2001年度前期講義「幾何学I」
目次
開講のお知らせ
4月13日
4月20日
4月27日
5月11日
5月18日
5月25日
6月1日
6月8日
6月15日
6月22日
6月29日
試験問題
合格者発表
追試試験問題
4月13日(金)開講予定
2001年6月29日(金)が最終講. 単位は試験で認定する.
試験は, 9月14日(金)10:40am〜12:00am
ノート教科書持ち込み不可
追試験は, 9月28日(金)10:30am〜12:00am
ノート教科書持ち込み不可
授業内容
空間内の曲線, 平面を例とするユークリッド空間に埋め込まれた多様体につい
て, その基本的な概念, 性質を解説する. ユークリッド空間の上の(多変数の)
微積分学が, 曲がった多様体の上に拡張される.
参考文献
- スピヴァック (斎藤正彦訳): 多変数解析学, 東京図書
- 杉浦光夫: 解析入門 I,II, 東京大学出版会
- J.Milnor: Topology from differentiabl viewpoint, The University Press of Virginia
2000年度の幾何学Iのページ
.
4月13日にやったこと
序. 平面曲線
- 平面曲線の``定義'' : R2 上の滑らかな関数 F によって,
{ (x,y) | F(x,y) = 0}と表わされる集合のこと. ただし, きちんとした定義
ではない. 例えば x2 + y2 + 1 = 0 のように空集合
になったりして, ちょっとまずい
- 接線の``定義'' : ∂F/∂x(a,b) (x-a) + ∂F/∂y(a,b) (y-b) = 0 で表わされる直線のこと
- 特異点の``定義'' : ∂F/∂x(a,b) = ∂F/∂y(a,b) = 0 となるような曲線上の点( a,b)のこと (この定義は, F の取り方に依存する)
- 平面曲線のもう一つ別の``定義'': (x,y) : R --> R2 によって, { (x(t),y(t)) | t ∈ R} と表わされるような集合のこと. パラメータ表示と言う.
- 接線の``定義'' : x = dx/dt(a) s + x(a), y = dy/dt(a) s + y(a) でパラメータ表示される直線のこと.
- 特異点の``定義'' : dx/dt(a) = dy/dt(a) = 0 となるようなaに対し, (x(a),y(a))のこと (この定義はcの取り方に依存する)
- 二つの曲線の``定義''は特異点以外では同じになる. そのためには次の二つの定理が必要.
- 陰関数定理の特別な場合. F(x,y) = 0 で ∂F/∂y(a,b) ≠ 0 のとき, (a,b)
の回りで y = f(x) と書ける.
- 逆関数定理の特別な場合. x = f(t) という関数で, f'(a) ≠ 0 のとき,
a の回りで t = g(x) と書ける.
4月20日にやったこと
先週やり残した陰関数定理の証明を完了した.
§1. 多変数の微分(復習)
- 写像 f: Rm → Rn が点aで全微分可能であることの定義. ある線形写像 A が存在して, |f(a+h) - f(a) - Ah|/|h| → 0 となること
- これは, 写像 f を点 a で線形写像で近似することである.
- 偏微分の定義
- A を Df(a) と表す.
- 合成写像の微分法則. D(g○f)(a) = Dg(f(a)) Df(a) が成り立つ.
4月27日にやったこと
§2. 逆関数定理とその系
- 言葉の復習: 開集合, 閉集合
- 逆関数定理
- UをRn の開集合, f:U → Rn をC1級写像で det Df(a) ≠ 0とする. こ
のとき, a を含む開集合 V と f(a) を含む開集合 W であって, fのVへの制限
f|Vが V と W の間の全単射となり, 逆写像 (f|V)-1も C1 級になるもの
が存在する. 元々の f が C∞級であれば(f|V)-1もC∞級である.
- この定理の意味は, 写像の微分が可逆ならば写像自身も局所的には可逆であるということである.
- 逆関数定理の証明: 縮小写像の原理を用いる.
5月11日にやったこと
逆関数定理の二つの系
- 陰関数定理
UをRn の開集合, f:U → RmをC1級写像で
f(0) = 0, Df(0)が全射であるとする. このとき, 0 を含む開集合 V と 0を含
む開集合 W (共にRn内)とC1級全単射写像 F: W → V
で逆もC1級のものが存在して, f|V○ F
(t1,...,tn) = (t1,...,tm)
(最初のmこの成分を取る写像)となる.
- 単射version
UをRn の開集合, f:U → Rm をC1級写像で f(0) = 0, Df(0)が単射である
とする. このとき, 0を含むRnの開集合 V, 0 を含むRm-nの開集合 V', 0
を含む Rm の開集合 W とC1級全単射写像 F: W → VxV'で逆もC1級のもの
が存在して, F○f|V(x1,...,xn) = (x1,...,xn,0,..,0) (0がm-n個並ぶ)
となる.
5月18日にやったこと
§3. 多様体(正しくはRnの部分多様体)
- 定義: M がm次元C∞級多様体であるとは, 次の条件を満たすこと.
各点 a∈ M に対して, a を含む開集合 U と C∞級写像 f :
U → Rn-m で, Df(y) は 全ての x∈U について全射であり, U∩M
= f-1(0) となるものが存在する
- 例: 球面, グラフ
- メビウスの帯は多様体であり, 一つの写像 f を用いて,
f-1(0)と表わせないものの例である.
- 曲線の定義に二通りあったように, 多様体の定義にも別のものがある.
定理: Mが多様体であることと, 次は同値.
(1) 各点 a∈ M に対して, a を含む開集合 U と Rm の開集
合 V と C∞級写像 g : V → U で, Dg(t) は全ての t∈V につい
て単射であり, U∩M = g(V) となるものが存在する.
(2) 各点 a∈ M に対して, a を含む開集合 U と Rnの開集
合 V と C∞級微分同相写像 F : U → W で, U∩M =
F-1(V∩Rm x {0}) となるものが存在する.
5月25日にやったこと
- 座標, 座標変換について
- 多様体上の関数 f:M → RがC∞級であることの定義
- 全ての座標 g: V → U∩M について, f○gがC∞級であることと上の定義は同値である.
- 全ての座標を取らなくても各点ごとにある座標 g があって, f○gがC∞級であるとしても同値である.
- 多様体の接空間の定義
- 多様体の定義にある様に f:U → Rn-m を取ったときに,
Tx M = Ker Df(x)と定義される.
6月1日にやったこと
- 多様体の三通りの定義(5月18日参照)に応じて接空間にも三通りの定義が可能.
(0) Tx M = Ker Df(x)
(1) Tx M = Im Dg(0)
(2) Tx M = { v | DF(x)v の Rn-m成分が0 }
これらは全て同じものを与え, さらに f, g, F の取り方には依存しない.
- f:M → R を M 上の関数とするとき, 線形写像dfx:
TxM → R が, 定義され, x における微分と呼ばれる.
- 定理. fが x で最大値を取るとき, dfx = 0 となる.
- Sn-1上の関数 xnは, 北極と南極でその微分が0となる.
§4. 多様体の間のC∞級写像
- 写像 f: M → NがC∞級であるとは, 包含写像 N → Rnを合成して, F: M → Rnを考えたときに, その各成分がM上のC∞級関数であるときを言う.
- f:L → M, g: M → N がC∞級写像であるとき, 合成写像
g○f: L → N もC∞級写像である.
6月8日にやったこと
- C∞級写像 f: M → Nは接空間の間の写像 dfx:TxM → Tf(x)Nを導く.
- x∈ Mが fの臨界点であるとは, dfx:TxM → Tf(x)Nが全射でないときを言う. 臨界点の像を臨界値といい, 臨界点でない点を正常点, 臨界値でない点を正常値という.
- 定理. y∈Nが正常値のとき, f-1(y)は空集合でなければ, (dim M - dim N)次元の多様体である.
- 上の定理の条件で, さらに dim M = dim Nのとき, yと各 x∈f-1(y)の回りに十分小さな開集合 V, U を取れば, f の U∩Mへの制限は V∩Nとの微分同相を与える. (特にfは局所的には全単射である.)
6月15日にやったこと
- f: M → N は C∞級写像で, dim M = dim N であり, M はコンパクトとする. y∈Nが正常値であるとすると,
- f-1(y)は有限個の点からなる.
- yを``少し''動かしてもその個数は変わらない.
- 代数学の基本定理 : f(z) = anzn + an-1zn-1 + … + a0をn次多項式とする. (aiは複素数で, n≧1で, an≠0とする.) このとき f(z) = 0は解を持つ.
- 立体射影 φ: S2\北極 → C = R2を用いて, F : S2→S2をF(北極)=北極, F(p) = φ-1(F(φ(p)) (p≠北極のとき)と定める.
- 主張1. F はC∞級である.
- 主張2. pは北極でないとし, z=φ(p)とする. このときpがFの臨界点である必要十分条件は, f'(z) = 0となることである.
6月22日にやったこと
- 代数学の基本定理の証明の続き
- 主張2によりFの臨界値の個数は有限個であり, 特に正常値の集合は連結である.
- 南極が臨界値であれば証明することはない. 正常値であるとして #F-1(南極)を考える. これが 0 であるとして矛盾を言う.
- 先週証明した結果と正常値の集合が連結であるにより, 任意の正常値に対して
そのFによる逆像の個数は一定であり, よって上の仮定により 0 個である. と言うことは, F の像は全て臨界値であると言うことで, F は定置写像と言うことになる. これは
最初のFの決め方に反する.
- Sardの定理
- 測度が0の集合の定義
- fがC1級写像でAが測度0のとき, f(A)も測度0である.
- 定理. f:M → N C∞級写像, dim M = dim N とする. このとき臨界値の集合は測度0である.
6月29日にやったこと
(二を法とする)写像度について.
- f, g:M → N C∞級写像がホモトピックであるとは, あるC∞級写像 F:Mx[0,1] → N で, F|Mx0 = f, F|Mx1 = gとなるものが存在するときを言う. このとき f〜gと表わす.
- 〜は同値関係である.
- 命題. M, Nは多様体で, dim M = dim N とする. さらにMはコンパクトでとする. f,g:M → N C∞級写像がホモトピックであるとし, y∈Nはf,gの正常値であると仮定する. このとき# f-1(y)≡# g-1(y)(mod 2)が成立する.
- f, g:M → N C∞級微分同相がアイソトピックであるとは, あるC∞級写像 F:Mx[0,1] → N で, F|Mx0 = f, F|Mx1 = gとなり, さらにF|Mxtが全てのtについて微分同相であるものが存在するときを言う.
- 補題. N を連結な多様体とし, y,z∈Nとする. このとき恒等写像とアイソトピックな微分同相h:N → Nで, h(y) = zとなるものが存在する.
- 定理. M, Nは多様体で, dim M = dim N とする. f:M → N C∞
級写像とする. さらにMはコンパクトで, Nは連結とす
る. このとき, y,z∈Nが共にfの正常値であるとすると, # f-1(y)
≡ #f-1(z) (mod 2)が成立する.
試験問題
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合格者発表
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授業の訂正 5月18日の講義で述べた多様
体の定義と同値な条件の(1)において, `gはVとU∩Mの間の同相写像'という条
件を付け加える. この条件を付け加えないと, 例えば自己交叉がある場合が除
外できなくなる. 授業では, 位相に関する部分をサボっていたので, この条件を
はっきりと説明するのを忘れてしまった...
追試
試験問題(pdf file)
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解答例
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nakajima@kusm.kyoto-u.ac.jp