講演者:泉拓磨 (東京大学)
タイトル:ALMAで探るSMBHと銀河中心高密度ガス円盤の共進化
アブストラクト:多くの銀河の中心には、その質量が太陽の数百万倍から数十億倍にも及ぶ超巨大ブラックホール(supermassive black hole; SMBH)が存在すると考えられている。これらの大質量天体は一体どのように形成され、成長してきたのだろうか?本講演では、最新の電波干渉計ALMAによる観測結果等を用いて、ブラックホール(BH)周辺の数十から百pc規模の高密度ガス円盤(circumnuclear gas disk; CND)が、BHの成長における直接的質量供給源として重要な役割を果たしている可能性を提示する。具体的には、まず我々はALMA等を用いた高密度ガストレーサーであるHCN分子輝線の観測から、CNDの質量を推定した。そして、CND質量と中心のBH質量の比が、BHの活動性の指標であるEddington比と相関することを観測的に初めて発見した。この相関は、母銀河スケールでのガス観測では見られないものであり、CNDとBHの成長機構に関連があることを示している。また、文献データから、Eddington比の高いBHに付随するCNDは幾何学的に厚く、逆にEddington比の低いBHに付随するCNDは薄いという示唆も得た。これらの結果は、Kawakatsu&Wada (2008)のモデルで予言されているように、CNDの重力不安定性がBHへの物質降着を左右する鍵となっていることを示唆するものである。これらの研究内容に加えて、本講演では今後のALMAをはじめとする多波長観測で、上記の描像の解明に向けてどのように取り組むべきか、銀河進化の観点も交えて議論する。
発表スライド:(PDF)