2007年度前期講義「幾何学I」
目次
開講のお知らせ
4月11日
4月18日
4月25日
5月2日
5月9日
5月23日
5月30日
6月6日
6月13日
6月20日
6月27日
7月4日
7月11日
試験問題
講評
4月11日開講
4月25日の演習は, 問題の解答の提出をさせ, 添削して返却した.
5月9日の演習は, 問題の解答の提出をさせた.
5月16日の授業と演習は休講
5月23日の午前は休講, 午後は授業のみ
6月6日の午前中は小テスト
6月13日に答案の返却を行なった。
6月6日の小テストがすべてできなかったもの、
もしくは欠席したものは、完全な答案を作成の上、6月20日
までにレポートとして提出すること。
7月11日が最終講
7月25日が試験
- 弁当持ち込み可、教科書、ノート、プリント類は持ち込み不可
授業内容
微分可能多様体について基本的な事項を解説する。昨年度の幾何学入門のつづき
であるが, かならずしもこれを受講している必要はない。過去の対応する授業
のレジュメは, http://www.math.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/Lecture/03_Kika1.html,
http://www.kusm.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/Lecture/00_Kika2.html
にある。今年度のレジュメもWeb pageで公開する予定である。
参考書
- 松本幸夫: 多様体の基礎, 東京大学出版会
(以下, [松本] で引用する.)
4月11日の午前中にやったこと
§序. 多様体の例, 作り方
- 空間を貼りあわせで作る. 二次元球面, トーラスから三次元球面, トーラスへ
- 空間を商空間で作る. (実)射影空間
- 座標と座標変換
§1. 多様体の定義 ([松本§6])
- 位相多様体の定義
- $C^\infty$級微分可能多様体の定義
4月11日の午後にやったこと
多様体の例.
- $S^n$
- メビウスの帯 ([松本 p.142])
- 射影空間 ([松本§11])
- 多様体内の開集合
- 開部分多様体
- $T^n = \R^n/{\mathbb Z}^n$
多様体の定義についての注意:
[松本]の p.53
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4月18日にやったこと
§2. $C^\infty$級関数, $C^\infty$級写像 [松本§7]
- 多様体上の関数 $f: M\to \R$ が $C^\infty$級であることの定義. 各点 p ∈ Mに対して, その回りの座標系 $\varphi: U\to U'$ を取ると, $f\circ \varphi^{-1}$が $C^\infty$である.
- 例. 射影空間上の関数
$f([x_0:\dots:x_n]) = x_0^2/ x_0^2 + \dots + x_n^2$
- 多様体 $M$, $N$の間の連続写像 $f: M\to N$ が $C^\infty$級であるとは,
各点 $p\in M$に対して, その回りの座標系 $\varphi: U\to U'$ と $f(p)$の回りの座標系 $\psi: V\to V'$ で, $f(U)\subset V$となっているものを取ると, $\psi\circ f\circ \varphi^{-1}$が $C^\infty$級であるときをいう.
- $1$次元射影空間の間の同次多項式からさだまる写像
- 二つの$C^\infty$級写像の合成は, $C^\infty$級写像である.
- $C^\infty$級微分同相の定義.
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4月25日にやったこと
§3. 接ベクトル, 接空間
- 多様体の点pにおける接ベクトルの定義,
- 接ベクトルの全体を接空間といい, $T_p M$ で表わす.
- 座標 $\varphi: U\to U'$を取ったとき, $\left(\frac{\partial}{\partial x_i}\right)_p$の定義
- $i = 1,..,n$ と動かしたとき, これが接空間 $T_p M$の基底をなす.
- 二つの座標が与えられたとき, 上の基底の変換行列が座標変換のヤコビ行列で与えられる.
- $f$ が $M$ 上の$C^\infty$級関数のとき, $df_p: T_p M\to \R$が定まる.
- $F: M\to N$が$C^\infty$級写像のとき, $dF_p: T_p M\to T_{F(p)}N$
が定まる. これを $F$ の $p$ における微分という.
- $dF_p$は座標を取れば, ヤコビ行列に他ならない.
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5月2日にやったこと
- 合成写像の微分法則 $d(G\circ F)_p = d G_{F(p)} dF_p$
- $F : M \to N$がはめ込み, 埋め込み, 沈め込み, であることの定義
- はめ込みと埋め込みの違いについて説明
- ユークリッド空間の開集合の間の$C^\infty$級写像についての逆関数定理,
陰関数定理, 逆関数定理の系(微分が単射のとき...)
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5月9日にやったこと
- $M$を$m$次元$C^\infty$級微分可能多様体とする.
$S\subset M$ が$n$次元部分多様体であるとは, $S$の各点 $p$ に対して, その近傍 $U$ と, $U$ 上で定義された $C^\infty$ 級写像 $F: U\to \R^{m-n}$であって,
- $dF_p$ は全射
- $U\cap S = F^{-1}(0)$
を満すものがあるときをいう.
- このとき, $S$ は $n$次元$C^\infty$級微分可能多様体の構造であって, 以下の性質を持つものをもつ
- 包含写像 $S\subset M$ は埋め込みである.
- $p\in S$ において, $U$, $F$ を上のようにとるとき
$T_p S = \mathrm{Ker}dF_p: T_p M \to \R^{m-n}$ となる.
- 授業の証明の途中で次を示した.
さらに, $S \subset M$ が部分多様体であると, $S$の各点$p$の回りの$M$の
座標系 $\varphi: U\to U'\subset\R^m$ であって
$S \cap U = \varphi^{-1}(U'\cap \{ x_{n+1} = \dots = x_m = 0 \})$ となるものが
取れる.
[松本, p.157]ではこれを定義に採用していた.
- 臨界点, 正常点, 臨界値, 正常値の定義
- $f: M\to N$ とし, $p\in N$が正常値のとき, $f^{-1}(p)$は空集合でなければ, $M$の部分多様体である.
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5月23日にやったこと
§4. ベクトル場 ([松本, §16, 17])
- ベクトル場の定義. 各点 $p\in M$ にたいして $X_p$ という接空間 $T_p M$の元が与えられ, 座標ベクトル場を用いて表わしたときに, 係数が $C^\infty$級という意味で, $C^\infty$級であるものをベクトル場という.
- $X$, $Y$ : ベクトル場, $f$ : $C^\infty$級関数のとき, $X+Y$, $fX$ はやはりベクトル
場になる.
- ベクトル場による関数の微分 $Xf$ の定義
- 定理. $X: C^\infty(M) \to C^\infty(M)$ が 線形でライプニッツの法則を満たすとき, それはベクトル場が定めるものである.
- ベクトル場のLieブラケット $[X,Y]$ の定義
- $C^\infty$ 級写像 $F: (-\varepsilon, \varepsilon) \times M \to M$ であって, $F(0,p) = p$ を満たすも
のがあるとき, $\left.\frac{\partial}{\partial t} F(t,p) \right|_{t=0} = X_p$ によって $M$ 上のベクトル場 $X$ が定まる. その例として
- $S^2$ の$z$軸の回りの回転
- $T^2$の平行移動から決まるベクトル場
- ベクトル場 $X$ が与えられたとき, $dc/dt = X_{c(t)}$ を満たす曲線をその積分曲線という. 初期値 $c(0) = p$を与えたとき少なくとも十分に小さい$t$については存在する. (常微分方程式の解の存在定理より)
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5月30日にやったこと
- 局所1パラメータ変換群 $\varphi_t$ を $\varphi_t(p) = c(t)$ で定める. ただし $c(t)$ は, $c(0)=p$となる積分曲線である.
- $\varphi_{t+s} = \varphi_t \circ \varphi_s$ を満たす.
- ベクトル場 $X$ に対応する局所1パラメータ変換群を$\varphi_t$とすると,
$$Xf = \lim_{t\to 0} \frac{\varphi_t^* f - f}t$$
が成り立つ。
- ベクトル場 $X$ に対応する局所1パラメータ変換群を$\varphi_t$とすると,
$$[X, Y] = \lim_{t\to 0} \frac{(\varphi_{-t})_* Y - Y}t$$
が成り立つ。
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6月6日にやったこと
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6月13日にやったこと
§5. 微分形式と積分 ([松本, §18, 19, 20])
まず1次微分形式を説明した。
- 余接空間 $T^*_p M = T_pM$の双対空間
- 座標を取ると $(dx_1)_p,\dots,(dx_n)_p$が$(\partial/\partial x_1)_p, \dots, (\partial/\partial x_n)_p$の双対基底として定まる.
- 1次微分形式 $\alpha$ とは, 各点 $p$ ごとに$T^*_p M$ の元 $\alpha_p$
が与えられているもので, 上の基底の一次結合で書いたときに, その係数が $p$ について$C^\infty$級になるもののことである.
- 座標変換の公式. $dx_i = \sum_j \frac{\partial x_i}{\partial y_j} dy_j$
- 微分形式の引き戻し $f^*\alpha$ を
$(f^*\alpha)_p(v) = \alpha_{f(p)} (df_p(v))$で定義
- $C^\infty$級関数 $f$ に対する外微分作用素 $df$ の定義
$$df(v) = vf$$ for $v\in T_p M$.
- 1次微分形式$\alpha$と1次元多様体 $C$ について $\int_C \alpha$ を定義する.
(きちんとはやらなかった)
- $C = C_1\sqcup\cdots\sqcup C_n$ を分けて、それぞれの区間にパラメータを入れる。
- $\int_C \alpha = \sum \int_{C_i} \alpha$ として、各$C_i$ごとに定義すればよい。分け方によらないことは、二つの分け方の共通の細分を考えればすぐに分かる。
- 座標を入れて $\alpha = a(x) dx$ と表わしたとき
$\int_{C_i} \alpha = \int_{a_i}^{b_i} a(x) dx$と定義する。
- 積分の変数変換の公式と, 微分形式の座標変換の公式(今の場合 $dy = (dy/dx) dx$) がちょうど同じになっているために、パラメータによらずに積分は符号をのぞいて同じになる。
- $C$ に`向き'を入れておけば, 符号の umbiguity も消えて、座標の取り方にはよらずに well-defined.
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6月20日にやったこと
- 多様体上の微分形式の定義
- 座標変換での微分形式の変換性
- 微分形式 $\alpha$, $\beta$に対して $\alpha\wedge\beta$の定義
- 微分形式の引き戻し
- 外微分作用素の定義
- $\alpha$を$k$次微分形式とするとき
$$(d\alpha)(X_1,\dots,X_{k+1}) = \sum_{i} (-1)^{i+1} X_i (\alpha(X_1,\dots,\widehat{X_i},\dots,X_{k+1})) + \sum_{i < j} (-1)^{i+j} \alpha([X_i,X_j],X_1,\dots,\widehat{X_i},\dots,\widehat{X_j},\dots,X_{k+1})$$
が成り立つ。
- $dd\alpha = 0$
- $d(\alpha\wedge\beta) = (d\alpha)\wedge\beta + (-1)^k \alpha\wedge (d\beta)$
- $d f^* = f^* d$の証明の途中で終わり
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6月27日にやったこと
- $d f^* = f^* d$の証明の続き
- パラコンパクト性と1の分割
- 多様体の向き
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7月4日にやったこと
- 積分の定義
$$\int_M \omega = \sum_\alpha \int_M \rho_\alpha \omega$$
として、座標近傍に入っている場合に帰着し、その場合は積分の変数変換の公式と微分形式の変数変換の公式が同じことを用いる。
- 境界付き多様体
- Stokesの定理
$$\int_M d\omega = \int_{\partial M} i^*\omega$$
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7月11日にやったこと
§6. Lie群、Lie環の初歩
- Lie群の定義
- 例. $GL(n,\R)$, $SL(n,\R)$, $O(n)$
- Xが左不変ベクトル場とは $(L_g)_* X = X $が成り立つときをいう.
- 左不変ベクトル場の全体は, $\R$上のベクトル空間をなし, ベクトル場のLie括弧 $[\ ,\ ]$ で閉じている. これを $G$ のLie環といい, $\mathfrak g$ (ドイツ花文字)であらわす.
- 定理. Lie環 $\mathfrak g$ は, $G$ の単位元における接空間 $T_e G$と, 写像 $X\mapsto X_e$によって線形空間として同型になる.
- $G = GL(n,\R)$ のとき, 左不変ベクトル場のLie括弧 $[\ ,\ ]$ は上の同型のもとで行列
の交換子 $[A, B] = AB - BA$ と同一視される.
- $G \subset GL(n,\R)$ が部分群であって, さらに部分多様体でもあるとき, リー環 $\mathfrak g$ を単
位元における接空間 $T_e G$とみなし, さらに包含写像の微分によって行列の全
体の中の線形部分空間と思うことにする. このとき, 左不変ベクトル場のLie括弧 $[\ , \ ]$
は上の同型のもとで行列の交換子 $[A, B] = AB - BA$ と同一視される. 特に,
行列の交換子のもとで, 上の線形部分空間が閉じていることが分かる.
- Lie群 G 上の左不変ベクトル場は完備である.
7月11日の午後にやったこと
- Lie群 $G$ 上の左不変ベクトル場は完備である.
- $\exp:{\mathfrak g}\to G$ を $\exp X = \varphi^X_1(e)$ で定義する. ただし$\varphi^X_t$ は, $X$ に対応する1パラメータ変換群
- $\exp (t+s)X = \exp tX \exp sX$, $d/dt|_{=0} \exp tX = X$ をみたす. (1パラメ
ータ部分群)
- 逆にこの性質を持てば, 左不変ベクトル場に対応した1パラメータ部分群である.
- $G = GL(n,\R)$ のとき, $\exp$ は行列の指数写像である.
- $F : H \to G$ が群の準同型で, $C^\infty$級でもあれば, $dF_e$ はLie
環の間の準同型になる.
- 第一標準座標系 $\exp$ , 第二標準座標系 $(x_1,...,x_n)\mapsto \exp(x_1 X_1) \dots \exp(x_n X_n)$
- 定理. $H \subset G$ が部分群であり, 部分多様体でもあると, $G/H$ に自然な射影 $\pi: G\to G/H$, 作用 $G \times G/H \to G/H $が$C^\infty$級になるように, $C^\infty$級多様体の構造を入れることができる.
(ただし証明は略した。)
試験問題
問題
解答
講評
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