位相的場の量子論は, 位相的不変量を場の量子論を用いて記述する理論である. Witten が Donaldson 不変量をこれを用いて記述したのに始まり, Chern-Simons 汎関数を用いたJones不変量の一般の3次元多様体への拡張 (Jones-Witten不変量)など,目覚ましい応用があった. 位相的場の量子論の特 徴として不変量が定義されるだけでなく, 場の量子論において発展したいろい ろな計算技術を使って計算が実行出来ることがある. 例えば, Seiberg-Witten によって, Donaldson 不変量がU(1)-monopole 不変量(Seiberg-Witten不変量) と等価であることが示された(数学的に正当化されたわけではないが)のは記憶 に新しい.
今回は, 3次元多様体上のN=4 SUSY Yang-Mills理論をtwistして出来る位相的 場の量子論で出来る位相的不変量(Casson-Walker不変量とその拡張)が, 別の 新しい位相的場の量子論で出来る位相的不変量と一致することを見る. この新 しい不変量は, hyper-Kaehler多様体をtargetとするN=4 σ-model をtwistし て出来るものであり, いわゆる有限型不変量になっている. ここで, 不変量が 有限型であるとは, 上のJones-Witten不変量を摂動計算で記述する Axelrod-Singerの仕事で出来た不変量の性質を抽象化した概念である. Jones-Witten不変量は, compact Lie group ごとに定義されていたのだが, targetとするN=4 σ-model から出来る不変量は hyper-Kaehler多様体ごとに 定義され, より多くの有限型不変量を産み出すことが期待されている.