2010年度前期講義「微分幾何学II」
目次
開講のお知らせ
4月13日
4月20日
お知らせ
- 4月13日(火)開講
- 講義室が3号館108に変更になりました。
- 5月25日は、休講の予定
授業の概要・目的
二次元複素平面上の点のHilbert概型について、特にそのコホモロジー群の構造
を中心に解説する。96年ごろにハイゼンベルグ代数の表現の構造が定義された
が、それ以降、頂点作用素の理論を動機付けとして得られた様々な結果が得ら
れた。これらをできる限り、self-containedに解説する。
授業計画と内容
以下のような順番で、一項目あたり、1〜2回の授業をする予定である。
- 複素平面上の点のHilbert概型の定義、行列による表示式
- 滑らかさの証明、トーラス固定点、接空間の計算
- ベッチ数を求める
- 合成積によるハイゼンベルグ代数の表現の構成
- 直線の対称積と頂点作用素(の半分)の関係
- ビラソロ代数の表現の構成
- 同変(コ)ホモロジーの定義の復習
- コホモロジー環の決定
- 頂点作用素の幾何学的な構成
履修要件
幾何学I,幾何学IIは履修していること。代数幾何に関する知識はあまり仮定し
ないが、ある程度知っておいたほうが望ましい。
成績評価の方法・基準
授業の際に演習問題を出題するので、それを解いてレポートとして提出すること。それにより評価する。
教 科 書
特になし
参考書等
99年頃までに知られていた事柄については、
`Lectures on Hilbert schemes of points on surfaces’, Univ. Lecture Series, 18, American Mathematical Society’
にまとめられている。
その他・授業外学習の指示・オフィスアワー等
講義時間以外に、質問をしたい場合は、nakajima@kurims.kyoto-u.ac.jp 宛
にメールを送り、コンタクトの時間の希望を述べること。
4月13日にやったこと
§. Introduction
- $n$個の点のなす空間を考える
- 重複があるときにはどうするか?
- 対称積
- 多項式のイデアルのなす空間として, 複素ユークリッド空間上の点のHilbert概型の定義
- 単項式イデアル
§1. 行列表示
$N$次元複素ユークリッド空間上の$n$個の点のHilbert概型は、
- $N$ 個の互いに可換な$n\times n$ 行列 $B_1$, $\dots$, $B_N$
- $n$次元ベクトル $i$ で cyclic なもの、すなわち $i$ に $B_\alpha$たちを次々に掛けてできるベクトルたちで $\C^n$ は生成される
という条件を満たす行列とベクトルの全体を
- $g(B_1,\dots,B_N,i) = (gB_1 g^{-1},\dots,gB_N g^{-1},gi)$
という $GL_n(\C)$ の自然な作用で割った商空間と同じ。
- $N=1$のとき、$B$ の Jordan標準形は特別なものしか出てこない。
行列による記述を使って, $N=2$のときにヒルベルト概型が複素多様体になるこ
と、を証明する。(途中で終わった。)
4月20日にやったこと
複素多様体になることの証明の完了. 途中で $X^{[n]}$ が
$(B_1,B_2,i,j)$ であって $\tilde\mu(B_1,B_2,i,j) = [B_1,B_2]+ij = 0$と
$i$ は $B_1$, $B_2$に関してcyclic vector である、という条件を満たすものの全体を
$GL_n(\C)$の作用で割ってできる商空間であることを示した。
接空間は、次の複体の中間のコホモロジーで与えられる:
$$\begin{array}{ccccc} {\mathfrak{gl}}(V) & \underrightarrow{\iota} & {\mathfrak{gl}}(V)\times{\mathfrak{gl}}(V)\times V\times V^* & \underrightarrow{d\tilde\mu} & {\mathfrak{gl}}(V)\end{array}$$
ただし、$V$は$n$次元のベクトル空間、$\iota$は$GL(V)$ 作用の微分、$d\tilde\mu$は
$\tilde\mu$の微分である。具体的には、
$$\iota(\xi) = ([\xi,B_1], [\xi,B_2], \xi i, - j\xi)$$
$$d\tilde\mu(\delta B_1,\delta B_2,\delta i, \delta j) = [B_1,\delta B_2]+[\delta B_1,B_2]+i\cdot \delta j+\delta i\cdot j$$
で与えられる。
このページの数式は, mathjaxを用いて書かれています
nakajima@math.kyoto-u.ac.jp