宇宙エックス線・ガンマ線検出テクノロジーの異分野への展開

 

宇宙開発研究機構が第26号科学衛星として平成25年(2013年)の打ち上げをめざしている「ASTRO-H」衛星の研究グループは、 これまでの検出器に比べて極めて高い感度を持つ、硬X線検出器(HXI)と軟ガンマ線検出器(SGD)の開発を進めてきました(ASTRO-H衛星(旧称 NeXT衛星)に関する説明はhttp://astro-h.isas.jaxa.jp をご覧ください)。

宇宙科学研究本部、広島大学、 東京大学、 スタンフォード大学の研究者が中心となったグループが開発を行った (1) 高いエネルギーのX線に高い感度をもつテルル化カドミウム(CdTe)半導体を用いたイメージング検出器と、(2) シリコン(Si)半導体とCdTe半導体のイメージング素子を組み合わせたSi/CdTe半導体コンプトンガンマ線カメラは、それぞれ、硬X線検出器(HXI)と軟ガンマ線検出器(SGD)に用いられます。 これらの検出器は、10年以上にわたるSiやCdTeの半導体センサー技術、低雑音アナログ信号処理LSI技術、高密度実装技術、高速データ処理コンピュータ技術に関する研究を統合して開発された独自技術です。

 これらの先端技術研究は、すでに35編以上の論文、10回にも及ぶ国際会議における招待講演などの成果を生み出しています。また、Si/CdTeコンプトンカメラに用いられる低雑音シリコンストリップ検出器はSPIE国際学会のニュースルームにて紹介されました( 記事はhttp://spie.org/x20060.xml?highlight=x2418をご覧下さい)。最新の研究成果は、本年6月にフランスで行われたNDIP08(5th International Conference on New Developments In Photodetection)において発表されました。

最近の研究によってこれらの検出器およびその性能を引き出すための先端的基盤技術は、医療、創薬、生命科学、環境、新素材と広い分野の検出器に対しても有効であることが、明らかになりました。そのため、このたび、これらの分野で優れた成果をあげている研究機関と共同研究協定等を結び、宇宙技術の異分野への展開をはかることになり、これを8月20日の宇宙開発委員会本委員会にて報告いたしました (資料は、こちら)。

硬X線検出器(HXI)

軟ガンマ線検出器(SGD)