タイトル:場の量子論の数理

概要:場の量子論は自然界の記述に大きな成功を収めてきた物理学の理論的枠組みであるが,その厳密な数学的定式化は完成しておらず,従って場の量子論を直接数学として研究することには困難である.しかし,近年摂動的な場の量子論を数学的に定式化することについては一定の数学的枠組みが整備されてきており,完全とは言えないまでも,4次元やさらに高次元の量子場の理論やその双対性,さらにはその量子補正の計算や繰り込みなどの理解も数学の範疇で行うことが可能になってきた.本講義ではこれらの発展について議論する.理論体系が完全に完成しているわけではないので完全に厳密に定式化すること自体を目指すのではなく,そのための基本的なアイデアや道具立て,物理学からの動機や知見などを説明することに主眼を置くが,数学科専攻の学生にも十分配慮して講義を進める予定である.