ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究

計画研究:A02 理論班
マルチメッセンジャーで探る重いダークマター

研究代表 村瀬 孔大
 ダークマターが存在することは確実だが正体は謎に包まれている。その質量はTeV(=1012 eV)よりもずっと重く、電弱相互作用と強い相互作用の統一が期待される大統一(GUT)スケールや量子重力が重要になるプランクスケールに近い可能性もあり、ダークマターの発見が究極理論への貴重な手がかりを与えることは間違いない。人工の加速器で到達できるエネルギースケールを超える質量を持つような重いダークマターはその粒子数密度が少なく直接検出も困難と考えられており、探索には宇宙線やニュートリノ、ガンマ線や重力波を用いた間接検出が鍵となる。

 本研究計画では、急速に発展しつつあるマルチメッセンジャー観測のデータを最大限に活用し、重いダークマターの理論への新たな知見を得ることを目指す。例えば宇宙線の空気シャワー検出器や電波観測装置は宇宙線だけでなく超高エネルギーのガンマ線やニュートリノも観測可能であることを生かし、現在及び将来得られる観測データの適切かつ定量的な解析に基づき、未探査のダークマターパラメータ領域を調べる。また、超高エネルギー領域や遠方宇宙では宇宙線やガンマ線と周辺の光子場及び外場との反応による電磁カスケードが起こり、ニュートリノと宇宙ニュートリノ背景放射やダークマターの反応も一層複雑になるため、関連する天体物理を考慮しつつ運動論的方程式を解く数値コードを開発、整備する。さらに、超重ダークマターについての様々な素粒子理論のモデルを精査し、宇宙論的な制限を行う。これらの成果を組み合わせて重いダークマターモデルについて重力波を含むマルチメッセンジャー観測に基づく洞察を与え、他の計画研究とのシナジーを得る。
メンバー
研究代表者
村瀬 孔大 Kohta MURASE
Penn State University 准教授 / 京都大学 基礎物理学研究所 特任准教授 宇宙粒子物理学、研究全体の統括

研究分担者
成子 篤 Atsushi NARUKO
京都大学 基礎物理学研究所 特定助教 重力理論

山中 真人 Masato YAMANAKA
法政大学 理工学部創生科学科 教務助手 素粒子理論

藤井 俊博 Toshihiro FUJII
大阪公立大学 大学院理学研究科 准教授 観測データの解析

廣島 渚 Nagisa HIROSHIMA
富山大学 学術研究部理学系 助教 宇宙粒子物理学理論


はじめに

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