力学の本は多すぎて困るが、代表的なのはとりあえずこの3冊でなかろうか。
ランダウ・リフシッツ: 力学 東京図書
Landauは、最初の方からLagranianを使って書いているので、論理的に非常にきれいである。散乱問題と、微小振動の部分にも面白いところがある。原書は勿論ロシア語である。英語での翻訳も出ていて、今ではそちらの方が恐らく入手しやすい。Goldsteinは、アメリカの大学院でもっとも標準的に使われている教科書。良くまとまっているが、少し味気ないような気もする。練習問題は、Whittakerの本などとは違って、割合スタンダードなものが多いように思う。翻訳も出ていて、訳者の序文には、「きわめてup-to-date」とあるが、それは50年前の話であって、今となっては、数学的取り扱いの不十分さに不満が残る。(ただし、私は古い版しか見たことがないので、もしかしたら改善されたかもしれない。)Arnoldは、少し毛色の違う本で、著者が数学者であることや、題名からも推測できる通りに、数学的側面に重点がある。Symplecticの話とかもあるので、ほかの本で物理を勉強した人でも読む価値は大いにあると思う。個人的には、やけに簡単な話と深遠な話が混じっているように思う。従って、最初のほうだけ読んでこれは当たり前のことをやけに面倒くさく書いた本だと早まった判断を下さないようにするべきである。Appendixは結構人気がありますね。なお、これらの本はそれなりに読むのは大変なので(Landauが一番量が少ないとは思うが)、量子力学等の勉強のためになら、以下の本を読めばとりあえずいいでしょう。
これは気楽に読めていい本です。一番最初に、量子力学をとりあえず理解するのに必要な知識が如何に少ないかが力説してあります(「ただし、素粒子だけは例外」という但し書きが何度も出てくるのだが。)。自信をつけたい人にはお薦めします。最近調べたら、なんと増補改訂版が出ているのですね。私が買った時にはまだ出ていなかったのですが。時の経つのは早いものです。ちなみに、同じ著者で、
もあります。解析力学そのものにも、いろいろと難しいことはありますが、これら2冊の本で強調されているように、たとえば量子力学などを学ぶためには、そこそこ勉強しておくだけでも十分だと思います。むしろ、量子力学などを通じて、初めて解析力学の威力が理解されるのであって、iterativeな学習が肝要でしょう。
アメリカで標準的に使われているのは、
だと思いますが、大部すぎて、ぼくも読んだことがありません。(ちなみにありがちなことですが、和訳のほうは2冊に分かれている分値段が英語よりかなり高くなってしまうので、可能なら英語にするべきでしょう。)日本の大学では、こんなにちゃんとした講義をやっているところはないでしょう。ただ、実は(それほど)マニアックなことは書いてなくて、わりかしスタンダードなことばかりです。1冊目はMKSA、2冊目はCGSという折衷を採用しています。最近おもしろいと思ったのは、
です。この本には、著者のおっしゃる通り、ほかの本に書いていないことがたくさん書いてあって、何かほかの本を読んだ人でも楽しめます。歴史的側面も書いてあり、おもしろい。電磁気の授業のTAをやる時や、教官として電磁気を教える時にじっくり味わうのもいいかも知れにない。ただし、最初から読む本ではないと思う。そういう意味では、同じ著者の電磁気学が2分冊で丸善から出ていたので、そちらのほうがとっつきやすいかもしれない。
私は、
を読みました。理論的に非常に整備されていて、全体の構造が非常に見易くなっています。式変形も、やや丁寧すぎるくらい丁寧に書かれています。ただし、最近少し思うのは、洗練され過ぎたぶん、面白味に書けるのではないかということです。つまり、とてもよく理解できるのだが、あまり深みがないようにも思う。理論系の若者向けか。ちなみに、練習問題の解答は教科書にはついていないが、砂川さんが書いた別の教科書(演習書だったかも)に殆ど解答に相当するものが載っているという話を聞いた覚えがある(が、私自身は確かめていない。)。
ずいぶん昔ですが、
を読みました。余談ですが、Fermiは、本を書くとき、何も参照せずに書くことができたそうです。この本はどうかわかりませんが、少なくとも相対論の本などは、そうです。ちなみに、これらは、Doverから安く手に入ります。ちなみに、同じフェルミで
というのもありますが、上の本と似たような(ないし同じ)内容なのでしょうか?
このFermiのThermodynamicsは、1930年代のChicago Univ.での講義を基にしているので、内容的には、実はずいぶん古いはずだが、意外に今日でも通用するものである。ただ、たとえば相転移・臨界現象に関する記述は皆無で、もっと現代的な視点から勉強してみようという方は、
がいいのかもしれない。著者の意気込みが伝わってくる本であり、本人いわく、「日本の熱力学の教育に革命を起こす」本である。ただ、私は読むのをサボっているので、内容については何もコメントしない。この本の最初に引用されているLiebたちのPhysics Reportsの記事を読むのもいいでしょう。
ちなみに余談になりますが、同じ田崎さんが訳されている
は興味深い本です。私が高校生の時、数学セミナーに黒木さんの書評が出ていたのを覚えています。高校の図書館のかたにも薦めてもらいました。意見はいろいろあるでしょうが、とりあえず読んでみると面白いです。人のあげ足を取っているという感じもあるにはあるのですが、哲学に(いや自然科学でも同様に)難解な用語を使うことと、深遠な概念であることの混乱が見られるのはたしかだと思う。個人的には、Irigarayのいうことが一番意味不明だと思いました。「Einsteinの式E=mc^2は性化された方程式」「流体力学は女の学問で、固体物理は男の学問」といったようなこと(正確な引用ではないのであしからず)を平気で言うのにはあきれます。
非常に気楽に読めて、かつわかったつもりになれる。Microcanonical, canonical, grandcanonical等の集合理論の関係についてがんばって説明している。勿論、ちゃんと勉強するための本ではない。
日本では非常に著名な演習本。よくもこんなに問題を作ったと思う。ただし、取り扱い方がいかにも古臭く、今からもう一度似たようなものを作るとしたらきっとかなり違ったものになると思う。と書いていたら、どうやら98年に修訂版が出たとの由。多分内容はそんなに変わっていない。ちなみに英訳もあるそうで。
戸田・久保:熱・統計力学(岩波書店)
復刊するとかしないとかいう話があったがこれがどうなったかは確認していない。
Callen:統計および熱力学入門(吉岡書店)/ 和訳( 上 下)
アメリカでおそらく最も標準的な教科書のひとつ。公理論的な取り扱いにより熱力学を扱う。ただし、これには批判もあることを知っておくべきだろう。
専門家の間で評判が最も高いのはなんと言ってもLandauの統計力学の教科書だろう。最近は日本語の翻訳も復刊されたようだ。本当は非平衡系の本を挙げておくべきでしょうが、ここではサボります。
これも非常に本がありますが、
はいい本だと思います。量子力学を教える際の一つの問題点は、何が根本的で何が多の事実から導かれるのかがしばしば雑然としていることです。もちろん、物理が物理である以上、それは当然のことですが、この本は、は、統一的な見方を提供しているところがすばらしい。筆者の得意だったことを反映して、対称性の議論もよく整備されている。1巻の最後の球面テンソルのところと、2巻の最後のクーロン散乱のところは、あまり分りやすくないように感じます。ただし、多少波動力学になれている学生を対象にしているので、何かほかの本を少しかじってからのほうがよいのかもしれない。また、たとえばSchiffに書かれていることを繰り返したりするのを嫌っているので(著者としては当然だと思うが)若し可能であれば必要に応じてGottfried, Schiff, Finkelsteinといった他の標準的教科書を参照するのがよいであろう。とはいっても、大学の図書館に入れない人にとってそれらを参照するのは難しいので(私もかつてそうでした)、そういう時は別に参照しなくてもかまわないと思います。少なくともその程度にSelf-Containedにはなっています。早稲田大学では、波動力学のプリントを使って補っているようです。ちなみにその時作られた解答集も売られています。ちなみに和訳のほうには訳者によるBerry位相の話がついている。
ファインマンの講義の中で私が一番まじめに読んだのはこの量子力学です。応用として、スピン波、半導体、レーザーの反転準位などいろいろ書かれていて楽しめたのを覚えている。今考えると、普通に物理を勉強していれば、いずれかは学ぶことなのだから、別にこの本を読まなくても実用上はさほど支障はないのでしょうが、特に学び始めのころにわくわくさせてくれる本だと思います。あまり後になってから読もうとすると、(実際の講義を聞くならともかく)本では少し退屈な気がしますね。予備知識がないからといってあまりひるまずに兎に角チャレンジしてみるといいかもしれません。ちなみに、英語のほうはばら売りしていないのでしょうか?オーディオファイルも手に入るというのはすごいです。
ちなみに、Feynmanさんの本は本当にたくさんあります。しかもかなりたくさん日本語訳が出ています。私が読んだもので今思い出せるのは、
幼少期のことから初めて、アルバイトでの体験、金庫あけ、原爆、妻の死、発見の興奮からはたまた酒場の女の口説き方まで雑多に面白おかしく書かれている。さりげなく専門的な話(V-A理論の話)とかも入っているのだが。どうでもいいことだが、大学の授業用に、注釈のついたダイジェスト版が南雲堂から出ている。私は大学の時にその授業をとっていた。もう一つどうでもいいことだが、昔、この本に書かれていた「キュートな数」について、江沢先生が数学セミナーに記事を書いていた。暇な人は、この本の該当部分を読んで、どこがキュートか、どんな時にキュートになるのか考えて見ましょう。
これは、そんなに面白くはないかもしれませんが、電荷の大域的な保存則から局所的な保存則を導く話がかいてあったことが印象に残っています。また、少なくとも日本語のほう(私が読んだのはダイアモンド社だったような気がするのですが、今見ると岩波から出ていますね。その古いのには訳者の江沢先生の住所が書いてあったのが印象に残っている。とはいっても、もう変わっていると思いますが)には、後ろにノーベル賞講演がついていて、QEDに至る道のりが生き生きと書かれていて面白い。
話を元に戻すと、
歴史的なことが書いてあっておもしろいです。ただし、私が進めるのは主に1巻です。前期量子論については、少なくとも日本では特定の部分だけを中途半端に教える傾向があり、Schroedingerなどとの理論との関係が明らかでないように感じるのですが、この本を読むとそういうことはかなりわかります。たとえば、作用に対するSommerfeld-Wilson-Ishiharaの量子条件を、フーリエ成分に読み替えていくことによって、Heisenbergが正準交換関係を導くところなどは、非常に楽しめます。しかし、2巻は割合普通のことが書いてあります。de Brogile場と、Schroedingerの場を区別しているところや、粒子と波動の同等性を示すための必然的なものとして場の理論や統計性を導入しているところなど、うなずけるところもあるが、全体としては、数学的内容が前面に出て、物理は後退してしまった。また、デルタ関数の取り扱いなどについても、必要以上にごたごた書きすぎているようで、かえってわかりにくいと思う。3巻が筆者の手によって完成を見なかったことから察するに、2巻のできには、朝永氏もあまり納得できていなかったのではないだろうか。ちなみに、他のReviewを見てみると、ちょうど私と正反対で、上巻は飛ばしても下巻は読むべきという意見の方もおられるようです。皆さんも私にだまされないで、自分で手にとって確かめてください。
は、必読書だという人が多いし、また最も美しい物理の本だという人さえいるが、どうも私はあんまりまじめに読んでいない。もっと正確に言うと、(もっと早い段階で読んでおけばよかったのかもしれないが)最初のほうのブラケット形式の整備など、線形代数の常識的なことをぐたぐた書いていていまいち読む気が起らない。こういう本は就職してから学生にセミナーで発表させながらゆっくり読むに限る。やはり、歴史的な背景も大きいと思うが、朝永先生の下巻と同じように、簡単な数学を丁寧に書きすぎるような気がする。ちなみに英語版ではペーパーバックも出ているのでね。私はてっきりハードだけ(白と青の表紙の)かとおもっていました。
も暇を見つけてよむと面白い。アインシュタインとの論争の雰囲気がわかる。ボーアというと(少なくとも日本では)前期量子論の話ばかりが教科書では取り上げられるように思うが、コペンハーゲン解釈の形成に果たした役割がもっと強調されてもいいように思う。ただ、Bohrの全集だったら、確か英語に翻訳したものが出ているので、特段これに限る必要もないかなと思うのですが。文庫なので、比較的安価で持ち運びに便利だというのが最大の売りかもしれません。
ちなみに、日本の大学の演習や試験問題などでは、猪木・川合がよく使われています。私自身はほとんど使ったことがありませんが、私の通っていた大学の物理学科の演習問題はこの本からよく出されているという話を聞いたことがあります。期末試験や院試の勉強をしたいなら、この本やJ.J.Sakuraiの演習問題がいいのでしょう。量子力学の数学的側面を扱ったもの。2000年を迎えたときにみすず書房がmisuzu revivalとかいって再出版したもののうちのひとつ。当時はそのことを書いた帯がついていたのだが、今はどうでしょうか。最初のへんは、いわゆるヒルベルト空間論であるが、関数解析の本をかじったことがある人なら、ほとんど知っていることばかりであまりおもしろくない。逆に言えば、それぐらい彼が関数解析に貢献したことがわかるのですが。統計力学の話もありますが、その部分は私はまだ読んでいません。本当は、この本で終わってしまうべきではなく、von Neumann環の理論に進むべきでしょうが。Bratteli-Robinsonはいい本だと思います。
量子力学を学ぶ21世紀の学生なら、量子情報についても多少知っておきたい。それにはNielsen-Chuangの教科書を利用するのがいいだろう。
複素解析のことから始まって、流体力学に至る。複素解析の流体的意味がわかって良い。複素解析は非常に良くまとまっていて、これだけ読めば、少なくとも物理数学(数理物理ではありません)では当分不足することはそうないと思う。ただ個人的には、Schwarz-Chirstoffel変換とかの話は、あれを読んだだけではあまり身についた気がしないように思います。
戸田先生の30講シリーズの1冊。コーヒーブレイクみたいな雑談のコーナーがおもしろい。KdVの話とかも出ている。ただし、座標を表すのに座標ごとに違う文字を使っているのは、テンソルに慣れたものとしてはまどろっこしい印象を受ける。ソリトンの話とかも少し書いてあるが、それを知りたいのだったら、同じ著者の
のほうが丁寧に書いてある。細かい計算にいたるまで書いてあってよいが、さすがに2ソリトンの計算とかは書いていないので、自分で計算を埋めるのは大変である。
この著者では、ほかに
を読んだことがあるが、この本も、一般理論を学ぶというよりは、「計算して理解する」という筆者の方針が貫かれていて、計算を面倒がらなければ面白く読めると思う。ただし、数学的な興味から楕円関数に興味を持っている人には薦められない。あくまで自分で地道に計算して理解したい人向け。 戸田先生の本に親しみを覚えたならば30講シリーズの本をいくつか読んでみるといいかもしれない。ただし、シリーズの中の相対性理論の 本は、私は昔読みかけたが間違えがたくさんあって薦められない(その後改訂された可能性はある)。 話を流体力学に戻すと、流体力学を勉強するには、「流体力学」あるいは「弾性体の力学」と名前のついた本ばかりではなく、関連する分野について勉強してみるのが理解を深めるために一番である。例えば、電磁流体力学に進んでプラズマの勉強をするというのもひとつの手だろう。あるいは、数値計算の得意な人は何かプログラムを作って遊んでみるといいだろう。個人的には、
で気象の勉強をするのは面白いと思う。流体力学といっても使うのは基礎方程式系だけだが、それらを用いて例えば地衡風を理解することができるのは面白い。気象の知識が足りないと感じた人、あるいはもっと基礎的なところから勉強したくなった人には、同じ著者による不朽の名作もっとも有名なのは、恐らく、
であろうと思われる。ちなみに、この本に付属して使用することを意識して書かれた(日本語の)演習書も発売されている。ちなみに、今出ているのは第7版だが、2005年に第8版が出ることが予告されている。評判はいろいろであるが、後半部分の記述は例えば下のAshcroft-Merminとかよりも詳しいところもある。Kittelは物理学者(磁性の研究者)ではあるが、この本は、科学、生物、工学などの人にも十分読めるように書かれていると思う。結構評判が悪いところもあって、たしかにもっとちゃんと書くべきだと思われるところが多い。しかし、そのような批判は、あまり当たっていないように思う。この本は、例えば量子力学や相対論の本を読むように読むものではないと思う。物性物理の多様性とその背後にある物理理論とを、味わいながら読めばよいのではなかろうか。
数学的にもっときちんとかかれていて、物理屋にお薦めと思うのは、
でしょう。配列は固体物理の教科書としてはnon-standardですが、私にはKittelよりも微妙に読みやすいような気がします。最初に金属伝導やバンド理論の話がかなり細かく書いてあり、その知識を基にして他の話題へと導かれていく感じの構成である。著者たちの専門がやはり反映されている。Kittelと同様、量子力学と統計力学の基礎さえわかっていれば大して困らず読める。演習問題は私は6割ぐらいしか解いていないが、少なくとも半分ぐらいは具体的に式をおうとそのままできるようになっている。惜しむらくは、重要な筈の超伝導についての記述が、事実の羅列に終わっていることだが、場の量子論を禁じ手にしている以上、仕方がないのかもしれない。全般的に言って、最初のほうはかなり詳しくなっているが、最後のほうに行くにつれて記述が緩やかになっていき、将来の発展への展望といった色彩が強くなる。完成に8年もの歳月をかけた力作であり、出版から数十年を経た今でも(一度の改訂もなしに)その価値を失っていない。最初に読むのならKittelよりお薦めである。
Ashcroft-Merminもいいけど、30年も前の本だし、もうちょっと現在的な話題に触れたいという方には
を挙げておこう。理論家と実験家による好著である。相転移、繰り込み群などの記述は非常に良い。従来的な固体物理の教科書とは一味違った教科書である。どうやら日本語の翻訳も出ているようです。
鈴木平氏の東大退官記念の一環として発行されたもののひとつ。筆者の慶応大学工学部での講義ノートに基づいている。けれども、内容はいたって平易で、高校でもかなり読める程度である。物性全般を概観するのによい。ただし、一部の内容については説明が不十分と感じる。例えばKohn anomalyのところの説明は、私にはこの本の説明ではなんだかわからない。引用している参考文献がやたらと著者や著者に近い人であるのも気になる。買う本というよりは借りる本かもしれない。
いわゆる古典ですが、今でも楽しめます。
物性理論における場の理論について古典的かつ基本的なのは、
でしょう。俗にAGDといいます。その記述は非常に凝縮されています。前半部分は標準的な場の理論の摂動計算とその有限温度バージョンの説明。この部分だけならもっと分かりやすい他の本で読んでもいいかと思いますが、後半部はこの本ならではの味わいがあります。原子核の某研究室ではこの本を使っているそうです。
は多少癖のある本ですがとても面白いです。場の理論の統計への応用 ですが、題材のとりあげ方に特色があります。ただもしかすると物性理論の平均的な研究者に言わせるとややマニアックなのかもしれない。
物性の項目に入れるべきではないかもしれないが、とにかく繰り込み群の思想を知る為には非常に良い本である。「相転移点上ではscale不変性が生じ、correlation lengthが唯一の長さのスケールになる」といった間違った、乃至は誤解を招く表現をしないようにかなり気を使っている。またpartition functionが(少なくとも直接には)ないような非平衡系でもRGのtechniqueは使えるというのが筆者らの研究であり、ひとつのメッセージでもある。このように、Wilsonに始まるRGの爆発的応用がなされた栄光の時代に酔いしれること無く、現在そして将来を見据えた立場が見受けられる点で、まさしく現在の学生にふさわしい。予備知識は普通の熱力学・統計力学で十分だろう。
物性で学生に人気があるのはなんといっても超伝導でしょう。 超伝導も本はいろいろありますが、
の改訂版がDoverから出ました。 旧版は世界的に有名で、日本語の翻訳も出ています。 改訂版では、Josephson効果の部分が拡充され、High-Tcの話とNon-equilibrium Superconductivityの章が加えられました。Standardな教科書である上、Dover版 は安いので、超伝導に関係する人ならば持っていても損はしないと思います。 実験について数多く取り上げるなどしているので、理論の人ばかりではなく実験 の人でもきちんと理解できるのではないだろうか。但し、その分理論的記述がや やサボっている所もあり、例えばBCSについて深く知りたいのなら、これ以外の 本を読んだ方がいいと思う。Thermal Green Functionを禁じ手にしてしまってい るのも痛い。とにかく、超伝導の"introduction"としてはこれはいい本だと思う。
他に入門書としてPopularなのは、de Genneの本とSchriefferの本でしょうか。
日本語の本も結構出ている。例えば、中嶋貞雄:超伝導入門
レーザー物理のことが量子力学の初歩的なことから始まってとてもわかりやすく 書いてある。レート方程式と半古典理論についてかいてあるが、量子力学理論に ついてはお話程度しか書いていないのは残念。入門書だからしょうがないのかも しれないが。
レーザーについては、専門書ではないが、
がその歴史を生き生きと伝えてよい。レーザーそのものについての記述と、特許権争いや委員会での活動の話が同じぐらいあるところに、いろいろ考えさせられる。
の2冊が標準的であろう。 前者は30年前ぐらいに書かれた本で、基礎的なことをうまくまとめている。前半はひたすら方程式の線形化ばかりなので、途中でややだれる。最後には核融合のお話的説明もある。式変形も丁寧に書かれており、殆どつっかえる所がない。MHD方程式は導いてはいるが余り使わずに、イオンと電子の2流体の運動方程式を解くという立場。その方が正確になる場合もあるので、ある意味妥当な選択だろう。単位系がcgs-静電単位系なのでもしかしたら最近の学生には嫌われるのだろうか? 後者はPrincetonのもの。より最近に出たもので、Chenよりは説明が詳しい。但し全体としては新しい内容がそんなに加わっているわけではない。付属するコンピュータープログラムが一つの売りのようだが、10年の間に計算機関係は目覚しく発展してしまったので今ならもっといろいろやれたのではないかな、と思う。
場の理論の本は、本当にたくさんあります。物性のところで上げたAGDもそうでしょうが。やさしめのから行くと、
同じ著者の解析力学ヴァージョンの続きといった感じです。
大学一年生ぐらいでもわかるように丁寧に書いてある本。素粒子に限らず、物性の話もあるので、幅広い人に薦められる。
Ryder:Quantum Field Theory(Cambridge UP)
私が最初に読んだ思い出深い場の理論の本。Undergraduate level といったところで、きちんと読むと、記号の不統一、説明のいい加減さ などが気になるが、場の理論を最初に勉強する上では役立つと思う。
日本語の本では相当よくかけていると思う。標準的な内容も多いが、5章のKugo-Ojima Formalismの説明のところがやはりよい。ただし、この部分を読みきらないと、2巻に行きずらいので、(BRSTをぜひやりたいというのなら別だが)単に計算法を知りたいのだったら、経路積分法をやるだけでとりあえず十分だと思う。実際、彼らのFormalismをきちんと理解できている学生は、意外と少ないと思う。付け加えると、1章に出てくるSpinorの計算が、いきなり複雑で閉口する。SUSYをやっている人にはなんともないのだが、場の理論を学び始めた人はその辺はとりあえずそこそこにして進んでもいいと思っている。
場の理論のところでなく、むしろ電磁気や相対論のところに入れるべきでしょう。力学の巻に続いて、ラグランジアン形式を前面に出している。記述が非常に整理されているという印象を受ける。ただし、例えばラグランジアンは彼らも認めているように対称性から完全に決まるわけではないし、場をどういうふうに定義するかだって、彼らが答えを知っているからそのようにできるのであって、ある意味物理をなくしてしまっているともいえる。磁場・電場中での粒子の運動とかでも、基本的に運動方程式が解ければいいという立場で、ある意味味気ない。(例えば、その原理を使った実験装置の説明とかを加えているファインマンの教科書とはずいぶん趣が違う。)しかし、いろいろなことが書かれているし、名著といってよいことに変わりはない。
筆者の好みを反映して、統計性の議論があって面白い。
同じ著者による、やや異色の本として、
がある。この本は、標準的な相対論や場の理論の教科書にはあまりないようなLorentz群の表現が書いてあるのがよい。但し、前半の部分はWeinbergの教科書のI巻に、phase factorの議論も含めてそこそこ詳しく書いてあるのでありがたみは薄れてしまったように思われる。後半には高階スピンの波動方程式の表現についても書いてある。場の理論をきちんと構成するということをやっている文献はこの本の後半ぐらいだろう。なお、どうやら対応する英語の本も出ているようである。
AxiomaticにCPT定理、スピンと統計の関係などを議論した古典かつ決定版。
いわゆる藤川法の、開発者自身による説明。
Latticeの本。非常に簡潔でよくまとまっている。ただし、物性向けではない。また、細かい計算は書かれていないので、何も参照しないので自分で完全に計算を生めるのは必ずしも容易でないと感じる。彼の論文をまとめたものに近いと思う。
原子核物理は、素粒子の知識(の一部)と、物性の知識(の一部)の両方を必要としています。従って勉強すべきものもこれ等の分野とかなりかぶると思います。原子核に特有の部分についてのもので、私が良く利用しているのは、
などです。古典としては、Bohr-Mottelsonの2冊の教科書がありますが、今の若い人があの本を読んでいるのかどうかは私は知りません。
豊富な教科書の揃っている場の量子論を勉強して育った人間の目から見ると、宇宙論は意外なことに余り良い教科書が少ない。最新の観測事実が絶えず現れていると言う事情があるにせよ、誰かがいい教科書を書いて欲しいものである。Friedmann equationあたり迄ならいろいろな教科書に書いてあるが、baryogenesisやinflationといったより新しい(宇宙の時間で言うと古い時間の)ことについてきちんと触れているものは意外と少ない様に思う。
少し前の世代のひとは、
で勉強したのだと思います。この本は基本的には一般相対性理論の本ですが、最後の1/3に宇宙論に付いての記述があります。さすがに古くなってしまった感は否めない。尚、Weinbergが現在この本を書き直しているという話を所々で聞くが、現在どのような状況にあるのかは不明である。
初期宇宙についての本の決定版ともいうべきものは、
であろう。既に出版から15年近くが経過していることもあって、例えばinflationに関する部分など、古くなってしまったのでこれだけでは十分とはいえない部分も多いが、その点に注意さえすれば現時点でもなおもっとも有用な本のひとつといえよう。但し、式の導出などは説明をさぼっている部分が多いし、ちょっと大雑把な部分もあったりするので、余りこだわりすぎるいけない。 ちなみにこの本には関連した論文を集めた姉妹本 The Early Universe: reprints がある。わざわざ買う必要はないが、(初期の)文献をあさりたいときにはこの本に文献紹介の部分を読むと多少参考にはなるだろう。
inflationそのものを扱った本として、
を挙げることができる。同じinflationと名前はついていても随分と書かれている内容は異なっている。
前者は対称性の自発的破れや相転移といった内容を場の理論の言葉を活用しながら述べ、後半でインフレーションにいたる。chaotic inflationの説明や、有限温度での計算など、Linde自身の仕事の内容が色濃く反映されており、一読に値する。但し、部分的には彼の意見を前面に押し出しているところもあるので、余り鵜呑みにしないほうがいいだろう。第1章は、本全体の内容がうまくまとめられており、この部分だけ読んでもそれなりに価値があるのではないかと思う。 ちなみに、この本は現在、hep-th/0503203として無料で入手できるので、本を買う必要はないだろう。きちんと理解しようとすると場の理論の基礎を一通り習得していることが必要になってくるだろう。例えば、1-loopでのeffective potentialの計算など。かなり癖があって読みずらいし、またほとんど彼の論文をコピーして集めただけというところもあってこの本だけで勉強するのは難しいが、適宜文献を補って主体的に読めば得るところが大きい。個人的には何故か気に入った。
後者は私はこれを書いている現時点で余り読んでいないが、どちらかというとdensity perturbationに重点が置かれている。Lindeの本よりも必要とされている知識は少ないように思われる。
学部生向けにやさしく説明してある。しかしどちらかというと買う本というよりは借りる本のように思う。坂井先生はその後場の理論の教科書も書かれたようです。
どちらかというとやや現象よりの印象を与える本。とてもいい本だと思う。ただ、多少の場の理論の知識がないと読めないので、なにかほかの本をかじっておく必要がある。ちなみに、演習書もでている。割合現象論に近い研究室では結構読まれていると思います。ストリングとかをやっている人の中にはこの本をマニアックだと思っている人もいるようですが、それほどでもないと思います。。
もよく薦められる本です。場の理論を学ぶ上では現在最もスタンダードであるといって差し支えないだろう。Bjorkenとかに比べると繰り込みのこととかがあって現代的である。Wilson流の繰り込み、critical exponentの計算も書かれているので、物性の学生にもそれなりに薦めることができるように思う。計算も細かいところまで書いてあってわかりやすい。ページ数が多くてわかりやすく、自習ができるようになっているところなど、いかにもアメリカの教科書という感じがする。HarveyのReviewにもあるように、まさに「いつどんな料理を出したら消化に良いかが良く分かっている」。それは教科書としては長所である半面、「面倒なことは先送り」という側面をも持つので、この教科書に慣れすぎてしまうと帰って危ないかもしれない。「教育的配慮」の為にうやむやにされている所を、後からきちんと理解するという努力を怠りしなければ非常に有効に活用することができるだろう。演習問題の難易度も易し過ぎず、難し過ぎずでちょうど良いのではないだろうか。
深い洞察に裏打ちされた本として、
を挙げることができる。その思想の深さは他の本と比べ物にならない。 特にI巻の最初の方は、彼の若い頃の仕事に基づいており唸らせるものがある。Hamiltonianを生成、消滅演算子でかくのはcluster decomposition principleを満たす為であるという指摘、superselectrion ruleについての言及、Batalin-Vilkoviski formalismなど、他の本には書かれていない話題も扱われている。Feynman diagramの導入も通常とは違ってDyson流のやり方である。 ただし、最初に場の量子論を読む時に読む本ではない。また、Weinbergといえどもところどころにうやむやにしている所が散見されるので、余り鵜呑みにしてはいけない。また、第III巻は、supersymmetry, supergravityといった話題を扱っているが、これについては必ずしもWeinbergが最良の教科書というわけではないように思われる。ただしGauge-mediationやSeiberg-Wittenのように、普通は論文 and/or reviewで勉強するような比較的進んだ話題についても書かれており、なにかと参考になることも多い。4-componentのspinorのnotationを用いているが、好みは人それぞれだろう。 とにかく、場の理論を学ぶものならいつかは読んでおきたい本である。ある程度以上時間をかけてじっくり読まなければいけないと思う。Peskinなどと違って焦って読んでも得る所は少ないだろう。
東京大学の授業で実際に使っている本。特徴といえば、Einsteinの原論文に即してLorentz 変換を導出していることや、さりげなく鋭い脚注があることであろう。大学一年生で十分読めるぐらいのレベルであろう。
微積の知識ぐらいがあれば、1ヶ月ぐらいで一般相対論がわかったつもりになれる。重力波のことや宇宙論のことも書いてあるので、一般相対論の概観に適している。私は最初にこの本で一般相対論を勉強しました。非常に分かりやすい本です。昔は別の出版社が出していたようですが、今そちらは手に入るのでしょうか。
世界的名著。Misner-Thorne-Wheelerとかと比べると、数学的側面が充実している。いろいろなreviewを見ても数学的と書いてあるものが多い。ただ、弦理論に使われる数学が高級化した後に入ってきた私のような人間からすると、この程度の数学はもっと物理学者にも広まってしかるべき名のではないかとも感じる。たくさんのことをあっさり目に書いてあり、ある意味やや無理気味に薄い本にしようと圧縮した感じなので、あまり初心者向きではないということもできるし、必要以上にdetailにこだわっていないという意味で概観に適しているということもできるだろう。あまり基本的なことはぐたぐたいわずに、発展的な話題をやや大雑把に説明することを志向しているように思える。Singularity Theoremのところ等の説明はあまり読みやすくないような気がする。また、最後に量子重力を議論した節があるが、その部分に余り期待しすぎではいけない。
電話帳として親しまれている本である。確かに分厚く、毎日学校にもっていったり帰ったりする本ではない。但し、この本を少し読んでみればわかるように、叙述の仕方は基本的には情報の羅列である電話帳とは大きく異なっており、著者たちの相対論に対する思いがひしひしと伝わってくる。対象としているレベルも幅広く、これから特殊相対論を学ぼうとしている人から、相対論の専門家・研究者まで含んでいるといってよい。確かに一部の記述は古くなってしまったし、現在から見ればいくつかの重要な話題は扱われていないか、軽くしか扱われていない。Regge calculusのところのように、期待するほど詳しくはかかれていなかったりするところも多い。しかし他の本にはあまりかかれていないことがたくさん書かれているし、説明も非常にわかりやすいので、現在でもその価値は失われていない。 折に触れて隅々までじっくり味わって読んでみたい本である。難点は値段が高いことだろう。図書館においてあるのなら、買うのかどうかは人それぞれによって違ってくるだろう。
Singularity Theoremの証明や、Cauchy Problemなど。HawkingのAdams Essay Contestに基づくものだったと記憶している。この種の学術書としては、驚異的な売り上げを示したものだったとか。H先生いわく、この本を読めるかどうかが一般相対論の専門家になれるかどうかを決める。年を取ってからのHawkingの言うことには余り信用できないことも多いが、彼のこの本は(ある程度以上)数学的にきちんとかかれており、安心して読むことができる。
Penrose/Rindler:Spinors and space-time (Cambridge Univ. Press) vol I / vol II
いわゆるTwistorの解説だと思う。Ward/Wellsとどちらがよいのか不明。2巻目は1巻目とほとんど独立に読めると書いてある。Penroseの論文は、記法が少し独特と感じられるので、そのリファレンスとしても役立つかもしれない。
SUSYについては、
が物理ではスタンダード。2nd editionはかなり間違いが少ないらしい。所謂教科書ではないと思う。くどくどした説明はなく、簡潔な説明と時にハードな計算が続く。supersymmetryはnotationが非常に大きな問題だが、とりあえずこの本にあわせて勉強すればいいのではないだろうか。問題は、この本を読んだだけではsupersymmetryの基礎が分かったとはいえないことにある。例えば、実際問題として頻出するextended susyに関してはこの本は無力である。なにか他のものと組み合わせて使用しないといけない。
Polchinski:String Theory (Cambridge Up) vol I vol II
これらは言わずもがな、といったところ。前者は革命前にかかれたもの であり、その点では記述は最新とはいえないが、その記述は明快である。 特にWittenが書いたII巻の部分は研究者の間でも評価が高い。 後者はいかにもアメリカ的、いかにもPolchinski的な本である。彼独自の直観が 冴えている。この本は、 数式の変形を、すべてといわずとも重要な所は押さえて読んでいかないと 何の意味もないものになってしまう。さらっと書いてある計算でも実はか なり大変な計算であることも多い。CFTが出てくるあたりもこの本を 読みにくくしている。CFTを知っている人からみれば面白いと思うが、CFT そのものの導入としてはやや不足気味な気がする。特に最初の方はpedagogicな観点から必ずしも正確 ではないことが書かれていることもあるので、余り詳細にこだわり過ぎな いほうがいいかもしれない(専門家に文句をつけられないようにいろいろ 脚注はついているけれども。)。記述はある意味非常に凝縮されており、 結構いろいろなことが書いてある。私自身、なにか調べたことが合った時 に、あまり分かりやすい文献がなく、実は手元のPolchinskiに分かりやす く書いてあったという経験が何度かあった。とにかく、それほど読みやすくはないが、 この分野で(少なくとも現在)最も標準的な教科書であることは間違いない く、読んでおかなければいけない本である。 但し、II巻の量を以てしても現在の中心的なtopicを網羅しているとは到底言い がたい。例えば、(GSWでもやはりそうであるが)SFTについては殆ど何も 書かれていない。H先生などはその点ご立腹のようだ。兎も角、この本を読まなければ論文を書けないということは 全くないと思うが、同時に必携ということは確かだと思う。 ちなみに最近Polchinskiはpaperbackが出たほか、翻訳が進行中(現在I巻は発売)である。翻訳と原書とどちらがいいでしょうかということを聞かれることもありますが、やはり専門家を目指すのなら原書をお勧めします。他の分野の研究者や学部生だったら翻訳でもいいのではないでしょうか。
Volume IIIと名前をつける案もあったという"D-note"。Polchinski の後に書くからには、当然Polchinskiの本を意識している。私が一部読んだ感じ では、Polchinskiよりは読みやすいようにも思う。但しそれは裏返せが余り深みがないということでもある。AdS/CFTとかholographic RGといった執筆当時のhot topicについて書いてあるのが売りの一つだと思うのだが、新しいトピックだったらreview articleを読んだ方がいいような気もするので微妙だ。 arxivにでているVersionと、特に最初の方は余りかわらないところがあるので、 買うだけの価値があるかどうかは難しいところ。
そのほか、Polchinskiはちょっとという学部生には、Szaboの本あたりがお勧め なのかもしれない。電車のなかでちょっと読むような感じの厚さだが、私はまだ checkしていない。checkする価値があるかどうかも不明。 また、
も出ました。私自身はまだ読んだことはありませんが、この本をゼミで使ったという某先生の話では、Polchinskiの最初の方をねちねち書いた感じで、あまり面白くなかったが、学生には好評だったという。Zwiebachの名前からするとstring field theoryについて何かきちんと書いてくれるのではないかと期待していた専門家も少なくなかっただろうが、学部生向けの内容の域を出るものではないようだ。
M. Kaku: Introduction to Superstrings and M-theory / 和訳(太田信義訳)
1989年に出た本の改訂版。Kakuさんは名前からも分かるように日系の研究者です。必携というわけではないと思うが、それなりに面白いことがいろいろ書かれている。最近それほど取り上げられなくなった話題について調べる時に役に立つというのが私の印象である。但し、通読するのには向いていないようにに思う。 最近はややもすると危ない方向にも興味をもたれているようで、一般向けの本も多く書かれています。例えば、
などです。 太田さんは、その後ご自身の本も出されています:
内容が比較的新しいのと、短いところがいいでしょう。Polchinskiの本の一部の内容のdigest版に近い。また、特筆すべきこととしては、brane solutionの導出が、Ricci tensorの成分まで丁寧に書いてあるところは実際の計算の際に非常に参考になる。stelleのreviewあたりとあわせて読むと良いのではないかと思う。
今や素粒子ばかりではなく物性でも必須のものとなった共形場理論。CFTについてのもっとも丁寧かつ詳細な教科書は
俗にThe CFT Bookといわれている。丁寧すぎて逆に飽きてしまう側面もあ るが、とにかく丁寧に書いてあってよい。また、各章末についている演 習問題が非常に良い。単なる計算問題もあるので、実際に自分で計算して 自信をつけるのには良いのではないだろうか。
本ではないが、"The CFT book"は厚すぎるという人には、Ginspargの非常に名高い講義録Applied CFTを読むのが良い。
物性の専門家と素粒子の専門家の共著によるよくまとまった本。私の記憶ではもともと物性研究に連載していた内容をまとめたものである。前半は基本的にBPZの論文の内容と、CardyのBCFTの話。後半はBethe ansatzをはじめとする厳密解の方法について述べたもの。後半部分もspin chainの話とかで素粒子の人にとっても欠かせない知識になってきた。物性と素粒子の必要知識のintersectionにある内容をうまくまとめた良書である。
量子計算・情報の教科書。既にやや古くなりつつあるが、とにかくまとまって記述があるのはよい。量子力学の基礎的なことを終えた人が、何か応用面の勉強も目指して読むのもよいだろう。演習問題は序文にも書かれているとおり確かにさほど難しくない(ただ、私は回路を作るのに慣れていないので、回路設計の問題は難しく感じる。)。物理のBackgroudを持つ人でも第2章の量子力学を読むと新しい見方が獲得できるかもしれない。また、第1章はこの分野の概観としても優れている。ただし、端から端までこの本を読めばいいかというとそのようなことは無く、むしろもっと進んだものに挑戦するべきなのも知れない。
Last modified on Thursday, 12-Jan-2023 20:09:28 JST
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