河東先生、 中島先生や長尾くんにならって、論文の背景についてコメントを書いてみようかと思いました。思い返すに、大抵の論文は偶然に共同研究者に巡り合ったり、誰かに何かを指摘されたことからはじまっています。一期一会です。
[2305.06196]
Anderson self-duality of topological modular forms, its differential-geometric manifestations, and vertex operator algebras
with Mayuko Yamashita
一つ下の論文に至る共同研究の過程で、6-brane の楕円種数が通常のものも mod-2 のものも消えることが判ったので、この二次元理論は TMF class として非自明なのか、というのが気になった。TMF の表をみると、ちょうどこの次数には mod-2 index も消える非自明な元がある。これを確認する方法はないか、と思っていた。七月ごろの話である。 さて、以前の山下さんとの論文のセミナーを山下さんが東工大でやった所、オンラインで参加なさっていた駒場の河澄先生が興味をもってくださり、次に山下さんが駒場の数理に顔を出した際に廊下ですれ違った所、アノマリに対応する spectrum 間の morphism が消えているので、homotopy fiber をとれば消えていない secondary morphism があるはずだが、それの物理的解釈はあるのか、と質問を下さった。これを八月ごろには山下さんからメールで聞いていた。 九月中旬になって、実はこの二つの問題は関係しており、この secondary morphism は Green-Schwarz coupling を記述しており、6-brane の worldsheet 理論の非自明性を捉えているはずである、という天啓を得た。しかしこの時点では具体的な計算は出来ない。 十月上旬には山下さんがBruner-Rognesによる TMF の詳細を記述した分厚い本を紹介してくれる。これを使って山下さんが 7-brane の TMF 類の非自明性を示した。 僕もその本を眺めていると、どうやら secondary morphism と Tmf の Anderson 自己双対が関係ありそうなことに気付いたが、それらがほぼ同じであることはすぐに山下さんが示してくれた。 あとは年末年始に微分幾何的な計算方法を考えたりしつつ、のんびり論文をまとめていたが、もう投稿しようという寸前に、「ほぼ同じ」なのではなくて「同じ」であることに気づき、主張をさらに鋭くすることが出来た。 こんなに予期せぬことだらけの面白い研究が出来たのは滅多に無いことだ。
[2303.17623]
Non-supersymmetric heterotic branes
with Justin Kaidi, Kantaro Ohmori and Kazuya Yonekura
2019年秋に McNamara-Vafa が出てしばらくして、大森君と米倉君とメール上の雑談で、そうしたら so(32) 超弦で without vector structure を持つような変な 6-brane があるだろうかという話になる。 そういうブラックホール解はありそうだが、それ以上いうのは難しい。はじめ Type I 側で考えて詰まってしまい、数年放置してあったが、 2022年春ごろに heterotic 側で考えることにするとうまく行きはじめた。ブラックホール解もなんと 90 年代初等にすでに作られていたこともわかり、米倉君が世界面理論の (SU(16)/Z4)1 による厳密な記述をみつけたのも大きかった。 似たような方法で 7-brane もみつかり、それらを秋の Hirosifest で説明したところ、これらの厳密な記述は滞在中の Justin が以前つくった非超対称 heterotic 弦理論の安定解の二つであることがわかり、他の安定解に対する brane も構成することが出来た。 やること書くことは大量にあるが、キリが無いので、とりあえず短いレターを書いたのがこの論文。
[2303.16917]
Classification of chiral fermionic CFTs of central charge ≤ 16
with Philip Boyle Smith, Ying-Hsuan Lin and Yunqin Zheng
一つ上の論文に至る共同研究の過程で、それらの brane は 10d の非超対称 heterotic 弦理論、同じことであるが chiral fermionic CFT で c=16 のものと何故か対応することがわかった。 それらの分類は 80 年代末になされたことにはなっているが、当時の議論は随分いい加減であり、最近の種々の進展をつかえば厳密にやりなおせると、 Philip や Yunqin と話をしていたところ、Ying-Hsuan からも同じ質問がメールで来たので、一緒にやることにした。 ほぼ出来たところで数学側の専門家の森脇君にこういうことをしたと話をすると、全く同じ内容の話を研究会で数学者がするのを聞いたというのでびっくり。それを Ying-Hsuan にメールすると、その返事に、僕からのメールの数時間後に今度は別の物理屋から同じ話をしているとメールがあったという。 というわけで三グループで同じ日に投稿(数学者, 物理屋)。 我々以外は c=24 までやっているので、我々の結果は完全に含まれているのではあるが、我々の論文はかなり読みやすいと信じる。
[2302.07548]
Remarks on mod-2 elliptic genus
with Mayuko Yamashita and Kazuya Yonekura
二つ上の論文に至る共同研究の過程で、6-brane の角度方向を記述する heterotic sigma model が (SU(16)/Z4)1 に flow するのではないかということに昨年六月ごろに気づいた。 確認として楕円種数を比較しようと思ったが、通常のものはすぐに消えると判るので、mod-2 index 版を考えないといけない。 誰か考えていて良さそうな話であるが、純粋数学の論文が二つあるだけでほぼ未開拓だったので、自分たちで開発する必要があった。 途中で僕と米倉君では手に負えなくなり、山下さんの手を煩わして TMF の手法を用いて解決した。 6-brane では mod-2 index は消えることがわかり、元の目的には役に立たなかったが、まあ誰かがやっておくべき仕事ではあった。 昨年晩秋にはほぼ出来ていたと思うが色々あって二月になった。
[2209.13984]
On N=4 supersymmetry enhancements in three dimensions
with Benjamin Assel and Alessandro Tomasiello
四次元の Gaiotto 構成の真似を三次元で Chern-Simons 項付きでやると、Chern-Simons レベルの不思議な条件のもとで超対称性が N=4 にあがる、ということ自体は随分前から知っていた。IPMU の当時のポスドクにネタとして提供するために書いたノートに 2017/5 の日付が残っているが、その時点で五年ぐらいは経っていたと思う。(一度さらに古いノートをひっくり返していつ思いついたのか調べようと思ったが判らなかったのである。) そうこうしていると 2018 年に Benjamin と Alessandro の関連する論文が出たため、彼らにも加わってもらってのんびり考えていたのだが、IPMU のポスドクは業界をやめてしまい、その後三人でやっていた共同研究も中断してしばらくしている間に Benjamin まで業界を去ってしまった。 さらに一年ほど経った今年の年始に、僕は市大での春の研究会に誘われたのだが、超対称性に関する研究会であって最近僕の主にやっている内容ではなくなっていたため、適切なネタがなかった。 そこで、Benjamin と Alessandro にこの研究を再開して話をしようと思うがどうかとメールをしてみたところ、Alessandro だけでなく思いがけず Benjamin からも返事があったのである。 その後は半年ほど三人で共同研究をして、論文にまとめた。 Benjamin は IT 企業で働いているはずだが、どうやって時間を捻出したのやら、普通に研究に参加して論文も一緒に書いた。業界を離れてもこういう形で続けることもあるのだなと思った。 三回目のワクチン接種をされながら、またその後コロナに感染して熱でうなされながらこの研究について考えていたのも良い思い出である。
[2208.05495]
Asymptotic density of states in 2d CFTs with non-invertible symmetries
with Ying-Hsuan Lin, Masaki Okada and Sahand Seifnashri
IPMU の学生の岡田君が時々僕に河東先生のやっているような代数的場の量子論の話で何か出来そうなことはないか、と、春に相談を受けて、Magan の論文を眺めたりしていたのであるが、結局 fusion category symmetry がある状況で Pal-Sun の漸近公式を導出してみようということにした。 Modular tensor category symmetry の場合は岡田君がしばらくして導出してくれたのであるが、一般の fusion category symmetry の場合はその表現とはどういうことかというのをまずは理解する必要がある。 これは Ocneanu の tube 代数とその表現で支配されるのだ、という話は去年の論文の準備中に Ying-Hsuan が Sahand と理解した、と言っていたので、彼らにも加わってもらって、論文にしたもの。 彼らにとっても、別の業界では知られている話を hep-th 的に言い換えただけのことで、発表する適切な機会がなかったから、こういう応用があって丁度良かったようだ。 Ocneanu の paragroup の話は、僕が若い頃「数理物理」誌上などで河東先生の興奮した文章を読んでいつか知りたいものだと思っていたのであるが、二十年越しにこういう形で関係が出来たのも非常に嬉しかった。
[2205.13185]
On odd number of fermion zero modes on solitons in quantum field theory and string/M theory
with Yotaro Sato and Taizan Watari
昨年の TMF に関する論文は、そこに書いた通り、渡利さんや佐藤君からうけた質問が元にあったのだが、4d の SU(2) アノマリに対して具体的に何かいうのは難しかった。 Doublet 表現のフェルミオンが奇数個あると、モノポールにフェルミオンのゼロモードが奇数個でて、これが問題を惹起するというのはずっとわかっていたのだが、それをどう論文にするかというので時間がかかった。 一般にソリトン上のフェルミオンゼロモードは 2+1 次元以下では奇数個出ても良く実際そういうモデルもあるが 3+1 次元以上では許されず、実際弦理論でもそういうのは作れないということをまとめて論文にした。 投稿してすぐ John McGreevy から彼と Brian Swingle が非常に関連する論文を十年前に出していたと指摘された。 僕と渡利さんと二人も年寄の研究者が居たのに文献の確認を怠っていたのは全く面目ないことだ。 実は以前米倉君と Chang-Tse と論文を書いた時も、その五年前に McGreevy と Swingle との書いた関連論文の存在を知らず引用せずに投稿したことがあって、彼らには申し訳ないことをしてばかりだ。
[2203.16689]
Undecidable problems in quantum field theory
ひとつ下の論文の為の研究を鋭意やっていた 2021 年の 5 月に、偶然吉田紅君の tweet で、一般のスピン鎖模型の長距離極限の振舞は Gödel の不完全性定理と同様の意味で決定不可能だという論文を知った。 ちょうど自分もスピン鎖模型の長距離極限を調べていたのと、僕としては業界が充分進歩すればこんな問題ぐらい一般に系統的に解けると思っていたので、かなり驚いた。 少し考えると超対称場の理論にも同様に決定不可能なこともわかって、秋の online lunch talk で発表してみたら、物理屋は皆一様に驚いていたようだったが数学者の皆様はそりゃそうだろうという反応。 「物理学者は百年遅れているな」と言われたりもした。 丁度エイプリルフール論文に良いだろうと思って、年明けにコロナが保育園で流行って休園中に原稿を書いていたのだけれど、ある夜に子供たちが寝たあと奥さんに「エイプリルフール論文が書き上がったんだよ」と言ったら「休園でこんなに忙しいのにそんなことに時間つかってたの?!?」とお怒りだった。 単なる冗談論文ではない、と、頑張って説明してみたのであったが... 論文で嘘を書かないように、数学基礎論の初歩的な教科書をかなり真面目に読んだのは収穫だったと思う。
[2110.03008]
Numerical evidence for a Haagerup conformal field theory
with Tzu-Chen Huang, Ying-Hsuan Lin, Kantaro Ohmori, Masaki Tezuka
五年ほど前の論文では、fusion category を二次元の場の理論の対称性と思える、という話を弦理論業界内の場の理論屋に紹介したのだったが、僕らは kinematical な話しかしなかった所、その後すぐに Chang-Lin-Shao-Wang-Yin で dynamical な応用をやってくれた。 さて、fusion category の実例は大抵有限群か affine Lie 代数から来ており、そうでない真に新しいのは Haagerup が見つけたものとその拡張があり、それらの場の理論での実現は知られていない、というのは僕は河東先生から色々聞いていたため、彼らに紹介した。更に、2019年の春に Ying-Hsuan が IPMU に来た際にも個人的に説明したら、彼は随分興味を持ってくれたらしく、その後 Tzu-Chen と二人で Haagerup に関連した研究をやっていてくれた。 その論文の一つが早春に出たので、twitter で紹介した所、大森君からコメントをもらう。なんでも、一般の fusion category を対称性に持つ統計力学系を構成するという論文のレビューを次の週に研究会で話すというではないか。 (この研究会の存在は僕は知らなかった。これはまさに下に書いた山下さんを知った研究会でもあり、この tweet をしなければ下の論文も書けなかった。) 機は熟したというわけで、以前の論文で教えてもらった iTensor などをつかって実際に DMRG 等の数値計算をして Haagerup をもつ CFT を探そうということになった。なにぶん我々は数値計算は素人なので、そういうのに詳しい昔からの友人の手塚君にも加わってもらった。 夏になって結果をまとめはじめた所、ヨーロッパに同じことを研究しているグループがあることがわかり、同じ日に論文を出すことになったのである。あちらの論文では、我々が半年かかった計算をひと月ほどでやっており、しかも我々より随分綺麗なデータを得ている。あちらはそもそも同じ統計力学系を独立に構成していたらしく、かつ、DMRG の専門家でもあるので、まあ、仕方がない。
[2108.13542]
Topological modular forms and the absence of all heterotic global anomalies
with Mayuko Yamashita
これは早春に書いた論文の拡張で、そちらに書いたように、一般論を理解してくれる数学者を探していたのであるが、同じ頃とある研究会に参加していると、ちょうど必要な話を他の人に説明している若い研究者をみつけた。 それが山下さんで、TMF とか string bordism とか判りませんか、こういう論文を考えているのですが、と、まとめてあったノートを送って質問してみる。すると、TMF が string bordism 上の module spectrum であることを使えば、個別にやる必要もなく一般の場合に消えることが示せるとすぐに答えを教えてくれた。僕は一般に解決するとは思っておらず、至極ビックリした。 論文を書く際には、どこまでを物理からの input としてどこからを厳密な数学の議論にするのか、を決めるのに時間が掛かったが、実質的には山下さんが一瞬で決着をつけてくれたのである。Anderson 双対を僕のように上っ面のみでなく構成から理解しているというのは重要だったと思われる。
[2108.05369]
Matching higher symmetries across Intriligator-Seiberg duality
with Yasunori Lee and Kantaro Ohmori
以前の論文に至る過程で、so の Seiberg duality で 1-form 対称性とアノマリがどう対応するかを調べはじめていたのだが、当時は flavor 対称性も so に取っていた。しかし対称性を su にするといろいろとおかしなことになる。そちらがはっきりしてから論文にしようと思っていた。 原理的には、フェルミオンからのアノマリを決定すれば、ゲージ化に伴って何が起こるかは以前の論文の手法に従って考えれば素直に出来る筈である。しかしアノマリの計算は非常に大変で、李君にいろいろがんばってもらったが埒があかない。 春になって大森君が日本に戻ってきたので、毎週一回 zoom で議論することにし、急に理解が進んだ。結局 line operator の合成を場の理論的に調べて、以前のまた別の論文の手法を使って duality がどう作用するか決定し、そこからアノマリを逆に決定するという、迂遠で間接的ではあるが他の場の理論屋にもわかりやすい方法を取った。 Line operator を物理的に調べよというのは Seiberg 先生は最初から言っていたことであった。
[2103.12211]
Topological modular forms and the absence of a heterotic global anomaly
2020年年始コロナ禍の直前のお茶の時間に、渡利さん、榎くん、佐藤くんに混成弦の四次元コンパクト化に Witten アノマリはあるかという問題を教えてもらった。 これをどう解決するかと思ったが、TMF がつかえる筈だと気がつき、色々な人に相談しつつノートをまとめるものの、必要な TMF の計算は自分で出来る筈もなく、かわりにその計算をやってくれる知人も見つからず、秋に研究所の昼食会で概要を話しただけで放置してあった。 三月頭になってようやく暇が出来たので、せめてノートを整理して、TMF の 576-周期の表でも載せつつ、一応 pure gravitational anomaly の場合に何か言えないか確認しておこうと思ったら、なんと二次元の場合に Ωstring3=Z24 に関するアノマリが有りうるではないか。 そうしてこれは Hopkins らによる TMF → MF の像の決定を使えば消えることが判る。 というわけで短い論文を書いた。単著は久しぶりだったので楽しかった。
[2103.00746]
Fermionization and boundary states in 1+1 dimensions
with Yoshiki Fukusumi and Yunqin Zheng
Fermionic minimal の論文を出したあと、夏ごろに渡邊君やら福住君から、その場合境界の Cardy 状態はどうなるのだと言われたが、しばらく放置していた。 秋になり Yunqin が IPMU に来たので、彼にも話題を振ってみると一番積極的にやりはじめてくれた。そこでもとの二人にも連絡して見ると、渡邊君のほうは Weizmann で他の人と既にさらに考えはじめていたそうである。 そうこうしていると、冬になり、ポスドク選定時期になる。Philip の応募書類を読んでいるとまさに同じことをやっている。 こうなると僕としては職業倫理上少々手を出せなくなり、Philip の論文が先に出るのを待った。 その後、Weizmann 組の論文と同じ日に投稿。 Simple current に伴う Verlinde 公式の拡張など、古い結果をいろいろ勉強して為になったと思う。
[2012.11622]
Some comments on 6d global gauge anomalies
with Yasunori Lee
六次元の global anomaly は学生のころに鈴木君と書いた論文のころからやっているのであるが、以前六次元 SCFT のアノマリを調べた時に、「摂動アノマリ部分がきちんと自己共役場のアノマリで相殺されていることを要求すると自動的に消えている」ことに気付き、不思議に思っていた。 その後、アノマリとボルディズムの関係をよりよく理解すると、π6(SU(2))=Z12 だが Ωspin7(BSU(2))=0 だからそもそも global anomaly なぞ無い筈である。 というわけで、時間が出来たらしっかり調べようと思っていた所、夏ごろに李君が上記「」部分を再発見したので、詳細をつめたというもの。 コロナ禍でしばらく学校にいっていなかったが、秋に小康状態のときに一度研究所の居室でマスクをして李君と議論したら一気に理解が進んで、対面とは良いものだと思った。 ほぼ準備をした所で、Davighi-Lohitsiri が似た論文を準備中だということが判明したので、PTEP の江口さん追悼号に寄稿することになっているので先にそちらに投稿し、arXiv に出すのは彼らのが出来るのを待った。
[2010.03943]
More on N=2 S-folds
with Simone Giacomelli, Mario Martone and Gabi Zafrir
七月の頭に、Simone、Mario、Gabi とそれぞれ別件でメールをやりとりしていたら、何故かどれも同じ rank-2 の 4d N=2 理論(で Coulomb branch operator の次元が 6, 12/5 であるもの)の話になったので、一緒に考えはじめたもの。 2015年暮の N=3 理論の構成を読むと、誰しも F-theory 7-brane と重ねたくなる。 僕はこの系を2016年暮れぐらいに考えていて、いろいろ不思議なことばかりが起こり、派生して論文を二本(これとこれ)書いたりしたものの、すっかり放置していた。 すると今年になって、Simone と共著者による論文が二つ(これとこれ)が出て、ほぼ納得出来る解析がされていた。 丁度これは Mario による最近の論文ふたつ(これとこれ)で展開されている一般論の良い例になっており、また僕が Gabi と大森君と以前やった論文の方法でも解析できる。 僕は主に C2/Z𝓁 上での instanton moduli を調べて、場の理論的に調べた Higgs branch と辻褄があっていることを確認したところを担当。 こんなオタクな内容は誰もやっていないだろう、と皆で言いながらのんびりやっていて、ほぼ出来たのに仕上げずにおいてあったら、下の論文が arXiv に出たその日にその隣に全く同じ系をあつかった論文が出ていて驚愕する。 幸い、調べる方法は相補的だったので良かったが、その後慌てて仕上げて、こちらも投稿。 数年前に頭を悩ませた系がすっきりと判った、その最終段階に偶然関与できて嬉しかった。
[2009.10099]
SL(2,Z) action on QFTs with Z2 symmetry and the Brown-Kervaire invariants
with Lakshya Bhardwaj and Yasunori Lee
さて、七月末に下の大変だった論文を仕上げながら、李君と、何かもうすこし気軽なテーマはないかという話をしていた際、Lakshya から別件でメールが届き、それの返信に Maxwell の SL(2,Z) 対称性のアノマリが三次元の境界理論でどう見えるかという話をした。 これは以前 Nati と米倉君と書いた論文の初期の原稿には書いてあったのだがいろいろあって削除してしまい、かといってこれだけで論文にするわけにも行かず、2019年秋学期の集中講義で紹介したりはしていた内容だった。 その時、ふと、U(1) 対称性のかわりに Z2 対称性にしても同じ話ができるはず、と思いつき、李君と Lakshya と調べてみると、所謂 Brown による Kervaire 不変量の拡張というものが自然に出ることがわかったので、あわせて論文にしたもの。 実質数週間で出来てしまい、あとは下の論文を仕上げるのが大変で投稿まで放置してあっただけで、最近には珍しく短期間で書いた論文。
[2009.00033]
Revisiting Wess-Zumino-Witten terms
with Kantaro Ohmori and Yasunori Lee
この論文が出るまでには紆余曲折があった。 まず李君と pure YM における 1-form 対称性のアノマリを確か2019年はじめあたりからやっていた。 これだけの結果では出せないね、といっていたところ、2019年6月のコロラドでの集中講義期間中、 Nati と Ken と街のカフェでコーヒーを飲んでいた際、Nati から彼の学生の Ho Tat が so QCD で2-群が出るのをみつけてなかなか面白い、と聞いた。 人から聞いた話について考えるのはあまり宜しくないのだが、丁度こちらのやっていた話の自然な拡張でも有るし、まあ、Nati と Ho Tat が論文を出してからこちらは出せばよかろうと、李君とさらに夏の間 IPMU に来ていた大森君と、Seiberg duality への応用を考えていた。 それについて短い論文の原稿を書いて、秋に Nati に送った所、これは Ho Tat と Po-Shen がやっている話で、そもそも、二人がこれをやっているのは、so QCD の UV と IR で 1-form 対称性がどう対応しているかを考えて欲しかったからで、とおっしゃる。 というわけで、Ho Tat と Po-Shen も交えてしばらく五人でやっていたのだが、さすがに人数が大きくまとめきれず、あちら二人の結果は別個に出してもらい、こちらは WZW 項について考えることになった。 これで2019年の11月ぐらいだったと思うが、その頃に大まかにはわかったと思ったものの、自分たちの代数トポロジーの素養のなさの為、詳細を詰めるのに非常に時間がかかり、あちらがあちらの結果を論文に出した後もなかなか完成しなかった。 まあしかし、書き上げた感想としては、いろいろと理解が明快になり、久々に満足の出来る論文になったと思う。 それを読んだ米倉君が、QCD に限って hidden local symmetry の観点から議論すればもっと簡潔に議論できるという論文をすぐ書いて、たしかにそれはそうなのが、僕らはなるべく一般論の一例としてやりたかったので、これはこれでありなのではないかと思う。
[2006.08629]
Anomalies, Black strings and the charged Cardy formula
with Seyed Morteza Hosseini, Kiril Hristov and Alberto Zaffaroni
2019年末に Morteza が Kiril と Alberto と書いた論文 についてセミナーをし、重力側で計算したエントロピーの角運動量依存性がこんなに簡単になるのだが理由がわからない、というので、そりゃあ 2d CFT の一般論で出るはずだよ、ということで一緒に考えはじめた。 何が起きているかはすぐにわかったので、直接高次元で局所化の計算をして出来ないものかと頑張るがどうにもうまくいかない。 結局、四月末に Kiril が同じ方法で解析出来る重力解をさらにいくつか見つけたので、それと合わせて論文にすることにしたもの。 はじめのうちは山崎君も一緒にやっていて、weak gravity conjecture 関連の文献でも色々と似た考察がされていたことを教えてもらった。 v1 を出す前にきちんと既存文献を調べておらず、アノマリ多項式を内部空間で積分する際に内部空間の等長変換群を考慮にいれる方法が既に Ibou の論文でなされていることを知らず、あたかも新規の結果であるかのように書いてしまい、申し訳なかった。 ちなみに Morteza の名前のはじめについている Seyed というのは預言者ムハンマドの子孫であること、名字の Hosseini は、イマームフサインの子孫であることを意味しているそうである。
[2004.06458]
General Lieb-Schultz-Mattis type theorems for quantum spin chains
with Yoshiko Ogata and Hal Tasaki
僕が2019年1月に河東先生主催のトポロジカル相に関する研究会に参加した際、緒方さんは田崎さんとの論文についての話をなさった。 なぜか特定の射影表現の例についてばかり話すなぁと思って、講演後聞いた所、一般の射影表現に対してできるはずであることを認識なさっていなかったらしい。 その後その論文の方法を泥臭く一般化することが出来たので連絡しておいたら、その後あちらはもっと綺麗な証明を見つけたそうで、今年の二月になってほぼ出来た論文が送られてきて、共著者にどうかという有り難い話だったので、参加したというもの。 僕は Appendix A を追加したのだけれど、いつもの調子で適当な証明を書いていたら、緒方さんにそれでは証明になっていないことを何度も指摘されて頭を掻いた。 数学者と論文を書くのははじめてだったが、やはり本物の数学者は違うと知った。 LSM 定理は名前はよく聞いていたが知らなかったので勉強になった。
[2004.05350]
Generalized symmetries and holography in ABJM-type theories
with Oren Bergman and Gabi Zafrir
ABJM の初期からある問題であるが、U(N)k×U(N)-k には dibaryon operator は無いようにみえるが、 holographic dual には wrapped D4 として存在するように見える。 ABJM の B である Oren はずっとこれを気にしていて、2019年の春にはいろいろ研究会で話すなどしていたのだけれど、 僕と Gabi の 2019年夏の論文がちょうど boundary 側の一貫した解釈をあたえたので、Oren はそれをもとに bulk 側の解釈を与えた。 というわけで、2019年の9月頃、Oren から Gabi と僕に「こんな論文を書いているのだけれどどう思う」とメールが来たのだが、僕はその論文の書き方がいろいろと改善の余地があると思ったので、「こことここはこう書いたほうが良いと思う」と厚かましいことを沢山言っていたら、「そこまでいうなら共著者になって書いてくれ」という話になった。 しかし秋が深まると皆忙しくなって、二月ぐらいにようやく再開し、納得するまでやっていたら日本は緊急事態宣言中の四月になってしまった。 Oren は Gabi の指導教員だったので、彼らにとっては久々の共著論文になった。
[2003.11550]
Anomaly inflow and p-form gauge theories
with Chang-Tse Hsieh and Kazuya Yonekura
これは下のレターの長い版。忙しくてほうたらかしてあったら、年始のある日、米倉君からほとんど書き上げた原稿が送られてきた。それも、bulk-boundary 結合系の解析など、レターを出してから彼が独自に考えてくれていた点が沢山明快に書いてあり、僕は詳細を確認して編集しただけだった気がするが...
[2002.12283]
On fermionic minimal models
with Chang-Tse Hsieh and Yu Nakayama
2018年の3月ごろだったか、中山君に立教に呼んでもらって集中講義をしたら、途中で彼が僕のいうことはおかしいという。
というのは、もしそれが正しければ、二次元のミニマルモデルでフェルミオン的なものが作れるはずだが、
もしそんなものがあると非常に典型的なものだから既知のはずである。しかしそんなものの存在は聞いた事が無い。
よってその話はおかしいはずだ、というのである。
講義後にしばらく議論し、すぐに実際にフェルミオン的ミニマル模型は存在することで同意できたのだが、
僕の論法は非常に抽象的なので、何かもうすこし具体的にラグランジアンか何かを書かないと論文には出来ない。
しかしなかなかそれがうまく行かないので、長らく棚上げにしてあった。
さて、2019年のある秋の日、Chang-Tse と雑談をしていると、彼は押川研のほうで最近これこれこういう文献紹介をしたという。
これが図らずも三重臨界イジング模型のフェルミオン版をスピン鎖でやるという内容だった。
これが出来るならばさらに高次のミニマル模型のフェルミオン版もスピン鎖で出来るだろう、といって頑張ったのがこの論文。
仕上げの段階で、Chang-Tse に教えてもらった ITensor という C++17 のライブラリと研究所のクラスタを使って数値計算をしたのは非常に楽しかった。
というのは、僕の C++ 知識は C++03 で止まっており、すっかり別の言語になっているという噂の C++17 をはじめて本格的に使うことが出来、さらに、そもそもクラスタで数値計算をしたのもはじめてだったから。
大学からの同期の中山君とはじめて論文を書くことが出来たのも嬉しかった。
しかし、ほぼ出来た段階で 2001.05055 という非常に被った論文が出たときはびっくりした。
幸いその論文はカレント代数自体がフェルミオン的に拡大できる場合しかやっておらず、また、連続系での固定点のみ扱っておりスピン鎖は議論していなかったが、似たようなことを考えている人はいるものだと思った。
(2021年6月末に追記) 2021年の6月中旬になって Petkova 先生から矢張ミニマル模型華やかなりし頃に既に発見なさっていたと連絡があった。論文は IJMPA3(1988)2945 と IJMPA5(1990)2721。
[2002.10642]
The super Frobenius-Schur indicator and finite group gauge theories on pin- surfaces
with Takumi Ichikawa
2018年の年末だったか、柏にきた渡辺悠樹さんと昼食時に、 黒白群の場合の Frobenius-Schur indicator ってどうなるのでしょうねというような話をしたあと、 さらに fermion がある場合等はどうなるだろうかと気になっていたので、 2019年の年始に、市川くんと修論のテーマをどうしようと話した際にこれをやってみようということになった。 二次元の有限群ゲージ理論を時空に pin- 構造がある場合にやることになる。 毎週議論を積み重ね、市川くんが無事修論にまとめてくれて、勿論修論審査の副査には渡辺さんにも入ってもらった。 そこから切り出して、数学の論文として出したのがこれで、僕にとっても数学の論文ははじめてである。 投稿してみると、次の日に数学者の方からメールが届き、主定理の大部分はなんと1979 年の論文の Lemma 2.1 に載っているという。 幸い、その論文では超表現との関係は気付かれていなかったので、我々の論文の価値はゼロにならなかった。 また、秋頃だったかとても関連する S. Gunningham の論文 1201.1273 を読んでいたある日、 数学者の同僚 F. Sala と彼の知人で研究所に滞在中の数学者と昼食に行ったのであるが、最近こういうことを考えていて こういう論文を読んでいる、という話をしたら、なんとその数学者が Gunningham さん本人だったということもあった。
[1911.11780]
Topological Superconductors on Superstring Worldsheets
with Justin Kaidi and Julio Parra-Martinez, with a mathematical appendix by Arun Debray
これはひとつ下の論文の長い版。彼らのポスドク応募の締め切り前になんとか仕上がった。 査読に時間がかかっている間に、ひとつボルディズム群を Arun が Adams スペクトル系列で計算してくれたので、付録が増えた。
[1908.04805]
GSO projections via SPT phases
with Justin Kaidi and Julio Parra-Martinez
六月にコロラド大ボールダーでの夏の学校 TASI に呼んでいただいて一週間講義をした。 初日からいろいろいい質問をしてくれる学生さんの二人組がいるなあと思っていて、昼食時も同じテーブルに来てくれて議論をしていたら、 ある日、今日の講義の内容を初日の内容と組み合わせると、Type I 超弦は実は八通りあるはずだと思う、というのである。 指摘されてみれば当然で、何故講義を準備していたときに気付かなかったか、と思って、共同研究をはじめた。 IPMU に戻って、同僚に大発見をしたとか自慢したが、その後よく考えると Type I ではうまくいかず、 Type 0 というそれほど知名度の無い弦理論でしかうまくいかないことがわかった。それでもまあ論文にはなるのでまとめていたら、 僕も彼らも別個の友人から、実は Witten 先生がほぼ被る内容の話を2018 暮れと2019年5月に講演しているという驚きの情報を聞く。 まあ Witten 先生は講演では Type II の場合しか話さなかったのであるが、 彼がある日論文を投稿してしまうと我々の得た内容は全て含まれてしまって論文はもうお蔵入りであろう。我々は恐慌状態になって、慌てて短い letter をまとめて投稿した。 その後それを読んだ Witten 先生からは暖かいメールが届いて、僕は恐縮した。
[1908.03346]
Reflection groups and 3d N≥6 SCFTs
with Gabi Zafrir
2018年末下記レビューを書いた際に、そのおしまいに書いた 3 次元の最大超対称理論の等価性に関して Dongmin と Gabi にいろいろと教えてもらっていた。その際に BLG 理論と SYM 理論を包括する枠組みは何か気になっていた。 さて、2018年度末近く、数冊専門書を買えるぐらい科研費に残金があったので、何を買おうかと悩んだ結果、以前やった 1602.08638 で少し使った複素鏡映群を勉強すべく、 Lehrer-Taylor の Unitary reflection groups という教科書を買う。 これが届いて眺めていると、なんと、実鏡映群をつかうと BLG と SYM は統一的に理解できることがわかった。 さらに、超対称性が少し小さい ABJM の場合も考えると、丁度複素鏡映群に対応するのである。 喜んで Gabi に伝えて、さらに調べたのであるが、これまで普通気にされていなかった、 ゲージ群の大域的な構造の選び方によって、微妙に結果が変わってくることがわかり、これの対処に時間をとられる。 結局大昔にやった 0807.1102 でリー代数の段階で分類をしたものをリー群の段階で分類をすることになった。 いろいろと以前調べた話が繋がって面白い研究だった。
[1905.08943]
Anomaly of the Electromagnetic Duality of Maxwell Theory
with Chang-Tse Hsieh and Kazuya Yonekura
1805.02772 を米倉君としあげたあたりだったと思うが、 O-plane charge の話を M 理論の C4/Zk orbifold の charge の話に拡張するのは学生さんへのネタとして良かろう、と思って一番簡単な場合を計算すると、意外にも全く合わない。 これは僕にも無理だし学生さんには無理だと思って、やはり米倉君に連絡して考えはじめた。 すぐに quadratic refinement から来る補正が重要だということがわかるのだが、 1. Q.r. を決める際に Wu 類はいるのか(僕)いらないのか(米倉君)? 2. 決まったとしてそれは経路積分される場に対して使うのか(僕)、結果が q.r. になるのか(米倉君)? という二点で長らく紛糾する。 結局 1. は米倉君が正しく、E7 の 27 次元束に伴うフェルミオンをつかうことで 6 次元では spin 構造から自動的に Wu 構造が従うことがわかった。 2. は実はどちらも正しい。判ってしまえば本質は x2/2 + xX = (x+X)2/2-X2/2 ということである。 T2 コンパクト化をすれば Maxwell 理論の双対性のアノマリも導出できる。 すると、charge conjugation を使うだけで Maxwell にアノマリがあることになるが、 秋も深くなった頃これまたそんなことがあるものかと紛糾する。お互い納得した所で、実は積読してあった Witten et al. の 1810.00844 の途中に書いてあることがわかった。 このあたりで Chang-Tse が加わり、6 次元を考えなくても 4 次元で直接導出できることを教えてくれた。 しかしまあ詳細を詰めるのは無限に時間がかかる。キリが無いので一旦 letter を出したのがこれ。 長い版の論文はこれを書いている2020/3/11にはまだ出ていない。そろそろ出る筈ではあるが...
[1905.05391]
On gapped boundaries for SPT phases beyond group cohomology
with Ryohei Kobayashi and Kantaro Ohmori
いつごろだったか覚えていないが、押川さんのところの小林君が IPMU の僕の居室に頻繁にあらわれるようになった。 まあ、彼は TQFT を物理側でやっていて、彼の近くではそれが専門な教員は僕ぐらいであるから自然なことである。 さて、アメリカの大森君に、彼のそのころの論文 1812.11959 についていろいろ質問のメールを書いていて、関連してこれこれこういう仕事ができるのでは、という話をしていた。 すると年始のある日、小林君が、こんなことができると思うんですよ、とほぼまったく同じことをいうのである。 というわけで三人でやったのがこの話で、アノマリの引き戻しが自明化するような対称性の拡大を使って、欲しいアノマリをもつ TQFT をつくるという話。 この頃ようやく Gu-Wen phase が一般の spin bordism 類に対応する phase を AHSS で調べる際の最下の二段に対応することを認識/理解し、Steenrod 平方作用素にも慣れてきた。
[1903.10522]
autoboot: A generator of bootstrap equations with global symmetry
with Mocho Go
呉君は numerical conformal bootstrap で修士論文を書いたので、何かそれで仕事をしてみたいという方向になり、 僕は彼に「対称性 G でやってみたら」「対称性 G' でやってみたら」と無責任なことを言っていたのであるが、 ひとつ対称性 G を決めてそれに対する bootstrap 方程式を書き下すのは勿論大変なことである。 というわけで呉君は僕がいろいろな群をいうのに閉口して、群を与えたら bootstrap 方程式を書き下すプログラムを作った。 これが autoboot で、2018年春には出来ていたはず。しかし、autoboot 自体を論文にすることには僕にためらいがあり、 何かこれをつかって新しい固定点を bootstrap できてから論文にしようと思っていたら、全然うまくいかないのである。 調べたい物理系に関する感触、理解があって、対称性および relevant な演算子に見当がついていないと、固定点なぞ見つからないのである。 というわけで、冬になって方針転換をして、autoboot 自体の論文をかいた。 Simmons-Duffin に事前に連絡したら、例につかった O(2) の方程式系をあちらでは 共同研究者のうち三人が独立に長い時間をかけて計算したのを突き合わせて確認したそうである。 あちらは式が 22 個、こちらは式が 25 個でおかしいなと思ったら、こちらは重複を完全には取り除けていないだけだった。 あちらの論文は 1912.03324 に出た。 まあ七人共同研究者がいればそのうち三人が方程式の導出を独立にするというのも出来るだろう。 IPMU のクラスタの悪用をして IT の方に怒られたのもよい思い出である。
[1812.08946]
Lectures on 4d N=1 dynamics and related topics
これは主に2015年2月の阪大での集中講義と2017年3月の名古屋大での集中講義の内容をまとめたもの。4d N=1 の講義録は既に五万とあるが、a 最大化と S3×S1 指数についてページを割いて書いてあったり、ゲージ群の大域的な構造に気を配っていたり、2d 超対称理論との比較があったりする点は他には無いと思うから、わざわざもう一つ書いたことにも意味は無くはなかったと思う。Springer の担当の中村さんが「是非本にするからタイプするように」と何度も何度も突っついて下さらなかったら決して書かなかっただろう。
[1812.04637]
Compactifications of 6d N=(1,0) SCFTs with non-trivial Stiefel-Whitney classes
with K. Ohmori and G. Zafrir
夏に Gabi から、六次元 N=(1,0) SCFT を T2 に二次 Stiefel-Whitney 類をいれてコンパクト化すると四次元でこれまで作られていなかったタイプの N=2 理論が出せるようだが、中心荷 a, c の計算法を知らないかと相談があった。ちょうど滞在中だった大森君も交えて相談すると、以前の僕らの論文の方法の自然な拡張でうまくいくことがわかった。その後いろいろと例を増やしたりしていたが、Gabi と大森君はポスドクの応募だったり、僕も生活が慌ただしかったりして、なかなか進まず、年末まで掛かる。その間、二次 Stiefel-Whitney 類が自明な場合についても以前の上記論文よりクーロン枝演算子の個別の次元に関する詳細がわかったので、ほぼ独立ではあるが Appendix B として追加した。
[1805.09070]
The frozen phase of F-theory
with L. Bhardwaj, D. R. Morrison and A. Tomasiello
2015年夏の論文の自然な続編として、O7+ があるような F 理論の六次元コンパクト化を考えなければならない。というわけで、その年の秋から、六次元の若手の Lakshya, F 理論の専門家の Dave, IIA 双対の専門家の Alessandro にお願いしてのろのろと考えていたのであるが、どの一人にとっても主なテーマでなかったこと、加えて、予想より遥かに微妙だったことが重なり、結局二年半ほどかかった。微妙だというのは、O7+ の無い普通の F 理論のコンパクト化ならば、与えられた幾何に対して、可能な中でもっとも破れの少ないゲージ群が局所的なルールを用いて一意に割り当てられるのであるが、O7+ があるとそうはいかないのである。結局一般的なルールは見出せず仕舞いだが、いったん論文として出すことにした。
[1805.02772]
Why are fractional charges of orientifolds compatible with Dirac quantization?
with K. Yonekura
オリエンティフォールドの電荷が Dirac 量子化条件を満たさないのは昔から知られていて、O4 の場合の 1/2 のズレはフェルミオンの mod 2 アノマリで理解出来るということは Witten 先生の古い論文がある。これは学生のころからずっと気になっていたのだが、Op の場合の 1/25-p のズレなど、mod 25-p index 定理が必要な気がするがそんなものは聞いたことがない、というのでずっと放置してあった。ここ数年フェルミオンのアノマリについていろいろ勉強して、アノマリは index theorem というより η 不変量で決まる、というのがようやく腑に落ちてきた。というわけで、急遽 RP6-p の η 不変量を文献で探すと、Eguchi-Gilkey-Hanson の Gilkey さんの一連の研究があり、丁度必要な値を出しそうなことが符号を除いてわかった。というわけで、米倉君にお願いして、詳細を詰め、符号も合わせてもらったというもの。その後、夏ごろになって、電磁場からのアノマリを考慮に入れていなかったことに気がつき、2019年3月現在それを計算中である。v1 は Op+ についての計算だと思えば大筋は間違っていない。
[1805.02738]
A study of time reversal symmetry of abelian anyons
with Y. Lee
李君が何かやってみたいというので、以前から読んでみたいと思っていた のエニオン系における対称性の作用に関する論文 Barkeshli et al. を読んでもらって、可換エニオン系で時間反転に H3 障害のある例を探そうと年始あたりからはじめたのだったはず。いろいろ例をしらべたが、探せど探せど実例が見つからず、李君にはプログラムをかいて虱潰しに調べてもらうも結局みつからない。そうこうしていると、「ユニタリ対称性なら可換エニオン系では H3 障害は出ない」ということを含む論文 Benini-Cordova-Hsin が出てびっくりする。しかし、後に彼らは物理的に自然ではあるが Barkeshli et al. の枠組み以上の仮定、すなわち、4次元からの inflow で書けるべしという仮定をしていることがわかった。「」内の主張は VOA の言葉にも自然に翻訳出来るのでそちらにも聞いてみたりするが、本当なら驚きだとのことである。ともかく、こちらは、沢山調べたが見つかりませんでしたという論文を書いた。
[1804.09143]
Comments on the twisted punctures of Aeven class S theory
with Y. Wang and G. Zafrir
ここ十年弱徹底的に調べられてきた class S 理論でも、Aeven 型の twisted puncture はもっとも微妙で研究が進んでいない。それに関して、二月の中旬に Yifan から問い合わせがあって、メールの返事を書いているうちにその USp 対称性に Witten のアノマリがあることに気付いた。それについて Gabi に相談すると、数日で別の観点からも導出をしてくれた。Yifan のほうも彼と D. Xie との共同研究を使う別の確認をしてくれたので、まとめて論文にしたもの。というわけで、Sec. 2 が Yifan, Sec. 3 が Gabi, Sec. 4 が僕の方法である。途中、class S 理論の Seiberg-Witten 曲線が、matter が多すぎて赤外自由なゲージ理論の Seiberg-Witten 曲線と極限をとらずとも一致するという不思議な現象に遭遇したが、深い意味はわかっていない。
[1803.07366]
Anomalies of Duality Groups and Extended Conformal Manifolds
with N. Seiberg and K. Yonekura
秋に出した 1710.03934 では、下にも書いたように以前の Gomis-Komargodski-Seiberg による予想を否定したのだったが、Nati がそれを読んで何とかならないかとメールをくださったので、パラメタ空間を拡張すればよいですよという話をはじめた。途中、ちょうど米倉君と議論をはじめたばかりの話と関係が出て来たので、彼にも混ざってもらったら、僕の方針より断然よい定式化をやってくれたり、そもそも秋に出した 1710.03934 にあった案外重要な間違いを解決して appendix まで追加してくれたのでそちらも彼と共著にしたり、とにかく八面六臂の活躍で、僕は結局いろいろ数学の定理を文献から探してきただけに留まった。
[1712.09542]
On gauging finite subgroups
夏の Tel Aviv での弦理論会議に呼んでいただいた際に、Nati に H3 障害というのを知っているかと聞かれたことについて考えていた。すると、以前の Gaiotto-Kapustin-Komargodski-Seiberg で使われた、アノマリのある対称性のアノマリの無い部分群をゲージ化して群の拡大に置き換える手法を一般化しておきたいと思っていたのとも関係していたり、理解しておきたいと思っていた Wang-Wen-Witten による群の拡大による gapped boundary の構成とも関連していたのが判った。夏にはほぼ出来ていたと思うが、投稿するのは、関連する Benini-Cordova-Hsin が出るのを待っていた。しかし彼らがまだまだかかるというので先に出した。待っている間に上記 WWW の Sec. 5 の物理的な議論が分からなかった所に数学的な証明も付けられたので良かったと思う。しかし、Witten 先生は元のあれで判ったのかしら。
[1712.09456]
On 'categories' of quantum field theories
これは 2018 年の ICM に読んでいただいたので、話の予稿として書いた。(高階の)圏として場の理論は捉えるべきだというのは数学者は良く言っていることではあるけれど、その観点で我々場の理論屋がいつも実際に扱っている話について述べたものはあまりないのではないかなと思っている。ICM 自体はちょうど息子の産まれる時期と重なった為参加を取りやめた。
[1711.05947]
First-order conformal perturbation theory by marginal operators
with K. Sen
これは analytic bootstrap をやっている Kallol が IPMU にきてくれたので、何かやってみようと、2016年冬ごろからずっとやっていた話。共形場理論を marginal op. で摂動すれば一次までは当然共形場理論だと思うのであるが、示そうとすると難しい。一年ほどやってようやく出来たつもりになって論文を出したら、直後に他の僕の論文ではないほどいろんな方から反響をもらった。しかし、しばらくして Slava Rychkov から式変形で保証されていない積分と極限の交換をやっていると指摘されて、後半を削除することになり、そこの議論の修復はいまだできていない。
[1710.04218]
8d gauge anomalies and the topological Green-Schwarz mechanism
with I. García-Etxebarria, H. Hayashi, K. Ohmori, K. Yonekura
三月に清水君と Gabi と G2 もしくは F4 の instanton moduli をヒッグス枝にもつ 4d N=2 理論があるかという論文を書いたが、これはもともと Garía-Etxebarria&Regalado の方法を拡張して G2 または F4 ゲージ群を持つ F-theory 7-brane を作れないかということをやっていたのの副産物だった。それに関して、年始の立教の研究会で林君、大森君、米倉君とも雑談し、その後議論していたところ、大域アノマリのせいでそもそも F4 は無理だと分かった。不思議なことに Sp(n) の場合も微妙なアノマリがあるので、8d TQFT を用いて Green-Schwarz 式に相殺されている筈なのだが、常ホモロジーでなくて KO ホモロジーと結合しなければならず、構成がうまくできない。その頃に Tel Aviv での研究会に行って Iñaki に会うと、彼は丁度 8d のアノマリを通常の Elitzur-Nair で計算したところだという。こちらは米倉君式の instanton-brane を使った方法だったため相補的で、協力して論文を書くことにした結果がこれ。
[1710.03934]
Anomalies involving the space of couplings and the Zamolodchikov metric
九月半ばに Donagi-Morrison が出て、数年前のとある論文の(僕にいわせれば当時から根拠の薄い)予想であった、exactly marginal coupling の空間の Kähler potential は globally well-defined である、というのが明確に否定された。というわけで、Kähler class がより意味を持ったので、別の見方は無いかと思ってもやもやしていたところ、10/5(木)に e.m.c. の空間と SU(2)R の間の混合アノマリがあって class S の場合は計算できることに気付いた。AdS/CFT で確認しようと思ったが、10/6(金)に Wolpert の公式をみつけたので係数を除いては合った。三日連休を挟んで10/10(火)に頑張って計算して係数を確認した。10/11(水)に朝からタイプして投稿。大した事のない結果だが、久し振りに単著で真面目に計算したのは楽しかった。
[1707.04370]
E8 instantons on type-A ALE spaces and supersymmetric field theories
with N. Mekareeya, K. Ohmori, G. Zafrir
これはそもそも '15 年秋に大森君と清水君が彼らの論文の拡張としてやっていたが中断していた話を、清水君が '16 秋にミラノに留学中に Noppadol にも話をして、それを僕と Gabi も議論に混ざってその年末にやりはじめたもの。この時点になって、ようやく僕は六次元の場の理論をやりはじめる前にちょっと考えていた問題が、その後まさに開発していた六次元の話を使ってかなり一般的に解決できそうだということを認識して、嬉しかった。丁度年始の京都での数学の研究会でもこれを話す。のんびり仕上げていると七月になった。清水君はもう一つのほぼ同じ著者群の論文の著者になった。彼はこちらの論文にはあまり寄与していないから、といって名前を載せなかったのだけれど、載せてもよかったと僕は思うけれど...
[1706.07587]
On hydrogen-like bound states in N=4 super Yang-Mills
with Y. Sakata, R. Schneider, T. Yamaura
Caron-Huot&Henn による水素原子の SO(4) は dual conformal symmetry の名残であるという話を'15のトリエステで Simon に聞いてから、もっと初等的に調べられないかと思っていた所、'16の秋から半年 Robin が交換留学で来たので彼に考えてもらうことにした。途中から坂田君山浦君にも手伝ってもらう。が、相対論的束縛状態は非常に難しいということを学ぶ。ナイーブに最低次の Feynman 図を足すだけでは駄目で、しかもスカラー交換があるため Lamb shift が通常の α5 log α でなく α3 log α からはじまってしまってどうしようもない。結局は所謂 pNRQED/QCD という枠組みを N=4 SYM に拡張せねばどうしようもない。しかしそこまでやる気力もなく、こういう結果になった。
[1706.06292]
Smallest 3d hyperbolic manifolds via simple 3d theories
with D. Gang and K. Yonekura
これは '16 年秋から Dongmin が既に観察していた、Weeks 多様体の体積が U(1)-5/2 の有効スーパーポテンシャルと同じであるという事実を、米倉君と僕とが加わって導出したもの。一般的な 3d/3d 対応では flavor symmetry は無さそうに思うところ、U(1)-5/2 には topological U(1) があるので、それがどういう理由で決まっているかが第一の問題。第二の問題は既に知られている 3d/3d 対応に、既知の双対性を組み合わせてどうやって U(1)-5/2 を出すかということ。結局ほぼ米倉君がやって、僕は原稿の第一稿を書いて Whitehead link の絵をつくったぐらい。
[1704.02330]
On finite symmetries and their gauging in two dimensions
with Lakshya Bhardwaj
2次元可換オービフォールドは2回やると元に戻るのは長らく知られていたが、非可換の場合にどうやるのだろうと思っていた。以前 Nils Carqueville が IPMU に来て彼らの仕事の話をしてくれた際に、彼らの仕事にどうもそれが含まれていると知ったのだが、ほうってあった。昨年秋 Lakshya が IPMU に長期滞在した際、彼はそういう話が好きそうなので、一緒に解読してみよう、としてはじめたら、半年ぐらいかかった。Kapranov 先生に G と Rep(G) が等価に扱える枠組みはありますか、と聞いたら、最近 Etingof-Gelaki-Nikshych-Ostrik の教科書が出たからそれを読めば良いよ、というので、物理語に翻訳しただけとも言える。先月でた Gaiotto-Kapustin-Komargodski-Seiberg では、3次元で、アノマリのある可換一般化対称性を一部ゲージしてアノマリのない非可換対称性に変換するというトリックが使われているのだが、その 2 次元版にもなっている。
[1703.01013]
Anomaly matching on the Higgs branch
with Hiroyuki Shimizu and Gabi Zafrir
年末に大森君が帰国して、G2 や F4 の 1-インスタントンモジュライをヒッグス枝にもつ四次元理論を F 理論で作れないか、という話をはじめた。そちらは結局袋小路に迷い込んで出られていないのであるが、その副産物として、1-インスタントンモジュライがヒッグス枝なら、その理論のアノマリ多項式はすぐに決定できることがわかった。僕はそのような理論を十年以上研究していて、アノマリ多項式は別の方法で四苦八苦して導出してきたので、ここに来てこんな簡単な方法で出来ることがわかったので、気が抜けた。さて、同じ方法は六次元や二次元でも出来る事がわかったので、そちらで長らく共同研究をしている Gabi と清水君と一緒にやることにして、論文にまとめた。
[1702.04740]
4d N=1 from 6d N=(1,0) on a torus with fluxes
with Ibou Bah, Amihay Hanany, Kazunobu Maruyoshi, Shlomo Razamat and Gabi Zafrir
これはもともと丸吉君と2015年5月あたりからノロノロとやっていた話で、彼がさらに Ibou と Amihay も巻き込んで、あいかわらずノロノロとやっていたのであるが、2016年9月になって、Gabi が IPMU にポスドクとしてやってきて、かなり被った話を彼と Shlomo がやっているということがわかった。というわけで、どうすべきか迷ったのであるが、結局 2 グループ力を合わせてやってしまおうということになる。が、こう人数が増えると却ってなかなか進まず、年明けまで掛かった。
[1611.01601]
More on time-reversal anomaly of 2+1d topological phases
with Kazuya Yonekura
ひとつ下の論文を投稿したところ、その日のうちに「僕らも同じ問いについて、別の方針から答えの明示公式を予想して十日ほど前に投稿したのだけれど」と arXiv:1610.04624 の著者の一人からメールがある。しかも、同じ問いに関して、僕らと同じ方針でやっている研究グループがあって、同じく十日ほど前の KITP での研究会で講演があったからその録画を見てみろという。我々はフェルミオンを考えて概念的な理解はあったが明示公式はなかった、メールをくれた人はフェルミオンを考えて概念的な理解はなかったが明示公式の予想はあった、講演をした人はフェルミオンを考えなかったが概念的な理解も命じ公式もあった、というわけで、組み合わせればフェルミオンの場合の概念的な理解かつ明示公式が得られるのは数日でわかった。米倉君に慌てて論文を書いてもらって、微妙に僕も手直しして、投稿。するとその日に今度は arXiv:1609.05970 の著者の一人から、九月中旬に関連論文をすでに書いているという。こちらは四次元的観点の論文だった。僕らは丁度一年くらいまえから急にこの物性理論からはじまった分野に参入したわけだが、兎に角活発な分野だということ、また、新分野に参入するには一年くらいかかることを学んだ。
[1610.07010]
On time-reversal anomaly of 2+1d topological phases
with Kazuya Yonekura
三月に Seiberg 先生が日本にいらしたときの講義で、3次元 TQFT が与えられたときに直接その時間反転のアノマリを計算する方法はあるはずだがまだ判らないと仰るので、四月に米倉君と論文を書き終えたあとに考えはじめた。3次元 TQFT は一応昔基本を勉強したつもりではあるものの実際に研究するのははじめてだったので遅々として進まなかったが、八月ぐらいにはほぼわかったつもりになり、九月の Seiberg 先生の還暦記念研究会で話をしようとおもったのだが、研究会の二週間ほど前に、我々の考察が正しいとするとどうもこれまで気が付かれていなかった変なことが起こるという大問題に気が付いた。研究会中に Seiberg 先生や WItten 先生に聞くものの進展はないが、その後も一ヶ月ほど考えて、この変なことは起きざるを得ないと自分たちなりに納得したので、論文を出した。
[1608.05894]
Anomaly of strings of 6d N=(1,0) theories
with Hiroyuki Shimizu
二月のカルテクでの F 理論研究会のスライドを準備したときに、何故一番簡単な N=(1,0) 理論が E8 という大きな対称性を持つのだろう、と思って、考えはじめた話。僕が四月に IPMU に戻ってしばらくして、お茶の時間に清水君ともその件に関して雑談をした。で、僕が他の用事が忙しいのでほうってあったところ、七月中旬に清水君が「出来ました」という。じゃあ、とりあえずノートにでもまとめておいたらどう、と、言ったのが失敗で、清水君が研究会をふたつ梯子して、僕が帰省している間に、Hee-Cheol, Seok, Jaemo が基本的に僕らの論文の内容を含む論文を出してしまう。彼らは n=3 の場合の弦のゲージ理論による記述を提唱してその楕円種数を計算するのが主目的で、僕らと被ったアノマリの計算はつけたりのようなものだから、さらにこちらとしては情けない話だ。兎も角、清水君が準備しはじめていたノートに二人で慌てて付け加えて書いて、一週間で投稿。
[1608.02964]
A brief review of the 2d/4d correspondences
Maxim と Vasily が局所化のレビューを手分けして書こう、というので、僕も寄稿を頼まれたのだが、既にインスタントン分配関数の局所化の話は Joerg 主導のレビューに書いてしまったので、2d/4d 対応のレビューを書くことにしても良いか、と聞いたら、それで構わないということになって、書いた。この企画は2014年の初夏には始まって、僕の原稿は夏の終わりにはほぼ仕上がっていたのだが、全員の原稿が集まるのが遅く、arXiv に上げるのは2016年の夏になった。この分野も、僕がレビューを書いた時点ですら、五年も経っていて、文献が山のようにあった。だから、S4 で Liouville が出る話と、S3×S1 で q-変形 Yang-Mills が出る話をパラレルに、浅めに書いたのには意味があると思っている。
[1606.01894]
Hofstadter's Butterfly in Quantum Geometry
with Yasuyuki Hatsuda and Hosho Katsura
昨年7月の初田君の論文 1507.04799 を眺めていると、あるクラスの一粒子量子系に ℏ を 4π2/ℏ と交換する双対性があると書いてある。それらのハミルトニアンを見ていると、どうも Hofstadter のハミルトニアンに似ている。学生の頃、Hofstadter 蝶のフラクタル性はまさにこの ℏ を逆数にうつす操作が肝だったと思った気がする。というので、初田君に問い合わせたり、同じ階の桂さんに聞いたりしていると、local P1 × P1 の場合に、初田君が x, p を実に取っていたのを純虚に取ればハミルトニアンは一致することが判った。さてだからどうした、というのだけれど、先月になって初田君が ℏ が 2πの 有理数倍のときは quantum period が具体的に計算できて、その branch cut がまさに蝶になっていることに気づき、さらにしばらくして状態密度との関係も判ったので、論文にしたもの。僕の寄与は最初の観察と、quantum period の虚部は状態密度らしいとグラフをみて気づいたのと、それだけ。
[1604.06184]
Gauge interactions and topological phases of matter
with Kazuya Yonekura
10月中旬だったか、中山君が IPMU で BenTov-Zee のいう Kitaev-Wen 機構なるものに関して文献紹介をした。生憎僕は用事で出られなかったのだけれど、面白そうだったのでトポロジカル相の勉強をはじめた。そうして、風の噂に Seiberg-Witten でトポロジカル相の論文が準備中だと聞いたので、彼らがその話をやるとすると何だろう、と考える。すると、N=2 SU(2) Nf=4 の場合だと、丁度ハイパー多重項の中に Majorana フェルミオンが 16 個あるので、4次元のトポロジカル絶縁体の Z16 分類がこれの S 双対を使って導出できるのではと思ったのだ。というわけで、中山君と米倉君に声を掛けて考えはじめた。基本的に、僕がやったのは、米倉君が「こういう理由でうまくいかないと思います」と何度も問題点を指摘してくれたのに「いや、絶対出来るはずからもうちょっと粘ってくれ」と繰り返しただけ。2月に Seiberg-Witten の論文 1512.06434 が出たが、僕らがやっていたのとは直交した内容だった。
[1602.08638]
S-folds and 4d N=3 superconformal field theories
with Ofer Aharony
下の論文の詳細を詰めている間に、G-E & R の論文での F 理論の quotient にどういう variant があるかというのを考えはじめた。その為には、M 理論の C4/Zn 特異点で discrete flux がある場合の intrinsic M2 charge が必要だったのだけれど、文献によって言うことが違うので困った。幸いその一つの著者の Ofer は以前からの知り合いなので、問い合わせて始まった共同研究。幸い、彼の論文にある charge を使うとすべて辻褄があったので、めでたい。調べた系のうち、三つだけ、超対称性が N=4 に上がったので、すわ、SYM でない N=4 理論が見つかったか、と、小躍りして、僕は愚かにも Facebook にも書いてしまったのだけれど、すぐに Ofer が適切な変数変換で N=4 SYM と思えることを指摘してくれた。論文の途中で、一ヶ所、あるホモロジー群の計算がきちんと出来ず、結果を推測しただけになっている。その計算だけ取り出してこちらに書いたので、どなたか宜しくお願いします。
[1602.01503]
On 4d rank-one N=3 superconformal field theories
with Takahiro Nishinaka
12月なかばに、Aharony-Evtikhiev 1512.03524 という「N=3 理論があったらどんな性質があるか」という論文が出たので、ふむふむ、と思っていたら、同月下旬に García-Etxebarria と Regalado が 1512.06434 が F 理論で N=3 理論を作れる、という論文を出したので度肝を抜かれた。構成法がとても簡単であったのも僕にとっては衝撃で、なぜ自分にこれが出来なかったか、と、悔やまれる。が、Iñaki はずっとこのあたりの話を調べていたので、彼が見つけるのも必定だったかとも思う。兎も角、ちょうど冬季休暇で長期実家に帰っていて、案外時間があったので、西中君と議論しつつやったもの。僕は主に OPEdefs を使って 2d カイラル代数を構成した。
[1508.06679]
Frozen
下記 part I, II をやっているうちに、massive IIA で作れる 6d SCFT で Harvard 組の F 理論を使った分類に載っていないものがあることに共同研究者が気づいた。同じ頃、Lakshya も同じ問題に行き当たって、メールをくれたのだけれど、どうも F 理論の 7-brane として O7+ があまり表立って扱われていないのが問題であるということに気づいた。そこで、F 理論における frozen singularity がどんなものがあるか、を、わかっておこうと思ったが、その為には、M 理論における frozen singularity をわかるのが第一歩だったので、そのあたりを考えた短い論文。昔の論文、例えば hep-th/0103170 に implicit には書いてあるようだけれど、その著者の二人に聞いたら認識していなかったようなので、まあ論文にしても許されるだろうと思う。産まれたばかりの赤ちゃんを、奥さんの実家に言って抱いている間に考えた。
[1508.00915]
6d $\mathcal{N}=(1,0)$ theories on $S^1/T^2$ and class S theories: part II
with Kantaro Ohmori, Hiroyuki Shimizu, Kazuya Yonekura
Part I で M5 が 1 枚のときをやったから、2 枚以上をやるのは自然であるが、SL(2,Z) と $G^2$ の対称性を残すのは案外大変である。G=SU(2) に関しては 2014 年の暮れぐらいにやっていたはずだが、一般化するには米倉君が $S^1$ コンパクト化を経由して理解する方法を編み出してくれるまで待たねばならなかった。そうこうしているうちに、Harvard 組が 1504.08348 を出して一本以上取られた感あり。まあ、彼らは、SL(2,Z) と $G^2$ の両方は保たない状況を考えていた、というのが負け惜しみ。この論文では、Higgs して (2,0) 理論になるような理論が対象。クーロンブランチの再帰的な解析は Part I の数倍ややこしい。
[1504.01481]
A review of the $T_N$ theory and its cousins
これは 2014 年にベルギーの研究会に行った際にそこに居た PTEP 編集長の坂井先生と話をしたら、適切なテーマでレビューを書いてくれと言う。何がいいかと考えたが、ちょうど $T_N$ に関する結果が文献に散乱しているので、まとめることにしたもの。歴史的経緯に従わず、多少なりとも新しい論法でなるべく筋道を立てて説明したつもり。基研での集中講義の $T_N$ 部分のノートをタイプしただけとも言える。
[1504.00121]
On skein relations in class S theories
with Noriaki Watanabe
これは非常に長い間のりあき君とやっていた話。そもそも、2013年の春に彼が Dan の 1304.2390 を楽しそうに読んでいるのを見て、何かできないか、とはじめた話で、一部はその年の八月に Simons Workshop のビーチトークで話したものの、なかなかのりあき君が満足するまで理解が進まなかった。すると十二月になって Bullimore の 1312.5001が出て、その時点で出来ていた話のかなりの部分を持っていかれてしまう。その論文が出た日は丁度駒場に行っている日で、講義のはじめの雑談に「準備中の論文をスクープされた」とか言った記憶がある。さて、さらに一年経って、ついに詳細を詰めるのみになり、既存文献の convention の違いに頭を悩ませるものの、なんとかトリエステ滞在中に完成させた。その後しばらくして非常に関連する論文 1505.05898 が出たので、頑張って投稿しておいてよかった、と、胸をなで下ろす。
[1503.06217]
6d $\mathcal{N}=(1,0)$ theories on $T^2$ and class S theories: part I
with Kantaro Ohmori, Hiroyuki Shimizu, Kazuya Yonekura
六次元 N=(1,0) 理論をやりはじめると、リーマン面にコンパクト化して Davide の class S の二匹目のどじょうを狙いたくなるのは人情だと思うが、まずは平らな $T^2$ の場合から考えようとしたもの。シリーズ化して次々に書く予定が、part II で止まっている。Part I では、とりあえずは M5 が 1枚 G 型特異点にある場合をやった。クーロンブランチの解析を再帰的にやるのは自分たちの論文ながらなかなか悪くないと思った。この論文で扱えるのは Higgs してテンソル多重項が残らないクラスの理論で、名前を決めかねて、Morrison さんにお伺いを立てた結果、very Higgsable ということにした。
[1501.01031]
Instanton operators and symmetry enhancement in 5d supersymmetric gauge theories
大阪での集中講義に引き続き、京都の基研でも集中講義をすることになって、こちらでは五次元、六次元の話を中心にしようと思ったのだが、なかなか話のうまいまとめ方が思いつかない。例えば、なぜある五次元ゲージ理論ではインスタントンはフレーバー対称性を出して、別の五次元ゲージ理論では Kaluza-Klein 対称性になるのかわからない、という話を、駒場で物理数学の授業の帰りにあちらの弦理論組にお邪魔した際にしたのだけれど、その帰りの電車のなかで、SU(2) Nf=8 の場合は E9 になっていると思えば自然に KK 対称性が出るのがわかると思った。というわけで、少しずつ話をつめて、一月には用事が山積して時間がないだろうから、と、年末年始に帰省している間に書いたもの。
[1412.7121]
A review on instanton counting and W-algebras
これは Teschner さんが主になって、レビュー集をつくろうということになったので、寄稿したもの。企画は2013年夏ぐらいからあって、僕はその冬には書き上げたのだけれど、ほかの人が書くのが遅くて、結局投稿されるのは2014年末になった。内容は修論のインスタントン計算のレビューのところを切り出して、その後の進展を含めて更新したもの。修論はネクラソフの計算の入門として案外いろいろな人に読んでいただいているようだけれど、ε1+ε2=0 の時しか書いていなかったから、こちらも多少は役に立つと思う。
[1412.2830]
Magnetic discrete gauge field in the confining vacua and the supersymmetric index
阪大で秋に集中講義を頼まれた為の準備をしていて、まあいつものように N=1 pure super Yang-Mills の Witten index の計算でもやろうかと思って、以前の集中講義のノートを写していると、はたとこれまでの見落としに気がついた。ゲージ群が SU(2) でなくて SO(3) だと、小さな T3 上では、Stiefel-Whitney 類が非自明な真空が 7 つ余計にある。大きな T3 上では、これは magnetic Z2 ゲージ場からくる。大体の詳細を詰めたところで、Witten 先生の hep-th/0006010 を読み返すと、必要な計算はすでになされていて、さすが先生だ、と思うことしきり。ここまでは10月の頭にできていた気がするが、トポロジーの異なるゲージ場からくる真空の相対的なフェルミオン数を決定するのが至難の技で、京都の会議に先生がいらした際に直接質問して、その後もしばらくメールで教えていただいて、また米倉くんにもいろいろと助けてもらって、なんとか仕上げたもの。
[1410.6868]
Mass-deformed TN as a linear quiver
with Hirotaka Hayashi and Kazuya Yonekura
弦理論会議でのレビューで五次元の超対称理論の短いレビューを含めようと思って、いろいろ勉強していると、五次元の TN 理論は線形クイバー理論で表される、とほとんど 2013 年の論文に書いてあるように思った。というわけで、レビューの原稿にはしばらくそう言い切ってあったのだが、ちょうどその論文の著者が参加のためプリンストンに来ていたので聞いてみると、それほど明快にわかっているわけでもないようで、実際の講演からは割愛することに。その後しばらく三人でいろいろ詳細を詰めて、結局はそれでよさそうだとなったが、途中で他の用事が出来てしばらく棚上げに。そうこうするうちに Bergman-Zafrir の論文が出て、半分ぐらい被っていたので、あわてて二週間ぐらいに投稿した。僕らのは四次元と三次元の話もやってある。
[1408.5572]
Anomaly polynomial of general 6d SCFTs
with Kantaro Ohmori, Hiroyuki Shimizu and Kazuya Yonekura
二つ下の論文に興味を持ってくれた米倉くんが、テンソルブランチ上でアノマリ保存がどうなっているかを調べて、E 弦の場合はうまく Green-Schwarz 項で説明がつくことを見つけてくれた。そこで、一緒に議論していると、GS 項自体、6d (2,0) 理論の場合は5次元へ落としてそこで Chern-Simons 項を計算すれば決定できることがわかった。そこからしばらく、6d でテンソルブランチ上でゲージ群がある場合にどうするか頭を悩ませていたが、こちらはゲージ群のアノマリが相殺していることを要求するだけで GS 項が決まってしまうことがわかり、目出度くどの場合もアノマリ多項式が決まってしまうことになった。さて、論文を投稿すると、Intriligator さんからメールが来る。というのは、弦理論会議がちょうどプリンストンであった際、前日の登録の日に軽食が出たときに会話をしたのだけれど、そのときにテンソルブランチ上の GS 項について僕に説明してくれた、というのである。僕は確かに Intriligator さんと会話した記憶はあるが、当時は自分の講演の準備でかかりきりだったため、内容については記憶がない。僕らの共同研究の中では、GS 項について気がついたのは米倉くんであるが、彼がまとめた短いノートを僕が受け取ったのは弦理論会議の終わった数日後である。Intriligator さんは無限に良い人だから、笑って許してくれたが、申し訳ないことをした。彼の論文はしばらくして出た。
[1406.4167]
Physics at the entangling surface
with Kantaro Ohmori
渡米寸前に、二次元 CFT で境界を入れれば全系の状態空間をテンソル積に分解出来、エンタングルメント・エントロピーの定義が上手く出来る、というアイデアを大森くんが出した。哲学的にはこれでいろいろ疑問がすでに解決したが、具体的に何をやればその業界の人に面白くおもってもらえるのかわからず、桂さんにいろいろ質問する。IAS に着いてからも、西岡君にもいろいろ教えてもらって、二次元イジングモデルで数値的に確認することにした。これでもう論文にしようよ、と僕がいうと、いやいやもっと頑張れるはずです、というので、文献をめくって頭を捻っていると、既存の論文の拡張として、解析的に Cardy 状態が取り出せることがわかった。Toeplitz 行列式の漸近挙動を使うのだが、そればかり調べるという純粋数学の分野もあるということを知った。
[1404.3887]
Anomaly polynomial of E-string theories
with Kantaro Ohmori and Hiroyuki Shimizu
年末に Heckman-Morrison-Vafa という6次元(1,0)理論の大きな進展があったが、清水君がそれに興味があるようだったので、それならまず何かやってみよう、と、E弦理論のアノマリを三人で一緒に考えることにした。まずは Freed-Harvey-Minasian-Moore と、Hořava-Witten のレビューをやってもらう。僕も Hořava-Witten はちゃんと読んだことがなかったので、11次元の M 理論を切ると E8 が出てくるのには感動する。あとはこの二つを組み合わせるだけだけれど、それが大変で、係数やら符号やらが論文によって convention がてんでばらばらなので頭を悩ませる。結局、種々の論文の convention をまとめただけの論文を発見して、これが役に立った。求めた結果は、いろいろな双対性を使って確認できたので、合っている筈だ。
[1402.4200]
Moduli spaces of SO(8) instantons on smooth ALE spaces as Higgs branches of 4d N = 2 supersymmetric theories
ALE 空間上の SU インスタントンのモジュライ空間はゲージ理論の Higgs ブランチとして書け、ALE の blow-up パラメタはゲージ理論の FI 項になる。しかし、SO インスタントンにすると、特異な ALE 上では同様に Higgs ブランチで書けるが、blow-up パラメタに相当する FI 項が無い。これは数年前からずっと悩んでいたのだが、わからず放置していたところ、年末に別件で Davide から来たメールに引用されていた論文を読んでいると、昔の Intriligator さんの論文で、六次元の非ラグランジアン理論の立場から同じ系を多少解析した記述がある。四次元の非ラグランジアン理論なら最近は案外よくわかっているので、それを使えば何か言えるだろう、と考えたもの。以前 Davide と Nati とやった話をややこしくした双対性をつかうと、FI 項が入れられる。が、SO(8) しかまだ出来ていないのは不満だ。
[1312.2684]
N=2 supersymmetric dynamics for pedestrians
立教大で初夏に行った講義を、頑張ってタイプしたもの。授業やら会議やらで、あまり研究に身が入らなかったので、講義録を書くぐらいは出来るだろう、と思ったのだ。手書きの講義録の図をまずパソコンで書き直すところからはじめて、それがほぼ終わってから、本文をひたすら書いた。大体既に知っていたことを書いただけだが、irregular puncture の所は講義で話すために勉強して、自分の為にもなった。以前共同研究者と見つけたが、小さなことなのでどの論文にも書いていなかったようなことを載せておくことも出来て良い。一通り書いたところで、知人に見てもらうと、皆さん丁寧に読んでくれたようで、誤植が沢山修正できた。特に米倉君には一ヶ所完全に嘘を書いていたところを発見してもらって、非常に助かる。プレプリントサーバに投稿してしばらくすると、インドの出版社と Springer とから本にしないかという話が舞い込んで来たが、僕としては出版社を選びたくなかった。インドや中国でのみ安く別の出版社から本が出るというのは科学ではよくあるので、そういう形式にできないか、と頼むと、そう出来たのだが、その分僕の取り分は減るらしい。
[1309.5160]
Classification of 4d N=2 gauge theories
with Lakshya Bhardwaj
理学部の企画で、海外の学部学生さんを一ヶ月半ほど研究受け入れをする、というのがある。これでうちの研究室に来てくれたのが Lakshya 君だ。しかし、学部学生で場の理論の研究室に研究受け入れといっても無理がある。折角インドから来てくれたのに教科書を読んでもらうのも馬鹿らしい、と頭を悩ませた。1-ループβ関数と、リー代数ぐらいはわかります、というので、それだけで出来るテーマとして、以前からやっておきたかった、4次元 N=2 ゲージ理論の分類に乗り出す。リー代数の表現にまつわる定数を列挙してしまった後は、結局ひたすら線形不等式を弄るだけなので、彼ははじめのうちは不満なようだったが、一度一緒に IPMU に行って、あちらのポスドク連中にやっていることを紹介すると、彼等がとても内容に興味を持ってくれたので、それを見て彼も俄然やる気が出たようだった。ものすごい集中力で、力技で分類を完遂してくれたので、僕はそれを必死に解読して、他の人にも読めるように途中過程を簡略化した、というもの。
[1309.3036]
2d SCFTs from M2-branes
with Kentaro Hori and Chan Y. Park
2012年の春だかに、Chan が IPMU に来た際に、M2 ブレーンから2次元CFTを出すアイデアがあるのだが手伝ってほしい、と言われたのを、僕は二次元は素人だから、と、堀さんを紹介した。流石専門家で、堀さんがすぐにどのCFTが出ているかの検討がついたので、確認をいろいろやった。ここまでは2012年の夏の終わりぐらいには出来ていたはずだが、予想の確認の為に使った手法自体に、既に他の論文で何度も使われているものの、いろいろ拙い点があることを堀さんが指摘して、棚上げになる。その後一年ほどかかって、それらの問題点を堀さんが解決したので、それを付録に加えて論文が完成した。いろいろ勉強になったが、僕の主な寄与はやはり Chan を堀さんに紹介したことであろう。
[1309.0697]
On the 6d origin of discrete additional data of 4d gauge theories
下の Ofer と Nati との論文での考察は純粋に四次元の話だったが、六次元 (2,0) 理論をコンパクト化して得られる理論の場合にどうなっているか、を Aspen 出張しばらく前に考えはじめた。六次元 (2,0) 理論は分配関数のかわりに分配ベクトルがあり、それは有限ハイゼンベルク群の既約表現に値を取る。というわけで、有限ハイゼンベルク群を勉強しようと思ったが、丁度本郷の用事で忙しく、IPMU で本を借りるタイミングが無かった。総合図書館に幸い本があって助かった。蒸し蒸しした図書館四階で本を漁っていた記憶がある。そうこうしていると、Aspen 出張の日が来たので、飛行機に乗っている間に、だいたいの部分は解決し、あちらでセミナーをさせてもらった時に話ができた。日本に戻って来てから書いたもの。
[1308.4896]
Elliptic genera of 2d N=2 gauge theories
with Francesco Benini, Richard Eager and Kentaro Hori.
三つ下の論文の higher rank 版。2r 次の微分形式を r 回部分積分するのだというのはすぐ判った。部分積分の際に必要な公式は二月ぐらいには判っていたと思うが、問題はそれを角のある高次元多様体上で何度も境界を取る際にどうするか。いつだったか、一週間ぐらいずっと考えていると、ある夜の夢に、家の周りを警察に囲まれて、早く問題を解決しろ、と脅されるものを見たので、精神に悪いと思って僕は考えるのを放棄してしまっていた。結局、下の論文を出した後、 Francesco が一番ややこしい combinatorial な部分をやってくれた。何ともややこしい導出だったので、少なくとも僕に理解出来るように頑張って書き直したけれども、それでもまだまだややこしい。最終的な公式は簡単なので、もっと明快に導出できる筈だとは思う。Aspen で頑張って書き上げた。
[1308.0064]
Dynamical supersymmetry breaking in theories without Lagrangians
with Kazunobu Maruyoshi, Wenbin Yan and Kazuya Yonekura.
ひとつ下の論文の自然な拡張。駒場で下の論文のセミナーをさせてもらった際に、聴衆の菊川さん(だったと思う)が、井沢-柳田-Intriligator-Thomas の susy breaking の拡張は出来ないのか、と聞いてくださったので、共同研究者と考えた。超対称真空はあったとしても無限遠に逃げているということはすぐにわかるので、無限遠でポテンシャルが上がっていることを示さないといけない。が、僕は超対称が破れるとすっかり素人なので、共同研究者にいろいろ教えてもらった。PRL に出したら蹴られたので PRD に回された。という話を、京産大でセミナーをさせてもらった際に九後先生の前ですると、自信作があれば是非 PTEP に出して下さい、と言われる。
[1305.5250]
N=1 dynamics with $T_N$ theory
with Kazunobu Maruyoshi, Wenbin Yan and Kazuya Yonekura.
New N=1 dualities の話を IAS でセミナーをする機会があった。米倉君が当然興味をもってくれる、というのは $T_2$ に SU(2) をみっつくっつける話をやったのは彼とだったから。というわけで、$T_N$ に SU(N) をみっつくっつけるとどうなるか、ということを考えはじめて、いろいろ解析した、というのがこの論文。まず、$T_N$ のような得体のしれない強結合理論の演算子の関係式がさらなる量子効果でずれる、というのを受け入れるのに僕は時間が掛かった、が、他の共同研究者はそうでもなかったようだ。こちらの話に辻褄が合うためには、$T_N$ 理論にこれこれの性質がないといけない、となるので、それを別の方法でなんとか調べる、という典型的な双対性の確認の論文。こういうのをやると、96年ごろ第二革命華やかなりし頃は格別面白かったに違いないと思うが、まあ僕は遅れてきたので仕方がなく、$T_N$ も十分面白い奴だ。2010年に Davide とちょっと調べはじめたが完遂せずどこにも出さず放置してあった結果など使う必要があった。
[1305.0533]
Elliptic genera of two-dimensional N=2 gauge theories with rank-one gauge groups
with Francesco Benini, Richard Eager and Kentaro Hori.
昨秋 Francesco が IPMU に来てくれたときに、$S^2$ での分配関数が計算出来るようになったという面白いセミナーをしてくれたので、じゃあ平らだからもっと簡単な筈の $T^2$ はどうなっているんだ、と言って始めた話。堀さんに、20年前に出来たはずなのに何故、と聞くと、zero mode がややこしそうだったし、あまり当時は動機がなかったから、とおっしゃる。流石専門家の中の専門家の洞察は鋭く、その後長い間 zero mode の処理に苦しむ。というのは、$T^2$ 上の BPS 配位の空間は平坦接続の空間であるが、complex codimension-1 のところで one-loop 行列式が発散して局所化が単純には行かないのだ。さて、Abhijit とは別件で共同研究中だったところに雑談をしていると、彼と Sergey との共同研究がこれと被っていることが発覚して、あちらに少し待ってもらって慌ててまとめたもの。年始ぐらいには rank one は出来ており、higher rank の場合で頭を悩ませていたのだが、期限の三日前まで一般の rank で何とかしようと足掻くという無謀なことをする。さすがに無理だとなって、慌てて半徹夜で rank-one のところだけで論文にした。さて、一般の場合はいつになることやら。
[1305.0318]
Reading between the lines of four-dimensional gauge theories
with Ofer Aharony and Nathan Seiberg.
三月中旬にプリンストンに行ったら、「Yuji ! お前が好きそうな問題で今気になっている事がある、聞いてくれ」と Seiberg 先生がおっしゃるので、半分ぐらい出来ていたところに混ぜてもらったもの。半分、というのは、ゲージ群を固定しても、許される line operator の組の選び方が異なる理論がいろいろある、というところまで彼らは既に認識していたのだけれども、それを理論のラグランジアンにどう取り入れるかという話をはじめたところだったのだ。 mod 2 なのか mod 4 なのかで頭を悩ませたが、結局 Pontrjagin square というコホモロジー作用素を使わないといけなかった。他の群でやろうとすると、一般の(単連結でない)コンパクト群の主束に伴う特性類を知らねばならず、これを網羅的に書いてある数学の論文がなくて困った。$E_6/\mathbb{Z}_3$の場合など、20年前のサーベイに、詳細は後に公表するとあって、つい数年前にその詳細の前半が arXiv に投稿されたりしているという、悲惨な状況だったが、四次元ゲージ理論に限れば四次の特性類さえ判れば良い。それには一般論がある。まとめると、$H^4(BG,U(1))$ (をclassifying mapで時空に引き戻したもの)で重みを付けられるという、判ってしまえばあたりまえの話で、実質的に二次元の orbifold の discrete torsion と同じ現象。
SO(3) (non-supersymmetric) Yang-Mills に topological phase transition がある、という結論になったが、もっと考えたい。状況は物性で流行っている topological insulator とか superconductor と似ているようで、edge state 等考えると面白いかも知れない。
[1303.7299]
Notes on reductions of superstring theory to bosonic string theory
with Kantaro Ohmori.
大森君が Witten 先生の超弦の higher genus amplitude の連作論文の解説を文献紹介でやっていた。あれだけ時間を費やしたのだから何かなるべく具体的なことをやったほうがいいだろうと思って、超弦の graviphoton 振幅が topological string の振幅に落ちる機構でも調べてみたら、と言ったのが始まり。それ自体は昨年だったんではないかと思うが定かでない。あとは大森君がほぼ全部ひとりでやって、僕は説明してもらうのに相槌をうつのと、判らない点をいろいろ聞いたのと、論文の構成に手を入れただけ。僕のほうが理解が浅いので、論文を弄っていて改悪を何度もして迷惑をかけた。丁度だいたい書いたところで僕がプリンストンに滞在したので、投稿前に Witten 先生本人にいろいろ聞いてもらうと、方針の一言目を行った段階で「ああそれはこういうことだよね」とおっしゃる、流石だ。JHEP に投稿したら、良い referee があたって、非常に的確な教育的な指摘を貰った。やりとりを三往復ぐらいしている間にお陰でこちらの理解が非常に深まって、論文も良くなったと思う。
[1303.0836]
New N=1 Dualities
with Abhijit Gadde, Kazunobu Maruyoshi, Wenbin Yan.
丸吉君がカルテクで$E_7$ surpriseの紹介をしたとブログで書いていたのを読んだので、そういえばあの論文は気になっていたが、きちんと理解するには彼らの SU(2) を SU(N) をするのが良かろう、と思って彼に連絡を取ってはじめた話。以前のメールを確認すると昨年11月のようだ。結局 SU(N) で $N_f=2N$ の場合の SQCD の dual が通常の Seiberg dual 以外にもあるということが肝になる。大体答えの見当がついて、量子異常が合うのも確認したから、超共形指数もやりたいとなると、専門家の Abhijit と文斌が同じくカルテクに居るから彼らに頼まぬのは勿体ない。さて、頼んでみると Abhijit が驚くほど理解が早く、一瞬で答えを返してきたのでどうなっているのだろうと思っていたら、丁度 Beem-Gaddeというかなり似た設定の研究を準備中だったのだ。というわけで、そこで扱われているもうすこし一般的なケースまで含めた解析にして論文にした。副産物として、Gaiotto 式理論の超共形指数に出てくる不思議な prefactor が、丁度「半保存カレント」多重項からの指数だということが判って個人的には満足だった。途中までは "Seiberg triality" という題をつけていたが結局おとなしいものにした。
[1212.3952]
Gaiotto Duality for the Twisted $A_{2N-1}$ Series
with Oscar Chacaltana and Jacques Distler.
前回の Oscar と Jacques との論文は、そもそもこれを書く為の第一歩として defect の局所的な振舞いを調べないといけなかったのだ。というわけで、それを使って SU(even) 型の外部自己同形つき Gaiotto 理論を調べた。はじめは勝手な思い込みが激しく、リーマン面が千切れると必ず何かゲージ群の結合定数がゼロになると思っていて非常に混乱したが、侃々諤々の議論の結果、必ずしもそうではないということが判った。実は 3 年前にやった SO-USp 箙ゲージ理論で既に見えていた話だ。と、ここまでは暑くなる前に既に出来ていたが、じっくり詳細を詰めていると年末までかかる。この論文は Jacques お手製の、彼のウェブサーバ上の、 instiki という wiki で数式には TeX がつかえてお絵描きソフトまでブラウザ内で使えるシステムで、三人で直接書いた。最後に LaTeX に出力してから絵をどうするかが問題だった。というのは、お絵描きソフトは SVG を出して、これまで Jacques は SVG から PDF へ変換するスクリプトを使っていたのだが、変換に芳しくない点がみつかったので。結局 SVG から TikZ へ変換する別の既存スクリプトを改良して使うことにした。まあ、まだいろいろ改善点のあるシステムだが、面白い方向性ではある。しかし、いい加減外部自己同形の話は切り上げないといけない。
[1212.0545]
2d TQFT structure of the superconformal indices with outer-automorphism twists
with Noppadol Mekareeya and Jaewon Song.
これも一つ下と同様、Rastelli 一派の話をちゃんと理解するため、すこし違う系を手を動かして勉強してみようと思って、外部自己同型捻りをいれた場合をやってみようとして Noppadol と Jaewon を誘ったもの。彼らがちょうど Stony Brook での Simons Workshop にいたので、Rastelli さんにきいてもらったところ、学生さんとでリーマン面上に外部自己同形捻りを入れた場合をやっているらしかったから、僕らは四次元時空側にあるものを考えた。これは、ここ数年頭を悩ませた SU(odd) の外部自己同形のもとでの振舞いがきちんと第一原理的にわかる珍しい系だったので嬉しかった。が、単に練習の為手を動かすだけの筈が、やはりいろいろなところに微妙な符号が現れてそれを理解するのに数ヶ月費やす。ようやくわかって論文を投稿すると、次の日に丁度 Stony Brook 組の論文が出た。
[1207.3497]
4d partition function on $S^1\times S^3$ and 2d Yang-Mills with nonzero area
六次元理論をリーマン面において出る四次元超共形理論の超共形指数が、リーマン面上の2次元ヤンミルズの分配関数で面の面積がゼロになったものと一致する、というのは Rastelli 一派のもうひとつのここ数年の大きな結果だが、それをちゃんと理解したいと思って考えたものの一つ。まずは、彼らの計算では面積が何故ゼロなのか、ということで、これは単に、四次元理論をとりだす際にまさにその極限をとっているからだった。取らない場合は、結局 $T^*G_{\mathbb{C}}$ 上の非線形σ模型に帰着する。これの解析には G x G の表現を対角部分群 G の表現から誘導しないといけなかった。というわけで、必要に迫られ誘導表現とは何かを勉強した。わかれば面白いもので、球面調和関数の構造などたちどころに出るのだ。
[1207.0573]
Superconformal Indices, Sasaki-Einstein Manifolds, and Cyclic Homologies
with Richard Eager and Johannes Schmude.
これも年始のあたりから、超共形指数が面白そうなのでなにかやろうという話を IPMU でしていたのだけれども、Richard が Rastelli et al. の箙ゲージ理論の超共形指数の計算を一般化出来た、というので、そのあたりを追究しはじめた。Calabi-Yau 錐上の正則な層の切断の個数で書き換えるのはだいたい出来そうだったので、Sasaki-Einstein 上でのラプラシアンの構造を Johannes に調べてもらった、というもの。Richard は数学の論文をいろいろ良く知っていて、Rastelli et al. の公式が Ginzburg の論文にある DGA の cyclic コホモロジーの次元の公式と一緒だというのに気が付いた。そこで、このよくわからん数学の概念を(知り合いの数学者に教えてもらいつつ)頑張って解読すると、実は cyclic コホモロジーの定義は、超共形指数の single trace の部分とほぼ全く同じだということが判った。佐々木-Einstein のラプラシアンの構造は、$T^{1,1}$ の場合は10年まえの先行研究があるからそれを参考にしながらやっていたら、そこの表に沢山間違いがあって数週間頭を悩ませた。間違いがはっきりしてから著者に連絡すると、ああ、その間違いには気付いていたよ、という返事。そういう場合は論文を改訂しておいてもらいたいものだ。
[1206.4700]
Quantum Higgs branches of isolated N=2 superconformal field theories
with Philip C. Argyres and Kazunobu Maruyoshi.
年始に Philip が IPMU にいらした際に、丸吉君達の論文で pure SO(2n) 理論の Argyres-Douglas 点が SU(n-1) で flavor が二つの時の A-D 点と同じだ、ということが書いてあって、そうすると pure SO(2n) 理論なのに Higgs 枝があることになって不思議だ、という会話を交わした。というわけで、丸吉君が四月初めに帰日していた際に捕まえて色々質問をしているうちに共同研究になったもの。判ってしまえばあたりまえで、A-D 点ではこれまで互いに非局所な粒子があるということが強調されていたが、勿論互いに局所な粒子が一杯あることもあるので、そういう際は Higgs 枝が出来る事もあるのだ。UV 理論に埋め込む際は Higgs 枝にゲージ化に伴うポテンシャルが現れて見えなくなることが多い。純粋 G 理論の A-D 点ですらこんな簡単な判っていなかったことがあったのが驚きだ。また、以前 Davide と Nati と論文を書いた際に、この SU(n-1) で flavor が二つのものは散々出て来ていて、Davide はそれが pure SO(2n) の A-D 点と同じだと気付いていたようだったが、僕には良くわかっていなかった。
[1203.2930]
Nilpotent orbits and codimension-two defects of 6d N=(2,0) theories
with Oscar Chacaltana and Jacques Distler.
Jacques に「Strings-Math 2011」に会った際に、当時彼の学生さんだった Oscar と彼との論文の内容を説明してもらったが、そこではまだ A 型 D 型の六次元理論しかなされていなかったこと、また、D 型の場合に pole coefficient に拘束が出てくる際の扱いが如何にも場当たり的だったことから、一般的な理解はどうすればいいかを調べはじめたもの。冪零軌道が重要であろうというのは明らかだったから、Collingwood-McGovern の教科書を借りてきて、勉強しながら考えていたが、結局、実冪零軌道の章を除いて教科書を全部読むはめになった。歴史の長い冪零軌道の分野においても、比較的最近みつかった概念も使わねばならないことが判り、こういうのがすっと出てくるのだから矢張り六次元 N=(2,0) 理論は偉いと思った。寺嶋さんとやった結果もきちんと再現できた。
[1111.5624]
The ABCDEFG of Instantons and W-algebras
with Christoph Keller, Noppadol Mekareeya and Jaewon Song.
8月末に Noppadol と Jaewon が丁度同じ週に IPMU に来てくれた。僕も含め N=2 ゲージ理論が好きなので、自然にその話になるが、Noppadol が計算していた Higgs branch の Hilbert 級数が例外型のインスタントン計算に使えることが判ったので、Jaewon の前からの共同研究者の Christoph と力をあわせたというもの。まあ頑張れば合うに違いないという計算ではあったが、E6型の W 代数を決定するのは骨が折れた。安直に自由 boson 6つで展開するコードを書くと居室の iMac ではメモリ不足になるので、結局 W(A2)×W(A2)× free boson 二つで展開することに。ここだけでコードの改良に一週間、実際の計算は一晩かかった。W代数計算のパッケージで有名な Kris Thielemans 先生は今インペリアル大の医学部で体のイメージングのコンピュータ処理等をなさっていることが判った。v1 では W(E6) の生成子を論文に載せるのは真面目な Christoph に止められたが、 v2 では許してもらった。あまりに小さい文字で大量に載せた為、JHEP で出版された際に、組版担当の人を泣かせてしまったようで申し訳なかった。
[1110.2657]
On 6d N=(2,0) theory compactified on a Riemann surface with finite area
with Davide Gaiotto and Gregory W. Moore.
下に Greg に指摘されて正則シンプレクティックに変えたと書いたが、それは、ハイパーケーラー多様体としては Higgs branch の計量が内部空間の面積に依存するからだった。その依存の詳細を調べたもの。Davide が計量の面積依存性を twistor 構成を使ってすぐ書き下してくれたのだが、理解するのに随分時間がかかった。副産物として、六次元 N=(2,0) 理論の長い管状領域から出てくるゲージ群が時々小さくなる現象の物理的背景が分かった。この論文を仕上げる前までは、相変わらず Gaiotto 曲面をあまり物理的なものとして考えていなかったが、ようやく認識を改めて、Gaiotto 曲面は物理的なものであると思えるようになった。
[1110.0531]
On S-duality of 5d super Yang-Mills on S1
下に前に切りだした論文について書いたが、六次元の SU(奇数) 型 N=(2,0) 理論の Z2 自己同形について判ったことを判ったところまでまとめておこうと思った。IPMU にはオリエンティフォールドの専門家の堀さんと杉本さんが居るので散々質問を聞いてもらって有り難かった。2009年の年末に気付いた問題点をずっと調べて二年弱掛かったが、それでも結局六次元の立場からは分からず。そのかわり、五次元のゲージ理論の立場からはきちんと調べて、六次元の立場からはどういう結果が求まるべきか、は論文内にまとまっている筈。
[1108.5632]
A strange relationship between 2d CFT and 4d gauge theory
これは駒場で河東先生主催で毎年やっている「数理物理」という夏の学校の講義録。10年ほど前には学生として参加した夏の学校なので、講師として読んでいただけて光栄だった。一頁目以外は日本語で、一応修士の院生向けに書いたので、僕の最近の仕事に興味のあるかたは読んで下さい。arXiv に日本語で投稿するにはどうするか、というのがなかなか大変だった。
[1108.2315]
Seiberg-Witten Geometries Revisited
with Seiji Terashima.
大地震があって、原発が爆発して、計画停電もはじまったので、女々しい僕は、研究所で義務がないことを良いことに、急遽京都の基研に出張という名目で疎開していたのだけれども、出張したからには何か共同研究をはじめねばならぬ。というわけで、寺嶋さんと梁さんの結果を Gaiotto 風に Hitchin 系をつかってみたら理解が深まるだろうかという以前から気になっていた問題に寺嶋さんとあたってみることにした。結論としては、物質場を充分入れて超共形になる場合はきちんと Hitchin 系で書きなおせるが、物質場を一種類 R 入れる毎に XR を掛け合わせるだけで良いという構造は Hitchin 系からはわからない。それは SU(N) で基本表現を Nf 個入れたごく普通の場合だってそうだ。N=2 ゲージ理論の全ての性質が Gaiotto 式にすることで最もよくわかるわけではない。しかし、Gaiotto 式にみてみることで沢山新たな知見が得られるのも事実だ。
[1106.5698]
On 2d TQFTs whose values are holomorphic symplectic varieties
with Gregory W. Moore.
「String-Math 2011」という研究会で話をすることになったので、ガイオット型理論の Higgs branch が TQFT の変種になるという話をしようと思って、原稿をでっち上げたのだが、偶然研究会の少し前に Greg に会ったので見せたところ全くこんなのでは数学者には通じない、と言われて彼の手を借りて大幅に書き直したもの。ハイパーケーラーでなくて正則シンプレクティックにしたことで話がより簡単になった。
[1106.1172]
Para-Liouville/Toda central charges from M5-branes
with Tatsuma Nishioka.
5/30 の月曜が Memorial Day で研究所の食堂が閉まっていたので、街まで行って西岡君と昼食にしたのだが、そこで西岡君が入江君から昔 para-Liouville 理論というのがあると聞いたことがあると教えてくれた。整数パラメタを一個いれるのならどうせ $\mathbb{C}^2/\mathbb{Z}_m$ を考えるんだろうと言っていたら、その晩に丁度 Belavin-Feigin が出てどうもそうらしいということなので、前の論文の手法をつかって central charge だけ調べて論文にした。
[1105.4390]
3d Partition Function as Overlap of Wavefunctions
with Tatsuma Nishioka, Masahito Yamazaki.
4月に IAS に戻って、折角日本人で弦理論やってるのが三人いるんだから何かやろうということで、Stony Brook 組に倣っていろいろやってようやく T[SU(N)] 理論の分配関数が計算できたと思っていたら、非常に被った Benvenuti-Pasquetti という論文が出たので慌ててこちらも論文にまとめた。丁度僕はパリとブリュッセルに出張だったのだが、これを慌てて書いていたせいで週末も全く観光に行く暇が無かった。図が西岡君の趣味で xfig から ps_t という形式のファイルになっていて面白い。
[1105.3215]
N=1 curves for trifundamentals
with Kazuya Yonekura.
これはそもそも2010年の春に Perimeter Institute に行ったときに、その頃 PI にいらした奥田さんと大河内さんに出して貰った問題。しばらく考えても混乱するばかりだからとほうってあったのを、日本に11月に戻ったので米倉君に振って僕は忘れていたら、数ヶ月たって彼が一番基礎的な trifundamental + SU(2)3 の場合を解いてくれたので、あとはガイオット式に一般化したというもの。新しい Seiberg-Witten カーブを特定したのは初めてだったのでなかなか面白かった。必要なモノドロミーを持ったカーブの族の書きかたに関しては Bondal 先生にもいろいろ教えてもらった。
[1105.0357]
Instanton counting with a surface operator and the chain-saw quiver
with Hiroaki Kanno.
一般の表面演算子の件で、分配関数を直接計算して確認できないかと思って中島先生やら長尾くんにいろいろ質問していると、実はインスタントンモジュライが既に chain-saw quiver と言って "Drinfeld Zastava の量子化" という論文に書き下されているのを教えてもらった。そこで手を動かしはじめたところ、丁度名古屋大にマチウ群の研究会にいく機会があり、夜のお酒の席で菅野先生に最近どんなことをなさっているか聞くと丁度同じことをなさっているということで、一緒にやることにした。量子DS還元自体をプログラムに組めなかったので、完全に一般のケースを確認できたわけではないのが心残り。一般の場合にプログラム書いてくれる人がいたら連絡下さい。菅野先生の趣味で図が pstricks で直接 tex に描かれていてそれも勉強になった。
[1102.0076] On W-algebras and the symmetries of defects of 6d N=(2,0) theory
2010年暮れに Wyllard が一般の表面演算子つきでインスタントン分配関数を考えると量子 Drinfeld-Sokolov で出る W 代数が出るだろうという論文を書いたので、どうしたものかと思っていたが、丁度 Ruben Minasian が IPMU に滞在していて 6d N=(2,0) 理論のアノマリに関していろいろ議論したので、それを使ってみることを考えた。ゲージ理論の表面演算子は 6 次元の余次元 2 の欠陥から来ているので、一般 W 代数に含まれるカレント代数の中心電荷が欠陥のアノマリから出るはずで、欠陥のアノマリ自体は重力解から決定できた。ややこしい計算自体は90年代初頭の de Boer-Tjin と 2009 年の Gaiotto-Maldacena に全部やってあったので、単に解読して比較するだけだった。v1 では Sec. 2 にかいたレビューが間違っていて、Davide に叱られた。
[1011.4568]
Comments on scaling limits of 4d N=2 theories
with Davide Gaiotto, Nathan Seiberg.
9月頃に a 定理が a 最大化が使える場合、及び重力解に高次項をいれた場合に成り立つというセミナーがそれぞれあり、それを聞いた Nati が「やっぱりお前が Al と書いた論文は間違っているんじゃないか」と言いはじめた。僕は丁度日本に帰国するための準備で忙しかったのでしばらく関与せずにいたら、Davide と Nati で江口=堀=伊藤=梁の低エネルギー極限の取り方が良くなかったという結論に至ったらしく、説明を受けた。僕としては前に書いた論文が間違っているのは承服し難く、いろいろ抵抗してみたが、別の確認をしてみるとやはり Davide と Nati の解析を指示する結果が出てどうしようも無くなった。日本に帰る直前に Davide が黒板でおおよそ説明してくれた粗筋を日本に戻ってから詳細を足して書き上げたのがこの論文。
[1009.0339] N=2 S-duality via Outer-automorphism Twists
2009年のケンタッキー大での "Quantum Theory and Symmetry" 会議中に、Philip と Al にこんなことを考えたらどうなるか、と聞かれたのを敷衍したもの。'09年暮れに論文に書こうとしたら、N=4 超対称の場合のレビューを書いていてわからない点があったのでそちらを長い間考えていたものの、$A_{even}$ の場合は非常に難しいということが判明して、わかっているところだけ切り出して論文にした。
[1009.0017]
N = 1 SCFTs from Brane Monodromy
with Jonathan J. Heckman, Cumrun Vafa, Brian Wecht.
Brian と N=2 SCFT を変形するという論文を書いたので、Jonathan がそれを F 理論現象論に使いたいと言って何度も僕の部屋に質問にきていたのだけれど、単に助言をしているだけのつもりがいつのまにか共同研究になっていたというもの。ハイパー多重項に off-diagonal な質量項をいれるといろいろ変なことが起こる。仕組みはとても簡単だが、案外誰も考えたことがなかったらしい。論文を書くのを Jonathan に任せているとどんどん例が増えて長くなるので Brian と二人でこちらはどんどん例を削除した。
[1007.0992]
Mirrors of 3d Sicilian theories
with Francesco Benini, Dan Xie.
'09年暮れに Texas A&M に行った際に Dan と会ったら、こんな数学の論文があるが四次元の N=2 理論で解釈できないだろうか、と言うので見てみると、むしろ三次元の理論でミラーを取っているのだということがわかった。プリンストンに戻って Francesco も加えてのんびりやって、出来上がったら夏になっていた。僕は SU だけの短めの論文にして、 SO の話は入れたくなかったからかなり頑強に抵抗したのだが、二人が折角やったのだから載せればいいじゃないかというので結局折れて長さが 4 割増になった。この論文を書くために Gaiotto-Witten の長い論文を 二つひたすら読んだ。新しいことを見つけたと思ってから彼らの論文を読み直すと大抵どこかに載っているのだった。あれを最後まで読んだのは僕らぐらいではないかと思う。
[1005.4469]
Affine SL(2) conformal blocks from 4d gauge theories
with L. Fernando Alday.
表面演算子つきのインスタントンのモジュライはどうやったらしらべられるか中島先生に聞いたら、FFNRに載っているという答えだったので解読して物理の言葉に翻訳しただけ。はじめは Ribault-Teschner 対応のどちら側に答えが一致するのかわからず困ったが、ヴィラソロ代数で解釈するのを放棄すると混乱が収まった。二月に日本に滞在中に始めて、プリンストンに戻ってからは何度も二人で Okounkov 先生に教えを乞うていたら春になった。長年 Braverman がやった話を物理的に理解したいと思っていたのをようやく果たした。
[1005.3546]
Exactly Marginal Deformations and Global Symmetries
with Daniel Green, Zohar Komargodski, Nathan Seiberg, Brian Wecht.
Brian と Francesco の '09 年夏の論文で N=1 SCFT の marginal 変形を調べた際に微妙な点があったので長い脚注を書いたのだが、その脚注を読んだ Dan が興味をもって一緒に調べることになった。なんども廊下や食堂で議論をしていると Zohar と Nati も参加することになってかなり船頭が多くなったが、お蔭で主張が鋭くなり、Leigh-Strassler の論文の本質を取り出せたと思う。最初の三人は LaTeX 派なので原稿はそれで書いていたのだが、Nati は harvmac 派なので原稿を書き直す必要に迫られ、手作業でするのはばからしいので八割方自動で LaTeX から harvmac に変換するスクリプトを書く羽目になった。
[1004.0956]
Notes on the K3 Surface and the Mathieu group M24
with Tohru Eguchi, Hirosi Ooguri.
江口先生と向井先生は長い付き合いなので、K3 のシンプレクティック同形が M23 の特定の部分群であるという結果を向井先生が得たときからずっと stringy な K3 だと M24 全体が対称性になるんではないかと江口先生は思っていたそうだ。僕が院生のころからその話は何度も聞いていて、鈴木君ともちょっと手を動かしたりしていたのだが何もはっきりした結果は得られていなかった。'09年のアスペンで大栗先生と江口先生と一緒だった際にその話がまた持ち上がり、大栗先生の博士論文にのっている K3 の楕円種数の N=4 ヴィラソロでの既約分解の表式の話になった。当時僕は非常に楽観的だったのでここに M24 の構造がそのまま見えるのではないかと思って、数学辞典の付録の表を眺めてみると見事に一致していたので、慌てて両先生のところに伝えに行ったというもので、僕の寄与はそれだけ。何かもうちょっと理解してから論文にしようとしたが何もわからないので、'10年のテキサスでの会議で三人また集まった際に短いノートにして出そうと中華屋で食事中に決めた。何も論証がないので、"Experimental Mathematics" 誌に出したら、途中で雑誌が別の出版社に買われて、論文が組版された際に手違いで著者が一人追加される等いろいろおかしなことになった。
[0911.4787]
N=2 gauge theories and degenerate fields of Toda theory
with Shoichi Kanno, Yutaka Matsuo, Shotaro Shiba.
10月に基研に滞在した際に、部屋を松尾先生とご一緒したので、なにか一緒にやりましょうということで、先生に W 代数に関して教えてもらうことにした。ゲージ理論側で必要なものに丁度対応する、半縮退表現というのがあるので、それをすこし調べたもの。寒くなってきた時期にボストンに出張してホテルの狭い机で原稿をタイプしていたのを覚えている。結果を重力解と安直に合わせようとするとうまく行かないので Maldacena 先生には答えを信用してもらえなかったが、Nadav et al. がさらに詳細をしらべた論文を出していまのところゲージ理論と W 代数の比較は上手くいっているので、問題は重力解との合わせかたにあるのだと思われる。
[0909.4776]
Liouville/Toda central charges from M5-branes
with L. Fernando Alday, Francesco Benini.
Bonelli-Tanzini に、戸田 CFT の central charge と 6d N=(2,0)理論のアノマリの表式が非常に似ている、という観察があると Fernando が言うので、丁度 Francesco と Brian と書いた論文で六次元のアノマリから四次元の central charge を出したところだったので同じ方法を使ってそれを導出したという話。同変コホモロジーの意味でアノマリを次元還元しないといけなかったので慌てて同変コホモロジーの基礎を勉強した。何か良い教科書はありますかと Witten 先生に聞いたら黒板で概説してくださった。
[0909.1327]
Sicilian gauge theories and N=1 dualities
with Francesco Benini, Brian Wecht.
「27/32」を書いたときに M5 をリーマン面に巻いて N=1 超対称性を保った重力解が既に Maldacena-Nuñez が作っているのを知ったので、Francesco と N=1 対称性で何かやろうといっていたのと合わせていろいろやってみたもの。NSVZ の厳密β関数やら、Leigh-Strassler の議論やらをラグランジアンが無い状況でやらないといけないのでなかなか微妙だった。四次元理論の central charge が六次元のアノマリから自然に出るのがわかったのは良かった。このクラスの理論は「一般化箙(generalized quiver)理論」と呼ばれていたのだが、SU(N)3の表現で言ってみれば三つ脚のものが沢山あるのを指して一般化箙はないだろうと思って三人で頭を捻った。手裏剣理論は流石に駄目だろうというので、三つ脚の化け物が紋章のシチリアに敬意を表して「シチリア理論」という名前をつけたのだけれど、ほとんど誰も使ってくれずに悲しい。
[0909.0945]
Loop and surface operators in N=2 gauge theory and Liouville modular geometry
with L. Fernando Alday, Davide Gaiotto, Sergei Gukov, Herman Verlinde.
Liouville 理論とゲージ理論が関係があるという話を聞いた Herman が、昔 Liouville 理論のループを調べたのがこの状況でどうなるか知りたいというので共同研究をはじめたところ、リーマン面上のループがゲージ理論のループであるという結果 (Drukker-Okuda-Morrison) が出、さらに表面演算子をいれると良いとなって Sergei の助力を頼んだらこうやって多人数になってしまった。ほぼ同じことをやっていたもう一団体と同じ日に論文を出した。僕は相変わらず二次元側の状況は良くわかっておらず、細かい計算をいろいろやっただけ。
[0906.3219]
Liouville Correlation Functions from Four-dimensional Gauge Theories
with L. Fernando Alday, Davide Gaiotto.
Fernando は Wilson ループの計算が趣味なので、Davide の最近の結果を踏まえて N=2 超対称 SU(2) 理論で四つ flavor がある場合に計算をやってみようとしたところ、Pestun の公式を使う必要があり、Nekrasov の分配関数を使う必要があることがわかった。というわけで、昔僕が Nekrasov 分配関数をやっていたことを知っていた Davide が一緒にやらないかというので共同研究を始めた。はじめはどう計算したものかわからず数値計算などしていたが、ある休日僕があたりをサイクリングしていると、Davide から携帯にメールがあり、ゲージ理論の 1-loop 部分に出てくる特殊関数の組み合わせがが丁度 Liouville の DOZZ 因子と同じだと言う。当時僕は二次元の無理共形場理論なぞ全く知らなかったので、なんのことかさっぱり判らなかったが、じゃあ 1-loop でなくてインスタントン分配関数の部分は何なんだと聞くと、共形ブロックと一致するはずであるという Davide のお告げであるので、Mathematica で皆で机の前に座って計算してみると見事に一致したという話。Davide が '09 の弦理論会議で話したいというので慌てて論文にまとめた。
[0906.0965]
27/32
with Brian Wecht.
N=2 超共形場理論に m trΦ2 を足して N=1 超共形場理論に落とした場合に central charge がどうなるか?というのを調べていたら、おもいかけずいつも比が 27/32 になるということが示せた。ある日の昼食時に Juan に他の例で確かめてみたいが何か知らないか、と聞いてみると、 M5 をリーマン面に巻いた場合は N=2 の場合も N=1 の場合も重力解を昔 Nuñez と作ったというので、その論文の付録を解読して比を計算すると確かに 27/32 になっていた。というもの。短い論文ではじめて4ページ以下だったから、Brian と冗談で PRL に出してみたら通ってしまったという笑い話。グラフ理論でも 27/32 という比は重要だ、というコメントをメールで頂いたりした。
[0906.0359]
Webs of five-branes and N=2 superconformal field theories
with Francesco Benini, Sergio Benvenuti.
Davide の TN 理論やその仲間を NS5 と D5-ブレーンの結合系で実現する、という話を Francesco と Sergio がやっていたら、いくつかの例で En 対称性がでるらしいと判っていたそうで、4次元の場の理論的に導出出来ないかと聞かれてそこを調べた。というわけで僕の寄与は基本的には場の理論的解析の一節と、暇だったときに E8 用のブレーン網の図を書いただけ。投稿してから、途中の節で新しいことを見つけたつもりで書いた事実が、第二次革命華やかなりし頃に出た論文に既に書いてあったと指摘を受けた。当時はあまりに論文が多くて何が既に知られているか把握するのはなかなか難しいと判った。
[0905.4074] Six-dimensional DN theory and four-dimensional SO-USp quivers
Davide の N=2 duality の論文をさて真面目に読むかと思って、論文を読むのに一番良い方法はすこし違う系で実際に手を動かしてみることだから、ゲージ群を SO/USp に変えてやってみることにした。(物性のほうでは銅鉄主義というのがあるが、素粒子理論では SU/SO主義ということになる。)しばらく頑張ってみると SO 特有の微妙な点がいくつかあるもののほぼ同様に出来てしばらくした頃、昼食時に Nati が何を最近やっているのかと問うので、Davide のやった話を SO でやってみたが別に大した話ではないから書かずに置いてありますというと、それはいけない、たとえどんなつまらない話と思っても論文は書いておかないといけない、という返答。なんだか良くわからないうちに、Yuji がこれを論文に書き上げるべきかこのテーブルの多数決で決めよう、ということになって、僕以外みな挙手したので書くことにした、という論文。
[0903.5184]
Comments on Galilean conformal field theories and their geometric realization
with Dario Martelli.
すこし前に非相対論的共形対称性のある重力解をつくったが、Schrödinger 対称性と Lifshitz 対称性との違いが良く判らなかったので、そもそも非相対論的共形対称性にはどんなものがあるのか調べたくなって Dario と一緒にしばらく頑張った結果がこれ。相対論的でないと、いろいろ不思議な対称性の群があるのだが、生憎それらを実現するまっとうな系はなかなかないそうで、重力解もうまくは作れなかった。しかしこういう代数の研究を長年やっている専門家もいるのだということが判った。これを機会に Wigner-Inonu contraction の Inonu さんが何者かというのを調べてみたら、トルコ人で大統領の息子で、正しくは İnönü と綴って大文字の I の上にも点があることが判ったことも収穫だった。
[0903.4176]
Higher-Derivative Corrections to the Asymptotic Virasoro Symmetry of 4d Extremal Black Holes
with Tatsuo Azeyanagi, Geoffrey Compère, Noriaki Ogawa, Seiji Terashima.
'09年の年始に日本に帰って基研に寄った際に、最近 Harvard あたりで流行っている Kerr/CFT について寺嶋さん小川君畔柳君にいろいろと教えてもらったので、折角だから何か一緒にしようということで、僕の趣味の高階微分項による補正を入れた場合もきちんと成立するかというのを調べはじめた。アメリカに帰っても細々と続けていたのだが、なにぶん非常に大変な計算で、一箇所どうしてもうまくいかないところがあったから、同時期に西岡君村田君と共同研究をしていた Geoffrey が重力の保存量の世界一の専門家(の一番弟子)であったので、彼らに紹介してもらって計算を手伝ってもらった、という話。まあ頑張って計算するときちんとうまくいくのであるが、大変な計算だった。
[0810.4541]
Argyres-Seiberg duality and the Higgs branch
with Davide Gaiotto, Andrew Neitzke.
Argyres-Seiberg 双対性の確認はそれまで Coulomb branch 側でばかり為されていたので、Higgs branch 側でもやってみようと思ってとりあえず次元を確認してみるとうまく行っていることが判った。それ以上の確認をするには E6 の1-インスタントンのモジュライ空間の正則関数の環が要るので、昼食時にその話題を Davide に振ってみると、彼がすこし離れたところに座っていた Witten 先生に「1-インスタントンモジュライって極小冪零軌道と同じでしたっけ」と聞く。答えは Yes で、Davide が「それなら正則関数の環は Andy が知っているはず」というので、食後に Andy の部屋に押し掛けて説明すると、なんでもそれは Joseph イデアルというもので与えられるそうだった。あとは文献を探し当てて、解読して、ややこしい計算を一週間ほど Andy と僕とで続けると、二つのハイパーケーラー商が見事に一致することが判った。
[0809.3238]
A counterexample to the a-'theorem';
with Alfred D. Shapere.
Argyres-Douglas 型の N=2 超共形場理論の central charge の計算が前の論文で出来るようになったので、SU(N) で Nf だけフレーバーがある場合を江口=堀=伊藤=梁がやっていたのに適用してみたら、 思いがけず central charge "a" が低エネルギーで増加している例をみつけた。いろいろ Al と議論して、二人で間違いがないか探し、専門家の前でも説明しておかしなところは無いか聞いてもらうのに数ヶ月費やして、どうやら仕方がないらしいということで論文にした。論文を書いても皆さん誰も信じてくれず、信じてくれない人には議論のどこがおかしいか指摘してくれと頼むも返答もなく数年が経ったのだが、結局 Nati と Davide の論文で、そもそも低エネルギーが一つの超形場理論だという仮定が間違っていたことが判った。そんなことは考えもしなかったし、当時は Davide の N=2 duality の論文の前だから、N=2 超対称理論の結合定数空間の境界で理論がどう分解するか知られていなかったから仕方がないといえば仕方がないのだが、それは言い訳だ。結局 Komargodski-Schwimmer で a 予想は殆ど証明されてしまった。
[0807.1102]
Classification of N=6 superconformal theories of ABJM type
with Martin Schnabl.
Bagger-Lambert が出た辺りから Martin が興味を持ったので、N=8 超対称性を持つ 3d Chern-Simons-matter 模型がないものか一緒にずっと探していたのだがうまくいかなかった。その後 ABJM が出たので、では N=6 が出るものは他にあるか、と虱潰しに探した論文。ほぼ論文が書き上がった頃に 細道-李-李-李-朴 が出て、結局 Gaiotto-Witten の N=4 の場合の解析と同様、超 Lie 代数の分類に帰着することが判って、論文に殆ど新規価値がないことになったのだが論文を投稿してしまった。そもそも僕らの分類手法はその昔に超 Lie 代数が分類された方法と基本的に同じだったということが判った。
[0807.1100]
Comments on string theory backgrounds with non-relativistic conformal symmetry
with Juan Maldacena, Dario Martelli.
Dam Tanh Son が見つけた計量に興味を持った Dario が、Juan と一緒にきちんと弦理論に埋め込むことを研究しはじめていたところ、Dario がお前も興味があったら一緒に研究するか、と誘ってくれたので参加させてもらった。重力解をいろいろと自分で弄ったことはそれまで無かったので、黒板の前で三人で議論していると Dario や Juan の魔法のような式変形についていけず、毎日議論の終わったあとに机に向かって式を再導出していた記憶がある。結局、10次元IIB超重力から massive ベクトル場をどう出すか、という問題に帰着したので、consistent truncation を探すべく計算をはじめたのだが、Dario が「これだけ場を使えば出来るんじゃないか」というので数日計算してみるとうまくいかない。彼にそう伝えると、「じゃあこの場も足してみると出来るんじゃないか」というので数日計算してみるとそれでも consistent にならない。というのを数回繰り返すと有限回で手続きが終了して、目出度く consistent になった。僕は Dario の炯眼に感服した次第。同じ日に同じことをやった論文が二つ、 Herzog-Rangamani-Ross と Adams-Balasubramanian-McGreevy とが出た。技術的な内容はどれも同じだが、地の文が僕らのは非常に悲観的なのに対して ABM は非常に楽観的で対照的だった。付録のひとつでの超対称性の計算を僕がしたところが間違っていて、あとで訂正したのは苦い記憶だ。
[0804.1957]
Central charges of N=2 superconformal field theories in four dimensions
with Alfred D. Shapere.
Ofer との論文で、Argyres-Douglas 型超共形理論の中心電荷がいくつかの例で重力双対を使って計算できたが、丁度研究所に滞在中の Al と、純粋に場の理論的に計算する方法を考え始めた。中心電荷 a と c の線形結合のひとつが、ループを回る演算子に関する足し上げの形をしていたので、それが正当化できないかしばらく考えたがうまくいかない。ある寒い日に、院生だった頃に江口先生が「Moore-Witten に書いてある A、B因子が中心電荷と関係ある筈だ」と言っていたのを思い出したので、いろいろやってみると、a と c が A と B の R 電荷の線形結合で書けるらしいことが判った。判ってしまえばそれを正統化するのはそれほど難しくなかった。この論文の内容は江口先生の還暦記念研究会で話をする機会を貰えて光栄だった。
[0711.4532]
A holographic computation of the central charges of d=4, N=2 SCFTs
with Ofer Aharony.
Argyres-Seiberg が出て非常に感動したので、何かできないかと考えていたところ、フレーバー対称性の中心電荷なら計算できることが判った。それをイスラエル出張帰りの Nati にすると、丁度あちらで Ofer が同じ計算をした話を聞いたというので、連絡をとって一緒に研究することにした。しばらくすると共形変換の中心電荷も目出度く計算できたので論文になった。Holography の計算で D3-brane の数を 1 にするのはかなり無茶ではあったが。 harvmac を使ったのは初めてだった。後に、フレーバー対称性の中心電荷は '97 に Cheung-Ganor-Krogh がやっていたことが判った。
[0709.0348]
A-D-E Quivers and Baryonic Operators
with Futoshi Yagi.
普通弦理論の文献では非可換群によるオービフォールドは滅多に調べられていないので、AdS/CFT の文脈でやったらどうなるかと思って、T1,1 を SU(2) の離散部分群で割ったときの D3-brane が巻いた状態がいくつでるかを調べた。結局 ADE 箙の半不変量 (semi-invariants) を調べると、球面を正多面体群で割ったときの面の出具合が反映されているということになる。八木君とで愚直にしらべていたのだが、出版したあとで基研に寄った際に数学の木村君に聞いてみると、Skowroński-Weymanという論文が2000年に出ていたことを教えてもらった。この論文は弦理論の論文としては内容は悪くないと思うが、生憎誰にも引用してもらえていない。
[0706.2114]
Rigid Limit in N=2 Supergravity and Weak-Gravity Conjecture
with Tohru Eguchi.
Arkani-Hamed et al. が「弱重力予想」というのを出した。これは、矛盾の無い量子重力理論では重力は他の力より弱くなければならない、というもので、他の定式化としては、プランク質量にゲージ結合定数をかけたあたりのところに必ず何か粒子があるはず、ということも出来る。これを弦理論の N=2 超対称性をもつコンパクト化のばあいに確かめた。まあこの場合は何らかの duality frame に行けばそこでの弦理論のスケールが丁度プランク質量に弦の結合定数を掛けたものになるので、当たり前といえば当たり前である。おまけとして、Matone 関係式とよばれる重力の関係ない N=2 超対称ゲージ理論の関係式が、コンパクトな Calabi-Yau に埋め込むことで導出できることが判った。
[0704.1819]
Comments on Charges and Near-Horizon Data of Black Rings
with Kentaro Hanaki, Keisuke Ohashi.
高階微分補正をいれたブラックリングのエントロピーを計算して、弦理論と比較しようと思ったのだが、漸近平坦な解をつくるのは困難なので、地平面近傍の解だけで議論をしたい。しかし、5次元重力理論で Chern-Simons 項があるので、地平面での電荷と無限遠での電荷を比較する必要があったのでそこを解決した論文。弦理論における電荷と比較する際、地平面近傍の電荷を使うべきか、無限遠での電荷を使うべきかどちらが正しいかという論争がそれまで二グループ間であったのだが、僕らの結論は、両者は大ゲージ変換で繋がっているのでどちらでもよい、というもの。
[hep-th/0611329]
Supersymmetric Completion of an R2 Term in Five-Dimensional Supergravity
with Kentaro Hanaki, Keisuke Ohashi.
以前書いた「a 最大化の重力双対」で、一般の場合が5次元超重力の高次項が知られていないために出来なかったのが悔しかったので、その道の第一人者(の一番弟子)の大橋さんと、元気な花木君に如何にこの問題が重要か説得して、大変な計算をやってもらったという論文。とんでもない計算量で、はじめたころは皆東京にいたのに、終わったら僕はアメリカ、大橋さんはイギリス、と離れ離れになっていた。この論文はいろんなひとに結果を使ってもらった。
[hep-th/0611141] Black Hole Entropy in the presence of Chern-Simons Terms
アメリカに移動するのでちょっと今までやらなかったことをやってみようと、丁度 Aspen のブラックホール研究会に参加していたこともあって、何かブラックホールの勉強をしてみようと思った。エントロピーの計算をしてみるにあたって、Chern-Simons 項がある場合の公式が知られていないということを知ったので、単に Wald の一般論をすこしだけ拡張して適用してみた、というもの。Wald の定式化の勉強ができて丁度良かった。
[hep-th/0601054]
Triangle Anomalies from Einstein Manifolds
with Sergio Benvenuti, Leopoldo A. Pando Zayas.
Yp,q多様体の体積と、a 最大化の結果が見事にあうという進展があったので、a 最大化する以前のアノマリの段階で重力側と場の理論側が合うことを示そうと頑張ったもの。サンタバーバラで Sergio と Leopoldo とで頑張って計算した。超重力の次元還元でアノマリを内部空間の幾何学で書くのが IIB の五形式場が作用がないせいでまず一苦労で、得られた幾何学的公式をトーリック佐々木=Einstein の場合に計算することもかなり大変だった。後者は数日進展が無かったので買った Keith Jarret の独奏のアルバムを下宿の部屋で聴いていたときに方針が立って可能になった。書き上げるのは日本に戻ってからになった。
[hep-th/0512061]
The Gauge/Gravity Theory of Blown up Four Cycles
with Sergio Benvenuti, Manavendra Mahato, Leopoldo A. Pando Zayas.
Klebanov-Strassler 解は重力解先端の 2-cycle を膨らませたようなものだが、4-cycle がある場合にそれを膨らませるとどうなるかということを調べた。これは残り三人がやってほぼ出来ていたところに混ぜてもらって、一般のトーリック佐々木=Einstein の場合にどうなるか、という部分の話だけ書いてあまり他の部分を理解していなかったのだが、数年たって Dario と Juan と論文を書いた際に、理解していなかった部分の拡張をやることになった。世の中巡り合わせだ。
[hep-th/0512019]
More anomaly-free models of six-dimensional gauged supergravity
with Ryo Suzuki.
Avramis,Kehagias,Randjbar-Daemi という論文で、六次元のアノマリ無し超重力の新しいものが見つかったというのに感激したので、鈴木君を誘ってパソコンをぶん回して他の例を探し始めた。生憎例外群を使った場合は Avramis-Kehagias が数ヶ月後にやってしまったので、まあ例外群をつかわなくても良かろうと小さい群をつかったのが我々の論文。しかし、本文よりも付録 B でやった、symplectic-Majorana gravitino の重力アノマリ係数の決定のほうが意味があるはず。e2π i/6 の平方根であるのはすぐわかるが、e2π i/12 か e2π i7/12 かどちらかを決定するという微妙な話だった。
[hep-th/0510061]
Distribution of Flux Vacua around Singular Points in Calabi-Yau Moduli Space
with Tohru Eguchi.
Ashok-Douglas の真空数え上げを、モジュライ空間のいろいろな特異点のまわりで調べた。半年以上やっていたのだが、夏のトロントの会議で Douglas が当時学生の Gonzalo Torroba と似た話論文を書いていると言ったので、サンタバーバラについてからあわてて先生と詳細をつめて論文にした。非常に泥臭い解析をしたのだが、数ヶ月後に Douglas-Lu によって簡潔な証明が出た。
[hep-th/0509230]
Pouliot Type Duality via a-Maximization
with Teruhiko Kawano, Yutaka Ookouchi, Futoshi Yagi.
本郷にいらっしゃった大河内さんが a 最大化のプロなので何かやってみようということで、川野さんが以前なさっていた Pouliot 型双対性 (カイラルな超対称場の理論が非カイラルな理論と双対になるというもの) に適用してみることにした。案外計算が大変で、八木君には迷惑をかけた。
[hep-th/0507057] Five-dimensional Supergravity Dual of a-Maximization
本郷にポスドクでいらっしゃった大河内さんが a 最大化のプロなので、影響されて何かやってみようと思い、重力側でどう見えるか考えてみたのがこの論文。基本的に5次元の超対称重力理論の構造を理解するのが問題で、それが出来ればあとは自然に両側が合致することが判った。丁度トロントの会議に出張する前だったから、先延ばしにするかそれまでに書いてしまうか悩ましいところだったが、気合いをいれて投稿してからカナダに行った所、丁度よく似たことをやった論文が出た。
[hep-th/0503033]
Global Structure of Moduli Space for BPS Walls
with Minoru Eto, Youichi Isozumi, Muneto Nitta, Keisuke Ohashi, Kazutoshi Ohta, Norisuke Sakai.
これは2004年秋の学会での東工大セッションで、彼らのやっていることに至極感銘を受けたので、共同研究に混ぜてもらって論文を書いたのだったと思う。大岡山と本郷は地下鉄南北線で直通だから案外共同研究はやりやすいことが判った。
[hep-th/0401184] Five-dimensional Chern-Simons terms and Nekrasov's instanton counting
修論を書くので Nekrasov のインスタントン分配関数の話を勉強したので、すこしだけ拡張したのを論文にした。N=2 超対称 SU(N) ゲージ理論を出すカラビ=ヤウ多様体は何種類もあるのが全て4次元極限をとるとおなじ分配関数になるのだけれど、その極限をとる前だと5次元での SU(N) のチャーンサイモンズ項が違うので、それの寄与から区別ができる、という話。
[hep-th/0311191]
Supergravity Analysis of Hybrid Inflation Model from D3--D7 System
with Fumikazu Koyama, Taizan Watari.
渡利=柳田で N=2 超対称理論に平らなモジュライがあるのを使えばインフラトンの平坦性が説明出来る、という話があったので、それに N=2 超重力の効果をいれたらどうなるかというのを調べるのに参加させてもらった。基本的には IIB を K3 x T2 上で考えた際、T2 に並進対称性があるから、それが平坦性を保つ、というシナリオなのだが、実際は flux を入れたりするせいでうまくはいかない。N=2 超重力の構造から決まるポテンシャルが、10次元のいろいろな場が D3-ブレーンに及ぼす力をきちんと再現するのを確認できたのは面白かった。
[hep-th/0211274] Derivation of the linearity principle of Intriligator-Leigh-Seiberg
Dijkgraaf-Vafa で、4次元超対称理論が行列模型に帰着出来るという話だったので、4次元超対称理論の種々の性質が行列模型ではどう見えるかというのを調べてみたひとつ。
[hep-th/0211189] Derivation of the Konishi anomaly relation from Dijkgraaf-Vafa with (Bi-)fundamental matters
同上。Dijkgraaf-Vafa 関連では初期に論文を書いたので、大したことはない論文なのに沢山引用してもらった。