講演者:大木平 (文教大学)
タイトル:銀河団における大質量銀河のサイズ進化
アブストラクト:近年観測的に確かめられている早期型銀河のサイズ進化は、早期型銀河の形成・進化における大きな問題の一つである。このサイズ進化を説明するシナリオとして、星間ガスをほとんどもたない銀河同士の合体、‘dry merger’シナリオが提案されている。我々は銀河の星成分とダークマター成分に注目した宇宙論的N体シミュレーションを行い、10個の銀河団環境における早期型銀河のz=2からz=0までの進化を調べた。シミュレーションでは、ダークマターの宇宙論的N体シミュレーションに対し、z~3で星成分を加えた後、再びz=0までシミュレーションするという手法をとった。特に、星成分を加える際に、z~3の星質量ーハロー質量関係および星質量ーサイズ関係を仮定することにより、より現実的な初期条件のもとで銀河の質量・サイズの増加を調べた。その結果、銀河団の中心銀河はz=2からz=0までの間に平均的に質量は~2倍、サイズは~4倍増加することが分かった。この質量増加は、観測から見積もられる値とよく一致する。しかしながら、いくつかの銀河はz=0までほとんど質量・サイズが増加せず、近傍の星質量―サイズ関係にのらないことが分かった。また、平均サイズの赤方偏移進化は観測と一致しないことが分かった。これは、平均サイズの進化にdry merger以外の過程が寄与していることを示唆している。本講演ではこれらの結果について示す。
発表スライド:(PDF)