次期X線衛星ASTRO-H Next X-ray Astronomy Observatory

目的


ASTRO-Hプロジェクトの目的は、以下の5つの項目にまとめられます。

@ 銀河団という宇宙最大の天体における熱エネルギー、銀河団物質の運動エネルギー、非熱的エネルギーの全体像を明らかにし、ダイナミックな銀河団の成長を直接観測する。
A 厚い周辺物質に隠された遠方(過去)の巨大ブラックホールを現在運用中の日本のX線衛星「すざく」の約100倍の感度で観測し、その進化と銀河形成に果たす役割を解明する。
B ブラックホールのごく近傍の物質の運動を測定することで重力による効果を把握し、相対論的時空の構造を明らかにする。
C 宇宙に存在する高エネルギー粒子(宇宙線)がエネルギーを獲得する現場の物理状態を測定し、重力や衝突・爆発のエネルギーが宇宙線を生み出す過程を解明する。
D 距離(年齢)の異なる銀河団内のダークマターの分布と総質量を測定し、銀河団の進化に果たすダークマターと暗黒エネルギーの役割を探求する。

これらはいずれも、宇宙そのものの理解に繋がる科学的成果の創出を目指したものであり、国際宇宙X線天文台として、世界トップレベルの科学研究成果を継続的に創出することが期待できる。この目的を実現するために、以下の世界最先端装置による軌道上での観測を実現する。

@軟X線望遠鏡とエネルギー分解能7電子ボルトを持つマイクロカロリメータ検出器からなる軟X線超高分解能分光システム(観測範囲:0.5-12 keV)。
A軟X線望遠鏡と大面積X線CCDを用い、広い視野を持つ軟X線撮像分光システム (同:0.5-10 keV)。
B硬X線望遠鏡と硬X線半導体撮像装置からなる硬X線撮像分光システム (同:5-80 keV)。
C狭視野半導体コンプトンカメラにもとづく軟ガンマ線検出システム (同:10-600 keV)。
 硬X線望遠鏡の焦点距離12メートルを実現し、打ち上げ時の振動、温度変化・放射線等の軌道上環境で、対象とする天体を5秒角以下の精度で指向するための構造と制御系、絶対温度55ミリ度を実現する冷凍機システムをデータ処理、通信系などともに実現する。打ち上げ後最低3年間の観測をめざす。観測提案は広く全世界から公募され、最終的に観測データは公開される。