2008年度後期講義「幾何学II」
目次
開講のお知らせ
10月1日
10月8日
10月15日
10月22日
10月29日
11月5日
11月12日
11月19日
11月26日
12月3日
12月10日
12月17日
1月14日
1月21日
試験問題
試験問題解答
10月1日(水)開講
12月24日, 1月7日は、月曜日授業に振り替えのため、なし
2009年1月14日が最終講の予定
(1月21日は休講の予定)
1月21日も授業の予定
試験は2月4日(水)
備考:
定期試験に演習の評価を加味して最終成績とする。ただし、定期試験のみで最終評価を希望するものは、試験を受けるときに申告すること。
持ち込み:
教科書、ノート等、一切持ち込み不可。また、試験時間は10:30から13:30であるが、必要ならば軽食を持参してもよい。
授業内容
多様体の de Rham コホモロジー論について、下記の教科書に従い、次の基本的事項を解説する。
- 微分形式と de Rham コホモロジーの定義
- コンパクトな台を持つ de Rham コホモロジー
- Mayer-Vietris 完全列とその応用
- Poincare の双対性定理
- Thom同型
また,チェック・ホモロジー,コホモロジーの定義を述べ,これらと de Rham コ
ホモロジーの関連を与える de Rham の定理を紹介する。
教科書
- R. Bott and L.W.Tu, Differential Forms in Algebraic Topology, GTM 82, Springer-Verlag
- 和訳 (R. ボット,L.W. トュー,微分形式と代数トポロジー(三村護 訳)シュプリンガー東京)でも可
成績評価は, 演習、及び最終テストにより判定する.
過去に行なった授業の内容は、ここを参照のこと。
以下、§の番号は、教科書に従う.
10月1日にやったこと
§. Introduction
(教科書には書かれていない.)
$P$と$Q$を結ぶ曲線 $\gamma$と $1$次微分形式 $\alpha$ が与えられたときに,
線積分
$$\displaystyle \int_\gamma \alpha$$
が, $\gamma$の端点での値 $P$, $Q$ にしかよらずに決まるときがある。
(1) $\alpha$が閉, すなわち $d\alpha = 0$のときは,
$\gamma$ を族 $\gamma_s$ で動かしても変わらない.
(2) $\alpha$が完全, すなわち $\alpha = d\beta$となる $\beta$が存在する
ときには, $\gamma$の取り方にはいっさいよらない. 端の点 $P$, $Q$だけで決まる.
多様体$M$のドラーム・コホモロジーを
$$H^p(M;\R) = \frac{\{ \text{closed p-forms} \}}{\{ \text{exact p-forms} \}}$$
によって定義する.
演習問題 pdf
10月8日にやったこと
§1と§3. 微分形式と外微分(復習)
- グラスマン代数(外積代数)
- 交代形式
- 外積代数と交代形式の全体の同型写像
- 多様体上の微分形式の定義
- 座標変換での微分形式の変換性
- 外微分作用素の定義
これらについて証明なしに述べた.
コンパクト台のドラーム・コホモロジー
$$H^p_c (M;\R) = \frac{\{ \text{closed p-forms with compact support} \}}{\{ \text{exact p-forms with compact support} \}}$$
演習問題 pdf
10月15日にやったこと
前期の復習
- 微分形式の引き戻し
- $d f^* = f^* d$
代数的な準備
- コチェイン複体の定義, そのコホモロジーの定義
- コチェイン写像の定義と, それがコホモロジーに誘導する写像の定義
$C^\infty$級写像 $f: M\to N$ があったとき, コホモロジーに
$$f^*: H^p(N;\R)\to H^p(M;\R)$$
が誘導される.
また、$f: M\to N$が固有な写像のとき, $f^*: H^k_c(N;\R)\to H^k_c(M;\R)$が誘導される.
§4. ポアンカレの補題
台に条件が無い場合
- $\pi: M\times \R\to M$を射影, $s: M\to M\times \R$を$s(x) = (x,0)$で定義する.
- $H^k(M\times \R;\R) \cong H^k(M;\R)$であり, 同型は
$\pi^*$, $s^*$で与えられる.
- チェインホモトピーの説明
- $\pi^* s^*$ と恒等写像の間のチェインホモトピーの構成
応用として誘導写像のホモトピー不変性が示された.
コンパクト台の場合
- $\pi_*: \Omega^k_c(M\times \R)\to \Omega^{k-1}_c(M)$
(integration along fiber)を定義した.
- $e = e(t)dt\in \Omega^1_c(\R)$で$\int_{-\infty}^\infty e = 1$となるものを取り, $e_*: \Omega^k_c(M)\to \Omega^{k+1}_c(M\times\R)$を$e_*\alpha = \pi^*\alpha\wedge e$で定義した.
- $H^{k+1}_c(M\times \R;\R) \cong H^k_c(M;\R)$であり, 同型は
$\pi_*$, $e_*$で与えられる.
演習問題 pdf
10月22日にやったこと
§2. Mayer-Vietoris完全列
- コチェイン複体の短完全列からコホモロジ─の長完全列を導く.
- $M = U\cup V$ ($U$, $V$は開集合)のとき
$$\begin{array}{cccc}0\to & \Omega^k(M) \to & \Omega^k(U)\oplus \Omega^k(V)\to & \Omega^k(U\cap V)\to 0\\ &\alpha\mapsto & \alpha|_U\oplus\alpha|_V & \\ & & \omega\oplus\tau\mapsto& \tau|_{U\cap V}-\omega|_{U\cap V}\end{array}$$
は短完全列である.
- この短完全列から導かれるコホモロジ─の長完全列が, Mayer-Vietoris完全列である.
- $U$, $V$に適合した$1$の分割 $\rho_U$, $\rho_V$を用いると,
$$ d^*[\alpha] = \left\{ \begin{array}{cc} - d(\rho_V \alpha) & on U \\ d(\rho_U\alpha) & on V \end{array}\right.$$
で与えられる.
- $H^k(S^1)$の計算
演習問題 pdf
10月29日にやったこと
- $H^k(S^1)$の計算 (もう一度繰り返し)
- $H^1(S^1)\cong \R$ が積分 $\int_{S^1}\bullet$ で与えられることの証明
- $H^k(S^n)$の計算
- $H^n(S^n)\cong \R$ が積分 $\int_{S^n}\bullet$ で与えられることの証明
コンパクト台のMayer-Vietoris完全列
- $M = U\cup V$ ($U$, $V$は開集合)のとき
$$\begin{array}{cccc}0\leftarrow & \Omega^k_c(M) \leftarrow & \Omega^k_c(U)\oplus \Omega^k_c(V)\leftarrow & \Omega^k_c(U\cap V)\leftarrow 0\\ &\omega+\tau\leftarrow & \omega\oplus\tau & \\ & & -\alpha\oplus \alpha\leftarrow& \alpha\end{array}$$
は短完全列である. (ただし定義域の外へは$0$とおくことで, おおきな定義域のところまで拡張している.)
これから誘導される長完全列が
コンパクト台のMayer-Vietoris完全列である.
$$d_*[\omega] = [- d(\rho_U\omega)] = [ d(\rho_V \omega)]$$
で与えられる.
演習問題 pdf
11月5日にやったこと
§3. 多様体上の微分形式の積分とStokesの定理の復習
- $1$の分割(二つのversion)
- 多様体の向き
- 積分の定義
- Stokesの定理
演習問題 pdf
11月12日にやったこと
- $H^*(M)$は微分形式の外積により $[\alpha]\wedge[\beta] = [\alpha\wedge\beta]$として, 環構造を持つ. 符号を除き可換となる.
§5. Mayer-Vietoris argument
- good coverの定義
- 多様体 $M$ が有限の good coverを持つとき, $H^*(M)$は有限次元である.
- $n$次元多様体 $M$ は, 向きづけられており, 有限の good coverを持つとする. このとき, $H^k(M)$と$H^{n-k}_c(M)$は, 次のpairing によって互いに双対空間になる.
$$H^k(M)\otimes H^{n-k}_c(M)\ni [\alpha]\otimes[\beta] \mapsto \langle[\alpha],[\beta]\rangle = \int_M \alpha\wedge\beta$$
- K\"unneth の公式 多様体 $M$ が有限の good coverを持つとき,
$$H^k(M\times F) \cong \bigoplus_{p+q=k} H^p(M)\otimes H^q(F)$$
演習問題 pdf
11月19日にやったこと
- 閉部分多様体$S$のポアンカレ双対 $\eta_S\in H^k(M)$
- コンパクトな部分多様体のポアンカレ双対 $\eta_S\in H^k_c(M)$
§6. Thom同型
- ベクトル束の定義
- 局所自明化, 変換関数
- 切断, 枠
- 例. 多様体$M$の接束$T_M$, 自明束, メビウスの帯
- バンドル写像, ベクトル束の同型の定義
- ベクトル束の向きづけの定義
- ベクトル束の直和, テンソル積, 双対束, 外積束の定義
- $C^\infty$写像による誘導束の定義
- 定理. ホモトッピックな写像$f_0$, $f_1$による引き戻し $f_0^{-1}E$, $f_1^{-1}E$は同型である.
- 証明の途中で終った.
演習問題 pdf
11月26日にやったこと
- 先週の定理の証明の続き
- ファイバー方向にコンパクトな台をもつ微分形式 $\Omega^*_{cv}(E)$ の定義
- $E$が向きづけられているとき, $\pi_*: \Omega^k_{cv}(E)\to \Omega^{k-n}(M)$が定義され, $H^k_{cv}(E)\to H^{k-n}(M)$が誘導される.
- (projection formula)
$$\pi_*(\pi^*\tau\wedge\omega) = \tau\wedge\pi_*\omega$$
$$\int_E \pi^*\tau\wedge\omega = \int_M \tau\wedge\pi_*\omega$$
- 定理. $M$が有限なgood coverを持つとする. $E$を向きづけられた階数$n$のベクトル束とするとき,
$$H^k_{cv}(E) \cong H^{k-n}(M)$$
が成り立つ. ただし左から右への写像は $\pi_*$ で与えられる.
- $\pi_*: H^n_{cv}(E) \to H^0(M)$の$1$の逆像を$E$のトム類といい
$\Phi$で表わす.
- $\Phi$の特徴づけ
- トム類の自然性, Whitney和公式
演習問題 pdf
12月3日にやったこと
- $S^k\subset M^n$が閉部分多様体であるとすると, 管状近傍$U$で法束$N = TM/TS$と微分同相なものが存在する.
- このとき, $N$のトム類を$U$上の微分形式で, $U$のはじの方では$0$になっているものであらわす. この微分形式を$U$の外で$0$とおいて$M$全体に拡張し, そのコホモロジー類をとったものは, $S$のポアンカレ双対である.
- 二つの部分多様体 $R$, $S$が横断的に交わっているとは, $x\in R\cap S$で
$T_x R + T_x S = T_x M$が成立しているときをいう. このとき$R\cap S$は部分多様体になり, ポアンカレ双対の間に
$$\eta_{R\cap S} = \eta_R \wedge \eta_S$$
という関係が成り立つ. (ただし$R\cap S$には向きを適当に入れる.)
§15. 特異ホモロジー
- $\Delta_q = \{ x\in \R^{q+1} \mid x_i\ge 0, \sum x_i = 1\}$ とおく.
$X$ を位相空間とし, 連続写像 $\sigma: \Delta_q\to X$ を特異$q$-単体という. 特異$q$単体の全体を基底とする自由${\mathbb Z}$-加群を$S_q(X)$とし, その元を特異$q$-チェインという.
- 境界作用素 $\partial : S_q(X)\to S_{q-1}(X)$ が定義され, $\partial\circ\partial = 0$ を満たす.
- $\mathbf Z$-加群 $G$ に対して, $S_\bullet(X)\otimes G$からできるホモロジー群を, $G$-係数特異ホモロジー群といい, $H_*(X;G)$ で表わす.
- 例. $H_0(X;{\mathbb Z}) = {\mathbb Z}^{\oplus \text{path connected components}}$
演習問題 pdf
12月10日にやったこと
- 例. $H_q(\text{point},{\mathbb Z}) = \begin{cases} \mathbf Z & (q=0) \\ 0 & (q\neq 0) \end{cases}$
- 簡約ホモロジー
- 特異コホモロジー群を $\operatorname{Hom}_{\mathbb Z}(S_q(X), G)$ からできるコホモロジー群として定義し, $H^q(X; G)$ で表わす.
- 普遍係数定理
- 相対コホモロジー
- $i_0$, $i_1: X\to X\times [0,1]$ を $i_0(x) = (x,0)$, $i_1(x) = (x,1)$ で定義する. このとき $i_{0*}$, $i_{1*}: H_q(X;{\mathbb Z})\to H_q(X\times [0,1];{\mathbb Z})$ は等しい.
- これをプリズム作用素によって証明する.
- $f_0, f_1 : X\to Y$ がホモトピックであると, $f_{0*}, f_{1*}: H_*(X;{\mathbb Z})\to H_*(Y;{\mathbb Z})$ は等しい.
- 特異ホモロジーに関するMayer-Vietoris完全列
- $U, V\subset X$を開集合とし、$X = U\cup V$とする.
- ${\mathfrak U} = \{ U, V\}$ を $X$の開被覆としての記号とし、$S_q^{{\mathfrak U}}(X)\subset S_q(X)$を $S_q(U)\oplus S_q(V)\to S_q(X)$ の像として定義する。すると
$$\begin{array}{cccc} 0 \longleftarrow & S_q^{{\mathfrak U}}(X) \longleftarrow & S_q(U)\oplus S_q(V) \longleftarrow & S_q(U\cap V)\longleftarrow 0 \\ && \sigma\oplus -\sigma \longleftarrow & \sigma \\ & \sigma+\tau \longleftarrow & \sigma\oplus \tau & \end{array}$$
はチェイン複体の短完全列である.
- $S_q^{{\mathfrak U}}(X)$からできるホモロジー群 $H_q^{{\mathfrak U}}(X;{\mathbb Z})$は, 包含写像 $S_q^{{\mathfrak U}}(X)\subset S_q(X)$ が誘導する写像により, もともとの$H_q(X;{\mathbb Z})$と同型である.
(証明は重心細分を使うもので、略)
- よって $H_q(X)$, $H_q(U)\oplus H_q(V)$, $H_q(U\cap V)$ の間のコホモロジー長完全列を得る.
- (午後に)計算例として $H_q(S^1)$, $H_q(S^n)$, $H_q($クラインの壷$)$
演習問題 pdf
12月17日にやったこと
§. CW複体とそのホモロジー
- $H_q(e^n,\partial e^n) = {\mathbb Z}$ ($q=n$), $=0$ (その他)
- $X$, $f: S^{n-1}\to X$ に対し, $n$-セル $e^n$ を$f$によって貼り合わせた空間を$Y = X\cup_f e^n$とするとき次の完全列がある:
$$0\to H_n(X)\to H_n(Y) \to {\mathbb Z} \to H_{n-1}(X)\to H_{n-1}(Y)\to 0$$
- これに動機付けされて(有限)CW複体を定義する.
- 有限個の点$X^{(0)}$から出発して, 帰納的に作る. $(n-1)$切片$X^{(n)}$に, 有限個の$n$-セルを貼り合わせていって, $X^{(n)}$を作る. 十分大きな$n$でこれを終える. できたものが有限CW複体である.
- 実射影空間, 複素射影空間は, CW複体の構造を持つ.
演習問題 pdf
1月14日にやったこと
- $C_n = H_n(X^{(n)},X^{(n-1)})$ とし, $\partial: C_n\to C_{n-1}$を
空間対$X^{(n)}$, $X^{(n-1)}$, $X^{(n-2)}$ に付随した短完全列
$$0\to \frac{S_*(X^{(n-1)})}{S_*(X^{(n-2)})}\to \frac{S_*(X^{(n)})}{S_*(X^{(n-2)})}\to \frac{S_*(X^{(n)})}{S_*(X^{(n-1)})}\to 0$$
から誘導される長完全列の連結準同型として定義する.
- $\partial\partial=0$が成り立ち, 複体を作るが, この複体のホモロジーは
$H_n(X)$に等しい.
- 結合定数 $[\partial e_\lambda,e_\mu]$の, $S^{n-1}$から$S^{n-1}$への写像の写像度としての計算の仕方
- トーラスのときの計算
- 実射影空間のときの計算
演習問題 pdf
試験問題
試験問題解答
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