科学衛星の規模が大きくなり、搭載される機器が多種多様になるにつれて、
高い信頼度を持ちながら、短期間で開発を行うことの
困難さ、あるいは必要な試験の複雑さが大きな課題となっています。
現在、宇宙科学研究本部の科学衛星専門委員会、宇宙データ処理班では、
これまでの科学衛星の開発の問題点を元に、データ処理、あるいは
搭載機器間コミュニケーションという観点において、
信頼度が高い設計を行うための衛星アーキテクチャの研究を進めています。
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- Space Wireを用いた宇宙用データ処理コンピュータ
Space Cube2 (JAXA/NEC)
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次々と開発される衛星がそれぞれ異なった目的を持ち、それに応じて異なった
形態を持つような場合には、「固定化した共通バス」の考え方ではなく、
モジュール化やインターフェースやシリアルラインなどの標準化の考え方
をとりこむこと、また、小型衛星から大型衛星に共通に
適用可能な「スケーラブルな」アーキテクチャを意識した
データ処理システムの設計という観点が重要です。
センサー、アクチュエータから、各機器のデータ処理装置、
さらに衛星全体のデータ処理ユニットとを、柔軟に接続するための
新しいデータ処理系として、現在開発を進めているのが、
ルーティング機能を持つネットワークプロトコルに、接続された機器の
ローカルバスにアクセスするための仕組み(リモートメモリアクセス)を
とりこんだものです。
このようなネットワーク型の衛星アーキテクチャを実現するために、
われわれが、現在、実証を進めているのが、次世代の宇宙機用ネットワーク規格
「SpaceWire」です。
Space Wireは、当初、ESAによって
IEEE1355をベースに宇宙標準として提案されましたが、
現在、さらに使いやすいように改良、あいまいさの明確化を行い、
組み込み機器間の柔軟な接続をめざしています。こうした作業に、
欧米の宇宙機関、宇宙メーカが参加し、日本からもJAXA宇宙科学研究本部や
大阪大学を中心にSteering Committeeのメンバー
として参加し、議論を行っています。また、日本Space Wireユーザー会が
組織されており、JAXA、大阪大学、東京大学、東北大学、首都大学、金沢大学
などの大学や、数多くの衛星、ロケットメーカーが参加して情報交換を行っています。
参考資料
リンク
Plug-and-Play/Operationally Responsive Space
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