2002年度後期講義「幾何学II」
目次
開講のお知らせ
10月4日
10月11日
10月18日
10月25日
11月1日
11月8日
11月15日
11月29日
12月6日
12月13日
1月10日
試験問題
合格者発表と解答例
10月4日(金)開講予定
11月22日(金)は, 11月祭のため休講.
2002年12月20日(金)は, 休講.
2003年1月17日(金)は, センター試験準備のために休講.
2003年1月10日(金)が最終講の予定. 単位は試験で認定する.
授業内容
空間内の曲線, 平面をユークリッド空間に埋め込まれた多様体として取り扱う。陰関数定理, 曲面の定義, 接空間, 写像の臨界点等が中心の話題となる。昨年度の幾何学Iの授業と重複する部分が多くなるが, その授業内容は
ここを参照のこと。今年度のレジュメもWeb pageで公開する予定である。
参考文献
- スピヴァック (斎藤正彦訳): 多変数解析学, 東京図書
- 杉浦光夫: 解析入門 I,II, 東京大学出版会
- J.Milnor: Topology from differentiabl viewpoint, The University Press of Virginia
10月4日にやったこと
序. 平面曲線
- 平面曲線の``定義'' : R2 上の滑らかな関数 F によって,
{ (x,y) | F(x,y) = 0}と表わされる集合のこと. ただし, きちんとした定義
ではない. 例えば x2 + y2 + 1 = 0 のように空集合
になったりして, ちょっとまずい
- 接線の``定義'' : ∂F/∂x(a,b) (x-a) + ∂F/∂y(a,b) (y-b) = 0 で表わされる直線のこと
- 特異点の``定義'' : ∂F/∂x(a,b) = ∂F/∂y(a,b) = 0 となるような曲線上の点( a,b)のこと (この定義は, F の取り方に依存する)
- 平面曲線のもう一つ別の``定義'': (x,y) : R --> R2 によって, { (x(t),y(t)) | t ∈ R} と表わされるような集合のこと. パラメータ表示と言う.
- 接線の``定義'' : x = dx/dt(a) s + x(a), y = dy/dt(a) s + y(a) でパラメータ表示される直線のこと.
- 特異点の``定義'' : dx/dt(a) = dy/dt(a) = 0 となるようなaに対し, (x(a),y(a))のこと (この定義はcの取り方に依存する)
- 二つの曲線の``定義''は特異点以外では同じになる. そのためには次の二つの定理が必要.
- 陰関数定理の特別な場合. F(x,y) = 0 で ∂F/∂y(a,b) ≠ 0 のとき, (a,b)
の回りで y = f(x) と書ける.
- 逆関数定理の特別な場合. x = f(t) という関数で, f'(a) ≠ 0 のとき,
a の回りで t = g(x) と書ける.
10月11日にやったこと
§1. 多変数の微分と逆関数定理(復習)
- 写像 f: Rn → Rm が点aで全微分可能であることの定義. ある線形写像 A が存在して, |f(a+h) - f(a) - Ah|/|h| → 0 となること
- これは, 写像 f を点 a で線形写像で近似することである.
- 方向微分, 偏微分の定義
- A を Dfa と表す.
- 合成写像の微分法則. D(g○f)a = Dgf(a) Dfa が成り立つ.
- 言葉の復習: 開集合, 閉集合
- C1級, C∞級の定義
- 逆関数定理
- UをRn の開集合, f:U → Rn をC1級写像で det Dfa ≠ 0とする. このとき, a を含む開集合 V と f(a) を含む開集合 W であって, fのVへの制限 f|Vが V と W の間の全単射となり, 逆写像 (f|V)-1も C1 級になるものが存在する. 元々の f が C∞級であれば(f|V)-1もC∞級である.
- この定理の意味は, 写像の微分が可逆ならば写像自身も局所的には可逆であるということである.
10月18日にやったこと
逆関数定理の二つの系
- 陰関数定理
UをRn の開集合, f:U → RmをC∞級写像で
f(0) = 0, Df0が全射であるとする. このとき, 0 を含む開集合 U'(⊂ U) と 0を含む開集合 V (⊂Rn)とC∞級微分同相写像 F: V → U'が存在して, f|U'○ F (t1,...,tn) = (t1,...,tm)(最初のm個の成分を取る写像)となる.
- 単射version
UをRn の開集合, f:U → Rm をC∞級写像で f(0) = 0, Df0が単射であるとする. このとき, 0を含む開集合 U'(⊂ U), 0 を含むRm-nの開集合 V, 0 を含む Rm の開集合 W とC∞級微分同相写像 F: W → U'xV が存在して, F○f|U'(x1,...,xn) = (x1,...,xn,0,..,0) (0がm-n個並ぶ)
となる.
§2. 多様体(正しくはRnの部分多様体)
- 定義: M がm次元C∞級多様体であるとは, 次の条件を満たすこと.
各点 a∈ M に対して, a を含む開集合 U と C∞級写像 f :
U → Rn-m で, Dfx は 全ての x∈U について全射であり, U∩M
= f-1(0) となるものが存在する
- 例: 球面, グラフ
- メビウスの帯は多様体であり, 一つの写像 f を用いて,
f-1(0)と表わせないものの例である.
10月25日にやったこと
- 座標の考えの説明 : 点と数の組を対応させること, 微分同相 = 座標変換
- 先週の逆写像定理の系は, (小さな開集合に制限して)座標を取り替えると標準的な写像になることを意味している.
- 曲線の定義に二通りあったように, 多様体の定義にも別のものがある.
定理: Mが多様体であることと, 次は同値.
(1) 各点 a∈ M に対して, a を含む開集合 U と Rnの開集合 V と C∞級微分同相写像 F : U → W で, U∩M = F-1(V∩Rm x {0}) となるものが存在する.
(2) 各点 a∈ M に対して, a を含む開集合 U と Rm の開集合 W と C∞級写像 g : W → U で, Dgt は全ての t∈W について単射であり, U∩M = g(W) となり, さらに g : W→U∩Mが同相写像になるものが存在する.
- g : W→U∩Mが同相写像 という条件がなぜ必要かの説明
- 多様体上の座標の説明 : 多様体上の点と数の組を(1)or(2)で対応させることができる. ただし, M全体で一度にはできず, U∩M と局所的にしかできないことに注意
11月1日にやったこと
- 多様体上の関数 f:M → RがC∞級であることの定義
- 局所座標 φ: U∩M → V について, f○φ-1がC∞級であることと上の定義は同値である.
- 多様体の接空間の定義 = 多様体の定義にある様に f:U → Rn-m を取ったときに, Tx M = Ker Dfxと定義される.
- 多様体の三通りの定義(10月25日参照)に応じて接空間にも三通りの定義が可能.
(0) Tx M = Ker Dfx
(1) Tx M = Im Dg0
(2) Tx M = { v | DFxv の Rn-m成分が0 }
これらは全て同じものを与え, さらに f, g, F の取り方には依存しない.
11月8日にやったこと
- f:M → R を M 上の関数とするとき, 線形写像dfx:
TxM → R が, 定義され, x における微分と呼ばれる.
- v = Dg0v' と書いたとき, dfxv =
D(f〇g)0v'となる.
- 定理. fが x で最大値を取るとき, dfx = 0 となる.
- Sn-1上の関数 xnは, 北極と南極でその微分が0となる.
§3. 多様体の間のC∞級写像
- 写像 f: M → NがC∞級であるとは, 包含写像 N → Rnを合成して, F: M → Rnを考えたときに, その各成分がM上のC∞級関数であるときを言う.
- f:L → M, g: M → N がC∞級写像であるとき, 合成写像
g○f: L → N もC∞級写像である.
11月15日にやったこと
- f:M → NがC∞級であることと次は同値:
fは連続であり, 各点 x∈M ごとにそのまわりの座標 φ: U→φ(U)と y=f(x)の回りの座標 ψ:V→ψ(V)を f(U)⊂Vとなるように取ると, ψ○f|U○φ-1 が C∞級である
- C∞級写像 f: M → Nは接空間の間の写像 dfx:TxM → Tf(x)Nを導く.
- x∈ Mが fの臨界点であるとは, dfx:TxM → Tf(x)Nが全射でないときを言う. 臨界点の像を臨界値といい, 臨界点でない点を正常点, 臨界値でない点を正常値という.
- 定理. y∈Nが正常値のとき, S = f-1(y)は空集合でなければ, (dim M - dim N)次元の多様体である. さらに Tx S = Ker dfxとなる.
11月29日にやったこと
- f: M → N は C∞級写像で, dim M = dim N であり, M はコンパクトとする. y∈Nが正常値であるとすると,
- f-1(y)は有限個の点からなる.
- yを``少し''動かしてもその個数は変わらない.
- 代数学の基本定理 : f(z) = anzn + an-1zn-1 + … + a0をn次多項式とする. (aiは複素数で, n≧1で, an≠0とする.) このとき f(z) = 0は解を持つ.
- 立体射影 φ: S2\北極 → C = R2を用いて, F : S2→S2をF(北極)=北極, F(p) = φ-1(F(φ(p)) (p≠北極のとき)と定める.
- 主張1. F はC∞級である.
- 主張2. pは北極でないとし, z=φ(p)とする. このときpがFの臨界点である必要十分条件は, f'(z) = 0となることである.
- 主張2(および因数定理)によりFの臨界値の個数は有限個であり, 特に正常値の集合は連結である.
- 南極が臨界値であれば証明することはない. 正常値であるとして #F-1(南極)を考える. これが 0 であるとして矛盾を言う.
- 上の結果と正常値の集合が連結であるにより, 任意の正常値に対してそのFによる逆像の個数は一定であり, よって上の仮定により 0 個である. と言うことは, F の像は全て臨界値であると言うことで, F の臨界点が有限個であったことに反する.
12月6日にやったこと
- Sardの定理
- 測度が0の集合の定義
- fがC1級写像でAが測度0のとき, f(A)も測度0である.
- 定理. f:M → N C∞級写像, dim M = dim N とする. このとき臨界値の集合は測度0である.
12月13日にやったこと
(二を法とする)写像度について.
- f, g:M → N C∞級写像がホモトピックであるとは, あるC∞級写像 F:Mx[0,1] → N で, F|Mx0 = f, F|Mx1 = gとなるものが存在するときを言う. このとき f〜gと表わす.
- 〜は同値関係である.
- 命題. M, Nは多様体で, dim M = dim N とする. さらにMはコンパクトでとする. f,g:M → N C∞級写像がホモトピックであるとし, y∈Nはf,gの正常値であると仮定する. このとき# f-1(y)≡# g-1(y)(mod 2)が成立する.
- f, g:M → N C∞級微分同相がアイソトピックであるとは, あるC∞級写像 F:Mx[0,1] → N で, F|Mx0 = f, F|Mx1 = gとなり, さらにF|Mxtが全てのtについて微分同相であるものが存在するときを言う.
- 補題. N を連結な多様体とし, y,z∈Nとする. このとき恒等写像とアイソトピックな微分同相h:N → Nで, h(y) = zとなるものが存在する.
- 定理. M, Nは多様体で, dim M = dim N とする. f:M → N C∞級写像とする. さらにMはコンパクトで, Nは連結とする. このとき, y,z∈Nが共にfの正常値であるとすると, # f-1(y)≡ #f-1(z) (mod 2)が成立する.
§4. 多様体上のベクトル場
- 定義: C∞級写像 X: M → TRn がベクトル場であるとは, 第一成分は恒等写像で, 各点 x ∈ M に対して, Xx∈Tx M が成り立つときを言う.
- 例
1月10日にやったこと
- ベクトル場と微分作用素
- 座標ベクトル場
- ベクトル場の変数変換公式
試験問題
pdf file
合格者発表と解答例
pdf file
nakajima@kusm.kyoto-u.ac.jp