アブストラクト:
"銀河の個数密度が高い環境であるほどその領域での星形成銀河(青い銀河)の割合が減少し、楕円銀河(赤い銀河)の割合が増加するというように、銀河の存在する密度環境は銀河進化に大きな影響を与えている。一方で、銀河進化の遷移期にあると考えられる活発な星形成を行う銀河種族(スターバースト銀河)は、どの密度環境でも存在していることが確認されている。これはどのような密度環境においても銀河進化を促すような活発な星形成が起こり得ることを示しているが、その星形成の特徴や起源は密度環境によって異なっている可能性が考えられる。ここで、銀河中の原子ガスの質量割合が高密度環境になるにつれて減少する傾向が、先行研究により報告されていることに着目した。これにより原子ガスの密度環境依存性は示されたが、これが星形成に影響しているとすれば星形成の直接の材料である分子ガスの性質にも環境依存性がみられる可能性がある。 そこで我々は、SDSS-AKARIを用いて選択した幅広い密度環境に存在するスターバースト銀河約40天体について野辺山45mによるCO(1-0)観測を行い、その分子ガス質量を調査した。その際COLD GASSなどのCO(1-0)観測の文献データが存在する銀河は観測ターゲットからはずし、そのデータも文献値として併用した。これら観測や文献値から求めた分子ガス質量を用いて、星形成効率(SFR/M_H2)や分子ガス質量比(M_H2/M*+M_H2)の環境依存性を調査した。その結果、星形成効率は密度環境によらないものの、分子ガス質量比が密度増加に伴ってやや減少する傾向を示した。つまり、スターバースト銀河はどの密度環境においても分子ガスの量に見合った星形成を行っているものの、分子ガスの存在量はその銀河が過去に経験した銀河相互作用の頻度などと関係している可能性が考えられる。実際、この傾向は平均よりも低密度な側まで続いていることから、銀河団のような高密度環境下だけで働くメカニズムだけでなく、より広い環境レンジで働く物理プロセスが関係している可能性が高い。 本講演では、これら結果について議論する。"