Kronheimer は, Nahm方程式の解, あるいは $\mathbb R^4$上の$SU(2)$-不変 なインスタントン解のモジュライ空間が, 複素リー環の巾零軌道(一般には, そのSlodowy slice)になることを証明し, 特に後者が超ケ─ラ─多様体の構造 を持つことを証明した. 超ケ─ラ─多様体は, 微分幾何学の片隅で研究されて いる分野であるが, このように数学の中心分野で研究されている対象が超ケ─ ラ─多様体になることが, ときどき起こる. 他の有名な例が, 非可換ホッジ理 論における, 複素射影多様体上の半単純局所系のモジュライ空間であ る. (Hitchin, 藤木による.)
さて, 超ケ─ラ─多様体の理論の応用として, 小林-ヒッチン型の定理と組み 合わせると, 二つの一見異る複素多様体が, 実は同じ超ケ─ラ─多様体から来 ていることが分かることがある. Vergneは, このアイデアに基づき, Kostant- 関口対応を解釈した.
本講演では, 超ケ─ラ─多様体入門(とはいっても入門以上の理論は存在しな い) から始めて, KronheimerやVergneの結果を紹介する予定である.
[1] N.J.Hitchin, {\it Monopoles, minimal surfaces and algebraic curves}, S\'eminaire de Math\'ematiques Sup\'erieures {\bf 105}, Les Presses de l'Universit\'e de Montr\'eal, 1987.
[2] N.J.Hitchin, A.Karlhede, U.Lindstr\"om and M.Ro\v cek, {\it Hyperk\"ahler metrics and supersymmetry}, Comm. Math. Phys. {\bf 108} (1987), 535--589.
[3] P.B. Kronheimer:Instantons and geometry of the nilpotent variety, J. Differential Geom. 32(1990), 473-490.
[4] M. Vergne:Instantons et correspondence de Kostant-Sekiguchi, C.R.Acad. Sci. Paris Sr. I Math. 320(1995), 901-906.