アブストラクト:
Lya輝線銀河(LAE)は銀河形成・進化と宇宙再電離を調べる上で重要な銀河種族であると考えられている。LAEの詳細な性質を理解するため、近年ではz~2 LAE探査が精力的に行われ、十分暗いLAE( log L(Lya) < 42.0 erg/s )が検出されている研究もある。しかしこれまでのLAE探査では、天体数が数十から数百ほどと少なく、LAEの統計的性質を調べることは難しい。例えばこれまでの研究では、Lya光度関数(LF)の暗い側の傾きαに強い制限を与えることはできなかった。そこで本研究では、狭帯域フィルターNB387が搭載されたすばる主焦点カメラで得られた大規模なz=2.2 LAEサンプルを利用して、その統計的性質を調べた。このz=2.2 LAE探査では~1.4平方度の探査領域から、これまでのz~2 LAE研究より1桁以上大きい天体数である約2200天体のLAEが選び出されている。またlog L(Lya) ~ 41.8 erg/sの暗いLAEも多数検出されているため、Lya LFのαにこれまでに無く強い制限を与えることができる。このLAEサンプルを基にLya LFを求めた結果、α=-1.71(+0.11)(-0.09)が得られ、z=2ドロップアウト銀河の紫外線(UV) LFの傾きα=-1.73+-0.07 (Reddy & Steidel 2009)と同等であることを明らかにした。さらにLya LFの明るい側( log L(Lya) > 43.0 erg/s )で個数密度の有意な超過が見られ、そのようなLya光度範囲ではAGNが多数占めていると考えられる。本講演では、z=2.2 LAEのLya/UV LFとLya等価幅分布、UV slope分布を求め、z=2.2 LAEの統計的性質を考察する。さらに、z=0.3から7.3までのLya光度密度の進化を調べることで、Lya脱出率の進化の物理的描像についても議論する。