アブストラクト:
"階層的銀河進化モデルの枠組みの中でクェーサーは高密度環境において発現しやすいと考えられ、電波銀河と共に原始銀河団の指標として用いられてきた。しかし近年 i)z>6クェーサー周囲に必ずしもLAE/LBG高密度が見られない、ii)準解析的シミュレーションにおいて各時代の最も重いハロー中にクェーサーが発現しない、といった示唆が成されており上記のシナリオは必ずしも自明でない。 そこで我々は複数のクェーサーが対を成して同じハロー中に存在しているような特異な環境に注目し、この最もバイアスされていると考えられる環境の銀河密度測定を行うプロジェクトを開始した。 本研究はHSCすばる戦略枠観測(HSC-SSP)サーベイの超広視野観測を最大限生かすものであり、またHSC-SSPサーベイにおけるプローブを用いない無バイアス原始銀河団探査と相補的な立場にある。これまでのクェーサー対の研究のほとんどはz<1の低赤方偏移で行われており高赤方偏移クェーサー対の系統的な研究は本研究が初めてである。 我々は、現状の約100平方度のWide領域の観測データから複数のz>3 SDSSクェーサー対について周囲の銀河密度測定を行い、その結果一つの非常に距離の近いz~3.6クェーサー対周囲に有意な密度超過を発見した。 本講演では本プロジェクトの初期成果について報告すると共に、クェーサー発現と周囲の銀河形成の繋がりについても議論する。"