アブストラクト:
近赤外線での高感度の観測が可能となり、遠方銀河のHα輝線を捉えることも比較的容易になってきた。しかし、銀河の正確な星形成率の測定には(Hα輝線といえども)ダスト減光の影響を考慮する必要がある。理想的には、Hα/Hβ比に基づく補正が有用であるが、特に遠方銀河の研究では、微弱なHβ輝線の検出が困難であり、個々の銀河でHα/Hβ比からダスト減光量を測定することはきわめて難しいのが現実である。そこで本研究では、SDSS(DR7)とGALEX全天サーベイ(GR5)のデータを組み合わせ、近傍銀河(z<0.1)を用いて、遠方銀河でも比較的容易に取得できるHα輝線強度L(Hα)と紫外線光度L(UV)からダスト減光量A(Hα)を推定する経験的手法を構築した。解析の結果、Hα/UV比とA(Hα)には(予想どおり)正の相関が確認されたが、そこには大きな分散が見られた。この分散は、銀河の星質量やHα輝線の等価幅EW(Hα)と関係しており、たとえば同じHα/UV比をもつ銀河であっても、大質量な銀河ほどA(Hα)は大きい。さらに「あかり」の遠赤外全天サーベイデータを組み合わせ、IR/UV比(連続光に対する減光量)とHα/Hβ比(ガス輝線への減光量)を調べたところ、大質量銀河ほどガスへの減光が強いという興味深い傾向も見えてきた。講演では、これらの結果を報告するとともに、ダスト減光に関連する現状の理解の問題点等を整理してみたい。