講演者:瀬田裕美 (埼玉大学)
タイトル:すざく衛星による電波銀河 Fornax A ローブからの熱的放射の発見
アブストラクト:活動銀河核から噴出するジェットは、母銀河をもつきぬけ、しばしば数 10 kpc から数 Mpc もの巨大なローブを形成する。これまでローブからの放射は、電波とX線で、べき型スペクトルとしてとらえられてきた。これは、ジェットで加速された非熱的電子と星間磁場/CMB放射の相互作用によって、 シンクロトロン/逆コンプトン放射されたもの(電波/X線) と解釈される。すなわち、ローブの放射は全て非熱的電子起源と考えられてきた。しかし、2013 年になって、ローブからの熱的放射の検出を示唆する観測結果が次々と現れてきた(Stawarz et al. 2013, O'Sullivan et al. 2013)。我々は電波銀河 Fornax A の東西ローブにおいて、「すざく」 を用いて ~500ks ものマッピング観測を行った。その結果、以下を明らかにした (Seta et al. 2012)。(a) 従来から視野内で存在が示唆されていた温度 10^7 K の熱的放射がローブに付随すること。(b) その空間分布が、一様球分布で矛盾がないこと。熱的放射の強度と見かけの大きさから見積ると、熱的プラズマの質量は 10^10 Msun、すなわち、ブラックホールの100倍で、母銀河のガス質量と同等である。また、熱的プラズマのエネルギーは、10^58 erg である。これは活動銀河核のジェットによるエネルギー放出が、母銀河の進化に影響を及ぼすほど大きいことを示唆している。