力学の本は多すぎて困るが、古典として次の3冊をあげておく。
Landauは、最初の方からLagranianを使って書いているので、論理的に非常にきれいである。例えば散乱問題と、微小振動の部分などのようにところどころ面白いところがある。Goldsteinは、アメリカの大学院でもっとも標準的に使われているらしい教科書。良くまとまっているが、少し味気ないような気もする。練習問題は、Whittakerの本などとは違って、割合スタンダードなものが多いように思う。翻訳も出ていて、訳者の序文には、「きわめてup-to-date」とあるが、それは50年前の話であって、今となっては、数学的取り扱いの不十分さに不満が残る。(ただし、私は古い版しか見たことがないので、もしかしたら改善されたかもしれない。)Arnoldは、少し毛色の違う本で、著者が数学者(数理物理学者?)であることや、題名からも推測できる通りに、数学的側面に重点がある。Symplectic幾何の話とかもあるので、ほかの本で物理を勉強した人でも読む価値は大いにあると思う。個人的な印象としては,非常に基本的・シンプルな話と深遠な話が混じっているように思う。従って、最初のほうだけ読んでこれは当たり前のことをやけに面倒くさく書いた本だと早まった判断を下さないようにするべきである。Appendixはそれ自体人気があるのではなかろうか。なお、これらの本はそれなりに読むのは大変なので(Landauが一番量が少ないとは思うが)、量子力学等の勉強のためになら、以下の本を読めばとりあえずいいであろう:
これは気楽に読めていい本である。一番最初に、量子力学をとりあえず理解するのに必要な知識が如何に少ないかが力説してある.(「ただし、素粒子だけは例外」という但し書きが何度も出てくるのだが。)自信をつけたい人にはお薦めしたい。ちなみに、同じ著者で、
もある。解析力学そのものにも、いろいろと難しいことがあるが、これら2冊の本で強調されているように、たとえば量子力学などを学ぶためには、そこそこ勉強しておくだけでも十分だと思われる。むしろ、量子力学などを通じて、初めて解析力学の威力が理解されるのであって、一旦解析力学を勉強したら終わりというのではなく,何度も繰り返し立ち返るiterativeな学習が肝要であろう。
アメリカで標準的に使われているのは、
だと思うが、大部で,僕も読んだことがない。日本の大学では、電磁気学そのものについてこんなに詳細な講義をやっているところはないのでは。ただ、実は(それほど)マニアックなことは書いておらず、わりかしスタンダードなことばかり。1冊目はMKSA、2冊目はCGSという折衷を採用している。
私が昔学生の時に読んだ本の一つが
である。理論的に整備されていて、全体の構造が非常に見易くなっている。式変形も、やや丁寧すぎるくらい丁寧に書かれている。ただし、最近少し思うのは、洗練され過ぎたぶん、面白味に欠けるきらいがある。つまり、とてもよく理解できるのだが、あまり深みがないようにも思う。理論系の若者向けか。ちなみに、練習問題の解答は教科書にはついていないが、砂川さんが書いた別の教科書(演習書だったかも)に殆ど解答に相当するものが載っているという話を聞いた覚えがある(が、私自身は確かめていない)。
番外編としては
をあげておこう。この本には、著者のおっしゃる通り、ほかの本に書いていないことがたくさん書いてあり、何かほかの本を読んだ人でも楽しめる。歴史的側面も書いてあり、おもしろい。電磁気の授業のTAをやる時や、教官として電磁気を教える時にじっくり味わうのもいいかもしれない。ただし、最初から読む本ではないと思う。
日本では熱力学と統計力学は別の講義で取り扱われることが多いし,マクロでより普遍的な熱力学とよりミクロな立場からの理解を目指す統計力学は関係しているものの両者はとりあえず別のものである.ただし実際には両方をまとめて議論している教科書もあるのでここではまとめて取り扱うことにする.
こちらも教科書は沢山あるが,日本語で伝統的な教科書としては,例えば「久保の公式」などで世界的に有名な著者による教科書
をあげておこう.久保先生には有名な演習本もある:
よくもこんなに沢山問題を作ったと思う。試験勉強にこの本を使っている人も少なくないようだ.ただし、取り扱い方がいかにも古臭く、今からもう一度似たようなものを作るとしたら少なくとも見かけはかなり違ったものになると思う。ちなみに英訳も"Thermodynamics: An Advanced Course with Problems and Solutions""として出版されたことがある.
僕が昔読んだ本の一つはFermiによる
でこれはかなり古い本で内容も限定的ですが,簡潔に書かれていてすぐに通読できるので勉強しやすいです。余談ですが、Fermiは、本を書くとき、何も参照せずに書くことができたそうです。このFermiの本は1930年代のChicago大学での講義を基にしているので、内容的には、実はずいぶん古いはずであるが、意外に今日でも通用するものである。ただ、たとえば相転移・臨界現象に関する記述は皆無で、もっと現代的な視点から勉強してみようという方は、例えば
がいいのかもしれない。著者の意気込みが伝わってくる本であり、本人いわく、「日本の熱力学の教育に革命を起こす」本である。この本の最初に引用されているLieb-Yngvasonの論文を読むのもいいだろう。また同じ著者による統計力学の教科書もある:
また公理論的な導入については英語の本だと
がある.
ちなみに余談になるが、田崎さんが訳されている
は興味深い本である。私が高校生の時、数学セミナーに黒木さんの書評が出ていたのを覚えている。高校の図書館のかたにも薦めてもらった記憶がある。意見はいろいろあるであろうが、とりあえず読んでみると面白い。人のあげ足を取っているという感じもあるにはあるが、哲学に(いや自然科学でも同様に)難解な用語を使うことと、深遠な概念であることの混乱が見られるのはたしかだと思う。
もうちょっと気軽に何かを読みたいときには
気楽に読めて、かつわかったつもりになれる。ミクロカノニカル,カノニカル,グランドカノニカル等のアンサンブル間の関係についてがんばって説明している。勿論、ちゃんと勉強するための本ではない。
これも非常に本があるが、例えばアメリカではSchiffは伝統的には標準的な教科書の一つだと思われる:
この本は最近日本にあるBow Wow Pressさんが版権を取得して新たな版を発売された.また必ずしも購入せずともそのpdf fileも公開されており有り難い.
日本の大学の演習や試験問題などでは、猪木・川合
がよく使われている。私自身はほとんど利用したことがないが、東大の物理学科の授業ではよく使われている.期末試験や院試の勉強をしたいなら、この本の演習問題は実践的かもしれない.
私が昔勉強した本の一つは
量子力学を教える際の一つの問題点は、何が根本的で何が多の事実から導かれるのかがしばしば雑然としていることである。もちろん、物理が物理である以上、それは当然のことであるが、この本は、統一的な見方を提供しているところがすばらしい。筆者の得意だったことを反映して、対称性の議論もよく整備されている。(1巻の最後の球面テンソルのところと、2巻の最後のクーロン散乱のところは、あまり分りやすくないように感じる。)ただし、多少波動力学に慣れている学生を対象にしているので、何かほかの本を少しかじってからのほうがよいのかもしれない。また、たとえばSchiffに書かれていることを繰り返したりするのを嫌っているので(著者としては当然だと思うが)もし可能であれば必要に応じてSchiff他の標準的教科書を参照するのがよいであろう。かつて私が勉強した時は大学の図書館に入れなかったのでSchiffの本を借りだすのは難しかったが,今は上に述べたようにpdfがあるのでそれは障害にならないであろう.もっとも,実際には面倒な時は別に参照しなくてもかまわない程度にはその程度にself-containedにはなっている。ちなみに和訳のほうには訳者によるBerry位相の話がついている。
ファインマンの講義の中で私が一番まじめに読んだのはこの量子力学の巻である。応用として、スピン波、半導体、レーザーの反転準位などいろいろ書かれていて楽しめたのを覚えている。今考えると、普通に物理を勉強していれば、いずれかは学ぶことなのだから、別にこの本を読まなくても実用上はさほど支障はないのであろうが、特に学び始めのころにわくわくさせてくれる本だと思う。あまり後になってから読もうとすると、(実際の講義を聞くならともかく)本では少し退屈な気がしないわけでもない。予備知識がないからといってあまりひるまずにとにかくチャレンジしてみることがおすすめ。Feynman lecturesは現在はオンラインでhttps://www.feynmanlectures.caltech.edu/において公開されており,オーディオファイルも手に入るというのはすごい。
ちなみに、Feynmanは人気で彼の本はたくさんあり日本語の翻訳も多い。私が読んだもので今思い出せるのは、
幼少期のことから初めて、アルバイトでの体験、金庫あけ、原爆、妻の死、発見の興奮からはたまた酒場での女性の口説き方まで雑多に面白おかしく書かれている。さりげなく専門的な話(V-A理論の話)とかも入っているのだが。面白いことに,この本を読むことを僕に勧めてくれたのは英語の先生だったのだ.英語も難しくはないので英語の勉強にもなるかもしれない.大学の授業用に、注釈のついたダイジェスト版が南雲堂から出ている。私は大学の時にその本を使う授業をとっていた。もう一つどうでもいいことだが、昔、この本に書かれていた「キュートな数」について、江沢先生が数学セミナーに記事を書いていた。暇な人は、この本の該当部分を読んで、どこがキュートか、どんな時にキュートになるのか考えてみよう。
これは、"Surely You're Joking..."ほどは面白くはないかもしれないが、電荷の大域的な保存則から局所的な保存則を導く話が書いてあったことが印象に残っている。また、少なくとも日本語のほう(私が読んだのはダイアモンド社だったような気がするのですが、今見ると岩波から出ている?)には、後ろにノーベル賞講演がついていて、量子電磁力学(QED)に至る道のりが生き生きと書かれていて面白い。
話を元に戻すと、量子力学では歴史的側面について学ぶことも教育的である.伝統的な量子力学ではこの側面が強調されすぎているきらいがあるが,だからといって歴史を学ぶことそのものの重要性が減るわけではない.例えば朝永氏による三部作
には歴史的なことが書いてあって面白い。ただし、私が薦めるのは主に1巻です。前期量子論については、少なくとも日本では特定の部分だけを中途半端に教える傾向があり、Schroedingerなどとの理論との関係が明らかでないように感じるが、この本を読むとそのあたりがかなり分かるようになる。たとえば、作用に対するSommerfeld(-Wilson-Ishihara)の量子条件を、フーリエ成分に読み替えていくことによって、Heisenbergが正準交換関係を導くところなどは、非常に楽しめます。しかし、2巻は割合普通のことが書いてある印象。de Brogile場と、Schroedingerの場を区別しているところや、粒子と波動の同等性を示すための必然的なものとして場の理論や統計性を導入しているところなど、うなずけるところもあるが、全体としては、数学的内容が前面に出て、物理は後退してしまった。また、デルタ関数の取り扱いなどについても、必要以上にごたごた書きすぎているようで、かえってわかりにくいと思う。3巻が筆者の手によって完成を見なかったことから察するに、2巻の出来には、朝永氏もあまり納得できていなかったのではないだろうかと勝手に想像してしまう。ちなみに、他のレビューをみてみると、ちょうど私と正反対で、上巻は飛ばしても下巻は読むべきという意見の方もおられるようである。皆さんも私にだまされないで、自分で手にとって確かめて欲しい。
また,Diracによる有名な教科書
は必読書だという人が多いし、また最も美しい物理の本だという人さえいるが、どうも私はあんまりまじめに読んでいない。もっと正確に言うと、(もっと早い段階で読んでおけばよかったのかもしれないが)最初のほうのブラケット形式の整備など、線形代数の常識的なことをぐたぐた書いていていまいち読む気が起らない。こういう本は就職してから学生にセミナーで発表させながらゆっくり読むに限る。やはり、歴史的な背景も大きいと思うが、朝永先生の下巻と同じように、(今となっては)簡単な数学を丁寧に書きすぎるような気がする。もっとも,これは僕が数学者としてキャリアを出発したことに影響されてている意見かもしれない.
最後の本は量子力学の数学的側面を扱ったもの。2000年を迎えたときにみすず書房がmisuzu revivalとかいって再出版したもののうちのひとつ。当時はそのことを書いた帯がついていた。最初の辺りは、いわゆるヒルベルト空間論であるが、関数解析の本をかじったことがある人なら、ほとんど知っていることばかりであまりおもしろくない。逆に言えば、それぐらい彼が関数解析に貢献したことがわかる。この本で一番有名なのは多分測定の部分であるが,それは本の最後に書いてある.このような書籍が1930年代に既に書かれていたことは驚きだが,同時にノイマン自身がヒルベルト空間を(ある意味で)捨てさり,フォン・ノイマン環の理論の建設に進んで行ったことは興味深く,100年近くを経た現在でもその知見は未だに汲み尽くされていないように感じる.
筆者はこれまで流体力学については深く学んだことがないので正直コメントは難しいが,印象に残っている本として,
は複素解析のことから始まって、流体力学に至る特徴のある本である。複素解析の流体的意味がわかって良い。複素解析は非常に良くまとまっていて、これだけ読めば、少なくとも物理数学(数理物理ではありません)では当分不足することはそうないので,そういう意味では一冊で二度おいしいのかもしれない.筆者の今井先生とは僕が東大物理学科の学生だったときにニュートン祭で少し話す機会があったことが印象に残っている.
番外編としては戸田先生の30講シリーズの中から流体力学についての1冊。コーヒーブレイク・雑談のコーナーがおもしろい。KdVの話とかも出ている。ただし、座標を表すのに座標ごとに違う文字を使っているのは、テンソルに慣れたものとしてはまどろっこしい印象を受けるので,どちらかというとhands-onな趣か。ソリトンの話とかも少し書いてあるが、それを知りたいのだったら、同じ著者の
のほうが丁寧に書いてある。僕は流体力学そのものは詳しくないが,可積分系の専門家ではあるのでこの本にあるようなことはなんとなく感覚はある.細かい計算にいたるまで書いてあってよいが、さすがに2ソリトンの計算とかは書いていないので、自分で計算を埋めるのは大変である。
この著者では、ほかに
を読んだことがあるが、この本も、一般理論を学ぶというよりは、「計算して理解する」という筆者の方針が貫かれていて、計算を面倒がらなければ面白く読めると思う。ただし、数学的な興味から楕円関数に興味を持っている人には薦められない。あくまで自分で地道に計算して理解したい人向け。戸田先生の本に親しみを覚えたならば30講シリーズの本をいくつか読んでみるといいかもしれない。ただし、シリーズの中の相対性理論の本は、私は昔読みかけたが間違えが多かった記憶があるのでおすすめというわけではない(その後改訂された可能性はある)。
話を流体力学に戻すと、流体力学を勉強するには、「流体力学」あるいは「弾性体の力学」と名前のついた本ばかりではなく、関連する分野について勉強してみるのが理解を深めるために一番なのかもしれない。例えば、電磁流体力学に進んでプラズマの勉強をするというのもひとつの手だろう。あるいは、数値計算の得意な人は何かプログラムを作って遊んでみるといいだろう。全く個人的な趣味としては,
で気象の勉強をするのは面白いと思う。流体力学といっても使うのは基礎方程式系だけだが、それらを用いて例えば地衡風を理解することができるのは面白い。気象の知識が足りないと感じた人、あるいはもっと基礎的なところから勉強したくなった人には、同じ著者による名作
を薦めたい.
ここまで流体力学について書いてきたが,流体力学には有効理論としての側面があり重要だが,この側面についてあまりまとまって書いてある教科書がないように思うのはちょっと残念である.今後に期待.
筆者はプラズマそのものは研究しないが,宇宙はプラズマで満ちているので宇宙の話をする時にはプラズマ関係の話題には時々巡り合う.プラズマ物理の入門書としては、
の2冊が標準的であろう.Chenは30年前ぐらいに書かれた本で、基礎的なことをうまくまとめている。前半はひたすら方程式の線形化ばかりなので、途中でややだれる。最後には核融合のお話的説明もある。式変形も丁寧に書かれており、殆どつっかえる所がない。MHD方程式は導いてはいるが余り使わずに、イオンと電子の2流体の運動方程式を解くという立場。その方が正確になる場合もあるので、ある意味妥当な選択だろう。単位系がcgs-静電単位系なのでもしかしたら最近の学生には嫌われるのだろうか?GoldstonはPrincetonのもの。より最近に出たもので、Chenよりは説明が詳しい。但し全体としては新しい内容がそんなに加わっているわけではない。付属するコンピュータープログラムが一つの売りのようだが、10年の間に計算機関係は目覚しく発展してしまったので今ならもっといろいろやれたのではないかな、と思う.
物性物理学と名前のつく学問はその射程がかなり広いので,その全貌を教科書で学ぶことは容易ではない.ただそうはいっても共通の部分は存在するので,ある程度は概観することも可能なのだろう.そのような教科書の中でもっとも有名なのは、恐らく、
であろう。ちなみに、この本に付属して使用することを意識して書かれた日本語の演習書も発売されている。今調べた限りでは,2005年に第8版が出たが,それ以上のアップデートはなされていないようである。評判はいろいろであるが、後半部分の記述は例えば下のAshcroft-Merminとかよりも詳しいところもある。Kittelは物理学者(磁性の研究者)ではあるが、この本は、科学、生物、工学などの人にも十分読めるように書かれていると思う。一方評判が悪いところもあって、たしかにもっとちゃんと書くべきだと思われるところが多い。しかし、そのような批判は、あまり当たっていないように思う。この本は、例えば量子力学や相対論の本を読むように読むものではないと思う。物性物理の多様性とその背後にある物理理論とを、味わいながら読めばよいのではなかろうか。
数学的にもっときちんとかかれていて、物理学の学生にお薦めと思うのは、
だろう。配列は固体物理の教科書としてはnon-standardかもしれないが、私にはKittelよりも微妙に読みやすいような気がする。最初に金属伝導やバンド理論の話がかなり細かく書いてあり、その知識を基にして他の話題へと導かれていく感じの構成である。著者たちの専門がやはり反映されている。Kittelと同様、量子力学と統計力学の基礎さえわかっていれば大して困らず読める。演習問題は私は6割ぐらいしか解いていないが、少なくとも半分ぐらいは具体的に式をおうとそのままできるようになっている。惜しむらくは、重要な筈の超伝導についての記述が、事実の羅列に終わっていることだが、場の量子論を禁じ手にしている以上、仕方がないのかもしれない。全般的に言って、最初のほうはかなり詳しくなっているが、最後のほうに行くにつれて記述が緩やかになっていき、将来の発展への展望といった色彩が強くなる。完成に8年もの歳月をかけた力作であり、出版から数十年を経た今でも(一度の改訂もなしに)その価値を失っていない。最初に読むのならKittelよりお薦めである。
Ashcroft-Merminもいいけど、30年も前の本だし、今読みかえしてみると流石に古いのは事実である.もうちょっと現在的な話題に触れたいという方には
が内容がアップデートされており良いのだろう.ただしその分,分量も増えているので初学者が通読するのが難しくなっているのかもしれない.もう少し違った系統だと
を挙げておこう。理論家と実験家による好著である。相転移、繰り込み群などの記述は非常に良い。従来的な固体物理の教科書とは一味違った教科書である.
これらの本でもある程度はさまざまな分野がカバーされているが,各論をより詳しく学びたければそれぞれのトピック別に学ぶ必要がある.既に述べた通り,物性理論はかなり幅広い分野であり各論といっても多く,かつ分野によっては進歩も早い.また,定番の教科書が存在しない分野もあるように思う.
しかしそうはいっても教科書が数多く出版されている基礎事項があるのも事実であり,例えば超伝導はその一つであろう(その他,例えば磁性についても沢山出版されている).高温超伝導については現在でも結局わかっていないことが多いが,少なくとも伝統的なBCS理論を学ぶのは今でも有用であるのは正しいと思う.超伝導については英語日本語問わず多数教科書が出版されているが,筆者が読んだ本の中で一番記憶に残っているのがBSCのSによる
である.超伝導の本としてはやや理論向けの方なのではないかと思う.他に定番と言われている教科書の一つは
である.旧版は世界的に有名で、日本語の翻訳も出ている. 改訂版では、Josephson効果の部分が拡充され、High-Tcの話とNon-equilibrium Superconductivityの章が加えられた。Standardな教科書である上、Dover版 は安いので、超伝導に関係する人ならば持っていても損はしないと思います。 実験について数多く取り上げるなどしているので、理論の人ばかりではなく実験 の人でもきちんと理解できるのではないだろうか。但し、その分理論的記述がや やサボっている所もあり、正直筆者にはSchrifferの方が読みやすい.ただし、Tinkhamは実験の人向けに書かれているので、実験の人にはこちらの方が良いのかもしれない。TinkhamはBCS理論をあまり詳しく書いていないので、BCS理論を学ぶためにはSchriefferを読む必要があると思う。
物性理論の近年の考え方としてはトポロジーの考え方が大々的に導入されたことだろう.この分野は発展が早いが,例えば
急いで書かれた本であるが分野の基本的文献になったと思われる.日本語だと
がたとえばあげられる.
筆者はもともと素粒子物理学の出身であるので場の理論は基本的な言語である.物性物理学では格子上でハミルトニアンを考えることが圧倒的に多いが,それでも場の理論的な手法が有用なことも多々ある.場の理論については下にあげる素粒子の場の理論の教科書で勉強する人もいるのかもしれないが,より物性物理に近い立場から書かれており,かつ実際に通読している人もそれなりに多そうなのが
は記述は非常に凝縮されている。前半部分は標準的な場の理論の摂動計算とその有限温度バージョンの説明。この部分だけならもっと分かりやすい他の本で読んでもいいかと思うが、後半部はこの本ならではの味わいがある。
最後に,場の理論の重要事項として繰り込み群があるが,これを臨界現象などと関連づけて説明した本.とにかく繰り込み群の思想を知る為には非常に良い本である。「相転移点上ではscale不変性が生じ、correlation lengthが唯一の長さのスケールになる」といった誤解を招く表現をしないようにかなり気を使っている。またpartition functionが(少なくとも直接には)ないような非平衡系でもRGのtechniqueは使えるというのが筆者らの研究であり、ひとつのメッセージでもある。このように、Wilsonに始まるRGの爆発的応用がなされた栄光の時代に酔いしれること無く、現在そして将来を見据えた立場が見受けられる点で、まさしく現在の学生にふさわしい。予備知識は普通の熱力学・統計力学で十分だろう。
筆者が学生の頃はAMO物理という分野は独立した分野としてはみなされていなかった印象があり,現在でも物性の一部として取り扱うことも多いようにも思うが,最近は独自の取り扱いを受けることも多くなってきたのではないか.この分野については私が知っていることは少ないが,基礎事項を学ぶのに
は良い本だと思う.その他,Bose-Einstein凝縮については
が定番である.学生の時に読んだ本として記憶に残っているのは
レーザー物理のことが量子力学の初歩的なことから始まってとてもわかりやすく書いてある。レート方程式と半古典理論についてかいてあるが、量子力学理論についてはお話程度しか書いていないのは残念。入門書だからしょうがないのかもしれないが。
レーザーについては、専門書ではないが、
がその歴史を生き生きと伝えてよい。レーザーそのものについての記述と、特許権争いや委員会での活動の話が同じぐらいあるところに、いろいろ考えさせられる。
近年は量子情報的な考え方が広まりを見せており,他分野との融合も進んでいる.例えば,物性物理の一部と量子情報の一部は融合が進みもはやあまり明確な線引きはできなくなってきた感がある.いわゆる量子情報の教科書としては大定番が
である.既にやや古くなりつつあるが、とにかくまとまって記述があるのはよい。量子力学の基礎的なことを終えた人が、何か応用面の勉強も目指して読むのもよいだろう。演習問題は序文にも書かれているとおり確かにさほど難しくない。物理のBackgroudを持つ人でも第2章の量子力学を読むと新しい見方が獲得できるかもしれない。また、第1章はこの分野の概観としても優れている。ただし、端から端までこの本を読めばいいかというとそのようなことは無く、むしろもっと進んだものに挑戦するべきなのも知れない。また,研究するようになるとこの本を読まなくても気づいたら本に書いてあるようなことはいつの間にか知っていたことはある.もちろん,逆にいえば読んでも損はないだろう.
Nielsen-Chuangの次の定番ば明確に存在するわけではないのでこの先は論文を読み進めるのがいいのように思うが,例えば日本語で計算量の部分をもっと掘り下げたいのならば
は良い.またやや数学的なアプローチとしては
は参考になる.
番外編としては
これは何かを体系的に学ぶ本ではないが,魅力的なトピックたちが著者自らの視点で次々に議論されており,非常に刺激になる.
東京大学教養学部の授業で実際に使っていた本。特徴といえば、Einsteinの原論文に即してLorentz 変換を導出していることや、さりげなく鋭い脚注があることであろう。大学一年生で十分読めるぐらいのレベルであろう。
微積の知識ぐらいがあれば、1ヶ月ぐらいで一般相対論がわかったつもりになれる。重力波のことや宇宙論のことも書いてあるので、一般相対論の概観に適している。私は最初にこの本で一般相対論を勉強しました。非常に分かりやすい本です。
この本はいろいろ議論してあるのでどこに入れるかは難しいが(電磁気?場の理論?)ここでは相対論のところに入れてみた。力学の巻に続いて、ラグランジアン形式を前面に出している。記述が非常に整理されているという印象を受ける。ただし、例えばラグランジアンは彼らも認めているように対称性から完全に決まるわけではないし、場をどういうふうに定義するかだって、彼らが答えを知っているからそのようにできるのであって、ある意味物理をなくしてしまっているともいえる。磁場・電場中での粒子の運動とかでも、基本的に運動方程式が解ければいいという立場で、ある意味味気ない。(例えば、その原理を使った実験装置の説明とかを加えているファインマンの教科書とはずいぶん趣が違う。)しかし、いろいろなことが書かれているし、名著といってよいことに変わりはない。
世界的名著。他の一般相対論の教科書と比べると数学的側面が充実している。いろいろなreviewを見ても数学的と書いてあるものが多い。ただ、弦理論に使われる数学が高級化した後に入ってきた私のような人間からすると、この程度の数学はもっと物理学者にも広まってしかるべき名のではないかとも感じる。たくさんのことをあっさり目に書いてあり、ある意味やや無理気味に薄い本にしようと圧縮した感じなので、あまり初心者向きではないということもできるし、必要以上にdetailにこだわっていないという意味で概観に適しているということもできるだろう。あまり基本的なことはぐたぐたいわずに、発展的な話題をやや大雑把に説明することを志向しているように思える。Singularity Theoremのところ等の説明はあまり読みやすくないような気がする。また、最後に量子重力を議論した節があるが、その部分に余り期待しすぎではいけない。
電話帳として親しまれている本である。確かに分厚く、毎日学校にもっていったり帰ったりする本ではない。但し、この本を少し読んでみればわかるように、叙述の仕方は基本的には情報の羅列である電話帳とは大きく異なっており、著者たちの相対論に対する思いがひしひしと伝わってくる。対象としているレベルも幅広く、これから特殊相対論を学ぼうとしている人から、相対論の専門家・研究者まで含んでいるといってよい。確かに一部の記述は古くなってしまったし、現在から見ればいくつかの重要な話題は扱われていないか、軽くしか扱われていない。Regge calculusのところのように、期待するほど詳しくはかかれていなかったりするところも多い。しかし他の本にはあまりかかれていないことがたくさん書かれているし、説明も非常にわかりやすいので、現在でもその価値は失われていない。折に触れて隅々までじっくり味わって読んでみたい本である。難点は値段が高いことだろう。図書館においてあるのなら、買うのかどうかは人それぞれによって違ってくるだろう。
Singularity Theoremの証明や、Cauchy Problemなど。この種の学術書としては、驚異的な売り上げを示したものだったとか。H先生いわく、この本を読めるかどうかが一般相対論の専門家になれるかどうかを決める。年を取ってからのHawkingの言うことには余り信用できないことも多いが、彼のこの本は(ある程度以上)数学的にきちんとかかれており、安心して読むことができる。なお,この本が難しいという方は
がよりとっつきやすいかもしれない.一般相対論により幾何学的な立場からのアプローチで,日本語でもあるし好著だと思います.
原子核物理は、物性,素粒子,宇宙などと境界領域のトピックも多く,その知識にはこれらの各分野と重なるところも多い.僕は原子核についてはあまり知らないが,実際には原子核と名の付く分野の人でもほとんど僕とは変わらない研究をしている人も少なくない.より原子核に特有の部分についてのもので、私が利用したことがあるのは
2002年ごろにここで「豊富な教科書の揃っている場の量子論を勉強して育った人間の目から見ると、宇宙論は意外なことに余り良い教科書が少ない。最新の観測事実が絶えず現れていると言う事情があるにせよ、誰かがいい教科書を書いて欲しいものである。」と書いてしまったが,ここ数十年の間に宇宙論は精密科学へと成長を遂げ,教科書についてもより現代的なものが出版されてきている.
宇宙論全般の勉強としては
などが定番なのではないだろうか.Dodelsonは最近第3版が出た.観測に近い分野はデータは常にアップデートされ続けているので,教科書はあくまで考え方を学ぶものであって,実際のデータなどは論文からどんどん学んでいくことは必要になるのだろう.実際,筆者の所属するKavli IPMUにも宇宙論の大きなグループがあるが,図書館に置かれている宇宙論の本は(例えば数学に比べると)圧倒的に少ない.
近年は宇宙背景輻射(CMB)から宇宙論パラメーターについて詳細な情報が得られており,これはある意味線型理論で理解できる部分が大きいので理論的にも学ぶべきところが多い.また,一般相対論の議論が必要であるので気をつけないと座標変換不変でない(物理的ではない)量を議論してしまうことにもなりかねない.このような側面を議論した教科書として例えば
があげられる.この中だと僕自身が一番細かく読んだのは小松さんの本で,分かりやすく書かれていると思う.
Weinbergは上の本とは別に
があり,世代が上の人たちはこれで宇宙論を勉強したのかもしれない。この本は基本的には一般相対性理論の本であるが、最後の1/3に宇宙論に付いての記述があり,今でも読ませることろはあるが,全体にはさすがに古くなってしまった感は否めない.Weinbergの二つの本を比べてみると,時代の流れを感じることができる.また,同様にLiddleとLythの二冊の教科書
より初期宇宙について,特に素粒子論と宇宙論との関わりについて書かれた歴史的な名著ともいうべきものは、
であろう。既に出版から年月が経過していることもあってデータなどは時代遅れであり,これだけでは十分とはいえない部分も多いが,その切れ味はなかなかのものであり,理論的な考え方の主要な部分を学ためには実は現時点でもなおもっとも有用な本のひとつといえよう。僕は今でも時々参照している.但し、式の導出などは説明をさぼっている部分が多いし、ちょっと大雑把な部分もあったりするので、余りこだわりすぎるいけない。ちなみにこの本には関連した論文を集めた姉妹本 The Early Universe: reprintsがある。
僕がM1の時に輪講に使って記憶に残っているのが
である.Lindeは対称性の自発的破れや相転移といった内容を場の理論の言葉を活用しながら述べ、後半でインフレーションにいたる。chaotic inflationの説明や、有限温度での計算など、Linde自身の仕事の内容が色濃く反映されており、一読に値する。但し、部分的には彼の意見を前面に押し出しているところもあるので、余り鵜呑みにしないほうがいいだろう。第1章は、本全体の内容がうまくまとめられており、この部分だけ読んでもそれなりに価値があるのではないかと思う。この本は現在、hep-th/0503203として無料で入手できるので、本を買う必要はないだろう。きちんと理解しようとすると場の理論の基礎を一通り習得していることが必要になってくるだろう。例えば、1-loopでのeffective potentialの計算など。かなり癖があって読みずらいし、またほとんど彼の論文をコピーして集めただけというところもあってこの本だけで勉強するのは難しいが、適宜文献を補って主体的に読めば得るところが大きい。個人的には何故か気に入った。
素粒子よりの場の理論で現在おそらく最も標準的な教科書が
ひと世代前のBjorken-Drellといった教科書に比べると繰り込みや有効場の理論の考えなどが 書かれていてよりあって現代的である。Wilson流の繰り込み、critical exponentの計算も書かれているので、物性の学生にもそれなりに薦めることができるように思う。計算も細かいところまで書いてあってわかりやすい。ページ数が多くてわかりやすく、自習ができるようになっているところなど、いかにもアメリカの教科書という感じがする。HarveyのReviewにもあるように、まさに「いつどんな料理を出したら消化に良いかが良く分かっている」。それは教科書としては長所である半面、「面倒なことは先送り」という側面をも持つので、この教科書に慣れすぎてしまうと帰って危ないかもしれない。「教育的配慮」の為にうやむやにされている所を、後からきちんと理解するという努力を怠りしなければ非常に有効に活用することができるだろう。演習問題の難易度も易し過ぎず、難し過ぎずでちょうど良いのではないだろうか。
深い洞察に裏打ちされた本として、
を挙げることができる。(日本語版は5分冊で,書誌情報を全て載せるとスペースをとるのでhttp://www.yoshiokasyoten.sakura.ne.jp/phys/ISBN4-8427-0262-1.htmlをご覧ください.)その思想の深さは他の本と比べ物にならない。 特にI巻の最初の方は、彼の若い頃の仕事に基づいており唸らせるものがある。Hamiltonianを生成、消滅演算子でかくのはcluster decomposition principleを満たす為であるという指摘、superselectrion ruleについての言及、Batalin-Vilkoviski formalismなど、他の本には書かれていない話題も扱われている。Feynman diagramの導入も通常とは違ってDyson流のやり方である。 ただし、最初に場の量子論を読む時に読む本ではない。また、Weinbergといえどもところどころにうやむやにしている所が散見されるので、余り鵜呑みにしてはいけない。また、第III巻は、supersymmetry, supergravityといった話題を扱っているが、これについては必ずしもWeinbergが最良の教科書というわけではないように思われる。ただしGauge-mediationやSeiberg-Wittenのように、普通は論文and/or reviewで勉強するような比較的進んだ話題についても書かれており、なにかと参考になることも多い。4-componentのspinorのnotationを用いているが、好みは人それぞれだろう。とにかく、場の理論を学ぶものならいつかは読んでおきたい本である。ある程度以上時間をかけてじっくり読まなければいけないと思う。Peskinなどと違って焦って読んでも得る所は少ないだろう。
近年人気が出つつある教科書.素粒子論研究室での輪講でも何度も使っています.
私は読んだことはないが,最近の学生には人気のようだ.とても丁寧に説明.
素粒子よりの文献に限定しても場の理論の本は、本当にたくさんあり,いい時代になったものだ.やさしめのから行くと、
こちらは大学一年生ぐらいでもわかるように丁寧に書いてある本。素粒子に限らず、物性の話もあるので、幅広い人に薦められる。
私が最初に読んだ思い出深い場の理論の本。学部生向けといったところで、きちんと読むと、記号の不統一、説明のいい加減さなどが気になるが、場の理論を最初に勉強する上では個人的には役立った。ただ今の学生にすすめる本かといわれるとそうではないように思う.
日本語の本では相当よくかけていると思う。標準的な内容も多いが、5章のKugo-Ojima Formalismの説明のところがやはりよい。ただし、この部分を読みきらないと、2巻に行きずらいので、(BRSTをぜひやりたいというのなら別だが)単に計算法を知りたいのだったら、経路積分法をやるだけでとりあえず十分だと思う。実際、彼らのFormalismをきちんと理解できている学生は、意外と少ないと思う。付け加えると、1章に出てくるSpinorの計算が、いきなり複雑で閉口する。SUSYをやっている人にはなんともないのだが、場の理論を学び始めた人はその辺はとりあえずそこそこにして進んでもいいと思っている。
番外編としては,やや異色の本として、
がある。この本は、標準的な相対論や場の理論の教科書にはあまりないようなLorentz群の表現が書いてあるのがよい。但し、前半の部分はWeinbergの教科書のI巻に、phase factorの議論も含めてそこそこ詳しく書いてあるのでありがたみは薄れてしまったように思われる。後半には高階スピンの波動方程式の表現についても書いてある。場の理論をきちんと構成するということをやっている文献はこの本の後半ぐらいだろう。なお、どうやら対応する英語の本も出ているようである。
もう一つの番外編は
で,これは教科書にはあまり書かれることのないよりモダンな場の理論へのアプローチ,また個別の場の理論ではなく場の理論の集合の背後にある幾何について書かれている.
Latticeの歴史的な定番。非常に簡潔でよくまとまっている。ただし、物性向けではない。また、細かい計算は書かれていないので、何も参照しないので自分で完全に計算を生めるのは必ずしも容易でないと感じる。彼の論文をまとめたものに近いと思う。
格子ゲージ理論には理論の定式化という側面と,実際の数値計算というより実用的な側面がある.本書はその両方をうまくカバーしており,実際の数値計算をする際にも役立つ貴重な本.
超対称性については、
がスタンダード。2nd editionはかなり間違いが少ないらしい。所謂教科書ではないと思う。くどくどした説明はなく、簡潔な説明と時にハードな計算が続く。supersymmetryはnotationが非常に大きな問題だが、とりあえずこの本にあわせて勉強すればいいのではないだろうか。問題は、この本を読んだだけではsupersymmetryの基礎が分かったとはいえないことにある。例えば、実際問題として頻出するextended susyに関してはこの本は無力である。なにか他のものと組み合わせて使用しないといけない。また,超対称性の現象論も別に勉強が必要である.例えば本ではないがStephen P. MartinによるレビューA Supersymmetry Primerはよく参照されているものの一つである.
超重力理論はかなり技術的なトピックであり,僕自身も部分的にしか勉強したことがない.長いこと本格的な教科書が存在してこなかったが,
はこのギャップを埋める良い本であるが,筆者はごく一部しか読んだことがない.
これらは言わずもがな、といったところ。前者は革命前にかかれたもの であり、その点では記述は最新とはいえないが、その記述は明快である。 特にWittenが書いたII巻の部分は研究者の間でも評価が高い。 後者はいかにもアメリカ的、いかにもPolchinski的な本である。彼独自の直観が 冴えている。この本は、 数式の変形を、すべてといわずとも重要な所は押さえて読んでいかないと 何の意味もないものになってしまう。さらっと書いてある計算でも実はか なり大変な計算であることも多い。CFTが出てくるあたりもこの本を 読みにくくしている。CFTを知っている人からみれば面白いと思うが、CFT そのものの導入としてはやや不足気味な気がする。特に最初の方はpedagogicな観点から必ずしも正確ではないことが書かれていることもあるので、余り詳細にこだわり過ぎな いほうがいいかもしれない(専門家に文句をつけられないようにいろいろ 脚注はついているけれども。)。記述はある意味非常に凝縮されており、 結構いろいろなことが書いてある。私自身、なにか調べたことが合った時 に、あまり分かりやすい文献がなく、実は手元のPolchinskiに分かりやす く書いてあったという経験が何度かあった。とにかく、それほど読みやすくはないが、 この分野で(少なくとも現在)最も標準的な教科書であることは間違いない く、読んでおかなければいけない本である。 但し、II巻の量を以てしても現在の中心的なtopicを網羅しているとは到底言い がたい。例えば、(GSWでもやはりそうであるが)SFTについては殆ど何も 書かれていない。兎も角、この本を読まなければ論文を書けないということは 全くないと思うが、同時に必携ということは確かだと思う。
こちらはPolchinskiよりも10年ほど後に書かれたもので,例えばAdS/CFT対応やflux compactificationなどの事項も書かれていてより実践的.
そのほか,上に挙げた本はいずれにせよ本格的なので,Polchinskiはちょっとという学部生には、
がいいのかもしれない。私自身はまだ読んだことはありませんが、この本をゼミで使ったという某先生の話では、Polchinskiの最初の方をねちねち書いた感じで、あまり面白くなかったが、学生には好評だったという。Zwiebachの名前からするとstring field theoryについて何かきちんと書いてくれるのではないかと期待していた専門家も少なくなかっただろうが、学部生向けの内容の域を出るものではないようだ。
共形場理論は今や超弦理論などの素粒子理論ばかりではなく物性理論の一部でも必須のものとなった.共形場理論についてのもっとも丁寧かつ詳細な教科書は
俗にThe Yellow Bookといわれている。丁寧すぎて逆に飽きてしまう側面もあるが、とにかく丁寧に書いてあってよい。また、各章末についている演習問題が良い。単なる計算問題もあるので、実際に自分で計算して自信をつけるのには良いのではないだろうか。
本ではないが、"The Yellow book"は厚すぎるという人には、Ginspargの非常に名高い講義録Applied CFTがお薦めです。
超弦理論で現れる超対称性を持つ共形場理論まで記述したものとして
があります.著者の専門を反映してムーンシャイン現象への言及などもあります.
物性の専門家と素粒子の専門家の共著によるよくまとまった本。私の記憶ではもともと物性研究に連載していた内容をまとめたものである。前半は基本的にBPZの論文の内容と、CardyのBCFTの話。後半はBethe ansatzをはじめとする厳密解の方法について述べたもの。後半部分もspin chainの話とかで素粒子の人にとっても欠かせない知識になってきた。物性と素粒子の必要知識のintersectionにある内容をうまくまとめた良書である。
やや数学的な側面を取り扱った日本語の本はこちら.ただし現在は入手が容易ではないかもしれない.
ここまで述べてきたのはほとんど時空2次元での共形場の理論であったが,近年は3次元以上の高次元での共形場の理論の進展がめざましい.このトピックについては
が良い.
Last modified on Monday, 12-May-2025 21:56:51 JST
Copyright © 2002--2025
by Masahito YAMAZAKI. All rights reserved.