アブストラクト:
本発表では、ダークマター理論、特に温かい暗黒物質(WDM)の粒子質量への制限に対して、新たな制限手法を提案する。我々は矮小銀河から楕円銀河までの様々な銀河の力学解析からそれらのダークハロー構造を導出し、その結果を用いてダークハローのmaximum circular velocityに対応する半径以内の平均面密度という物理量をを計算した。その結果、力学解析の方法やダークハローの密度分布が異なっているにも関わらず、広い範囲の質量スケールにおいてこの物理量は一定の値をとることがわかった。さらにこの物理量は、ダークマター理論から直接計算できるという利点がある。よって、観測から得られるダークハローの平均面密度と理論的に予測されるそれとを直接比較することが出来る。今回我々は、CDM理論と粒子質量が2,3keVのWDM理論から平均面密度を導き、観測と比較した。すると、質量の大きいスケールではCDM、WDMどちらも観測結果を自然に再現出来ることがわかった。一方で矮小銀河に対応する小さい質量スケールでは、CDMとWDMでその振る舞いが大きく異なり、特にWDMでは観測結果から大きくずれる結果となった。データの3シグマエラー以内を観測結果を再現できる許容範囲だと考えると、WDM理論はその粒子質量が3keVより重い必要があることがわかった。