アブストラクト:
宇宙の大規模構造とバリオンガス、特に銀河と銀河間物質の広範囲な分布を描くことは銀河形成や銀河ー銀河間物質の間で行われる物質循環の理解への手がかりとなる。銀河間物質である中性水素ガスはクェーサーのような明るい背景光源スペクトルにみられるLyα吸収で捉えることができ、従来の銀河ー銀河間物質サーベイは星形成銀河周り(~30’×30’)の中性水素 ガス分布を明らかにしてきた。しかしながら、これを超えたスケール(~1deg^2)での銀河-銀河間物質の関係はまだ調べられていない。本研究ではCOSMOS/UltraVISTA領域(1.62deg^2)においてz~2-3の測光観測された銀河約13000天体とSDSS-IIIから得た背景クェーサーの分光データを組み合わせた広視野サンプルを利用し、 z~2-3での銀河密度超過と中性水素Lyα吸収線(damped Lyα 吸収を除く)の空間相関を調べた。その結果、銀河密度超過と中性水素Lyα吸収の強さには相関があることを明らかにした。更にRAMSESコードによる数値シミュレーションでも観測で得られた相関を確認した。z∼2−3で銀河は中性水素ガス超過領域に数多く存在していることが示唆される。また、観測データからは銀河密度超過または中性水素Lyα吸収が極端に大きい(小さい)値を示した領域が4つ見つかった。観測データと数値シミュレーションとの比較からこれら4つの領域の物理的起源についても議論する。