アブストラクト:
AGN がその母銀河へ与える影響(フィードバック)に関しては、観測的にも理論的にも多く研究されているが、 AGN が周囲の別の銀河に与えるフィードバック、特に光度の大きな AGN(=QSO) が輻射により周囲の低質量の銀河の形成に与える影響に関しては、理論的にあるはずだと言われているもののそれを観測的に定量的に示した研究は十分進んでいない。そこで我々は、すばる望遠鏡の広視野可視光線カメラ Suprime-Cam を用いて赤方偏移 4.87 付近の2つの QSO の周囲を、狭帯域フィルター NB711 および広帯域フィルター (R, i', z') で広くかつ低質量の銀河(ここでは Lyα 輝線銀河、LAE)を観測できる深さまで撮像観測し、低質量銀河へのフィードバック効果を定量的に調べることを試みた。我々は2つの領域で201個の LAE と165個の LBG を検出し、それぞれの領域において光度関数を QSO から近い(=輻射の影響が強い)領域と遠い領域に分けて描きフィードバックの有無を調べたが、有意な差は見られなかった。本講演ではこれらの結果を示すとともに、それらが銀河形成に与える示唆と今後の HSC サーベイとの連携について議論する。