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存在自体は確実視されながらも正体不明なダークマター。そのダークマターをとらえる実験XENONnTが国際協力の下、イタリアで行われている。Kavli IPMUの実験物理学者、山下雅樹さんとカイ・マルテンスさんは、その実験に日本グループの一員として参加している。
実験の心臓部は、-100℃に冷やした8.5トンほどの液体キセノンを入れた検出器だ。その検出器は、巨大な水タンクの内部に設置されている。ダークマター粒子がキセノンの原子核に衝突すると光や電子が出る。その光をとらえることで、ダークマターを検出しようとしている。
そのときに重要なのが、ダークマター意外の粒子によって生じる信号(ノイズ) を抑えたり区別したりすることだ。キセノンに衝突して光を放つのはダークマター粒子だけではない。まかでも紛らわしいのが中性子だ。中性子がキセノン原子核に当たると、ダークマター粒子と似たような信号が出てしまう。巨大な水タンクは、外部からの中性子を遮蔽するためのものだ。
しかしタンクの部材からも中性子は出る。そのような中性子による信号を区別するため、ガドリニウムという元素をごくわずか水に入れることになっている。これはスーパーカミオカンデで培われた技術を応用したものだ。またキセノンは高純度に保つ必要がある。キセノンから出る光や電子による信号の大きさにはキセノンの純度が関係するからだ。ガドリニウムの注入やキセノンの純化は、山下さんやマルテンスさんら日本グループが担当している。
2021年からスタートした実験は5年ほど続けられる。ダークマターが発見されるか、要注目だ。
-写真は、山下先生が撮影されたグランサッソの山
-文章、2023年10月Kavli IPMU ものしり新聞より抜粋