講演者:小山佑世 (宇宙航空研究開発機構)
タイトル:The Star Formation Main Sequence and Beyond: tracking down the environmental impacts on the SFR-M* relation out to z>2
アブストラクト:近年の研究によって星形成銀河の星形成率と星質量の間には強い相関があることが知られるようになり、この「星形成率-星質量関係」は星形成銀河のメインシーケンスと呼ばれて昨今の銀河進化研究における重要な研究テーマの一つとなっている。近傍宇宙の研究からは、このメインシーケンスが銀河環境に依存しないことが報告されて話題になったが、本講演ではこれを遠方宇宙(z=0.4,0.8,2.2)へ遡って調査した結果を報告する。我々はすばる望遠鏡のナローバンドフィルター群を用いた遠方銀河団領域の星形成銀河探査を進めており(MAHALO-Subaruプロジェクト)、このMAHALOプロジェクトで構築した遠方銀河団環境のHalphaエミッターと、一般フィールド領域のHalphaエミッター(HiZELSサンプル)を比較した。その結果、星形成銀河のメインシーケンスは、Halpha輝線のみに基づいた星形成率を利用するかぎり、調査したすべての時代において、銀河団でもフィールドでもほぼ一致しており、環境による明らかな相違は見られないことが分かった。しかし一方で、我々のデータに基づくさらに詳細な解析からは、メインシーケンスに沿った銀河の星質量の分布や、Halpha輝線のダスト吸収量A(Ha)などが銀河環境と関係している可能性が示されており、上記結果の解釈には注意が必要である。講演では、遠方宇宙における銀河メインシーケンスの環境依存性について現状の理解をまとめるとともに、この理解をさらに深めていくための今後の方向性についても議論したい。
発表スライド:(PPT)