アブストラクト:
星形成領域の電離ガスの物理状態は、その領域で起こっている星形成の様子を反映しており、銀河進化を理解するための重要な鍵の一つである。ガスの物理状態は、ガスが放射する輝線を分光観測することで調べることができるが、金属量や電離状態といった詳細な情報を得る為には、フラックス強度が弱い輝線を検出する必要がある。我々が進めているすばる望遠鏡FMOSによる近赤外分光サーベイはCOSMOS領域のz~1.6の星形成銀河から放出されるHα輝線を検出することを目的にしているが、同時に[NII]やHβ, [OIII]といったガスの性質の重要なプローブとなる輝線も検出している。また、同じ波長帯には[SII]λλ6717, 6731の二重輝線も存在する。[SII]輝線は[NII]やHβよりもさらに弱く、単体の銀河スペクトルにおいては検出は不可能であが、多数の銀河のスペクトルを足し合わせ平均化することで、優位なS/Nで検出した。これらの輝線の情報を元にz~1.6の星形成銀河のガスの物理状態について議論する。