ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究

計画研究:B02 実験班
すばる多天体分光観測によるダークマター探索

研究代表 高田 昌広
 すばる超広視野多天体分光装置Prime Focus Spectrograph (PFS)は、一度に広い視野に渡り約2400個の天体を同時に分光観測することができる極めてユニークな装置である。宇宙空間に存在する恒星の各々は重力場に従い固有運動しているが、その視線方向の運動は恒星の分光観測によってのみ測定できる。逆に、恒星系の速度構造を詳しく解析することで重力場を復元することができる。

 例えば、ダークマターが質量の軽いアクシオン (~10−22eV)の場合には、そのド・ブロイ波長が1kpc程度になり、ダークマターは古典波のように振る舞い、矮小銀河の中心部には質量密度が平坦(一定)になるコアの出現が予言されている。PFSによる矮小銀河の分光観測から、ダークマターの空間分布を復元し、このシナリオを定量的、決定的に検証する。また、矮小銀河が天の川銀河の中心領域に降着すると、太陽系を旋回する彗星のように潮汐力で破壊され、特徴的な恒星集団のストリーム(紐状)構造を形成するが、ストリームの微細構造から原始ブラックホールなどの巨視的ダークマター天体との重力相互作用の痕跡を探ることができる。

 本計画研究の開発要素として、PFSの分光装置、恒星の視線速度を高精度に測定するための較正システムの開発、最適な観測戦略の立案、また領域期間内にPFSデータからダークマターの制限するための解析パイプラインの開発を推進する。理論研究A01-03班、またC02班と密に連携を取りながら研究を進める。
メンバー
研究代表者
高田 昌広 Masahiro TAKADA
東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構 教授 研究全体の総括

研究分担者
田村 直之 Naoyuki TAMURA
国立天文台 ハワイ観測所 教授 装置開発、プロジェクト管理

砂山 朋美 Tomomi SUNAYAMA
名古屋大学 素粒子宇宙起源研究所 客員研究員 観測パイプライン開発

高遠 徳尚 Naruhisa TAKATO
国立天文台 ハワイ観測所 教授 装置開発

岡本 桜子 Sakurako OKAMOTO
国立天文台 ハワイ観測所 助教 観測戦略・立案

石垣 美歩 Miho N. ISHIGAKI
国立天文台 ハワイ観測所 助教 観測戦略・立案

高橋 龍一 Ryuichi TAKAHASHI
弘前大学 理工学研究所 准教授 数値シミュレーション


はじめに

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