アブストラクト:
銀河系の銀河面では、点源に分解できていない広がったX線放射が観測されている。その放射源については激変星などの点源説と、加熱された星間物質説がありいまだに議論が続いている。銀河系中心~1°を除く大部分の領域の放射はChandraによって放射の80%が説明できる点源が発見されているが、スペクトルが太陽周辺のX線点源では説明できず、どのような天体なのかはまだ分かっていない。また銀河系中心部の放射については、X線強度分布が星の面輝度分布を超過しており加熱された星間物質が放射に大きく寄与している可能性が指摘されている。しかし面輝度分布から得た星分布は不定性が大きく、どの程度寄与しているのかが不明であった。我々は近赤外線観測から得られた星数の柱密度分布を比較対象にすることで、銀河系中心部の放射における星分布からの超過の度合いをより正確に求めた。すでに星数柱密度が取得済みである銀経2°以内に加え、IRSF/SIRIUSの観測から銀経8°のM型巨星の星数柱密度を求め、先行研究より外側の領域で規格化を行った。結果、銀経8°領域ではM型巨星1個あたり~1×10^{-8} erg/(s cm^2)のFe XXV輝線放射があり、この値で規格化すると中心付近で約2.5倍鉄輝線強度の超過が確認された。この結果はNishiyama et al. (2013)と一致しており、銀河系中心部のX線放射は50%以上加熱された星間物質による放射であることを支持している。本ポスターではこれらの結果に加え、星形成率の空間的・時間的な変化の影響や、M型巨星1個あたりのX線放射率から得られる銀経8°領域の点源への制限について議論する。