アブストラクト:
 我々は、赤外線天文衛星「あかり」の観測データから、星形成銀河において、赤外線光度が大きくなるにつれ、全赤外線光度に対する多環芳香族炭化水素(PAH)光度の割合が減少することを示し、これはPAHの存在量の減少を反映していることを明らかにした(Yamada et al. 2013)。この結果と、赤外線で明るい銀河ほど衝突銀河の割合が大きくなるという先行研究の結果から、銀河衝突によってPAHが破壊されている可能性を指摘した。 本研究では、この「銀河衝突PAH破壊」シナリオを検証するため、SDSSの可視光画像を用いて、銀河の形態と赤外線の性質の関係を調べた。可視光画像は銀河衝突を判別する強力な方法であり、PAH破壊シナリオのより直接的な検証が可能である。 用いた銀河サンプルは、銀河の形態が判別可能な赤方偏移z < 0.06の43個の星形成銀河である。銀河の形態は、i )表面輝度のばらつき(Gini)、ii)空間的広がり(M20)、iii)非対称性(Asymmetry)の3つの指標で評価した。その結果、銀河衝突的な形態を持つ銀河は、全赤外線光度に対するPAH光度が小さいことが分かり、「銀河衝突PAH破壊」シナリオと矛盾しないことが明らかになった。