アブストラクト:
ダスト放射起源を探ることは銀河進化を理解する上で必要不可欠であり、特にnegative-k補正の効くミリ波帯は盛んに研究されている。一方、高分解能・高感度を実現したALMAをもってさえも、ミリ波帯系外銀河背景放射(EBL)は~50%までしか分解されていない。残りの放射源は未だよく分っていないのである。本研究では我々のグループが所有する世界的にも最も深いALMAデータに加え、公開されている深いALMA band 6 (~1.2 mm)のデータをアーカイブから全て集め、現状可能な限りの最深広域ミリ波天体サーベイを行った。その結果、0.01-0.58mJyもの明るさの計87個の天体を検出、従来よりも1桁近く暗い天体まで個別検出した。これらの天体を用いて個数密度を統計的に導いたところ、EBLへの寄与は102±30%となり、ALMAによってEBL起源がほぼ全て見えてきたことになる。このEBLにおいて支配的な寄与を示すことがわかったALMAで新たに観測されてきている1 mJy以下の暗いミリ波天体の正体についても迫った。今回得られた87天体について、視野毎で観測される個数分散を用いたクラスタリング解析と、個別に可視対応天体同定を進め、同定された天体について各波長での等級比を調べた。この統計的・個別、両側面からの解析結果は共に、暗いミリ波天体の多くは遠方の一般的な星形成銀河(LBG, sBzKなど)からのダスト放射であることを示した。