科学的な意義
宇宙の進化は、星、銀河、銀河団がおりなす巨大な階層構造を作るとともに、ブラックホールに代表される驚くべきエネルギーと物質の集中を生み出してきました。ほぼ一様な状態から膨張を続けてきた宇宙で、数10桁も異なる空間的・密度的スケールにわたって、実に多彩な構造が作られてきたことは驚異です。 銀河団は宇宙最大の天体であり、それを研究し、その進化を探ることが宇宙の構造がどのようにでき、進化してきたかを知ることにつながるのです。その際、銀河団の構成要素である銀河、あるいはその中のブラックホールが、どのように共に進化し、銀河団形成にどのような役割を果たすかを知る事が、重要です。
最近の研究によれば、宇宙で我々が観測できる物質の80パーセントはX線でしか観測出来ない高温状態にあるといわれています。そのため、宇宙の全貌を知る上で、X線観測は不可欠の手段です。 世界最高のエネルギー分解能を持ち、X線からガンマ線までの広大なエネルギー範囲を観測する衛星「ASTRO-H」によって高温ガスの運動を捉え、宇宙の進化をリアルタイムの映像として明らかにし、超広帯域の観測とも合わせることで、ダイナミックな宇宙の進化の真の姿が初めて明らかにされるのです。「ASTRO-H」は、単に宇宙に関する情報を増やすのでなく、宇宙の階層構造における最大の天体―銀河団ーにおける高温ガスの運動と高エネルギー粒子を初めて「見る」手段を提供し、宇宙の進化の本質に迫るための「新たな視点」を構築するのです。
ASTRO-Hで実現すべきサイエンスをまとめたWhite Paperが一斉に公開されました(
こちら)