アブストラクト：
近年, z ~ 6 で見つかったクェーサーは, 宇宙初期のmassive なブラックホールの存在を示唆する. このような初期宇宙で, ブラックホールがどのように成長してきたのかを銀河形成の枠組みの中で説明することは, 現状では極めて困難である. 本講演では, 主に準解析的銀河形成モデルからこれまで得られてきたブラックホール成長についての示唆を紹介する. 準解析的モデルは, バリオンに関する物理を現象論的に扱っており計算体積を十分に取ることができる.そのため, 観測されたAGNの統計的性質をモデルと直接比較し, ブラックホール成長を銀河形成の枠組みの中で理解するのに非常に有力な手法で, 計算体積は小さいが, ガスの運動等を詳細に解ける宇宙論的シミュレーションとは相補的な手法である. 本講演では, 準解析的モデルを用いても, z ~ 6, 7 から 近傍宇宙に存在するブラックホール・AGNの性質を統一的に説明することは未だ出来ていないことを示し, 我々のモデルで得られた最新の成果と, 現在残されている問題について議論する.