アブストラクト:
本講演では近赤外線の宇宙背景放射と銀河系内拡散光の最新成果を紹介する。宇宙背景放射には宇宙再電離期から現在までに放出されたあらゆる放射が含まれており、星形成史や未知の放射源を探るのに重要な観測量である。近赤外線の宇宙背景放射は既知の銀河の積算光の数倍の輝度を有しており、銀河以外の謎の放射成分が宇宙に存在することが示唆される(Sano et al. 2015, ApJ, 811, 77)。一方、銀河系内拡散光は、銀河系内のダストによる散乱、熱放射成分であり、宇宙背景放射の測定においては除去する必要のある成分であるが、それ自体は星間ダストの性質(ダストのサイズ、アルベドなど)を探るのに役立つ。得られた散乱、熱放射スペクトルはモデルの予測と矛盾しない(Sano et al. 2016, ApJ, 818, 72)。また、銀河系内拡散光の銀緯依存性の解析から、星間ダストは現在のダストモデルに比べて前方散乱特性が非常に強い可能性がある(Sano et al. 2016, ApJL, 821, L11)。