講演者:豊内大輔 (東北大学)
タイトル:金属量勾配進化に基づく銀河系円盤形成過程への制限
アブストラクト:銀河を形成するガスの降着や降着後のガスの移動(radial flow)は銀河全体の構造進化ならびに化学進化を決定する重要なプロセスである。円盤に沿って存在する金属量勾配はそれらのプロセスを議論する上で重要な観測量であることが知られており、これまでに多数の研究の中で銀河形成史を調べるためのツールとして用いられてきた。しかしながら、それらはすべて現在観測される金属量勾配に対してだけしか行われていない。そこで我々は個々の星について年齢を推定出来る銀河系に着目し、SDSS/SEGUE 等のいくつかの大規模サーベイで観測された円盤星のサンプルを用いて、銀河系円盤における金属量勾配の時間進化を調べた。その結果、銀河系形成初期(約10Gyr以前)と形成後期(約5Gyr以降)のぞれぞれの時期について金属量勾配の進化に特徴的な性質がみられることを発見した。我々は更にその性質の成因について理論モデルを用いた検証を行った。ここではガス降着史とradial flowに関する仮定が金属量勾配の時間進化にどのような影響を与えるか紹介し、最後に一連の研究を通して見えてきた銀河系形成の全体像について紹介する。
発表スライド:(PDF)