東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構 Belle II 実験グループ

お知らせ

2024/05/27
大学院博士課程の男谷文彰さんが 16th Pisa Meeting on Advanced Detectors でポスター講演を行いました。
2024/02/22
大学院博士課程の島崎奉文さんが新潟大学素粒子論研究室セミナーで講演を行いました。
2023/11/25
大学院博士課程の島崎奉文さんが Flavor Physics Workshop 2023 でベストトーク賞を受賞しました。
2023/05/01
(追記あり) [予告] 2024 年度の大学院入試に関連したガイダンス等が 2023 年 5 月以降 3 つ開かれます。
2023/03/30
大学院修士課程の島崎奉文さんが第 36 回 B2JS 勉強会でベストトーク賞を受賞しました。
過去のお知らせ
2023/03/23
大学院修士課程の男谷文彰さんと島崎奉文さんが日本物理学会 2023 年春季大会で講演を行いました。
2023/03/09
当グループのウェブサイトの運用を開始しました。
2023/02/21
大学院修士課程の男谷文彰さんと島崎奉文さんが ICEPP シンポジウムで講演を行いました。
2023/02/14
Kookhyun Kang 特任研究員が Belle II SVD グループの Deputy Leader に任命されました。
2023/01/20
大学院修士課程の男谷文彰さんと島崎奉文さんの修士論文審査会が開かれました。
2022/11/08
大学院修士課程の男谷文彰さんと島崎奉文さんが Flavor Physics Workshop 2022 で講演を行いました。
2022/10/24
Kookhyun Kang 特任研究員が国際会議 VERTEX 2022 で講演を行いました。

研究紹介

素粒子標準理論とその限界


図 1:  素粒子理論の粒子一覧。 (Credit: Wikipedia)

宇宙は何から作られているのでしょう。この問の答は 6 種類の「クォーク (左図紫色の粒子群)」と呼ばれる素粒子と 6 種類の「レプトン (左図緑色の粒子群)」と呼ばれる素粒子として知られています。 たとえば、原子核を構成する陽子や中性子は、\(u\) というクォークと \(d\) というクォークが 3 つ集まって構成されています。 電子はレプトンに属する素粒子で、ほかに地表で見られる宇宙線の正体である \(\mu\) 粒子や 3 種類の存在が知られているニュートリノもレプトンに属する素粒子です。 クォークとレプトンのほかに、それらの間に働く力を素粒子に見立てた 4 種類の「ゲージ粒子 (左図赤色の粒子群)」と呼ばれる粒子の存在も知られています。 さらに、2012 年にはクォーク、荷電レプトン、ゲージ粒子に質量を与える仕組みを素粒子に見立てた「ヒッグス粒子 (左図黄色の粒子)」の存在も確認されました。

宇宙に存在するこれらの素粒子とその間にはたらく力の仕組みはすでに詳しく調べられていて、 「素粒子標準理論」と呼ばれる理論にまとめられています。 素粒子標準理論は大きな成功を収めた理論で、観測されている素粒子の振る舞いのうち、 素粒子標準理論と明確に矛盾するものはほとんど見つかっていません。

その一方で、素粒子標準理論が宇宙の森羅万象を記述できる究極の理論ではないこともわかっています。 たとえば、天体の運行などから存在が明らかとなった暗黒物質は、その性質と一致する粒子が素粒子標準理論の素粒子表には載っていません。 また、実験によってニュートリノには質量があることが明らかになりましたが、 素粒子標準理論の枠組みではニュートリノに質量を与えることができません。 そのため、これらの観測事実や実験事実を説明できる、 素粒子標準理論とは別の枠組みを持つ新しい素粒子物理学が存在する可能性が強く指摘されています。

新しい素粒子物理学を求めて – Belle II 実験



図 2:   調整中の Belle II 測定器。 (Credit: KEK/Shota Takahashi)

私たち Kavli IPMU の Belle II 実験グループは、新しい素粒子物理学の発見とその枠組みの構築のため、2019 年に本格的なデータ収集を開始した我が国の高エネルギー加速器実験 Belle II に参加しています。

Belle II は、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構 (KEK) で進められている高エネルギー加速器実験です。 7 GeV に加速した電子と4 GeVに加速した陽電子を衝突させて \(B\) 間子 (\(b\) クォークを含む粒子)、\(D\) 中間子 (\(c\) クォークを含む粒子)、\(\tau\) レプトンといった粒子を発生させます。 そして、これらの粒子の振る舞いを詳細に記録し、素粒子標準理論の予言と食い違いはないかや、あったとしたらどのように食い違っているのかを調べることで、新しい素粒子物理学の探索とその枠組みの構築を行うことを目指しています。

Belle II 測定器は、電子-陽電子衝突点を取り囲むように設置され、衝突によって生じる粒子の位置、運動量、エネルギー、および種類を記録できるように設計されています。 右の図は Belle II 実験の測定器の写真で、調整中のようすを撮影したものです。 調整のため青い 8 角形の装置 (検出器の一部) が縦に半割りで開いています。 閉じた状態の Belle II 測定器の大きさは 7.7(幅)×7.2(奥行き)×7.9(高さ)m³ です。

Belle II 実験では、日本のほか世界 23 の国と地域から 1,100 人を超える研究者、技術者、学生が集結し、研究に取り組んでいます。

Kavli IPMU と Belle II 実験



図 3:  Kavli IPMU で活躍した Belle II SVD の開発・量産メンバー。Kavli IPMU のクリーンルームにて撮影。 (Credit: Kavli IPMU)

Kavli IPMU の Belle II 実験グループは、2012 年から 2018 年まで、大学院理学系研究科物理学専攻のほか、インドの Tata 基礎科学研究所や韓国の Seoul 大学、Kyungpook 大学、日本の KEK、東京理科大学、東北大学、新潟大学、日本歯科大学などと協力し、Belle II 実験で粒子の位置を調べる検出器である「シリコン崩壊点検出器 (Silicon Vertex Detector, SVD)」のセンサーモジュールの開発・量産を行いました (左図)。 Belle II 実験で使用する SVD モジュールの半数以上は Kavli IPMU で内製されたものです。 高エネルギー加速器実験用の半導体検出器の量産成功は、素粒子実験に参加する国内の大学・研究所では初めての成果と考えられています。 現在、Kavli IPMU の Belle II 実験グループは、SVD モジュールの開発と量産で培った技術をもとに、Belle II 実験における SVD の安定運転や、新しい粒子位置検出器の開発に取り組んでいます。

Kavli IPMU の Belle II 実験グループが興味を持って取り組んでいる新しい素粒子物理学の探索の一つに「\(CP\) 対称性の破れ」の精密測定があります。 \(CP\) 対称性の破れとは、\(B^0\) 中間子と \(\bar{B}^0\) 中間子のように、粒子と反粒子の間にある性質の違いのことを指します。 \(B\) 中間子が関わる素粒子反応の一部は新しい素粒子理論の影響を受けやすいと考えられており、そういった素粒子反応では新しい素粒子理論の影響によって \(CP\) 対称性の破れの値が素粒子標準理論の予想と食い違っている可能性があります。そこで、私たちのグループでは、\(B\) 中間子が関わるさまざまな素粒子反応の \(CP\) 対称性の破れを精密に測定し、素粒子標準理論の予想値と比較することで新しい素粒子理論の証拠をつかもうとしています。 この研究では、どの素粒子反応でどの程度の食い違いがあったのかを列挙することで、新しい素粒子理論の枠組みを調べることも可能です。 精度よく \(CP\) 対称性の破れを測定するには SVD の深い理解が大切です。 私たちは SVD に関する知見をこの研究に応用しています。

研究論文

素粒子物理学に関する研究論文

  1. I. Adachi et al. (Belle II Collaboration), "Measurement of \(CP\) asymmetries in \(B^0 \rightarrow K^0_SK^0_SK^0_S\) decays at Belle II," to appear in Phys. Rev. D.
  2. I. Adachi et al. (Belle II Collaboration), "New graph-neural-network flavor tagger for Belle II and measurement of \(\sin 2\phi_1\) in \(B^0 \to J/\psi K_S^0\) decays," to appear in Phys. Rev. D.
  3. I. Adachi et al. (Belle II Collaboration), "Measurement of \(CP\) asymmetries in \(B^0\to\phi K_S^0\) decays with Belle II," Phys. Rev. D 108, 072012 (2023).
  4. I. Adachi et al. (Belle II Collaboration), "Measurement of \(CP\) violation in \(B^0\to K_S^0\pi^0\) decays at Belle II," Phys. Rev. Lett. 131, 111803 (2023).
  5. Y.-T. Lai et al. (Belle Collaboration), "First measurement of the \(B^+\to\pi^+\pi^0\pi^0\) branching fraction and \(CP\) asymmetry," Phys. Rev. Lett. 130, 181804 (2023).
  6. I. Adachi et al. (Belle II Collaboration), "Measurement of the \(B^0\) lifetime and flavor-oscillation frequency using hadronic decays reconstructed in 2019-2021 Belle II data," Phys. Rev. D 107, L091102 (2023).
  7. T. Higuchi on behalf of the Belle II Collaboration, "Recent Results from Belle and Belle II," J. Phys.: Conf. Ser. 2446, 012024 (2023).
  8. H. B. Jeon et al. (Belle Collaboration), "Search for the radiative penguin decays \(B^0\to K_S^0K_S^0\gamma\) in the Belle experiment," Phys. Rev. D 106, 012006 (2022).
  9. T. Czank et al. (Belle Collaboration), "Search for \(Z^0\to\mu^+\mu^-\) in the \(L_\mu\)-\(L_\tau\) gauge-symmetric model at Belle," Phys. Rev. D 106, 012003 (2022).
  10. S. Higashino et al., "Weak value amplification in high energy physics: A case study for precision measurement of \(CP\) violation in \(B\) meson decays," Phys. Rev. D 104, 033001 (2021).
  11. K. H. Kang et al. (Belle Collaboration), "Measurement of time-dependent \(CP\) violation parameters in \(B^0\to K_S^0K_S^0K_S^0\) decays at Belle," Phys. Rev. D 103, 032003 (2021).
2020年以前の論文
  • F. Abudinén et al. (Belle II Collaboration), Search for Axionlike Particles Produced in \(e^+e^-\) Collisions at Belle II," Phys. Rev. Lett. 125, 161806 (2020).
  • Y. Ku et al. [Belle Collaboration], "Search for \(B^0\) decays to invisible final states \((+\gamma)\) at Belle," Phys. Rev. D 102, 012003 (2020).
  • E. Kou et al., "The Belle II Physics Book," PTEP 2019, no. 12, 123C01 (2019).
  • T. Iwashita et al. [Belle Collaboration], "Measurement of branching fractions for \(B\to J/\psi\eta K\) decays and search for a narrow resonance in the \(J/\psi \eta\) final state," PTEP 2014, no. 4, 043C01 (2014).

実験技術に関する研究論文

  1. C. Irmler et al. (Belle II SVD Collaboration), "The silicon vertex detector of the Belle II experiment," Nucl. Instrum. Meth. A 1045, 167578 (2023).
  2. K. Adamczyk et al. (Belle II SVD Collaboration), "The design, construction, operation and performance of the Belle II silicon vertex detector," JINST 17, P11042 (2022).
  3. L. Zani et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Silicon Vertex Detector of the Belle II experiment," Nucl. Instrum. Meth. A 1038, 166952 (2022).
  4. Y. Uematsu et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Silicon Vertex Detector of the Belle II experiment," Nucl. Instrum. Meth. A 1033, 166688 (2022).
  5. F. Abudinén et al., "B-flavor tagging at Belle II," Eur. Phys. J. C 82, 283 (2022).
  6. G. Rizzo et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Belle II Silicon Vertex Detector: Performance and Operational Experience in the First Year of Data Taking," JPS Conf. Proc. 34, 010003 (2021).
  7. Y. Uematsu et al. (Belle II SVD Collaboration), "A Study of Hit-time Reconstruction of Belle II Silicon Vertex Detector," JPS Conf. Proc. 34, 010017 (2021).
2020年以前の論文
  • H. Tanigawa et al. (Belle II SVD Collaboration), "Beam background study for the Belle II Silicon Vertex Detector," Nucl. Instrum. Meth. A 982, 164580 (2020).
  • H. Tanigawa et al. (Belle II SVD Collaboration), "Performance of the Belle II Silicon Vertex Detector," Nucl. Instrum. Meth. A 972, 164129 (2020).
  • H. Aihara et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Silicon Vertex Detector of the Belle II Experiment," proceedings of the the 27th International Workshop on Vertex Detectors (VERTEX 2018), accepted on July 19th, 2019 and published on September 6th, 2019.
  • R. Thalmeier et al. (Belle II SVD Collaboration), "Series production testing and commissioning of the Belle II SVD readout system," Nucl. Instrum. Meth. A 958, 162942 (2020).
  • C. Irmler et al. (Belle II SVD Collaboration), "Run and slow control system of the Belle II silicon vertex detector," Nucl. Instrum. Meth. A 958, 162706 (2020).
  • G. Casarosa et al. (Belle II SVD Collaboration), "Commissioning of the Belle II Silicon Vertex Detector," Nucl. Instrum. Meth. A 958, 162184 (2020).
  • P. Kodys et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Belle II vertex detector integra- tion," Nucl. Instrum. Meth. A 936, 616 (2019).
  • R. Thalmeier et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Belle II silicon vertex detector: Assembly and initial results," Nucl. Instrum. Meth. A 936, 712 (2019).
  • D. Dutta et al. (Belle II SVD Collaboration), "Belle II Silicon Vertex Detector," JINST 12, C02074 (2017).
  • R. Thalmeier et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Belle II SVD data readout system," Nucl. Instrum. Meth. A 845, 633 (2017).
  • K. Adamczyk et al. (Belle II SVD Collaboration), "The Belle II silicon vertex detector assembly and mechanics," Nucl. Instrum. Meth. A 845, 38 (2017).
  • K. H. Kang et al. (Belle II SVD Collaboration), "A bonding study toward the quality assurance of Belle-II silicon vertex detector modules," Nucl. Instrum. Meth. A 831, 213 (2016).
  • K. Adamczyk et al. (Belle II SVD Collaboration), "Belle-II VXD radiation monitor- ing and beam abort with sCVD diamond sensors," Nucl. Instrum. Meth. A 824, 480 (2016).
  • K. Adamczyk et al. (Belle II SVD Collaboration), "The silicon vertex detector of the Belle II experiment," Nucl. Instrum. Meth. A 824, 406 (2016).
  • C. Irmler et al., "Construction and test of the first Belle II SVD ladder implementing the origami chip-on-sensor design," JINST 11, C01087 (2016).
  • K. Adamczyk et al. (Belle II SVD Collaboration), "Belle II SVD ladder assembly procedure and electrical qualification," Nucl. Instrum. Meth. A 824, 381 (2016).
  • S. Yamada et al., "Data Acquisition System for the Belle II Experiment," IEEE Trans. Nucl. Sci. 62, no. 3, 1175 (2015).
  • S. Y. Suzuki et al., "The Three-Level Event Building System for the Belle II Experiment," IEEE Trans. Nucl. Sci. 62, no. 3, 1162 (2015).
  • M. Friedl et al., "First results of the Belle II Silicon Vertex Detector readout system," JINST 9, C12005 (2014).
  • K. H. Kang et al., "Study of gluing and wire bonding for the Belle II Silicon Vertex Detector," Nucl. Instrum. Meth. A 763, 255 (2014).
  • R. Itoh et al., "Data flow and high level trigger of Belle II DAQ system," IEEE. Trans. Nucl. Sci. 6, 3720 (2013).
  • M. Friedl et al., "The Belle II Silicon Vertex Detector," Nucl. Instrum. Meth. A 732, 83 (2013).

修士論文

  1. F. Otani, "Radiation tolerance studies of the double sided silicon strip sensor," MSc thesis, The University of Tokyo, 2023 [PDF]
  2. T. Shimasaki, "Study on first-level trigger of the Belle II experiment using upgraded silicon strip detector," MSc thesis, The University of Tokyo, 2023 [PDF]

メンバー

在籍メンバー

教員教授樋口岳雄Kavli IPMU 棟 A34 室 (takeo.higuchi@ipmu.jp)
特任研究員   Kookhyun KangKavli IPMU 棟 A46 室
大学院生 博士課程 Fanli ZengKavli IPMU 棟 C2 室 (理学系研究科物理学専攻所属)
  同上 男谷文彰Kavli IPMU 棟 C2 室 (理学系研究科物理学専攻所属)
  同上 島崎奉文Kavli IPMU 棟 C2 室 (理学系研究科物理学専攻所属)
離職者・卒業生
特任研究員 Yun-Tsung Lai高エネルギー加速器研究機構 助教
    Anton de la Fente企業
    Chiara La Licata
    Thomas Czank東京都立大学 特任研究員
    森井友子
    Changwoo JooNebraska-Lincoln 大学 PD Researcher Associate
    Antonio PaladinoPisa 大学 Research Fellowship
大学院生 博士課程 Colm Murphy企業

大学院に入学・進学して Belle II 実験の研究に取り組みたい方へ

Belle II 実験に参加していっしょに研究に取り組みたい大学院生の入学・進学を歓迎します。 お問い合わせはいつでも受け付けていますので、どうぞお気軽にメイルをお寄せください (お問い合わせ先: 樋口, takeo.higuchi@ipmu.jp)。

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