持つ銀河(クランピー銀河)が多数存在することが知られている。巨大クランプの質量は一千万から十億太陽質量にも及び、現在の宇宙ではこのようなクランプを持つ銀河はほとんど存在しない。これらのクランピー銀河は現在の宇宙で見られる銀河の祖先と考えられているが、クランピー銀河がどのように現在の銀河に進化したのかはよく分かっていない。そこで、本研究では、クランピー銀河の形成過程の解明を目的に、宇宙年齢後半のクランピー銀河の系統的な探査を行い、クランピー銀河の割合がどのように進化したか、また星質量や星形成率とどのような関係にあるかを調べた。 まず、ハッブル宇宙望遠鏡の最大の観測領域であるCOSMOS領域において、先行研究の10倍以上の2000個を超えるクランピー銀河の大規模サンプルを構築した。このサンプルを基に、銀河の星質量、星形成率、及び星形成率を星質量で割った量である比星形成率と、銀河種族全体に対するクランピー銀河の割合との関係を検証した。その結果、80億年前から30億年前までの間にクランピー銀河の割合はおよそ35%から5%にまで減少しており、これは銀河の星質量には依存しないことが分かった。一方、今回調べた時代や銀河の星質量の範囲では、銀河の星形成率および比星形成率が大きいほどクランピー銀河の割合は大きくなることが分かった。特に、同じ時代の銀河では、比星形成率とクランピー銀河の割合との相関関係は銀河の質量に依らないことがわかった。以上の結果は、比星形成率がバリオン質量に対するガス質量比を反映したものだとすると、ガス質量比が高い時はガス円盤の重力不安定性によって巨大クランプが形成され、時間とともにガス質量比が低くなると円盤が安定化し、現在の宇宙で見られるような円盤銀河になるとする理論モデルで説明可能である。