Macdonald多項式と呼ばれる二つのパラメータ(q,t)でパラメトライズされる対称多項式がある. q や t を特殊化すると, Schur 関数を始めとする古典的な対称多項式になり, また q = t^{\alpha} (\alpha はパラメータ) として, t--> 1に特殊化するとJack多項式と呼ばれるものになる. これらの対象は, 現在までのところ組み合わせ論的な立場や球関数的な立場からは調べられているが, 幾何学的な立場(例えば, Schur関数がGrassmann単調体のあるホモロジーの元として捉えられたように)からはあまり調べられていないように思う.
今回は, Macdonald多項式を捉える枠組みとして, アファイン平面上の点のヒルベルト概型とその上の同変K群を用いたものを提唱する. 働く群としては, アファイン平面に働く二次元トーラスを考えて, それがヒルベルト概型に誘導する作用を考える. Macdonald多項式の特徴づけに使われる性質(i.e., 直交性, 単項対称多項式との関係,etc)が幾何学的に理解される. それらは全て証明が出来たわけでないが, 幾つかの状況証拠はあがっている.
そもそも, アファイン平面上の点のヒルベルト概型は点の数を動かして, 母空間と考えれば, (初等的なものを除けば)一番やさしい母空間であり, それが母関数が活躍する対称多項式と繋がりを持つことはある意味で必然的と思う. しかし, アファイン平面を他の複素曲面に取り替えたらどうなるだろうか? という自然な問題があるので奥行きを感じ, とても面白い.