97年春日本数学会学会における幾何学賞授賞講演に対する仮想質問集 (協力: H.Ohta)

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Q. 単調体って何ですか?
A. 母空間や表現空間を貼合わせて出来る新しい空間(22世紀に導入されると言われている)を``多様体''といいます. それは, 多様なものが貼合っているから, そう呼ぶわけです. それに対し, 今までの多様体は, ずっとユークリッド空間の開集合が続いているわけで, 変化に乏しいことを象徴する意味で, 単調体と呼ぶといいと思います.

Q. log 母空間、Laurent 母空間というのも重要だと思いますが、それは どのようなものでしょうか?
A. 考えてないので分かりません.

Q. 母空間、``多様体''の間の写像、morphismとは?
A. 写像の級数ですか ? 少なくとも部分多様体の級数は既に見えていて、頂点作用素にあたるものを考えようとすると必要になります。

Q. ``多様体''へのharmonic mapとは?
A. harmonic map ってなんでしたっけ?

Q. 母空間論、``多様体''論ができたとしても、リーマン面(リーマン単調体) は残るのでしょうか。残るとしたら何故?どうしてそれだけ重要か?
A. 母空間論の立場から見れば、単調体は係数なわけです。例えて言えば、整数論において1077という数だけに着目して研究するようなものです。それはそれでいいのだ、とういう人が居れば、私は何も言いません。リーマン面については, リーマン面のモジュライを種数に関して足しあげた母空間は大切だと思います.

Q. 新しい``多様体''の概念を導入する目標はなんですか? 例えば, Weil予想の証明を目指して, schemeの概念が導入されたわけですが. (これは, M先生によって実際に質問されました)
A. 最終目標としては, ``多様体''を作りたいと思っていますが, 今すぐに 目標にできるとは思っていません. だから22世紀云々と言っているわけです. だから日常的には``多様体''とは何かというものを正面から考えているわけで はない。むしろそういうものを想定し、そこから出てくる数学をやるというこ とです。

Q. 幾何学者は``多様体''論が完成する22世紀まで何をしたらいいのでしょうか?
A. 現在の私の幾何学者としての 姿 を見てください。

Q. 中島さんは22世紀まで何をやっておられるのですか?
A. ``多様体''の正しい定義にたどり着くためには, いろいろと試行錯誤が必要だと考えます. そのためには, アファインリー環の表現論を深く理解することが重要だと考えます. だから, それをやります. そして, それは今まで幾何学者としてやったことを否定しなければ出来ないと思います.

Q. 今までの幾何学は本質的にまちがっていると思いますか?
A. 過去が間違っているということを主張するつもりはありません. それは, ユークリッド幾何がリーマン幾何から見て間違っているか, とたずねるようなものでしょう. しかし, 研究者として新しいものを目指す立場からみれば, 今までの幾何学にこだわって, それを立脚点とすることは本質的に間違っていると主張しているわけです. よく幾何学者の中に「幾何はすべての数学の基本である」ということを言う人がいるのですが, 今までの幾何について言うならば, 間違いであるといわざるを得ません.

Q. 単調体や``多様体''は英語ではどう書きますか? また, variety の邦訳(現在は代数多様体)についてはどう思われますか?
A. ``多様体'' は manifold で良いと思うのですが, 単調体は monofold でどうでしょう? また ``多様体''の概念が定着する22世紀には, 代数多様体と言う呼び名はふさわしくなくなります. 新しい呼び名は, 何がいいですか?

Q. 日本数学会に於いて、何分科会に属しているのか? (答えられない場合は 番号だけで結構です。)
A. (もちろん)代数です。番号は, 2 です.

Q. 大学の講座は何ですか?
A. 多様体論です. でも, 講座の名前とやっていることはあんまり関係ないのが普通ですから.
1997年3月 Surveys in Geometry サイバーグ・ウィッテン理論のSupersymmetry入門(by 牛腸)のappendixもあわせてご覧になると理解がより深まると思います.

もしも良い質問を思い付かれましたら, nakajima@kusm.kyoto-u.ac.jp までメールをいただければ幸いです.