アブストラクト:
化学進化モデルを用いた観測データの解析により、矮小銀河では合成された重元素 (鉄など) のうち 80 - 99 % が、銀河の外へ失われていることが分かってきている。矮小銀河において大量の重元素が失われる過程については様々に議論されているが、特に流体シミュレーションからは、超新星から出た重元素は星間ガスよりも流出しやすいことが言われている。そこで我々は化学進化モデルを用いて、ガスの流出過程をいくつかのパターンで計算し、観測データとの比較を行った。その結果、超新星から出た重元素が星間ガスとよく混合せずに流出した場合は、HII region や星で観測される (N/O) や [C/Fe] を過大評価することが分かった。これは、O や Fe など主に超新星で合成される重元素が流出したのに対して、C や N など主に中小質量星で合成される重元素が星間ガスに残りすぎたためである。本講演では我々の化学進化モデルによる計算結果を報告し、矮小銀河の観測データと無矛盾な重元素の流出過程について議論する。