アブストラクト:
近年の高精度な観測により、アンドロメダ銀河(M31)のハロー領域には、ステラ―ストリームやステラ―シェル等の未だに力学的に緩和していない数多くの構造が発見されてきた。特に、アンドロメダストリームと呼ばれるM31中心から100kpcに渡って帯状に伸びる巨大な星の構造は、その空間構造・視線速度構造が観測されてきた。詳細な銀河衝突のN体シミュレーションにより、このような構造は、約7億年前にM31に衝突した10^9Msun程度の質量を持つ矮小銀河のモデルでよく再現されることが示されてきた。しかしながら、観測されたアンドロメダストリームの輝度分布を解析すると、これまで用いられてきた球対称な矮小銀河では再現できない非対称性が見られることがわかった。本研究では、衝突した矮小銀河のモデルとして回転成分を持つ円盤銀河を用いて、円盤の初期の傾け方やスケールハイトをパラメータにした大規模なサーベイを行い、観測データとの詳細な比較を行った。衝突させた矮小銀河の特性として、近傍の質量の大きな矮小銀河の性質と類似したものを用いて、非対称な構造を再現することに成功した。さらに、矮小円盤銀河に付随したダークマターハローの分布の進化についても紹介する。