アブストラクト:
"宇宙再電離期は、IGM中の中性水素が天体から放射された光子によって電離される時代である。電離の源は星形成銀河と考えられる事が多い。再電離期の直接的な観測は少ないが、高赤方偏移クェーサーのスペクトル観測から水素の電離が z ∼ 6 で終了したことが分かっている。また、同様の観測からヘ リウムの電離が z ∼ 2.7 で終了したという事が示唆されている。 ただし、ヘリウムの電離には水素電離光子の 4 倍のエネルギーを持つ光子が必要であるため、通常の銀河だけではそうしたヘリウムの電離をすべて説明するのは難しく、活動銀河核(AGN)のような高エネルギー光子を放射する天体の存在が必要になる。これまで、観測的にはAGN の存在率がz > 3で急速に減少するとされてきたため、AGNは再電離に寄与しないとされてきた。しかし、最近の観測で暗いAGNが観測され、その寄与を考えればAGNだけでの再電離の説明も可能であるという研究もなされている。
今回、我々はAGNと星形成銀河の観測に基づいたモデルを用いて水素やヘリウムの電離を解く。さらにCMBのトムソンタウやHI、HeIIの電離率を見積もり、観測で得られている制限と比較する事によって星形成銀河の光子脱出率や高赤方偏移でのAGNの存在比を制限する。"