アブストラクト:
棒渦巻銀河では棒状部において渦状腕よりも星が生まれにくいことが報告されており、これは両者で分子ガスの物理状態が異なると考えられている。本研究では野辺山宇宙電波観測所レガシープロジェクトCOMINGで得られた12CO(J=1-0)、13CO(J=1-0) 輝線とアーカイブデータの 12CO(J=3-2) 輝線を使用し、棒渦巻銀河 NGC 3627 と NGC 4303 について non-LTE 法に基づく放射輸送コード RADEXを用い、銀河の構造ごとに分子ガスの密度と温度を求めた。その結果、両銀河で棒状部の分子ガス密度は NGC 3627 で 53%、NGC 4303 で 20% 渦状腕と比べて低いことが明らかになった。各領域のスペクトルの線幅を考慮すると、棒状部は分子ガスの運動が激しいため分子ガス密度が低下し、その結果星が生まれにくい環境下にあると結論づけられる。