アブストラクト:
"早期型銀河の力学的性質は, その形成・進化を理解するのに重要な情報のひとつである. 本研究では, 早期型銀河の力学的性質の獲得時期を観測的に調べるため, 力学と関係のある等面輝度形状パラメータa4をz~1と0で測定し, 比較した. Hubble Space Telescope Cluster Supernova Survey (z~1)とSloan Digital Sky Survey (z~0)の撮像・分光データを用い, 分光赤方偏移が既知の早期型銀河サンプルを作成した. また, 遠方銀河にも適用可能な等面輝度形状の測定コードを開発し, 適用した.
結果としては, a4パラーメータはz~1でも0でも, 星質量や銀河サイズに対して同様の依存性が見られ, log(M*/Mo)~11.5の特徴的質量を境に, boxyな銀河が大質量側で支配的となる. z~1と0で特徴的質量が変わらないことは, mass quenchingによって大質量早期型銀河がboxyになるという仮説と矛盾しない. Disky早期型銀河の割合は大質量側で減少し, 星質量によらずz~1と0で同程度であった. 不定性が大きいとはいえ, これらの結果は, 銀河団の早期型銀河において, 等面輝度形状および力学的性質がz>1で特徴づけられていることを示唆する. また, disky早期型銀河の割合が変わらないことから, 早期型銀河のz<1におけるサイズ・形態の進化は, 銀河の衝突合体よりも静かな過程によって起きていると考えられる."